2020年10月26日月曜日

特別区採用試験合格者の配分方法


昭和49(1974)年4月に
特別区職員の人事権が
東京都から特別区へと移行され
昭和48年度(昭和49年度採用分)以降
特別区での
採用試験選考
が実施されています。

それまでは
都配属職員制度により
課長,係長をはじめとする
区の職員の大部分は
都職員の身分を保有したまま
各区に配属されていました。

この経緯については
まず
東京都制の施行により
昭和18(1943)年7月1日
東京市と東京府が廃止されて
東京都が設置されました。

この東京市の職員解体に伴い
区には都の公務員が配置され
そして
昭和27(1953)年9月1日の
地方自治法施行令の一部改正で
「配置職員制度」が明記された
ことに因みます。

その後の権限移譲により
現在に至るまで
特別区職員の採用は
一部を除き
23区の共同採用
となっています。

ただし
江戸川区だけは
第1希望(江戸川区のみを希望)として
人事委員会の行う試験に最終合格すれば
区の面接を経ずに
江戸川区 に内定 → 採用される
独自採用方式を行っています。

独自採用方式とは何ですか - 江戸川区

これは
昭和48年7月に実施された
23区共同の職員採用試験において
江戸川区だけが
独立採用を断行したことから
始まります。

この理由は
当時の
中里喜一 江戸川区長
インタビューにあります。

趣旨はこうです。
人事の権限が移譲されたのに
特別区の共同採用では
東京都の一括採用後の配属と
何ら変わらず

共同採用での
23区のどこへ勤めるのか判らん
募集の仕方では意味がない。

「この区へ勤(努)めるんだ!」
という
意欲のある職員が一番大切である。


共同採用の理由として
経済上のメリット,
職員の質的均等性の確保
充員見通しに対する不安感

挙げらるが

それよりも
(江戸川区勤務の志望者を
 積極的に採用することで)
 地方自治の本旨を
 活かしていくことの方が
 大事である。


このことは
区長会でも主張した。
という考えを述べられています。

ごもっともですよね!


ただ
独自採用方式は採っていないものの
他の22区においても
「この区へ勤(努)めるんだ!」という
意欲のある者を積極的に採用
することで
地方自治の本旨を活かすという考えは
江戸川区と同じで

区面接では
その意欲があるのかを試されるので
例えば
自分の居住区と志望の区が異なっている
などの矛盾点があれば
深く追及されることは必定で

その区が推進している施策について
あるいは
“ まちあるき ” によって得た
その区の印象や雰囲気について
問われることは
志望区に対する関心の度合を測る上で
当然です。

これは “ 圧迫 ” ということではなく
本心を引き出すため質問です。


話を江戸川区長に戻して。

この 中里喜一 江戸川区長
対談を見ると
独立採用の話題以外にも
住民ニーズを理解した
計画性のある施策を
進めるに当たっては
積極的な行政の広報活動をおこない
PRすることで
住民に認識してもらい
協力をいただく。

つまり
住民とのコミュニティ
大切にすることである。

その一方で
役所側の姿勢が
バラバラにならないよう
一体性を保つことにも努める。
というような趣旨のことを語っています。

こういった発言から
この 中里区長 は
江戸川区に対する熱い思いと
憲法の「地方自治の本旨」を基礎に置いた
行動派であることがうかがえます。

これに対して
江戸川区だけが
独立採用を行ったことに対して
当時の区長会はどのように
思っていたのか。

こちらも
当時の 区長会会長 であった
君塚幸吉 目黒区長
インタビューにあります。

23区共同の職員採用試験での
江戸川区の単独採用に対する
意見の趣旨はこうです
江戸川の考えは間違っていない。

これは特別区全体の
人事の問題なので説得は試みたが
その時は既に江戸川区の方針は
決まっていたとのこと。

ただ
23区の一体性は
確保して行いたいので
試験日や試験問題までも
変えてしまうと
人事交流ができなくなる。
しかし
江戸川区は
そこまで考えていないようで
交流の点でも問題ない。
というように述べています。

これらは
昭和48年当時のインタビューですが

今でもこの制度が変わらずに残っている
ということは
江戸川区だからでしょう。

仮に
この当時に志望人気区である中心区の
千代田,中央,港,新宿,文京,台東区
あたりが独立採用を言い出したら
職員能力の偏在が起こることは
必至と思われるので
おそらく却下されているでしょう。

それからこの他にも
君塚幸吉 区長会会長
インタビューでは
特別区職員を志望する受験生には
有意義な情報が述べられています。

特別区採用試験合格者の配分方法
についてです。

共同採用の理由の一つとして
職員の質的均等性の確保
が挙げられていました。

つまり
成績の良い順に
受験者に志望区通りの採用
(全ての区で独立採用することと同じこと)
をすれば
人気の中心区に優秀な人材が集中して
職員の質的・能力的偏在が起こり得る
ことが
十分に考えられます。

これを払拭するための手段として
共同採用方式をとっているというは
中里江戸川区長のお話にもありました。

そして
君塚幸吉 区長会会長
インタビューに対する
答えの趣旨はこういうことです。
合格者の各区への配分については
特別区人事・厚生事務組合の
人事管理調査室でやっている。

合格者が決まり
各区からの申し込みがあって
配分となるが
まずは合格者に
それぞれの希望区に対するの意見を
一次,二次,三次と聞いていく。


その線に沿って
両者がマッチした方法で
分けていく。


(希望者が中心区に集中してしまう
 懸念もあるが)
居住地の関係もあって
中心区だけに集まる
ということはない。
といった趣旨の回答をしています。

このように
法律や制度が決定されるには。

そこに携わっている
首長や議員,学者などの専門家,
そして住民の代表者といった方々が
知恵を絞りながら侃侃諤諤と
議論した上で成り立っています。

そういった決定プロセスを知るには
委員会などの 議事録会議録 をはじめ
当時の 新聞や雑誌のインタビュー記事
過去を振り返った
回顧録日記,備忘録など
といった資料を探っていくと
当時の様子がうかがえます。

公式な文書としては出てきにくい
今回のような裏話的なものや
当時の関係者の
個人的な考えなどを知るには
インタビュー記事にあたると
公式の文献からではわからない
様々なことを知ることができます。


今回は
23区共同の職員採用試験についてですが
このように
過去の資料から情報を引き出し
2次試験対策のヒントに活用することは
非常に有意義
です。


~ 参考文献 ~

「連載 主役登場
- 江戸川区長 中里喜一 氏(61)」
都政通信 27巻8月号 通巻334号 24頁
(昭和48年8月)

「連載 主役登場
- 区長会会長(目黒区長)
 君塚幸吉 氏(71)」
都政通信 28巻10月号 通巻336号 26頁
(昭和48年10月)

特別区協議会『「特別区」事務の変遷』
(平成9年3月)

特別区協議会
『特別区政の動き
- 昭和50年度特別区政改革の記録』
(昭和52年3月)


以上
読んでいただき
ありがとうございました。