行政法基礎 a
行政法学をリードした
田中二郎 博士 が唱えた
行政の定義 は
「 法の下に法の規制を受けながら
現実に国家目的の積極的実現を
目指して行われる
全体として統一性をもった
継続的な形成的国家活動 」
としたものでした。
しかしこの定義をもってしても
行政を把握しきれず
通説とはなりませんでした。
現在では
「 国家作用のうち
立法作用と司法(裁判)作用を
控除した
残余の作用を指す」とする
見解が支配的ですが
行政とは何かを
具体的に考える場合には
内容が空白です。
一方
田中先生の定義は
行政の特徴を捉えており
行政を考える上での
基柱となるものです。
「法の下に法の規制を受けながら」
ということは
「法治行政」 が頭に浮かびます。
「国家目的の積極的実現」とは
行政 は
立法 により
抽象的 に定立された
法律 にのっとって
法の具体的な運用 を行う
執行機関 です。
また
具体的な紛争が訴えられることで動き
法を解釈・適用して
結果を宣言することで解決を行う
受動的(消極的)な機関である
司法 に対して
行政 は
積極的 な法運用で動いて
目的実現 を目指します。
さらに
行政活動 は
「統一的」であり
「継続」して行われる
必要があります。
そして
「形成的」とは
私法における契約のように
契約者間の意思の合致で
権利の変動が発生するものと異なり
一方(行政)の意思のみで
権利変動が発生する ということです。
しかしながら
行政活動は多岐にわたり
この定義に当てはめることが難しい
行政 による 裁量 や 契約
受動的な不服審査 なども
含まれますので
全てを把握しきることが
難しかったわけです。
このことを踏まえて
国会 により制定された
法律 は 抽象的 ですから
判断・運用する場合 には
解釈 が必要です。
そこで
行政や裁判所は
それぞれに法解釈を行っています。
裁判所 の場合は
法を解釈・適用して
終局的解決をする機関 で
法的安定性 を保つために
今後の法解釈の指針となる判断を
判例 としています。
翻って
社会情勢の変動に対応しつつ
多岐にわたる行政ニーズに対して
司法の判断を待っていたのでは
迅速な目的実現が不可能です。
そこで
行政 においても
法治主義を意識しながら
具体的な法運用 をするために
終局的法律判断ではありませんが
法解釈を行っています。
いわゆる
行政解釈 といわれるものです。
この 行政解釈 についても
行政活動 の「統一性」や「継続性」を
保持するために
通達,通知,指針,ガイドライン などが
出されます。
通達等の法令ではないもの
( 行政規則 )の 種類 については
先の
「 法の階層 」
および
「 通達,告示,指針 等の検索方法 」で
説明しています。
ですから
新法および改正法が制定された場合は
行政 が 具体的 にどう 運用 するのかを
確認することが重要です。
行政解釈の基柱となるものは
一時的には
「立法者意思」を
明らかにすることであり
それを確認するには
「提案理由」,「趣旨説明」,「議事録」
といったものをたどることです。
これについては
先の
「 法案提出の理由と趣旨説明 」で
説明しています。
その他にも
内閣提出法案 の過程では
「審議会」への諮問が多いことから
「審議会の議事録」も参考になります。
行政の法律解釈は
「法律雑誌」や
「コンメンタール」でも確認できます。
法令の制定改廃 についての 解説 を
掲載して速報している
雑誌の例としては
「時の法令」,「法令解説資料総覧」,
「法律のひろば」,「法律時報」に
掲載される
「新法令解説」などがあります。
「コンメンタール」については
先の
「 コンメンタールの検索 」にて
説明しています。
法学者 による 「学説」 については
新たに起こる法的問題に対して
解決のあり方を提示する役割 を
担うもので
裁判所や行政が法解釈をする際の
判断材料となる解釈です。
権威のある学者 による
体系書 や 論文 は
多く引用され
法解釈の指標 になっています。
~ 先頭へ ~
以上
読んでいただき
ありがとうございました。