2023年10月24日火曜日

無料講義動画で学習

今回は
無料で配信されている講義を活用し
学習の効率アップを図ってもらえるよう
無料で受けられる講義を
いくつかご案内します。

◆ 弥生カレッジCMC
 - 簿記・弥生のビジネススクール


ここまでやっていいの?
というぐらい
サービス満点の学校。
日商簿記3級,2級 など無料

おまけにレジュメがあるので
テキスト代も無料という充実ぶり。
さすがは関西商人といった感じです。

◆ フリーラーニング
 - Free–LearninG For Your Extention


公務員や不動産鑑定士などの
経済学 科目では
この先生に救われた方も
多いと思います。
そのぐらいわかりやすい講義で有名な
石川秀樹 先生

ただし
テキスト代
書店で購入する必要があるため
有料 です。

◆ 高校倫理  - 白坂慎太郎

元・学習塾講師 の
白坂慎太郎 氏 の動画サイト
高校倫理 の他に
哲学入門,心理学,宗教入門,
経営学,経済学入門 人財育成 等

講義内容は多岐にわたります。

大学生や社会人になって
倫理や哲学の基礎的な考え方を
見直すことは重要です。
そこで
高校レベルの教科書で
ブラッシュアップすることは
非常に合理的です。

だから
山川出版社
「もういちど読むシリーズ」
注目されるということなんでしょう。

この動画は
高校倫理 等を
ブラッシュアップする際の
手助け
になると思います。

◆ わくわくアカデミー IT共通分野
 - 新着動画リスト


(株)わくわくスタディワールド
運営する動画です。
情報処理試験全ての項目を
開設する動画ではありませんが
女性の声( たぶん社長! )で
わかりやすく解説しているので
挙げておきました。

最後に
会員登録が必要ですが

MITYale大学UCI など
海外トップレベル大学の講義動画を
配信している
Asuka Academy を紹介しましょう。

◆ Asuka Academy
 - 世界最高の海外大学講義を
  日本語で無料で学べるオンライン講座


こちらの講座は
日本語字幕つきで配信しているので
語学力に自信がなくても
取り組むことができます。


以上
これらの情報が
学習の一助となれば幸いです。


読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月17日火曜日

大審院の判例

法情報検索 各論 3 判例 9

前にもご紹介した
大審院判例簡易化ソフト - 韋駄天
(名古屋大学)


このソフトは
『大審院判例簡易化ソフト』
副題にもあるとおり
元々は
大審院の判例を読みやすくするために
開発されたソフトのようです。

今回は
その 大審院の判例 について
書いてみます。

まず 大審院 とは
明治8年~昭和22年まで存続し
現在の最高裁判所が
設置されるまで続いた
最上級の司法裁判所です。

民法の講義の最初の方に出てくる
権利濫用事例の判決で
宇奈月温泉事件
大審院判例が紹介されたことを
覚えています。
大審院 判決 昭和10年10月5日
(民集14巻1965頁)
 

この判例は現在でも
権利濫用のリーディング・ケース
となっています。

民法の授業の一発目に
このカタカナ書きの
読みづらい判例が出てくるので
凹んでしまった記憶がありますが…。

このように
いまだに重要な判例がありますので
大審院の判例も
参照の必要性があります。

では
大審院の判例を調べる際
どの文献にあたればよいのかです。

大審院 では
民事と刑事の判例 があります。

民事 については
大審院民事判決録(略称:民録
(明治8年~大正10年)から
途中で名称が変わって
大審院民事判例集
(略称:民集 または 大民集
(大正11年~昭和21年)まで
刊行されています。

刑事 については
大審院刑事判決録(略称:刑録
(明治8年~大正10年)から
民事と同じく名称が変わって
大審院刑事判例集
(略称:刑集 または 大刑集
(大正11年 ~ 昭和22年)まで
刊行されています。

ただし
刑事 については
明治17年12月~18年12月までは
刊行されていません。

また 民事,刑事 とも
明治21年~23年までは
刊行されていません。

この他に
民録,刑録から重要な部分についての
抄録がなされた。
大審院民事判決抄録(略称:民抄録
(明治31年~大正10年)
大審院刑事判決抄録(略称:刑抄録
(明治24年~大正10年)もあります。

大審院の判例集
民録,刑録,大民集,大刑集
公的刊行物 ですが
詳しくいうと
途中で資料名が変わったり
民事と刑事の区別がなくなったり
復刻版が出版されたりと
発効形態に変遷があります。

全てを書くと紙面をとるので
資料の詳細については
こちらを参考にすると便利です。

● 日本-大審院・最高裁判所判例集
 - 国立国会図書館リサーチ・ナビ


● リーガル・リサーチ / いしかわまりこ[他] 著
第5版 日本評論社 2016年3月


大審院判決録 として整理されたものが
刊行されるようになったのは
明治28年以降で
民録,刑録 ともに
明治28年(第1輯)~ 大正10年(第27輯)
巻次が付けられて整理されています。

これに続く
大民集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和21年(第25巻)
大刑集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和22年(第26巻)
というように
巻次の表示も「輯」から「巻」
なりました。

よくある質問で
「輯」って何て読むんですか?
と聞かれます。
この字は「シュウ」と読み
“ 集めてまとめる ”という意味です。

大審院の判例 では
「輯」大審院判決録の場合
「巻」大審院判例集の場合
使用します。

最後に
判例の引用で
「新聞×号×頁」とありますが
「新聞」って何新聞ですか?
との問い合わせがあります。

これは
『法律新聞』の略称 です。
法律新聞
明治33年9月~昭和19年8月 まで
法律新聞社 より刊行された
法律専門の新聞です。

この新聞には
法律関係の記事のほか
大審院の判例集に登載されていない
重要な判例

この新聞のみ
全文が登載されている
ケースもありますので
知っておくべき資料です。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月16日月曜日

カタカナ文語体と韋駄天

法情報検索 各論 3 判例 8

明治時代の法文は
カタカナ・文語体なので
読み慣れないとつらいですよね…。

もっとも六法のうち
憲法,刑事訴訟法,民法(家族法)は
戦後まもなく。
刑法,民事訴訟法は
21世紀を迎える少し前に。
それぞれ
平仮名・口語体(現代語)表記へと
改められましたが
民法(財産法)や商法は
近年までカタカナ・文語体でした。

◆ 憲法の現代語化

日本国憲法
(昭和21年11月3日公布
 昭和22年5月3日施行)


◆ 民法の現代語化

民法の一部を改正する法律(家族法)
(昭和22年12月22日法律第222号)

民法の改正に伴う
関係法律の整理に関する法律
(家族法)
(昭和22年12月22日法律第223号)

民法の一部を改正する法律(財産法)
(平成16年12月1日法律第147号)

◆ 刑法の現代語化

刑法の一部を改正する法律
(平成7年5月12日法律第91号)

