2017年2月12日日曜日

第一審 刑事判決書の構造


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刑事訴訟において
事実審たる第一審では
公訴事実が存在するか否かや
量刑のための情状
など
事実問題に対しての
審理が行われます。

具体的に
刑事事件の第一審公判 では
通常は 被告人 に対し
有罪 ( 刑事訴訟法333条 )
無罪 ( 同法336条 )
裁判がなされますが
形式的な訴訟条件を欠くことを理由として
公訴棄却 の 判決 または 決定
( 同法338,339条 )

あるいは
管轄違いの判決 ( 同法329条 )
免訴の判決 ( 同法337条 )
など
が下される場合もあります。


刑事事件の第一審判決書の
記載事項
は以下になります。

◇ 事件番号
◇ 表題 【「判決」など 】
◇ 本籍 ( 刑事訴訟規則57条2項 )
◇ 住居 ( 同規則56条1項 )
◇ 職業 ( 同規則56条1項 )
◇ 氏名 ( 同規則56条1項 )
◇ 年齢 【 生年月日 】 ( 同規則56条1項 )
◇ 前文

前文

被告人のどのような事件について判決するのかが
被告人の表示 と 主文との間に記載 されます。
これは慣例であり法規規定ではありません。
なお
多くの場合
刑事訴訟規則56条2項 規定の
公判期日に出席した検察官名
この 前文中に表示 されます。
前文に検察官の表示がない場合
判決書末尾に記載 されます。
また
弁護人の記載は不要です。


最高裁判所判例集

参照項目 では
被告人氏名 は
最初に記載がありますので
参照項目では省略されています。
また
被告人の本籍,住居,職業,年齢はもちろん
下級審の事件番号,表題,前文
省略されています。


次に
◇ 主文
に記載される項目です。
主文において
刑の言渡し ( 刑事訴訟法333条 )
無罪 ( 同法336条 )
刑の免除 ( 同法334条 )
免訴 ( 同法337条 )
公訴棄却 ( 同法338条,339条 )
管轄違い ( 同法329条 )
および
訴訟費用の負担 ( 同法181条1項 )

といった
判決の結論 が記載されます。

その他に
未決勾留日数の本刑算入
( 刑法21条 )
労役場留置 ( 同法18条 )
刑の執行猶予 ( 同法25条 )
保護観察 ( 同法25条の2 )
など

主文に記載されます。

なお
判決の言渡し(宣告)の際には
主文が朗読されます。
( 刑事訴訟法342条 )
( 刑事訴訟規則35条2項 )



主文のあとには

◇ 理由
が記載されます。
( 刑事訴訟法44条1項 )
理由の内容
有罪判決 の場合
▽ 罪となるべき事実
▽ 証拠の標目
▽ 法令の適用

( 以上,刑事訴訟法355条1項 )
および
▽ 法律上犯罪の成立を妨げる理由
又は
刑の加重減免の理由となる事実が
主張されたときは
これに対する判断

( 刑事訴訟法355条2項 )
が記載されます。
その他に
▽ 累犯前科
▽ 確定裁判
▽ 事実認定の補足説明
▽ 争点に対する判断
▽ 量刑の理由
▽ 一部無罪,一部免訴,一部公訴棄却の理由

も場合により記載されます。


▽ 罪となるべき事実
とは
犯罪の構成要件に該当する事実です。
その事件における犯罪の
構成要件該当事実について
漏れなくすべてが
明確に記載されます。
その他には
事案に応じた
犯罪行為自体に関する事情の
軽重を示す事実の記載もなされます。

▽ 証拠の標目
罪となるべき事実を認定する証拠が
記載されます。
被告人の経歴,犯行動機,刑の減免事由など
それ以外の事実についても記載され
罪となるべき事実 や
犯行に至る経緯 などで摘示された場合は
それらについても
認定した証拠が記載されます。

▽ 累犯前科
懲役などの
累積加重の原因となる
前科がある場合には
記載されます。

▽ 確定裁判
刑法45条後段 の適用がある場合には
確定判決があった事実について
その裁判確定時と
それに対する証拠が
記載されます。
また
その確定判決があった事実と
今般の罪が
併合罪であることについては
法令の適用 の項目において
記載されます。

▽ 法令の適用
罪となるべき事実 に記載された
被告人の所業が
どのような犯罪なるのか
また
処断刑がなされたかについて
法条を表示しつつ
記載されます。
その他に
刑事訴訟法44条 に基づき
主文に表示した付随処分 についても
法令上の根拠が記載されます。

法令適用の順序 については
以下のとおりです。
1 構成要件 及び 法定刑 を示す規定の適用
2 科刑上一罪の処理
3 刑種の選択 ( 罰金か懲役かなど )
4 累積加重
5 法律上の軽減
6 併合罪の加重
7 酌量軽減
8 宣告刑の決定


このうち
法定刑に
2~7の加重・軽減の操作 を経て
裁定された刑を
処断刑 といいます。

宣告刑
法定刑に
加重・減軽した
処断刑の範囲内で
裁判官が
具体的に量定し
最終的に決定して
言い渡される刑です。

法定刑 とは
法律で定められている
刑の範囲です。
例えば
窃盗罪 であれば
10年以下の懲役
又は
50万円以下の罰金
です。


▽ 法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実の主張
例えば
正当防衛 ( 刑法36条1項 )
心身喪失者 ( 同法39条1項 )など
犯罪の構成要件該当事実以外で
法律上犯罪が不成立となる事実
を主張です。

▽ 法律上刑の加重減免の理由となる事実の主張
例えば
中止未遂 ( 刑法43条ただし書 )
心身耗弱者 ( 同法39条2項 )など
事実の主張です。

上二つの主張は
▽ 弁護士の主張に対する判断
といった見出しが付されています。
これらの主張は要約して記され
その上で裁判所の判断が記載されます。

その他の主張で
事実上の主張に対する
重要な争点である場合
には
証拠の標目 の後に
事実認定の補足説明
として記載され
法律上の主張に対する
重要な争点である場合
には
法令の適用 の後に
争点に対する判断
として記載されて
それらの主張に対する
判断がなされます。

▽ 量刑の理由
死刑や無期懲役に処する場合や
殺人罪等の重罪おいて
執行猶予付きの刑を言渡した場合に
多くは
法令の適用の次に
記載
されます。

▽ 一部無罪,一部免訴,一部公訴棄却の理由
主文で有罪判決としながらも
これらが認められる場合には
その理由が記載されます。


◇ 後文
次の項目が最後に記載されます。
▽ 判決書作成年月日 ( 刑事訴訟規則58条1項 )
▽ 裁判をした裁判所 ( 同規則58条1項 )
▽ 裁判官の署名押印 ( 同規則58条1項 )




~ 参考文献 ~

刑事判決書起案の手引 平成19年版 司法研修所 編 / 法曹会 2007.6

刑事判決書に関する執務資料 - 分かりやすい裁判をめざして
最高裁判所事務総局刑事局 監修 / 司法協会 1993.6

「 刑事判決書の平易化をめぐって 」
東京地裁・大阪地裁刑事判決書検討グループ
『 ジュリスト 』 994号 1992.2.1 34 - 39頁

法律文献学入門 - 法令・判例・文献の調べ方 西野喜一 著 / 成文堂 2002.7



以上

読んでいただき
ありがとうございました。




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