2023年1月23日月曜日

思考法としての抽象のハシゴ


アルフレッド・コージブスキー
『 一般意味論 』
弟子の S. I. ハヤカワ
( サミュエル・イチエ・ハヤカワ )

の著書
思考と行動における言語』により
啓蒙され
『 一般意味論 』
古典的名著になっています。

裁判,交渉,執筆から
ビジネスおける
マーケティングやアイデア
さらには
日常のコミュニケーションに至るまで
ほとんどが
この考え方に基づいて思考していると
この本を読んだときに気づきました。

本書でよく引き合いに出される
参考例として
『 抽象のハシゴ 』があります。

これは
あるモノを対象として思考するとき
その対象を抽象化したり
具体化したりするとします。

例えば
『 アツ 』君という
男の子がいるとします。
この 『 アツ 』君を抽象化する
『 少年 』です
さらに
『 人 』でもあり
将来を担う 『 資産 』
ともいえます。
もっと抽象化するならば
『 未来 』『 夢 』
ともいえます。

反対に
『 アツ 』 君を具体化すれば
言葉にできない
われわれの
経験や知覚で感じとった対象です。
さらに具体化すれば
遺伝子や細胞レベルの対象です。

これらの具体化,抽象化のレベルを
ハシゴに当てはめると
このように表現できます。



3段目から上が言語レベルで
2段目が知覚レベル
1段目が原子レベルです。

図書館学に通じている方ならば
シソーラス基本件名標目表
イメージできるのでは
ないでしょうか。
もっとも
これらの目的は
検索の効率化なので
対象は言語で表現できる
類語や関連語などの範囲に
限定されます。

シソーラス基本件名標目表
検索だけでなく
発想のきっかけや
言葉の言い換えにも役立ちます。

この抽象のハシゴを利用して
発想を展開し応用すると
ビジネスなどで活用される
ブレーンストーミング
KJ法 的な技法に
近づいてきます。

『 抽象のハシゴ 』
一本だけではありません
ジャングルの木のように
何本もあるのです。
また
ハシゴの段は8段である必要はなく
さらに細分化してもかまいません。

そのハシゴを上に登り
抽象化した言葉から
同じ言葉のあるハシゴに飛び移り
そのハシゴを昇降し
さらに飛び移ったりして
横と縦の運動を繰り返すことで
発想は広がります。

こうして出てきた発想を
グループ化して効率よく整理すれば…
どうでしょうか
ブレーンストーミング
KJ法 のようになりますよね。

法律の思考においても
法律は抽象的
さらに上位の段階である憲法は
もっと抽象的

書かれていますので
様々な意味にとることができます。

また
解釈のよりどころとなる
最高裁の公式見解である
『 判例 』においても
判例は
個別具体的な事件をもとに
出されていますから
事案を抽象化して
共通項を探ったうえで
当該事案が
判例の射程範囲であるかを
考えます。

さらに
著名な学者の法律書
分量は少ないけれども難解で
「名著」
呼ばれるものがあります。
これらは
抽象的な表現が用いられ
多様な解釈ができるので
読み方によっては
「深い」「行間を読ませる」
「少ない字数で多くを語る」

といった評価がなされます。


大学受験生などの場合
現代文で
「この文章を200字で要約しなさい」
というような
要約の問題を
苦手としている学生がいます。

考え方は
具体的に書かれている言葉を
抽象化してまとめ
接続詞などでつなぎ
体裁が良くなるように
文章を整えればよいのです。

例えば
チワワ,ビーグル,コリー,
ボクサー,… と書いてあれば
抽象化してまとめると
「 犬 」です。

要約が苦手な人は
語彙力が弱い
ため
抽象化した
上位の言葉が出てこない場合が
多いのではないでしょうか。

このように
「抽象化」「具体化」の思考法
念頭に入れておくと
あらゆる分野で
応用することができるので
非常に役立ちます。

ビジネス書などで
この思考法を
ビジネスに応用したものが
多くありますが
原典である
この本を読んでみてはどうでしょう。

なぜなら
それらの ビジネス書
二次的 に書かれたものであり
いわば『 地図の地図 』ですので
原典に書かれている
多くのものが落ちています。

『 抽象のハシゴ 』の項目は
一部分であり
他にも有益となるであろう
項目が多くあり
全体を通して読めば
「言語の機能と思考法」についての
概念がわかります。

ただこの手の
意味論や観念論などの哲学書は
形に表現できないモノを
言葉によって論じる必要があるため
どうしても
こむずかしくて
言っていることがわからなく感じる
と思いますが
学者でない方は
本を読む場合に
自分なりに解釈して
参考になった個所を抽出して
自分の血肉にすればよいのですから
高尚なものでもありません。

ところで
僕がこの本を知ったのは
政治家の本棚 』という本で
元・官房長官弁護士 でもある
仙谷由人 氏が
インタビューの中で
「法律をやる人はこれを読みなさい」
勧めていたのがきっかけです。


それでは最後に
今回参考にしたWebサイトと紹介した本
および
KJ法の開発者である
川喜田二郎 先生の
発想法関連の著書の一部を紹介します。

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~ 参考サイト ~

◆ シソーラス

● Weblio類語辞典

● 連想類語辞典 日本語シソーラス

◆ 基本件名標目表

● 基本件名標目表 トピックマップ


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~ 参考文献 ~

★ 思考と行動における言語 / 岩波書店

★ 政治家の本棚 / 朝日新聞社

★ 発想法 改版 / 中央公論新社

★ 続・発想法 / 中央公論新社

★ 「知」の探検学 / 講談社


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以上
読んでいただき
ありがとうございました。