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2023年10月15日日曜日

判例公刊

法情報検索 各論 3 判例 3

判例を調べる際
判例集に載っていない
判例があります。

憲法第82条〈裁判の公開〉では

1項…
裁判の対審及び判決は
公開法廷でこれを行ふ。


2項…
裁判所が
裁判官の全員一致で
公の秩序又は善良の風俗を
害する虞があると決した場合には
対審は
公開しないで
これを行うことができる。
但し
政治犯罪
出版に関する犯罪
又は
この憲法第三章で保障する
国民の権利が問題となっている
事件の対審は
常にこれを公開しなければならない。


とあります。

一方
判例には
判決後に判例集等に登載される
『公刊判例』
公刊物に公開されることのない
『未公刊判例』があります。

憲法で裁判の公開を規定しながら
判例においては一部のみが公刊され
あとの大多数は
公刊物に登載されていません。

また
判例登載の基準についても
ほとんど明らかにされていないのが
現状です。

この点について
判例を積極的に公刊するか否かには
双方の立場からの意見があります。

まず
積極的に公刊すべきという立場
( 促進説 )
からは
次のような主張があります。

★ 裁判の平等性の強調
★ 法的安定性の重視
★ 情報公開の尊重
( 公刊されている
 私的判例集においては
 匿名化が一般的になっています。)

一方
全ての判例公刊には消極的な立場
( 限定説 )
からは
次のように主張されます。

★ 判例公刊にはコストがかかり
 効率性や合理性からみても
 全判例の公刊に意味がない。
★ プライバシーの公開になるという
 問題点がある。

これらの立場を踏まえて
現状の判例公刊になっているので
論文等に引用されていても
実際に入手できない判例もあります。

なお
法律的判断が
過去の判断と同様であれば
判例集には掲載されません。
ですから
話題性のある判決でも
判例集に
掲載されているとは限りません。

しかし
自分の探している判例が
見つからなかったとしても
公刊されていないのではなく
検索方法が至らない場合も
ありますので
改めて検索してみましょう。

① データベース検索

各社有料データベース
裁判所Webサイトなどでは
判例の収録件数がそれぞれ違うので
目的の判例がない場合は
すべてのデータベースを
検索してみます。

よくある検索ミスとして
事件名で検索する場合は
データベースにより
事件名が異なっていたりします。
また
事件名や
その事件に登場する固有名詞では
検索ができなかったりするので
検索に工夫が必要です。

② 法律雑誌での調査

判例時報判例タイムズなどの
判例雑誌は
出版社が独自に収集している判例もあり
公的判例集に登載されていない判例も
ありますので
データベースの法律雑誌横断検索
法律判例文献情報などの冊子体へ
つぶさに当たってみましょう。

③ 新聞記事での調査

新聞記事に判決要旨が
掲載されることがあります。
また
判例集に掲載されていない判決が
掲載されている場合もあります。

これらの検索を試みても
見つからない場合は
そもそも
元の情報が間違えている場合も
あります。
そのあたりの検証も
行ってみるとよいでしょう。


~ 参考文献 ~

判例公刊 については

・指宿信『判例公刊について 上』
 法律時報 73巻10号 67-73頁


・指宿信『判例公刊について 下』
 法律時報 73巻11号 91-97頁


から要旨をまとめ

・町村泰貴
『裁判所の判決や決定が公開される割合』
  Matimulog(2012/5/26)

http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2012/05/justice-08f6.html#more
(アクセス日:2023年10月15日)

・椿寿夫『判例の入手をめぐって』
 法律時報 62巻5号 38頁


を適宜参考にしました。

以上
読んでいただき
ありがとうございました。