2016年7月10日日曜日

思考法としての抽象のハシゴ


前回は
アルフレッド・コージブスキー
『 一般意味論 』 における
格言について考えてみました。

この理論は,弟子である
S. I. ハヤカワ
( サミュエル・イチエ・ハヤカワ )

の著書
『 思考と行動における言語 』
により,啓蒙され
『 一般意味論 』
古典的名著になっています。

私が法律を学び
社会に出てから
この本を読んだとき
裁判,交渉,文書作成から
ビジネスおける
マーケティングやアイデア
さらには
日常のコミュニケーションに
至るまで
ほとんどが
この考え方に基づいて
思考しているのだと気づきました。


この本で
よく引き合いに出される
参考例として
『 抽象のハシゴ 』 があります。

これは
われわれが
あるモノを対象として
捉えて思考するとき
その対象を抽象化や具体化
することができます。

例えば
『 アツ 』 君という
男の子がいるとします。
この 『 アツ 』 君を抽象化する
『 少年 』 です
さらに
『 人 』 でもあり
将来を担う 『 資産 』
ともいえます。
もっと抽象化するならば
『 未来 』『 夢 』
ともいえます。

反対に
『 アツ 』 君を具体化 すれば
言葉にできない
われわれの
経験や知覚で感じとった対象 です。
さらに具体化すれば
遺伝子や細胞 レベルの対象 です。

これらの具体化,抽象化のレベルを
ハシゴに当てはめると
このように表現できます。



3段目から上が,言語レベルで
学問領域でいうならば
人文・社会系の学問領域です。

2段目が,知覚レベルで
認知科学などの学問領域です。

1段目が,原子レベルで
医学や生化学,物理学などの
自然科学系の学問領域です。


図書館学に通じている方ならば
シソーラス基本件名標目表
イメージできるのでは
ないでしょうか。
もっとも
これらの目的は
検索の効率化なので
対象は言語で表現できる
類語や関連語などの範囲に
限定されます。

シソーラス基本件名標目表
無料Webサイト がありますので
ご案内します。

シソーラス基本件名標目表
検索だけでなく
発想のきっかけをつくるときや
言葉の言い換えにも
役立ちます。


◆ シソーラス
① Weblio類語辞典
http://thesaurus.weblio.jp/

② 連想類語辞典 日本語シソーラス
http://renso-ruigo.com/

◆ 基本件名標目表
① 基本件名標目表 (BSH: Basic Subject Headings) トピックマップ
http://topicmaps-space.jp/bsh1/


ビジネスなどで活用される
ブレーンストーミング
KJ 法 などの発想法も
この抽象のハシゴの仕組みと
似ています。

『 抽象のハシゴ 』
一本だけではありません
ジャングルの木のように
何本もあるのです。
また
ハシゴの段は8段である必要はなく
さらに細分化してもかまいません。

そのハシゴを上に登り
抽象化した言葉から
同じ言葉のあるハシゴに飛び移り
そのハシゴを昇降し
さらに飛び移ったりして
横と縦の運動を繰り返すことで
発想は広がります。

どうでしょうか
ブレーンストーミング
KJ 法 の構造と似ていますよね。


法律の思考 においても
法律は抽象的
さらに上位の段階である憲法は
もっと抽象的

書かれていますので
様々な意味にとることができます。

また
解釈のよりどころ となる
最高裁の公式見解である
『 判例 』 においても
判例は
個別具体的な事件をもとに
出されていますから
事案を抽象化して
共通項を探ったうえで
本件事案が
判例の射程範囲であるかを
考えます。

さらに
著名な学者の法律書
難解であることや
分量は少ないけれども
「名著」
呼ばれるものがあります。
これらは
抽象的な表現が用いられ
多様な解釈ができるので
読み方によっては
「 深い 」「 行間を読ませる 」
「 少ない字数で多くを語る 」
などといった評価がなされます。


大学受験生などの場合
現代文で
「 この文章を200字で要約しなさい 」
など
要約の問題を
苦手としている学生がいます。

考え方は
具体的 に書かれている言葉を
抽象化してまとめ
接続詞などでつなぎ
体裁が良くなるように
文章を整えればよいのです。

例えば
チワワ,ビーグル,コリー,
ボクサー,… と書いてあれば
抽象化して,まとめると
「 犬 」 です。

要約が苦手な人は
語彙力が弱い
ため
抽象化した
すぐ上の言葉が出てこない場合が
多いのではないでしょうか。


このように
「 抽象化 」,「 具体化 」の思考法
考え方の基本として
念頭に入れておくと
あらゆる分野で
応用することができるので
非常に役立ちます。


ビジネス書などで
この思考法を
ビジネスに応用したものが
多くありますが
原典である
S. I. ハヤカワの
この本を読んでおくべきです。

なぜなら
それらのビジネス書
二次的 に書かれたものであり
『 地図の地図 』 ですので
原典に書かれている
多くのものが落ちています。

『 抽象のハシゴ 』 の項目は
一部分であり
他にも有益となるであろう
項目が多くあり
全体を通して読めば
「 言語の機能と思考法 」
についての概念がわかります。


ただ
この手の
意味論や観念論などの哲学書は
形に表現できないモノを
言葉によって論じる必要があるため
どうしても,こむずかしくて
言っていることがわからなく
感じると思います。

しかし,慣れれば
この本は問題ないと思います。

学者でない方は
自分なりに解釈して
参考になった個所を抽出して
自分の血肉にすればよいのですから
是非当たってみてください。


私がこの本を知ったのは
『 政治家の本棚 』 という本で
元・官房長官で弁護士 でもある
仙谷由人 氏が
インタビューの中で
「法律をやる人はこれを読みなさい」
と,勧めていたのがきっかけです。


それでは最後に
この本と
私がこの本を読むきっかけとなった本
また
比較の例に挙げた
KJ 法の開発者である
川喜田二郎 氏 の発想法関連の
著書3冊を紹介します。


★ 思考と行動における言語 / 岩波書店

★ 政治家の本棚 / 朝日新聞社

★ 発想法 - 創造性開発のために (中公新書) / 中央公論新社

★ 続・発想法 - KJ法の展開と応用 (中公新書)/中央公論新社

★ 「知」の探検学 - 取材から創造へ (講談社現代新書 475) / 講談社


以上

読んでいただき,
ありがとうございました。

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