◆ 商法・会社法・保険法の現代語化

会社法
(平成17年7月26日法律第86号)

会社法の施行に伴う
関係法律の整備等に関する法律

(平成17年7月26日法律第87号)

保険法
(平成20年6月6日法律第56号)

保険法の施行に伴う
関係法律の整備に関する法律

(平成20年6月6日法律第57号)

商法及び国際海上物品運送法の
一部を改正する法律

(平成30年5月25日法律第29号)

◆ 民事訴訟法の現代語化

民事訴訟法
(平成8年6月26日法律第109号)

民事訴訟法の施行に伴う
関係法律の整備に関する法律

(平成8年6月26日法律第110号)

◆ 刑事訴訟法の現代語化

刑事訴訟法
(昭和23年7月10日法律第131号)


研究等で
明治時代の法令や大審院の判例など
カタカナ・文語体の文献を
読むことに慣れている方々は
カタカナ・文語体のほうが
味があってよいと
言われる方もいると思いますが

そもそも法律は
その適用を受ける
国民のためにあるのであり
そのためには
できるだけ一般の国民に
わかりやすいものであるべきで
このような
片仮名・文語体の法律の存在は
問題があると
いわざるを得ないでしょう。


川崎政司
『法律の現代語化
 - 求められる法文の民主化の努力』
「立法と調査」NO.189・1995年9月


『法制執務コラム-参議院法制局』より

とあるように
立法者側も
現代語化を進めているようです。

ちなみに
『法制執務コラム-参議院法制局』
参議院法制局職員が執筆した記事
(記事内容は執筆当時のもの)を
『立法と調査』
(参議院事務局企画調整室/編)から
転載したもので
法令等に関するエピソードなどが
記載されていています。

また
原典の『立法と調査』
主要な政策課題や予算・税制の解説
国会に提出された法律案の紹介
国会ならではの情報や資料を駆使した
調査・研究の報告・論文を
掲載しています。

●『立法と調査』- 参議院 調査室作成資料
参議院トップ
> 調査室作成資料
> 立法と調査


カタカナ書きの文が読みづらい
という方は

韋駄天-大審院判例簡易化ソフト
(名古屋大学)
というソフトに

カタカナをひらがなにする。
濁点をつける。
句点・読点をつける。
旧字体を新字体にする。

『難読字に読み仮名を付ける』の欄に
チェックを付けて実行すると
難読字に読み仮名を付けることができる。

読み仮名の付いた語に
マウス・カーソルを当てると
意味が表示される。

という機能があります。

「国立公文書館デジタルアーカイブ」
「国立国会図書館デジタルコレクション」
写真なので変換ができませんが
HTML等で書かれていれば
コピペして実行すれば変換ができます。

ただし
文語体が口語体の現代語に
翻訳されるわけではありませんので
ご注意ください。



以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月15日日曜日

判例公刊

法情報検索 各論 3 判例 3

判例を調べる際
判例集に載っていない
判例があります。

憲法第82条〈裁判の公開〉では

1項…
裁判の対審及び判決は
公開法廷でこれを行ふ。


2項…
裁判所が
裁判官の全員一致で
公の秩序又は善良の風俗を
害する虞があると決した場合には
対審は
公開しないで
これを行うことができる。
但し
政治犯罪
出版に関する犯罪
又は
この憲法第三章で保障する
国民の権利が問題となっている
事件の対審は
常にこれを公開しなければならない。


とあります。

一方
判例には
判決後に判例集等に登載される
『公刊判例』
公刊物に公開されることのない
『未公刊判例』があります。

憲法で裁判の公開を規定しながら
判例においては一部のみが公刊され
あとの大多数は
公刊物に登載されていません。

また
判例登載の基準についても
ほとんど明らかにされていないのが
現状です。

この点について
判例を積極的に公刊するか否かには
双方の立場からの意見があります。

まず
積極的に公刊すべきという立場
( 促進説 )
からは
次のような主張があります。

★ 裁判の平等性の強調
★ 法的安定性の重視
★ 情報公開の尊重
( 公刊されている
 私的判例集においては
 匿名化が一般的になっています。)

一方
全ての判例公刊には消極的な立場
( 限定説 )
からは
次のように主張されます。

★ 判例公刊にはコストがかかり
 効率性や合理性からみても
 全判例の公刊に意味がない。
★ プライバシーの公開になるという
 問題点がある。

これらの立場を踏まえて
現状の判例公刊になっているので
論文等に引用されていても
実際に入手できない判例もあります。

なお
法律的判断が
過去の判断と同様であれば
判例集には掲載されません。
ですから
話題性のある判決でも
判例集に
掲載されているとは限りません。

しかし
自分の探している判例が
見つからなかったとしても
公刊されていないのではなく
検索方法が至らない場合も
ありますので
改めて検索してみましょう。

① データベース検索

各社有料データベース
裁判所Webサイトなどでは
判例の収録件数がそれぞれ違うので
目的の判例がない場合は
すべてのデータベースを
検索してみます。

よくある検索ミスとして
事件名で検索する場合は
データベースにより
事件名が異なっていたりします。
また
事件名や
その事件に登場する固有名詞では
検索ができなかったりするので
検索に工夫が必要です。

② 法律雑誌での調査

判例時報判例タイムズなどの
判例雑誌は
出版社が独自に収集している判例もあり
公的判例集に登載されていない判例も
ありますので
データベースの法律雑誌横断検索
法律判例文献情報などの冊子体へ
つぶさに当たってみましょう。

③ 新聞記事での調査

新聞記事に判決要旨が
掲載されることがあります。
また
判例集に掲載されていない判決が
掲載されている場合もあります。

これらの検索を試みても
見つからない場合は
そもそも
元の情報が間違えている場合も
あります。
そのあたりの検証も
行ってみるとよいでしょう。


~ 参考文献 ~

判例公刊 については

・指宿信『判例公刊について 上』
 法律時報 73巻10号 67-73頁


・指宿信『判例公刊について 下』
 法律時報 73巻11号 91-97頁


から要旨をまとめ

・町村泰貴
『裁判所の判決や決定が公開される割合』
  Matimulog(2012/5/26)

http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2012/05/justice-08f6.html#more
(アクセス日:2023年10月15日)

