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2022年12月29日木曜日

コンメンタールの検索

法情報検索 各論 4 文献 8

法令の 条文解釈 を知りたい場合に
使用するツールとして
コンメンタール
( Kommentar:ドイツ語 )と呼ばれる
注釈書 があります。

実務においても
使用する機会の多い資料で
例えば
地方自治法 においては
いわゆる
「 松本コンメ 」(注)と呼ばれる
新版 逐条地方自治法があります。
ここでの 解釈
行政運用の指標 の一つになっている
といわれ
行政実務の定本 として
用いられています。

コンメンタール
各法令の規範を体系化して解説した
体系書(基本書,概説書)に対し
法令を
条文順に1条ずつ解説
したもので
その 条文の意義,要件,効果,
関連条文,判例,学説
などが
掲載されています。

一般的には
1条ずつ全ての条文について
解説が付されていますが
コンパクトなものなど
出版の方針に従い
解説に濃淡が付けられていて
重要度の低い条文には
解説が提供されていない
コンメンタールもあります。

コンメンタール
OPAC(蔵書検索機)で検索する場合
書名の欄
コンメンタール と入力して検索しても
かなりの検索漏れ が出ます。

OPAC による
件名検索 においても
憲法,民法 などといった
カテゴリーになっているので
コンメンタール という
件名(基本件名標目)がありません

※ もっとも
「 D1 - Law.com 」の
「 法律判例文献情報 」など
 有料データベースでは
 コンメンタールの検索機能が
 あるものもありますが
 ここでは
 一般的な検索方法について
 述べています。

ただ “ 一般的には ”
コンメンタール(注釈書) には
書名の一部
注釈書であることを指す語
付されていますので
検索漏れを減らすテクニック として
書名の欄に
コンメンタール という語の外にも
類語 である
注釈 または 註釈,
注解 または 註解,
条解,条文解説,
逐条,逐条解説,詳説 といった語を
入力して網をかける方法があります。

最近では 第一法規
論点体系シリーズ
が充実していて
使い勝手のよいコンメンタールです。
なので
論点体系 という語も
頭に入れておいてください。

ただし
この 論点体系シリーズ
各法分野の論点ごとに
整理することを主眼とした
“ 論点体系 ” という冠であり
シリーズ名や各書名に
コンメンタールを表す語がないので
編集の自由度も高く
法分野によっては
逐条形式をとらない
編集のものもあります。
例:「 論点体系 判例行政法 」
  「 論点体系 判例労働法 」

コンメンタールには
先述の『 松本コンメ 』をはじめ
実務家御用達の
例えば
民法なら『 注釈民法 』
会社法なら『 会社法コンメンタール 』
刑法なら『 大コンメンタール 』
風営法なら『 注釈風俗営業法 』
その他
実務家や学生と幅広く使用されている
『 条解シリーズ 』
『 新基本法コンメンタール 』
といったように “ 定番 ” があります。

そのため
出版社も固定のユーザーが多い
既存のマーケットに切り込むには
編集方法も
趣向を変えたもので挑む必要があり
今後は編集方法も多様化されて
書名に現れない
“ 隠れコンメ ” も増えていくと
思います。

それ以外でも
『 憲法を読み解く 』
 渋谷秀樹/著 有斐閣 2021年

『 全訂 日本国憲法 』
 宮沢俊義/著,芦部信喜/補訂
 日本評論社 1978年
この本は息が長く
現在(2022年12月19日 時点)でも
出版されているコンメンタールです。

といったように
書名に『逐条』,『条解』などの
注釈書を表す冠が付かない
コンメンタールもあります。


さらに
先述の「 松本コンメ 」 のような
コンメンタールとは
対極 にあるといってよいもので
使用法や趣向が全く違います
自由国民社 から出版の
口語民法 をはじめとする
口語六法全書シリーズ
条文ガイド六法シリーズ
ほかにも
木俣由美 先生の
楽しく使う会社法
といったものもあります。

特に
口語六法全書シリーズ
実例六法全書
( 過去に 実例民法実例刑法
実例借地借家法 が出版 )。
これらは
法学初級者一般の方 向けに
わかりやすく書かれていて
amazonレビューも高評価です。
もっとも
法律は官報により
一般国民に向けて公布されています。
したがって
一般向けに
法律が理解しやすいように書かれた
こういった本は重宝されていましたが
残念ながら
現在では改訂版や新版の出版は
ありません。

これは
主要な法律自体が
現代語化〈口語化〉されてきている
ということも
理由の一つかもしれません。
とは言え
鉄道好きな方はご存知と思いますが
鉄道営業法軌道法鉄道抵当法
他にも 船舶法水難救護法
手形法小切手法 など
カタカナ文語体の法令は
まだまだあります。

木俣由美 先生の
楽しく使う会社法 については
さらに砕いてギャグ要素があり
マンガ感覚で見たり
エロ語呂世界史年号
エロ語呂日本史年号
エロ語呂暗記法的に使用する本
といってもいいでしょう。
( その割には お値段が高め!)

ところで
本ができるまでには
ざっくり言うと
執筆 ⇒ 原稿編集 ⇒
造本設計,原稿指定 ⇒ 組版 ⇒ 校正
⇒ 印刷工程 ⇒ 製本 ⇒ 流通

といった過程を経ます。

最近の社会情勢は
激しく変動しているので
詳しい大コンメンタールを
出版しようとすれば
執筆中や
本ができるまでの過程の途中で
判例変更があったり
法改正が頻繁に行われるので
出版社泣かせなところがあります。
他にも
編著者が諸事情により
交代するなどして
中々進まなく
完結までに長い時間がかかるとか
刊行中止になってしまうのが
現状です。
( 例,有斐閣『新版 注釈民法』,
 青林書院
『 大コンメンタール 』の一部など )


なお冒頭の (注)書きで紹介した
新版 逐条地方自治法についての
補足ですが
松本英昭 先生 のコンメンタールは
新版 となった 2001年10月 からで
この年( 平成12年 )の 4月 には
地方分権一括法
(地方分権の推進を図るための
 関係法律の整備等に関する法律)が
 施行され
※ 公布は 1999年(平成11年)7月16日
 (法令番号:平成11年 法律第87号)
国と地方の役割分担の明確化,
機関委任事務制度の廃止,
国の関与のルール化
などが
図られました。
そして
地方分権改革 により
東京23区基礎自治体 として
東京都広域自治体 とした
平成12年改革 といわれる
都区制度改革 も行われました。

この大がかかりな改正を分岐点に
逐条地方自治法新版 として
リニューアルされています。
それ以前の
逐条地方自治法
 第12次改訂新版
( 1995年11月 )までは
長野士郎 先生の執筆で
「 長野コンメ 」 と呼ばれています。

先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。