2017年2月2日木曜日

ゴミの帰属について


“ ガーボロジー ” について
その行為が
犯罪とならないかについて
詰めて考えていったとき
そもそも
ゴミ( 廃棄物 )を
持ち去る行為は
窃盗罪などにあたるのか

という問題に当たります。

ゴミとは
それ自体に財産的価値があったとしても
通常不要になったので
捨てたものであるから
所有権,占有権を放棄したものなので
無主物であり
窃盗(刑法235条)には当たらない。
また
無主物であれば
遺失物や漂流物
その他
占有を離れた他人の物
でもないので
遺失物等横領(刑法254条)にも当たらない。
とも考えられます。

一方で
集積所に出されたゴミは
排出者から自治体に対して
譲り受けたものなので
ゴミの所有権は
自治体に帰属するという
解釈もあります。

この件について
裁判例は分かれています。
まず
ゴミを集積所に置いた時点で
無主物になるものではない。
とする裁判例


東京高判 平成19年12月10日
平成19年(う)第1087号


東京高判 平成19年12月13日
平成19年(う)第1025号


東京高判 平成20年1月10日
平成19年(う)第1068号


東京高判 平成19年12月26日
平成19年(う)第993号
平成19年(う)第1018号
平成19年(う)第1031号


がありますが

東京高判 平成19年12月13日
平成19年(う)第1025号


においては
集積所の資源廃棄物は
一般的には無主物ではないと
しながらも


「 区民の中には
古紙等を集積所に排出した時点で
所有の意思を放棄したとみるのが
相当な場合も考えられない訳ではない。
その場合には
その資源廃棄物は
民法上の無主物と
いわざるを得ないであろう 」


というように
私法上の帰属については
明言を避けています。


次に
権利の移転時期 については

東京高判 平成19年12月10日
平成19年(う)第1087号


では
明言をしていません。

それ以外では
自治体によって回収されるまでは
排出者によって所有・占有されていると
見るべきであり
自治体が回収することによって
その所有権や占有権が
自治体に移転,承継されるものと
考えるのが相当とする裁判例


東京高判 平成19年12月13日
平成19年(う)第1025号


東京高判 平成20年1月10日
平成19年(う)第1068号


であり

集積所に置かれた時点から
自治体の所有に属する

とするのが

東京高判 平成19年12月26日
平成19年(う)第993号
平成19年(う)第1018号
平成19年(う)第1031号


の裁判例です。

これらの裁判例
資源ゴミの持ち去り問題の
対策として
自治体が持ち去り禁止条例を制定し
その条例違反行為で告発がなされて
裁判で争われたケース
です。

資源ゴミの持ち去り問題 とは
古紙等の再生資源価格の下落によって
資源となっていた古紙等が
大量のゴミとなり
行政が資源を回収し出したところ
再び資源ゴミに価値が付いたため
持ち去る者が出てきました。

彼らが
全ての資源ゴミを回収すれば
問題はないのですが
価値の高いものしか持っていかず
それにより
集積所が荒らされるなど
回収コストが増え
経済的損失も大きく
行政の信用にかかわる問題でもあるので
対策として条例を制定し
持ち去り行為を抑止するという
ことが目的です。

それらの事情を鑑みれば
裁判所でも
有罪の方向へ持っていくような
法理論を立てるのは当然でしょう。

ですから
これらが 対象 としているのは
古紙,ガラス瓶、缶などの
再利用の対象となる資源ゴミ
であって
一般ゴミが対象ではありません。

ただし
自治体により
適正にごみステーションに排出された
家庭系一般廃棄物の持ち去り行為を
一般的に禁止している条例
もあります。

◇ 下関市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例

( 収集又は運搬の禁止等 )
第10条

市又は市から収集又は運搬の委託を受けた者以外の者は
前条第2項 の規定により
適正にごみステーションに排出された
家庭系一般廃棄物を収集し
又は運搬してはならない。
2項
市長は
市又は市から収集又は運搬の委託を受けた者以外の者が
前項の規定に違反して
ごみステーションに排出された
家庭系一般廃棄物を収集又は運搬したときは
その者に対し
これらの行為を行わないよう
命ずることができる。

( ごみステーションの管理 )
第9条 2項

ごみステーションの利用者は
家庭系一般廃棄物の排出に当たっては
当該家庭系一般廃棄物を分別し
飛散又は流出しないように
市長の指示する方法により収納し
かつ
指定された日時に排出する等
適正にこれを行わなければならない。


本条例の第10条 については
循環型社会形成推進基本法 第7条
違反するものとはいえない。

との裁判例があります。

広島高判 平成20年5月13日
平成19年(う)第241号
下関市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例違反事件



翻って
排出されたゴミを無主物とした
裁判例
もあります。

最二小決 平成20年4月15日
平成19年(あ)第839号
窃盗,窃盗未遂,住居侵入,強盗殺人被告事件


「 ダウンベスト等の領置手続についてみると
被告人及びその妻は
これらを入れたごみ袋を不要物として
公道上のごみ集積所に排出し
その占有を放棄していたものであって
排出されたごみについては
通常そのまま収集されて
他人にその内容が見られることはないという
期待があるとしても
捜査の必要がある場合には
刑訴法221条により
これを遺留物として
領置することができるというべきである。
また
市区町村がその処理のために
これを収集することが
予定されているからといっても
それは廃棄物の適正な処理のためのものであるから
これを遺留物として領置することが
妨げられるものではない 」


この裁判例
先出の
「 資源ゴミ 」 のケースとは真逆
捜査の正当化のために
ゴミを
刑訴法221条の「 遺留物 」
としなければならないという
前提で法理論を立てているので
このケースでは
集積所に排出されたゴミは
自治体による回収如何にかかわらず
無主物
としています。


これらを踏まえて
ゴミの帰属 を考えると
今のところ
ケースバイケースで
判断
されているようです。

よって
国家機関や捜査機関ではない
私人による
ガーボロジー は
目的や他の行為,情状と絡めて
有罪と判断される
おそれがある
と考えます。


ちなみに
ワイドショーなどで
特集されている
“ ゴミ屋敷 ” と呼ばれている
ゴミに埋もれている
家がありますが

あの
家を埋めつくしているモノ
ゴミ集積所へ排出されたものでなく
所有者の管理下にあり
所有・占有を放棄している
とはいえないので
所有者の許可なく持ち去れば
窃盗です。


所有者本人も
ゴミと言ってませんよね。

だから行政も困っているわけです。

近隣の住民は
悪臭や火災等の心配で
たまったものではありませんが・・・。


~ 参考文献 ~

垣見隆禎「 判研 」自治総研 通巻411号 2013年1月号 58頁

埼玉県清掃行政研究協議会
『 平成21年度調査研究事業 一般廃棄物行政諸問題検討部会報告書 』


ダイナックス都市環境研究所
『 資源ごみ持ち去り問題と自治体の対応 』

http://www.dynax-eco.com/repo/report-42.html
(アクセス日 平成29年2月1日)

世田谷区例規類集・要綱集
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/107/157/722/729/d00120036.html
(アクセス日 平成29年2月1日)

杉並区例規集・要綱集
http://www5.e-reikinet.jp/cgi-bin/suginami/startup.cgi
(アクセス日 平成29年2月1日)

大田区例規集
http://www.city.ota.tokyo.jp/reiki/reiki/reiki.html
(アクセス日 平成29年2月1日)

下関市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例
( 平成17年2月13日 条例第198号 )

http://www.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/reiki/reiki_honbun/r147RG00000479.html
(アクセス日 平成29年2月1日)


以上

読んでいただき
ありがとうございました。




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