・椿寿夫『判例の入手をめぐって』
 法律時報 62巻5号 38頁


を適宜参考にしました。

以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月14日土曜日

判例が収録されるまでの期間

法情報検索 各論 3 判例 1

かつての紙媒体の情報から
IT技術の発達により,
インターネットを介しての
Webの登場で
情報流通が高速化しました。

判例や法令等の法情報も同様で
より速く
情報を知ることができます。

今回は
判決が言い渡されてから
各媒体に
判例として収録されるまでの期間を
比較しました。

判例が収録されるまでの期間は
データベースや冊子体資料により
異なります。

図にすると,こんな感じです。



◆ 裁判所ウェブサイト - 裁判例検索
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1

最高裁判所判例集 及び
下級裁判所判例集 については
過去3か月以内
知的財産裁判例集 については
過去1か月以内
各判決等の一覧を表示。

早いものでは
判決の翌日に掲載され
速報性に富む一方
審級・裁判所によって
掲載時期にばらつき

があります。
掲載までの期間は
翌日~約2週間から1ヵ月後。


◆ 裁判所時報
※『裁判所時報』は
 1780号(2021年12月15日)をもって
 終刊となりました。


最高裁判所事務総局が
月2回(1日,15日)発行
する
裁判所組織内の広報新聞。

裁判例,最高裁判所判例要旨,
最高裁判所裁判例要旨
(民事のみ)の速報が
掲載されています。

また
裁判所に関係ある法律や
最高裁判所規則・規程の改廃,
裁判官の人事異動情報,
司法修習生の修習開始・終了,
裁判所関係のニュース等を収録。

1月1日号には
長官所長会同における
長官挨拶が掲載されます。

判決言渡日から
約2週間から1ヶ月後に
判決全文を速報。

インターネットでの判決速報が
なかった当時は
相当早く判例を見ることが出来る
情報媒体として活用されていました。

民集・刑集の要旨を見たり
速報として利用するのに役立ちます。

◆ 判例雑誌

『判例タイムズ』月1回
『判例時報』月3回
 分野別判例雑誌など
があります。

掲載は判決言渡日から
早くて約1ヵ月~6ヵ月
「判タ」,「判時」については
約1ヵ月 ~ 3ヶ月後。


◆ 有料判例データベース(Web版)

◇ LEX/DBインターネット - ご利用案内
https://lex.lawlibrary.jp/guide.html

新判例公表にあわせ
毎週金曜日に判例を追録更新。

毎週アップデートされる
新着判例を一覧で確認できます。

◇ D1-law.com 判例体系
https://dtp-cm.d1-law.com/

更新頻度は日次更新。
加除式書籍で提供されている
『判例体系』のインターネット版。

◇ Westlaw Japan
http://www.westlawjapan.com/products/westlaw-japan/contents/

更新頻度は日次更新。

◇ LexisNexis ASONE - 収録コンテンツ
https://resource.lexis-asone.jp/asone/info/docs/contentslist.pdf

更新頻度は
毎日更新の裁判判例は随時更新。
月次更新の裁判判例は
月次で集計して更新。


◇ LLI判例秘書アカデミック版
https://www.hanreihisho.net/

更新頻度は月2回以上。

◆ 公式判例集

掲載までの期間は
およそ半年~1年以上で
収録までに時間がかかります。


公式判例集では
厳選された判例情報が
省略されず掲載されます。

また
重要性の高い資料ですので
著作や報告書等で引用する際には
先して引用することが
望ましいとされています。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月13日金曜日

判例と裁判例

法情報検索 各論 3 判例 2

司書対象のリーガル・リサーチ研修や
公務員(事務職)希望の
文学部出身などの法律学初心者から
法令について説明をしている際に
よくある質問の中に

判例は法律なんですか?
法令のように
国民を拘束するものなんですか?

という質問がよくあります。

ちなみに法科大学院生から
このような質問を
受けたことはありません。
当然ですよね。

もちろん
判例法律ではありません
また 法令ではありません ので
国民を
直接拘束するものではありません。


ここでは
判例 とはどういう意味で使われるのか
そして
判例裁判例 はどう違うのかを
説明します。

まず
憲法第76条3項を見ると
「すべて裁判官は
 その良心に従ひ
 独立してその職権を行ひ
 この憲法及び法律にのみ
 拘束される」

このように
憲法上
裁判官は憲法と法律には
拘束されますが
判例には拘束されないのです。

しかし
同様の事案について
裁判官の自由意思によって
判断が異なれば
当事者とすれば
予測不能であり不安定です。

自分の経験上でも
簡易裁判所では
かなり自由な裁判が
なされているように見えます。

だから
慎重・公正な判断をするために
三審制の制度があり
法的安定性を保つために
裁判所法などで判断を拘束し
判断基準の統一がなされています。

まず
判例変更を行う場合は
最高裁判所の大法廷で審理されます。
裁判所法10条3号

また
最高裁判所の判例と相反する
判断がなされた場合には
民事訴訟では上告受理の申立理由
刑事訴訟では上告の申立理由
になります。
民事訴訟法318条1項
刑事訴訟法405条2号

さらに
裁判所法4条の規定において
「上級審の裁判所の裁判における判断は
 その事件について
 下級審の裁判所を拘束する」
とされています。

つぎに
判例 という言葉には
三つの意味があります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
①…
個々の判決
(例)昭和49年9月26日 の判例

②…
ある特定の裁判の理由の中で
示された判断
(判決のなかで示された法理論・準則)

