2023年9月5日火曜日
図書館資料の貸出冊数と継続借受ルールの運用
前回 は
図書館サービス について
公共財の性質 と 占有期間 の
バランス を考え
その 合理的な落としどころ といった
貸出期間の決定プロセスについて
書きました。
合理的な貸出期間 が設定されると
つぎに
その貸出期間に読むことができる
合理的冊数 として 貸出冊数 が
決まります。
この 貸出冊数の決定 については
前々回書きました
「 図書館の名目的効用 」 の
数値を形式的に上げるため
貸出冊数を多く設定 している
自治体もあります。
また
専門書や長編小説など
読むのに時間を要する本もある一方で
絵本などすぐに読み終わってしまう
本もありますので
資料の特徴 も考えます。
さらに
図書館の 蔵書数 なども
考慮する必要があります。
蔵書数が少ないのに
貸出冊数を多くすれば
図書館資料の在庫数も
少なくなってしまい
利用者が来館しても
資料が慢性的に無い状態に
なってしまいます。
また
大学の場合
貸出日数 と 貸出冊数 が多いのは
目的 が 研究 であり
研究論文作成のためには
それなりの 資料数 と 日数 を
必要とするからです。
一方で
法科大学院の場合 は
目的が研究ではなく
実務家養成のための学習に
資するための蔵書構成 に
なっています。
また
大学図書館に比べて
規模がかなり小さく
蔵書数も少ない ので
貸出日数 および 貸出冊数 を
多くすれば
在庫資料が少なくなってしまい
必要な時に
慢性的に資料がないとなると
法科大学院図書室の用を成さないので
ロースクールによっては
全て禁帯(貸出不可)としている
図書室もあります。
もっとも
司法試験受験生の場合は
使える基本書・参考書・雑誌の情報は
既に入手していることが常で
同じ資料に利用が集中する傾向が
あります。
このように
貸出冊数の決定 には
貸出期間に読むことができる
合理的冊数 を前提に
・図書館の名目的効用
・扱っている資料の種類
・図書館の目的
・蔵書数 など を踏まえて
設定されています。
つぎに
同一の資料を同一の利用者が
継続して借受けのできる図書館 と
連続しての借受けはできず
1日おいてからならば
再度借受けが可能な図書館 との
サービスにおける
考え方の違いについてです。
まず
継続借受を可能とする運用を
している図書館では
公共図書館 の場合
サービスの主体 を
「 貸出し 」と考えている自治体ならば
「 公共財 」と「 占有 」 の
概念よりも
「 名目的効用 」 を 優先 し
他の利用者が貸出中の資料を
借りたければ
予約をすればよい と考えるからです。
また
蔵書数も関係します。
それから
仮に1日おいて貸出しが可能と
利用者に訴えても
モラルのない利用者ならば
返本されれば確信犯的に
また借りに来ますので
そのような運用は効果がないとして
継続貸出可能としていると
考えられます。
自動貸出機を設置している図書館では
尚の事です。
一方
1日おいて再度借受可能とする
図書館は
蔵書数 を考慮した上で
「 公共財 」 と 「 占有 」 の
概念を優先し
性善説を前提 に
利用者の規範意識( モラル ) に訴える
といった
運用と考えられます。
法科大学院図書室 の場合ならば
蔵書数と図書室の目的を
考慮した上の運用 ですので
「 貸出し 」サービスより
「 調べる 」,「 参考にする 」ことを
優先としています。
それから
仮にルールを守れない
ロースクール生が多ければ
運用を変えて
全て禁帯とすることも容易であり
原則論である
「 公共財 」 と 「 占有 」 の
概念を優先して
まずは
利用者の規範意識( モラル ) に訴える
としていると考えます。
もし
前回の冒頭のような質問を
ロースクール生がしてくれば
このような長い説明はいらず
図書館資料は
“ 公共財(的) ” であって
その利用については
“ 公共 ” の制約を受けることになる。
といった説明をすれば
ほとんどの方は理解してくれます。
おそらく
このブログをご覧になっている方も
同様だと思います。
仮に理解できていなくても
プライドがありますので
理解したふりをしているのかは
わかりませんが・・・。
“ 公共財(的) ” なので
占有(独占)することはできず
もしも
利用しようとしている資料 を
独占して
線引きや書き込みをしたり
ページを折るなどしたり
延滞や汚破損をすれば
他の利用者の利用・使用が
できなくなるなどの
支障が出てきます。
そうなった場合には弁償となり
相当の対価を払うことになるので
結局のところ
自分自身でカスタマイズ したい場合や
手元に置いておきたい のならば
相当の対価を払う。
つまり
書店などで 購入 すればよいのです。
これが
物事を合理的に考えられる人 です。
しかし
公共図書館の一部の利用者 のように
・永久に継続貸出をして独占する。
・その時点において必要のない資料を
借りたり( 閲覧席での積読状態 )
予約取り置きする。
・借りた資料を延滞する。
・予約本の取り置き期限を延ばしまくる。
・当日の新聞を全部独り占めする。
・本を汚す。ページを折る。
線引き,書き込みをする。
・図書館員が注意すると逆切れする。
こういった問題行動を起こす
悪質 な “ フリーライダー ” は
本質的に ケチ であり
合理的思考ができず
自分のエゴを通そうとします。
そういった輩にかぎって
クレーム が多く
やたらと“ 税金 ”といってきたり
“ 性善説 ” を振りかざします。
公共施設で働く図書館員ならば
“ 図書館利用者あるある。”
といったところでしょう。
賃金が安い上に
こういった 不逞之輩 を
毎日相手にしている
“ 現代の「 蟹工船 」的職場 ”
ともいえるような
公共施設で働く図書館員は
ホントにストレスもたまるだろうと
お察しします。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
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図書館と司書の話/5 貸出冊数と継続借受