法情報検索 各論 3 判例 9
前にもご紹介した
大審院判例簡易化ソフト - 韋駄天
(名古屋大学)
このソフトは
『大審院判例簡易化ソフト』と
副題にもあるとおり
元々は
大審院の判例を読みやすくするために
開発されたソフトのようです。
今回は
その 大審院の判例 について
書いてみます。
まず 大審院 とは
明治8年~昭和22年まで存続し
現在の最高裁判所が
設置されるまで続いた
最上級の司法裁判所です。
民法の講義の最初の方に出てくる
権利濫用事例の判決で
宇奈月温泉事件 の
大審院判例が紹介されたことを
覚えています。
大審院 判決 昭和10年10月5日
(民集14巻1965頁)
この判例は現在でも
権利濫用のリーディング・ケース
となっています。
民法の授業の一発目に
このカタカナ書きの
読みづらい判例が出てくるので
凹んでしまった記憶がありますが…。
このように
いまだに重要な判例がありますので
大審院の判例も
参照する必要性があります。
では
大審院の判例を調べる際
どの文献にあたればよいのかです。
大審院 では
民事と刑事の判例 があります。
民事 については
大審院民事判決録(略称:民録)
(明治8年~大正10年)から
途中で名称が変わって
大審院民事判例集
(略称:民集 または 大民集)
(大正11年~昭和21年)まで
刊行されています。
刑事 については
大審院刑事判決録(略称:刑録)
(明治8年~大正10年)から
民事と同じく名称が変わって
大審院刑事判例集
(略称:刑集 または 大刑集)
(大正11年 ~ 昭和22年)まで
刊行されています。
ただし
刑事 については
明治17年12月~18年12月までは
刊行されていません。
また 民事,刑事 とも
明治21年~23年までは
刊行されていません。
この他に
民録,刑録から重要な部分についての
抄録がなされた。
大審院民事判決抄録(略称:民抄録)
(明治31年~大正10年)
大審院刑事判決抄録(略称:刑抄録)
(明治24年~大正10年)もあります。
大審院の判例集 で
民録,刑録,大民集,大刑集 は
公的刊行物 ですが
詳しくいうと
途中で資料名が変わったり
民事と刑事の区別がなくなったり
復刻版が出版されたりと
発効形態に変遷があります。
全てを書くと紙面をとるので
資料の詳細については
こちらを参考にすると便利です。
● 日本-大審院・最高裁判所判例集
- 国立国会図書館リサーチ・ナビ
● リーガル・リサーチ / いしかわまりこ[他] 著
第5版 日本評論社 2016年3月
大審院判決録 として整理されたものが
刊行されるようになったのは
明治28年以降で
民録,刑録 ともに
明治28年(第1輯)~ 大正10年(第27輯)と
巻次が付けられて整理されています。
これに続く
大民集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和21年(第25巻)
大刑集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和22年(第26巻)
というように
巻次の表示も「輯」から「巻」に
なりました。
よくある質問で
「輯」って何て読むんですか?
と聞かれます。
この字は「シュウ」と読み
“ 集めてまとめる ”という意味です。
大審院の判例 では
「輯」は 大審院判決録の場合 で
「巻」は 大審院判例集の場合 に
使用します。
最後に
判例の引用で
「新聞×号×頁」とありますが
「新聞」って何新聞ですか?
との問い合わせがあります。
これは
『法律新聞』の略称 です。
法律新聞 は
明治33年9月~昭和19年8月 まで
法律新聞社 より刊行された
法律専門の新聞です。
この新聞には
法律関係の記事のほか
大審院の判例集に登載されていない
重要な判例も
この新聞のみに
全文が登載されている
ケースもありますので
知っておくべき資料です。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。