③…
ある問題についての
多くの判決から導き出される
裁判所の法律的な考え方
(複数の判例をすべて説明できる
 共通の法理論)
~~~~~~~~~~~~~~~~~

「判例の意義と民事判例の読み方」
 良永和隆
『専修ロージャーナル』 8巻
 2013.1.25,1-29頁

「判例の意義と民事判例の読み方」
 - 専修大学学術機関リポジトリ

から引用しました。
( アクセス日:2023年10月13日 )

① の個々の判決の中でも
重要な 「判例」 として
価値があると判断し
最高裁判所判例委員会
選択したものが
「最高裁判所判例集」
登載されます。

そしてこの
最高裁判所判例集(民集・刑集)
登載された判例に 調査官解説 が付くと
「法曹時報」
「最高裁判所判例解説」 として
登載されます。

したがって
判例を引用する場合
最高裁判所判例委員会
お墨付きもあることから
「最高裁判所判例集」登載のものを
引用することがよいとされます。

この 最高裁判所判例集
毎月1回発行されます。
この時点での装丁は白の表紙で
民事と刑事が分裂していなく
民事のページの後に
刑事のページがきます。

多数の図書館では
その後に
民事刑事 別々に製本 され
最高裁判所民事判例集(民集)
最高裁判所刑事判例集(刑集)とに
分冊します。

つまり
白表紙のうちは
最高裁判所判例集(最高裁判例集)

製本されると
最高裁判所民事判例集(民集)
最高裁判所刑事判例集(刑集)

に名前が変わります。

後に説明する
「高等裁判所判例集」
  
高等裁判所民事判例集(高民集)
高等裁判所刑事判例集(高刑集)
同様の構造になっています。

ページについては
その巻の通しのページと
その号の個別のページの両方が
付されています。

この他に
最高裁判所裁判集民事(裁判集民)
最高裁判所裁判集刑事(裁判集刑)
「最高裁判所判例集」以外に
最高裁判例を搭載した
資料としてあります。

これらは
「最高裁判所判例集」に
登載するまでではないが
参考になる判例

上告理由・上告趣意を含めて
登載しています。

また
名前の通り
最高裁判所判例委員会が選択した
「判例」との区別のために
こちらの資料名は
「裁判集」となっています。


ところで
「高等裁判所判例集」については
なぜ最高裁判例でないのに
「裁判例集」でなく
「判例集」と呼ばれるのかです。

最高裁の判例がないものは
高裁の判断も
判例として扱われるからです。
民事訴訟法318条1項)
刑事訴訟法405条3号)

手続きも
各高等裁判所の判例委員会
高等裁判所の判例として
選択したものを
「高等裁判所判例集」
登載するので
「判例集」とされています。


その他の裁判例ついては
裁判所判例委員会の
協議を経て選択された
「判例集」と区別するため
実務に与える影響が少ない先例
「裁判例集」
としているようです。

検索の際には
その辺を押さえておいてください。


◆ 参考文献

・「判例の意義と民事判例の読み方」
  良永和隆
 『専修ロージャーナル』 8巻
  2013.1.25,1-29頁


・ 判例とその読み方 中野次雄 編著 / 有斐閣 2009.4

・ 判例学習のAtoZ 池田眞朗 編著 / 有斐閣 2010.10

・ 法律文献学入門 - 法令・判例・文献の調べ方
  西野喜一 著 / 成文堂 2002.7


・ リーガル・リサーチ 第5版
  いしかわまりこ 他著 / 日本評論社 2016.3


判例学習において
法学部以外の方で
上記の文献では難しいと思う方は

・ 日本一やさしい条文・判例の教科書
 品川皓亮 著 / 日本実業出版社 2015.1


こちらは
易しくてわかりやすいと思います。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月8日日曜日

最高裁判所調査官解説

法情報検索 各論 4 文献 1

調査官解説 >= 最高裁判所判例解説

法科大学院の
未修1年生からの問い合わせが
特に多いのですが

調査官解説って何ですか?
検索機で調べても出てきません。
どこにありますか?
と聞かれることがあります。

調査官解説 とは
最高裁判所調査官による判例解説です。

一般的には
「最高裁判所判例解説」のことを指し
「最高裁判所判例解説」は
「民事篇」「刑事篇」に分かれ
さらに
「索引」のみの巻が別にあります。

この他にも
最高裁判所調査官による
判例解説があります。

調査官解説について
渡辺達徳『民法 渡辺道場』19頁
〔日本評論社 2005〕

わかりやすい解説がありますので
その要旨を引用します。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

調査官解説とは
当該事件を担当した調査官が
事案の概要,訴訟の経過,
最高裁判所の判旨を整理した上
これに関する
過去の裁判例や学説の状況,
同判決に関する判例評釈等を
紹介するものです。

調査官解説
「法曹時報」に掲載された後
年ごと編成されて
「最高裁判所判例解説」 になります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

流れとしては次のようになります。

判決 → 法曹時報に掲載
→ 最高裁判所判例解説に編成


~~~~~~~~~~~~~~~~~

法曹時報の調査官解説が
公にされるまでには
少し日数がかかることが多いです。

他方
「判例時報」「判例タイムズ」
「金融・商事判例」「金融法務事情」
などの雑誌
には
最高裁判所の判決・決定が
紹介されるにあたって
カコミで匿名の解説が付されています。

これは
「匿名コメント」と呼ばれ
執筆者の記名はありませんが
調査官の手によるものと考えられています。
ただし
各判例掲載雑誌の編集部の責任で
付されたコメントもあります。

なぜなら
こうした雑誌の刊行と前後して
「ジュリスト」の
「時の判例」
というコーナーに
ほとんど同文の解説が
掲載されているのが常で
こちらには
執筆担当調査官の氏名が
明記されている
からです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

なお
平成元年~26年までの
「時の判例」
全8巻 にまとめられて
有斐閣から
「ジュリスト増刊 最高裁 時の判例
(Ⅰ~Ⅷ)」
として刊行されています。

また
前掲の各雑誌以外にも
「法律時報」「最高裁新判例紹介」にも
コメント(説明)が掲載されています。


調査官解説のデータベースについての
よくある質問。


Q.
「最高裁判所判例解説」
「法曹時報(判例解説部分)」の全文は
データベースで見ることができますか?

A.
「最高裁判所判例解説」
「法曹時報(判例解説部分)」は
データベース化されています。

LLI/DBWESTLAW JAPAN
D1-Law.com判例体系TKC
収録されています。

ただし
これらのデータベースは
オプション契約ですので
法科大学院ごとで契約が異なります。

補足説明として

冊子体の「法曹時報」で
目的の判例解説を探す場合。

法曹時報最高裁判所判例解説
掲載が 判決年月日順になっていません。
索引毎年 6月号12月号 にのみ
掲載されるので検索が面倒です。


~ 参考文献・Webサイト ~

・ 渡辺達徳『民法 渡辺道場』19頁
〔日本評論社 2005〕


から要旨を引用。

その他に

・ 池田真朗 編『判例学習のAtoZ』
〔有斐閣 2010〕

・ いしかわまりこ 他 『リーガルリサーチ』
〔日本評論社 第4版 2012〕

・ 塩崎勤
「PERSON・法律家 - 異色裁判官のOJT (1)」
ロースクール研究 №7 174頁
〔民事法研究会 2007〕

・LLI統合型法律情報システム・収録範囲
https://www.lli-hanrei.com/indexjp.html
〈パスワード入力必須〉

・WESTLAW JAPAN 収録コンテンツ - 最高裁判所判例解説/法曹時報
http://www.westlawjapan.com/products/westlaw-japan/contents/hanrei-housou/

・D1-Law.com判例体系 オプションコンテンツ -「最高裁判所判例解説」「法曹時報」
http://www.daiichihoki.co.jp/hoso/saikosaihanreikaisetsu/index.html

・TKCローライブラリー
https://www.tkc.jp/law/lawlibrary/contents/law/#db44


(ウェブサイトの閲覧日:2023年10月8日)

