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2022年11月25日金曜日

法律用語の略字

用語の話 1 法律用語の略字

刑法などの講義を受けていると
板書で Tb ,R ,S といった
記号を使う講師がいます。

要件事実のテキストにも
ブロック・ダイアグラム
Kg ,Stg ,E といった
略字が使われています。

これは
漢字の画数が多いので
メモや板書をする際に
速く簡単に書くために
略字や記号を用います。

他にも
簿記の仕訳
下書き用紙にメモ
を取る際に
これは人それぞれですが
例えば
現金 ならば C
当座預金 は 当ヨ
売掛金 は 売×
備品 は
などとメモします。


ちなみに 図書館 のことを
( くにがまえ )に ト
書きますが
この字は という漢字の略字です。
これ一文字で
“ としょかん ” と読む
国字( 和製漢字 )です。


StgKg
個人のメモならば
簿記の仕訳メモと同じく
どう略して書いてもよいのですが
テキストに載っていたり
板書で書かれると
共通性があるので
記号として
覚えておかなければなりません。

この様なものは
記号として繰り返し書いていれば
自然と身に付くのですが
何の略字なのか
その意味がわかると
頭に定着すると思いますので
備忘録として記しました。


◆ 訴訟物
= Stg  Streitgegenstand
( シュトライト・ゲーゲンシュタント )

◆ 請求の趣旨
= Ant  Antrag
( アン・トラーク )

◆ 請求原因
= Kg  Klagegrund
( クラーゲ・グルント )

◆ 抗弁
= E  Einrede
( アインレーデ )

◆ 再抗弁
= R  Replik
( レプリーク )

◆ 再々抗弁
= D  Duplik
( ドゥプリーク )

◆ 再々々抗弁
= T  Triplik
( トリプリーク )

これらには
ドイツ語由来の略字
使われています。

またこれらの略字は
要件事実のテキスト でもある

★ 司法研修所 編『 問題研究 要件事実 』
  法曹会 改訂版 2006

までは使用されていたのですが

★ 司法研修所 編『 新問題研究 要件事実 』
  法曹会 2011

からは使用されなくなりました。

その他の ドイツ語由来の略字
よく出て来るものですと
刑法では

◆ 構成要件
= Tb  Tatbestand
( タート・ベシュタント )

◆ 違法性
= R または Rw
 Rechtswidrigkeit
( レヒツ・ヴィードリヒカイト )

◆ 有責性
= S  Schuld
( シュルト )

があります。

他方
英語由来の略字 ですと

◆ 裁判官
= J  Judge
( ジャッジ )

◆ 検察官
= P  Prosecutor
( プロセキューター )

◆ 弁護士
= B  Barrister
( バリスタ ) ・・・ の
“ B ” と思われます。

なぜ アメリカ式
Attorney( アトーニー )の
“ A ” ではなく
イギリス式
Barrister( バリスタ )を
使うのかは不明です。

単純に
「 Bengoshi 」“ B ” なのか
それとも “ A ”被告人
(英語の Accused( アキューズド )
もしくは
(ドイツ語の
Angeklagte( アンゲクラークテ ))を
表してもいるので
それと区別するためなのか
わかりません。

とりあえず単なる記号なので
深く考える必要もなく
“ B ” の方が
すわりがいいから
なのかもしれません。

その他の英語由来の略字 には

◆ 証人
= W  Witness
( ウィトネス )

◆ 被告人( 加害者 )
= A  Accused
( アキューズド )

◆ 被害者
= V  Victim
( ヴィクティム )

などがあります。

ところで,
よく登場する記号に

◆ 原告  = X

◆ 被告  = Y

◆ 参加人 = Z

こういったものがあります。

これらは
外国語の略字ではないと思いますが

記号代数学 では

既知の定数
a,b,c,d,・・・ など
アルファベットの初めの方

未知数
x,y,z,・・・ など
アルファベットの後の方
表します。

それから
関数 y = f ( x ) において
x独立変数
y従属変数
呼びます。

現実の裁判 では
訴訟ごとに 各当事者 がいるので
原告,被告等 にはそれぞれ
名前 があります。
つまりこれは
既知のもの であるので
a,b,c,・・・ です。

ところがそれを
判例共通の法理論 として
一般化 すれば
当事者としての個性はなくなるので
未知あるいは不定のもの である
x,y,z,・・・ を用いる
ということなのでしょう。

そして
独立変数 である
原告 にあて,
従属する y被告 にあてる。

三次元的 になれば
も登場しますから
参加人
とするのだと思います。


これもあくまで記号なので
深入りしてもね・・・。

諸外国のものを取り入れて
混ぜて,パンゲア大陸のように
してしまうことは
日本の法体系も一緒ですが・・・。

ドイツだろうが
アメリカだろうが
フランスだろうが
使い勝手がよければ
それらを取り入れて
それでよしとする
日本人の考え方にマッチした
方法なのかもしれません。


以上
読んでいただき,
ありがとうございました。