を適宜参考にしました。

以上
読んでいただき
ありがとうございました。

2023年9月30日土曜日

区政会館だよりの活用法


特別区各区では
それぞれに
個別の政策課題 があります。

一方で
災害・治安 および 国民保護
少子高齢化,健康・福祉,産業・経済
環境・清掃,まちづくり,教育

といったテーマは
行政が取り組むテーマとして
特別区23区に 共通する課題 です。

東京区政会館
23区の共通課題 に対して
共同して解決を図る ための場であり
また
連絡調整の事務共同処理事務
担当しています。

公益財団法人 特別区協議会 が発行する
区政会館だより
その 区政会館に入る団体

公益財団法人 特別区協議会
特別区長会事務局
特別区議会議長会事務局
特別区人事・厚生事務組合
東京二十三区清掃一部事務組合
特別区競馬組合


事業についての情報
提供している 月刊誌 です。

さらに
特集 として
特別区の各区が取り組んでいる
最新のトピック
も盛り込んでいます。

この各区の取組や
特定のテーマに関する記事のうち
過去に掲載された特集
区政会館だより 別冊 として
一冊にまとめて発行しています。

言わば
雑誌で連載されていた漫画が
再編集されて
単行本になるのと同じです。

区政会館だより については
特別区自治情報・交流センター にて
無料配布されています。

また
区政会館だより 及び
区政会館だより 別冊 の一部分は
特別区協議会のWebサイト から
PDFで閲覧可能です。

遠方の方や
情報センターまで来ても
品切れの場合もあるので
こちらを利用するほうが
無難かもしれません。

最近はこの業界誌的な
区政会館だより
参考にしている
特別区公務員受験生が多いと
聞きますが
目的は 巻頭特集記事 でしょう。

この 特集記事
2008(平成20)年4月
217号 から始まり
各区が取り組んでいる
最新のトピック

各区の名所,旧跡など
まちの押しスポットなどの紹介

主なテーマとなっていて
各テーマに則して
23区それぞれの特色
書かれています。

各テーマの特集が一回りすると
( 一回りというのは

  23区と一部事務組合の
  清掃一部事務組合や
  競馬事務組合などを入れた
  合計 約24回 )
それらがまとめられて
別冊 になります。

つまり
区政会館だよりの特集
特別区各区アピールしたいこと
載せているということです。

東京区政会館 に入っている
特別区長会事務局
例にすれば
特別区長会というのは
特別区の行政のトップが
集まるところですから
そこでまとめられて行われる取組は
特別区としてプッシュ している
取組といえます。

例えば
特別区全国連携プロジェクト
さらに
特別区 及び地方行政に関わる
諸課題 について 調査研究を行い
検討することで
特別区の発信力を高めることを
目的として設置された
特別区長会調査研究機構 がそうです。

◇ 特別区長会 - トップページ

◇ 特別区全国連携プロジェクト - 特別区長会

◇ 特別区長会調査研究機構 - 特別区長会

それから今は
シティプロモーション
熱心に取り組んでいる自治体も多くあり
ご当地の おすすめスポット施策
宣伝することも
行政パーソンとして重要な仕事ですので
その区を希望している受験生ならば
面接試験でそれらについて尋ねられれば
知っていて当然と言えるでしょう。

また
特別区長会の案件や動向
その区長会の肝煎りで発足された
特別区長会調査研究機構の
研究成果

チェックしておくと良いでしょう。
特別区長会調査研究機構の
研究テーマ

論文試験の題材
なっていることがあります。

この他にも
特別区職員採用試験の
人事委員会面 では
路上生活者対策,児童相談所関係
環境対策,ゴミ問題,ふるさと納税
についても
意見を聞かれることがあるので
その辺りにも目を通しておくと
良いかもしれません。

そういった 情報
手っ取り早く知るには
区政会館だより
区政会館だより 別冊
有用なツール です。

では
区政会館だより
および
区政会館だより 別冊
PDFで閲覧する場合
知っておくべき事項について
説明します。

区政会館だより
2000(平成12)年4月 121号 から
PDF閲覧できます。
ただし
訴訟事件事例紹介
PDF閲覧できません。

また
区政会館だより 別冊 ついては
『「23区今昔物語」~歴史を辿る 』
『 23区ひと・まち物語~つながりを訪ねて 』
『 訴訟事件事例紹介 』以外
のものが
PDF閲覧できます。

訴訟事件事例紹介 以外
別冊の内容
区政会館だより
バックナンバー にも
同じものが掲載されています。

訴訟事件事例紹介 については
自治体において
汎用性の高い事件を厳選し
加筆修正されたものが
自治体訴訟事件事例ハンドブック
〔改訂版〕
として
一般書籍化され
第一法規から出版されていますので
もしこれが
遍くインターネットにより
無料で見ることができるならば
第一法規
“ 商売あがったり ”になるので
見たければ是非買って下さいね!
ということなんでしょう。

最後に
特別区協議会 Webサイト
『 区政会館だより 』のページを
リンク しておきましょう。

◇ 区政会館だより - 特別区協議会
※ PDFでは平成12年4月から閲覧可能。

◇ 区政会館だより 別冊 - 特別区協議会
※ PDFでは平成26年から閲覧可能。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年9月29日金曜日

区政情報コーナーで多い問い合わせ

環境, 土壌汚染, 医薬, 衛生, 建築関連の
届出事業者の閲覧


区役所には 
名称はまちまちですが 
区政情報室区政資料コーナーという 
情報コーナー(資料室)
設けています。 

この情報コーナーでは 
その区の 総合計画 や 予算・決算書, 
事業概要,マスタープラン といった 
施策行政運営 に関する資料。 

区史史跡,まち歩きなどを中心に 
区に関係する資料を所蔵していて 
その他には 
有償刊行物の販売も行っています。 

時期によっては 
特別区公務員志望者が 
職員募集案内等をもらいに来るなど 
人がパラパラと来る時期もありますが 
全体として 
情報コーナーの利用客は多くなく 
職員も暇そうに窺えるコーナーです。

なお
特別区職員採用試験
過去問のコピーを取りに
志望者が訪れることがありますが
区政情報コーナーのコピー機は
自動原稿送り装置(ADF機能
無いため
1枚1枚スキャンする必要があり
複数年分のコピーとなると
非常に時間がかかります。

また
ストック過去問の充実度についても
それほど過去には遡れないため

過去問のコピーについては
平成14年度 乃至 15年度まで遡って
過去問の閲覧・コピーができて
かつ
自動原稿送り機能のある
コピー機が設置されている
閲覧・コピーをお勧めします。


その中にあって 
区政情報コーナーに
訪れる利用者からは 
ほぼ一定の同じような 
問い合わせがあります。 

その 多い問い合わせ 
挙げてみましょう。 
これについては
事業者によるものがほとんどです。

水害ハザードマップ
閲覧または入手。
 
これについては
宅地建物取引業法施行規則の 
一部を改正する命令
(令和2年内閣府令・国土交通省令2号)
によるものが多いと思われます。 


環境,土壌汚染関連資料 の閲覧
として 

環境確保条例に基づく

環境確保条例に基づく

環境確保条例第116条第1項
基づく

土壌汚染対策法に基づく

水質汚濁防止法,
下水道法および東京都下水道条例
 
建設リサイクル法に基づく届出台帳 


医薬,衛生関連資料 の閲覧として







建設・建築関連資料 の閲覧
として 

解体工事の事前周知につき
中高層建築物等の建築に係る 
紛争の予防と調整に関する条例 
による
標識設置届 の閲覧。


全ての区は把握していませんが
おそらく
利用者(事業者)のニーズとしては
各区同様と考えられ
これらのうちのどれかの情報を求めに 
来庁される方が多いと思われます。 

渋谷区などでは
区政資料コーナーに
これらの問い合わせに対応すべく
予めファイルを作成
閲覧に供している区もあります。

また
練馬区などでも
検索しやすいように
区のWebサイト
リスト化してまとめて
提供しています。


さらに
オープンデータ として 
区のWebサイトから 
閲覧できるものもあります。



まれに 図書館 
特別区自治情報・交流センター
これらについての問い合わせ
している利用者を見かけますが 
これは 区役所マター なので 
問い合わせ先が違います。 

ハザードマップ や 医療機関リスト
図書館や自治情報・交流センターでも
対応できるかもしれませんが …。






なお
東京都医療機関名簿 については 
都庁内の 都民情報ルーム にて 
購入することもできます。




ここに挙げた資料については 
閲覧申請が必要な資料もあり 
担当部署が直接受け持っている 
場合もあるので 
詳細については
各区に問い合わせください。


この情報が参考になれば幸いです。

以上
読んでいただき
ありがとうございました。


2023年9月23日土曜日

特別区の事業概要を活用する

特別区公務員の区面接に臨む準備として
「各部署の仕事内容」について
少し掘り下げて知りたいという質問を
受験生から受けることがあります。

こういった場合は『 事業概要 』
当たるとよいでしょう。

ただし
『 事業概要 』の公表については
各区で統一化されていません。

冊子体のものは存在するが
Webサイトでは公開していなく
区役所にて
販売,閲覧のみ行っている。

あるいはそもそも
『 事業概要 』自体を
作成もしくは公表していない。
これについては
事業概要に掲載されている内容が
他の資料に分散されている場合が
あります。

さらには
『 事業概要 』
Webサイトにて公開はしているが
どこに掲載されているのか
探すことが困難である。
また
他の資料に分散されているケースでは
検索が面倒。
といった
検索でのデメリットがあります。

特に
衛生監視,心理,福祉,保健師 の分野で
熱心に勉強している技術職の受験生に
仕事内容をより詳しく知りたい
といった方が多いように感じます。

これらの職種は採用人数が少ないため
浪人するケースが多く
同様の職種での区の非常勤などで
働きながら
正職員の採用をめざすといった方が
間々あります。

そういった方々のために参考として
まず
『 事業概要 』内容構成
紹介します。

はじめに
基軸となる 構想,計画の体系,
施策と取組 を載せています。
そして
当該事業部門における
沿革,組織体系,
所管事業(各課が担当する事業内容),
事業実績,統計,職員構成,
関連施設,付属機関

といった内容構成で
その他にも
予算・決算
掲載しているものもあり
その事業について
一つの資料で
上記の内容が網羅されているので
利便性が高いです。

ただし
区がインターネット公開している
事業概要
については
内容がまとまっていて
レイアウトもしっかりしているものが
多いのですが
ネット公開していない
内部資料的な事業概要
組織体系,所管事業の取組と実績
職員構成 及び 統計 といった
中核部分のみの掲載であったりと
各区によって
内容にばらつきがあります。

ちなみに
他の資料に分散されているケースでは
分野別の事業計画 を見ると
計画 及び 施策と取組は当然のこと
所管事業(各課が担当する事業内容)
統計
通常は掲載されています。

したがって
目的にもよりますが
分野別の事業計画 でも
ほぼ賄うことができます。

ただ
“ 計画 ” ゆえに
前年の 事業実績,決算 といった
結果に関する資料や
事業経費の概算
計上されている区もありますが

これから付いてくる 予算 については
掲載されていないということです。

一例として
荒川区,新宿区,品川区
子ども・子育て支援計画
介護保険事業計画
挙げておきます。

【 子ども・子育て支援計画 】

荒川区子ども・子育て支援計画

品川区子ども・子育て支援事業計画

新宿区子ども・子育て支援事業計

【 介護保険事業計画 】

第8期 荒川区高齢者プラン

第8期 品川区介護保険事業計画

新宿区 高齢者保健福祉計画
・第8期介護保険事業計画


では次に
Webサイトに公開されている
『 事業概要 』の一例を
挙げましょう。

まず
港区 の場合は
各分野の 事業概要の一覧
掲載しています。

こういった一覧があると
検索が容易なんですがね・・・。

港区トップページ > 区政情報
> 統計データ >…
令和4年度(2022年度)版 事業概要

中野区 においても
事業概要の一覧 を設けています。

中野ホーム > 区政資料
> 事業案内など >…
「事業案内など」の記事一覧


練馬区,世田谷区,豊島区
保健衛生事業概要 の場合

練馬区 では
統計・調査 > 健康関係 のページ。
ねりまの保健衛生(事業概要)

世田谷区 では
その他計画、指針等
> 保健福祉領域 のページ。
保健福祉総合事業概要 - 世田谷区

豊島区 では
白書・報告書
> 地域保健課(報告書)のページ。
豊島区の保健衛生(事業概要)

といったように
同じ 保健衛生事業概要 でも
各区で異なるカテゴリの中に
掲載されている場合があります。
中野区の事業概要 の場合
例えば
保健衛生事業 及び 健康推進,
高齢者,障害者等
福祉事業
健康福祉部 です。

中野区ホーム > 区政資料
> 事業案内など >…
令和4年(2022年)版
中野区健康福祉部事業概要


一方
子育て支援,教育分野
事業のあらましや施策については
教育委員会事務局 及び 子ども教育部
刊行する
『教育要覧』に掲載されています。

中野区ホーム > 区政資料
> 事業案内など >…
令和4(2022)年度版 教育要覧

このように
各区で部署名や
事業概要を刊行する部署が
異なりますので
頭に入れておいてください。

『 事業概要 』
その区の事業についての内容が
網羅されているので

議員が事業内容を把握する場合
職員が議員へ説明する場合にも
使われています。

したがって
区議会のホームページ
議会資料として公開されている
区もあります。

大田区 ならば
おおた区議会 のページから
各委員会 に分かれていますので
そこに掲載されています。

大田区議会 - 委員会資料

例えば
健康福祉委員会 ならば
『福祉部事業概要』,
『健康政策部・保健所事業概要』

健康福祉委員会
> 令和5年 > 7月14日
福祉部 資料26
令和5年度 福祉部事業概要


健康政策部 資料30
令和5年度 健康政策部・保健所事業概要


こども文教委員会 ならば
『こども家庭部事業概要』があります。

こども文教委員会
> 令和5年 > 7月14日
こども家庭部 資料1
令和5年度 こども家庭部事業概要


というように
各区の『 事業概要 』を一部挙げました。
『 事業概要 』の検索方法としては
サイト内の『 検索窓 』
Google 等の検索エンジン から
検索する方法など様々です。
これらの方法は
『特別区の総合計画を調べる』でも
述べたところです。

これらの行政による事業は
総合計画及び各事業ごとの
分野別計画に沿っています。

『 事業概要 』内容構成のところで
ご案内済みですが
『 事業概要 』には
冒頭に
その事業の支柱となる計画の概要
通常は掲載されているので
そこから該当する 分野別計画
当たることができます。
当然ながら
その区の 総合計画
ざっくりと
確認しておきたいところです。

以前に書いた
『特別区の総合計画を調べる』の他に

基本計画個別の計画 についても
容易に情報を引き出せるように作成した
リンク集もご利用ください。

Link 特別区 / 公務員

こういった情報が
採用の一助となれば幸いです。

以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年9月22日金曜日

特別区公務員志望者の居住要件 !?

以前に
『なぜ江戸川区職員だけが
 独立採用なのか』

当時の
中里喜一 江戸川区長
インタビュー記事の紹介と
併せて
区長会会長
君塚幸吉 目黒区長
江戸川区の独立採用あたって
区長会としての考えを
述べられていた記事も
紹介しました。

この 君塚幸吉 区長会会長
インタビュー記事では
特別区採用試験合格者の配分方法
についも述べられています。

そのインタビューの趣旨は
こういうことです。

合格者の各区への配分については
特別区人事・厚生事務組合の
人事管理調査室でやっている。

合格者が決まり
各区からの申し込みがあって
配分となるが
まずは合格者に
それぞれの希望区に対するの意見を
一次,二次,三次と聞いていく。

その線に沿って
両者がマッチした方法で分けていく。
(希望者が中心区に集中してしまう
 懸念もあるが)
居住地の関係もあって
中心区だけに集まるということはない。

といった趣旨の回答をしています。

このインタビューによれば
採用手続は現在でも同様と思いますが
気になるキーワードがあって

居住地の関係もあって
中心区だけに集まるということはない。

と述べているところです。

居住地 に関しては
地方議会議員(区議会議員)
立候補する場合には
満25歳以上の日本国民で
引き続き3ヶ月以上その区域内に
住所があることが要件
です。

公職選挙法
- 第9条2項(選挙権)
- 第10条5項(被選挙権)
- 第266条5項(特別区の特例


一方で
首長(区長)に立候補する場合には
3ヶ月間の居住要件はありません。

公職選挙法
- 第10条6項(被選挙権)


首長(区長)への立候補においては
行政を執行する人材を
幅広く社会から登用する意図があります。

その一方で
地方議会議員(区議会議員)に
立候補する場合
には
地域社会の問題を把握して
それに対処するために
地縁的関係が必要とされるため
一定期間
の居住要件

設けられていると考えられます。

居住要件(住所要件)とは
昭和32年9月13日
最高裁判所第二小法廷判決
において

『公職選挙法上において
 一定の場所を住所と認定するについては
 その者の住所とする意思だけでは足りず
 客観的に生活の本拠たる実体を
 必要とするものと解すべき 』

と判示しています。

このように
形式的に住所を
そこに置いているにとどまらず
居住実態を必要としています。

統一地方選挙の後に
当選した議員には居住実態がない
といった報道があり。
議員があれこれと言い訳した後に
辞職するといったケースを
度々目にしますよね。

翻って
特別区公務員の採用に
居住地の要件はありません。


もっとも採用に当たって
一定期間の居住要件や
仮に採用後も
同区または隣接区に居住することが
要件とされるならば
憲法 第22条
『居住、移転・職業選択の自由』
に抵触し
人権の制約になりかねません。

君塚幸吉 区長会会長
インタビューでも
そこは
『居住地の関係もあって』とだけ
言っているので含みがあり
様々な解釈が可能です
採用に当たっての
内部のプロセスを言っているのであり
居住を要件としているわけではありません。

しかし
採用する側からすれば
その 自治体(特別区)の職員 
希望するならば
地方議会議員(区議会議員)と同じく
地縁社会との結びつきは必要です。

また
団体自治 の観点からも
この区で働きたいという意欲 や
区への関心 があり
地域の問題と解決策の提起
 や
地域の見どころや取り組みなどの
魅力を引き出してアピールする
広報活動など 
積極的に取り組める
人材を採用したいのは当然です。

こういった理由から
区面接では
志望区にどれだけ関心があるのかを
測るために『 まち歩き 』のことが
しばしば尋ねられますし
予備校でも面接試験前に
志望区の『 まち歩き 』を勧められる
ということに合点がいくでしょう。

また
志望区を居住区以外にしている方は
なぜ(地元ではない)区を
志望したのか?

さらには
他県の居住者の場合には
それに加えて
地元の自治体も受験しているのか?
もしそちらに合格したら
そっちへ行くのか?
など
必ず強くつっこまれる質問です。

こういった質問を想定しつつ
問題解決として
『なぜこの区を志望したのか』
『なぜこの区でなければいけないのか』
というように
自分自身で『なぜ』繰り返して
自問自答しながら
精度のある筋の通った答えに
仕上げていくことが
必要です。

ところで
一般の会社においても
居住地の関係は
採用に当たって
同じ様な評価(成績)であれば
居住地が勤務地に近い者を
選ぶことはあります。

よくある噂で
会社が従業員のリストラをする場合
同じ様な評価(成績)であれば
遠距離通勤の者から切られやすい
ということを言われます。

また
遠距離通勤の者は
通勤で体力を消費するので
仕事で良いパフォーマンスを
出すことができないとして
敬遠する会社もあります。

これについては会社(社長)の
考えが強く出ていますが…。

しかし実際のところ
区の職員においても
他県から通勤している者や
遠距離からの通勤者はいて
必ずしも
同区や近隣区の居住者ということでも

ないようです。

その一方
自分が国の出先機関に勤務していたとき
2011年3月11日の
東日本大震災がありました。
地震発生から何日かは
交通機関が正常に動いていなかったため
多くの職員が
出勤できないことがありました。

役所の事務手続は稟議制のため
上位者の印判がないので
書類が滞留し業務が停滞したことが
実体験としてあります。

近年では
こうした経験も踏まえて
災害発生 
 ウィルス・疫病の蔓延
あるいは システム障害等 
危機的状況下に置かれた場合でも
中核となる事業が継続できるよう
方法や手段等を取り決めておく計画

( BCP:事業継続計画 )の策定
役所や企業において
関心が高まっているところです。


このように
採用に当たって
居住要件を明確に記載することは
憲法(人権制約)の問題をはらむため
ないと思いますが
地縁社会との結びつき や 業務の効率性
あるいは
交通費等のコスト (税金です !!)。
こういった観点から
全く考慮することはないとは言えず

特別区公務員受験においても
地理的な優位・劣位性は
考慮しておくべきでしょう。

志望区を選択する場合でも
選択する志望区に対して
何となく選んだ!など
特別に思い入れがなければ

地元ないし近隣区を志望した方が
面接の際の志望動機も作成しやすく
筋も通りやすいなど
有利に働くことが多いと感じます。


先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年9月18日月曜日

特別区の総合計画を調べる


特別区( 地方自治体 )の
公務員を受験する際に
論文対策 や 特に 面接対策 として
特別区各区の
政策がわかる資料はあるか?
との問い合わせを受けることが
多々あります。

その中の一つとして
各地方自治体の「 総合計画 」
あります。

各地方自治体では一般的に
行政運営の指針となる計画として
基本構想,基本計画,実施計画
策定しています。
特別区(23区)においても
各区で呼称は異なりますが
すべての区で
基本構想,基本計画,実施計画
そしてこれらの計画に沿った
分野別計画 を策定しています。

調査・研究対象の
体系を理解すること
資料へアクセスする近道ですので
これらについて
ざっくりと説明しましょう。

基本構想・・・
まちづくりの基本理念や
目標とする将来像を示し
その方向性を定めるもの。
一般的には
だいたい10~20年スパンで
計画されます。

基本計画 (長期計画)・・・
基本構想の実現に向けた
基本的な施策を体系的に示すもの。
一般的には
だいたい5~10年スパンで
計画されます。

実施計画 (施行計画)・・・
基本計画にもとづく施策の実施を示し
具体的な事業内容を明らかにするもの。
一般的には
だいたい3~5年スパンで計画されます。

基本構想,基本計画,実施計画
3つを合わせて
総合計画 とも呼ばれます。

この 総合計画 に沿って
教育,財政,保健・衛生,福祉,
環境,産業,都市整備 など・・・

といった
分野別計画 (個別計画,事業計画)
策定され
区の 各事業部 などが
分野別に担当 します。

図に表すとこんな感じです。



次に
それらの情報についての探し方です。

まず
基本計画など を冊子体で見たい場合は
目的の基本計画等を発行している
自治体の図書館区政情報室 を訪ねる
という方法があります。

ただし
必ずしも貸出しできるとは限りません。
禁帯出(貸出不可)の処理がなされていて
閲覧のみの場合もあります。

他には
特に 基本計画(総合計画)
各自治体で有償刊行物として
購入することができます。
区役所の 区政情報コーナー などで
販売していますので
本にマーカーや書き込み等をして
自分なりにカスタマイズしたい方は
この方法もいいでしょう。

ただし
各自治体で 基本計画(総合計画)
販売価格にはバラつき があり
各区の言い値なので
高い値段が付いている区もあり
きちんと情報を取る必要があります。

例を挙げて見ますと

荒川区・・・
荒川区基本計画(平成29年度~38年度)
850円也。( かなりリーズナブル! )

世田谷区・・・
世田谷区基本計画(平成26年度~35年度)
1,256円也。( この辺が相場 !? )

このように
どうしても冊子体を
手許に置きたいという方は
購入もいいですが

基本構想,基本計画,実施計画等の
政策
その自治体の行政運営における理念や
方針を示すものであり
民主主義ないし住民自治の観点から
ビジョンやプランを
住民に知らしめる必要
があります。
また
国や自治体が掲げている
電子政府,電子自治体 といった
構想
からしても
各自治体のWebサイトで
公表されていると考えるのが
通常
です。

つまり
冊子体の情報は副次的で
総合計画は
Webサイトにて1次的に
遍く広く知らしめており
容易にアクセスが可能です。

それでも冊子体が欲しい
ということであれば
コストなどがかかっているので
それなりの対価を払って
購入して下さいね。
ということでしょう。

したがって
効率的に
自治体の情報を収集するには
各自治体のWebサイト から
検索するのがいいでしょう。

政府や地方自治体の運営する
Webサイトは
情報の質,量ともに豊富で
利用価値が高いです。


しかし
政府や地方自治体のWebサイトは
情報量が多い反面
構成が複雑で探しづらい
といった声もあります。

そういった場合
一つの検索方法として
サイトマップ から調べることも
一つの方法です。

サイトマップ とは
Webサイトの構成を一覧化した
目次のようなページ
だいたい
ページの上か下にあります。
( ただし,サイトマップのほうが
 わかりにくい自治体もあります。)

基本構想,基本計画,実施計画
といった総合計画

区政情報 の項目に掲載されています。

一方
分野別計画 については
各課やその他の専門部署が
担当しているので
掲載している箇所が
自治体のWebサイトによって
まちまち
です。

そういった場合の
検索方法として
サイト内の『 検索窓 』を使うのも
いいでしょう。

例えば
大田区の
子どもの貧困対策についての計画

調べたい場合。
Google や YAHOO! などの
検索サイトから
子ども □ 貧困 □ 大田区
入力して調べてもよいのですが

サイト内検索ならば
その自治体のWebサイト内から
キーワード
( ここでは 子ども □ 貧困 )に
該当するものが拾われますので
必要な情報を絞ることができます。
さらに
広告などの余計な情報も省かれます。

ただ,これに関しては
自治体のWebサイトによっては
広告が入るものや
検索窓から検索すると
Google へ飛ぶものもありますので
最初から Google 等の
検索エンジンで検索した方が
効率的な場合もありますので
そこは臨機応変に使ってください。

もっとも
公務員受験生は
だいたい同じ行動をとっているので
検索においても
Google 等の検索エンジンから
同じキーワードを入力して
検索していることが多く
基本計画(総合計画)等の
基本的な施策を調べるなら
検索エンジンからダイレクトに
検索した方が
効率的かもしれません。

ところで
子どもの貧困対策について
検索すると
足立区では出てくるが
港区では出てこない。
港区では貧困対策を
行っていないのか?
という質問がかつてありました。

自治体によっては
“ 貧困 ” という言葉は
使っておらず
“ 未来応援 ”という
言葉を使用していることもあり
こういった場合は
“ 子ども □ 貧困 ” では
目的のものが
引っ掛からないことがあります。
そういった場合は
関連するキーワードを入力して
試して下さい。

しかし最近では
ネーミングの印象からか
右へ倣へで
子どもの貧困対策 
子どもの未来応援 と名付ける
自治体が多くなっているので
“ 子ども □ 貧困 ” で検索しても
目的のものがヒットすることが
多くなっています。

それから
各自治体が
妊娠・出産・子育て支援策 において
『 子育て世代包括支援センター 』
創設を進めているところですが。
これを『 ネウボラ 』
標榜しているケースも見られます。
( 例えば 渋谷区 )

このように自治体によって
同様の施策に色々な名称を付している
ことが多々ありますので
検索する場合は
関連するキーワードを入力するか
各自治体HP の カテゴリー から
進むなどして試して下さい。

最後に
特別区の基本計画等が掲載されている
リンク集を作成しましたので
ご活用下さい。


◇ Link 特別区


以上
読んでいただき
ありがとうごうざいました。