2017年2月27日月曜日

羽鳥書店,前田説などついての雑記

本の新版・増刷の話

前回
『 前田雅英先生と刑事訴訟法 』
著者,編者などの表示について
色々と推察してみました。

この刑事訴訟法を刊行している
東京大学出版会で38年間在職した後
2009年4月に新たに立ち上げた
羽鳥和芳 氏が代表を務める
羽鳥書店 があります。

特に法律関係者には
木村草太 先生 の著書
『 憲法の急所 - 権利論を組み立てる 』
出版している書店といえばご存知でしょう。

書店の法律書のコーナーで
本書を初めて手に取って見たとき
「 聞いたことのない出版社だ 」と
思いました。

自分で 本を選ぶ際 には
まず
タイトル帯情報
目次など内容から判断
することはもちろんですが
ほかには
装丁,文字の大きさ,行間,
余白の広さ,紙の厚みなど
形式的な構成や外観,手触り感
といったものも気にします。
それと
出版社著者気にする 場合も
あります。

余談ですが
ある元司法試験委員の先生が
本を出したとき
あまり聞かない出版社から
出版されていて。
中身を読んでみると,誤植が多く
専門外の自分がいうのも
おこがましいのですが・・・。
内容も,ただ判例紹介で盛ってるだけ
といった印象がありました。

それがまた当時は
司法試験委員ということもあってか
解析講座なるものを各予備校で
開いていたので
受験生に
解析するような内容なの???
と聞いたところ
僕も同じ疑問をもっています
と言われました・・・。

閑話休題。
出版社の 羽鳥書店 というのは
どんな出版社だろうと
最初は気になりましたが
色々と見ていると
立ち上げ初期のころの著者が
内田貴,大村敦志,長谷部恭男,
藤田広美 各先生方 といった
錚々たる顔ぶれが上梓 されています。

で,何冊かを読んだのですが
「 少し誤植が目立つ 」 印象 があり。
これは,大きな出版社のように
厳しい校閲を経ていないようなので
校閲まで回っていない
おそらく,かなり少人数で回していて
社長や編集者の人脈,しかも東大系が
すごい といった感じを受けました。

後に
日経ビジネス ONLINE
記事を見たときに
だいたい予想した通りだった
ということを覚えています。

宮嶋康彦「 “つぶやき”効果で1万冊!
10坪の出版社,羽鳥書店の挑戦 」
- 奥深き日本 『 日経ビジネス ONLINE 』
- 2010年3月5日(金)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100303/213123/
( アクセス日・2017年2月26日 )

それから
僕は特撮大好き! ですから
成田亨 氏の 本の出版・復刊
非常にありがたく
羽鳥書店 さま
大いに期待をしております。


☆ 成田亨作品集 成田 亨 著 / 羽鳥書店 2014.7

☆ 成田亨の特撮美術 成田 亨 著 / 羽鳥書店 2015.1


ところで
刊行後に見つかった
本の誤植 に対しての
訂正 ですが。

Webサイト のある出版社は
そこに 誤植訂正のページ
設けられていることが多いです。

木村先生 の
『 憲法の急所 については

木村先生の ブログ
『 木村草太の力戦憲法 』
http://blog.goo.ne.jp/kimkimlr
誤植訂正があります。
( アクセス日・2017年2月26日 )

まあ
この本は売れているので
その後も増刷され
第2版 がいよいよ
2017年3月下旬に刊行予定
されています。

近刊・新刊案内 - 羽鳥書店
http://www.hatorishoten-articles.com/newbook

ですから,今までの誤植も
その都度訂正されているでしょう。

本の「 版 」 と 「 刷 」
違いについ説明すると
これらの表示は
奥付 と呼ばれる,本の最終ページの
箇所に記載があります。

例えば
2013年12月20日 初版第1刷発行
2014年10月10日 初版第3刷発行
といった記載ならば

本の出版に際し
予定した発行部数より多く
新たに増刷して
その刷が3回目という意味です。

超ロングセラーの本は
この表示が100刷以上
刷られています。

増刷 に関しては
誤植の訂正などは行われます
内容の変更はありません

版表示の変更 については
本の内容の一部や複数個所に
重要な変更が加えられ
改訂版であることの記載
または書名を変更した場合。

例を挙げると
2013年12月20日 初版第1刷発行
2015年11月15日 第2版第1刷発行

といった記載ならば
2015年に
内容に重要な変更 を加えたという意味です。

この 版が変更された表記 があれば
国際標準図書番号( ISBN )と呼ばれる
図書の識別番号も変わります。

本文中の誤植や誤字・脱字の訂正などに
とどまる増刷・重版をする場合は
ISBNコードは変わりません。

「 書名記号 」 に関するルール
- ISBNと日本図書コードのルール
- 日本図書コード管理センター

http://www.isbn-center.jp/guide/02.html


法律書 の場合
会社法などの企業関連や
金融,年金,保険関連の
法令については
政策上,法改正が多いので
それに伴い
関連した本も内容を変えますので
版表示が頻繁に変更されます。

ところが
憲法や刑法など
法文が頻繁に変わることのない
法律書が
なぜ 頻繁に新版を出すのか というと
率直に言うと売りたいため ですよ。

解釈内容が変わったのでなく
ただ 新しい判例が盛られているだけ
といったものもあります。

判例 については
別に『 判例百選 』等 
勉強すると思うので
わざわざ新版を購入する必要はない。

といった本と

解釈自体が変わる ものも
あります。

特に旧司法試験の頃の刑法などは
学説の対立が激しかったので
前田説大谷説 等々がありました。
特にこの両先生が
ちょこちょこと 改説 するんです。

まあこれは
判例・実務を重視しつつ
解釈を展開しているから


特に 前田先生の場合
処罰に値する行為を
構成要件段階で処理する考え方で
処罰に値する行為は
現代社会における犯罪現象を踏まえて
妥当性を図っていくという理論
です。
そして
客観的に現代社会の犯罪現象を
知るための統計資料
として
『 犯罪白書 』 があります。

だから
前田先生の刑法の体系書には
犯罪データが載っています。
犯罪統計は毎年変わるため
新たなデータに変更するので
新版を出す理由づけになります。


なので
解釈がぶれているのではなく
社会の犯罪現象に合わせて
処罰も変化する という
現実的な考え方です。

でも
実務家養成のロースクールでは
事例中心の勉強なので
旧試の受験生のような
学説オタクはいないような気がします。

僕も刑法学説や
民訴の争点効や新訴訟物理論
などの新堂説,
手形・小切手法の創造説など
ひと通り勉強しましたが
社会に出て役に立ったという
記憶がありません・・・。

仕事にもよりますが
書式集,法令集,コンメンタール,
判例・先例集といったところで
十分な気がします。

最後は
出版の話から
前田説の話に
なってしまいましたが

読んでいただき
ありがとうございました。

以上


2017年2月25日土曜日

前田雅英先生と刑事訴訟法


出版社の共著についての推察

2004年6月に「東京大学出版会」より
池田修・前田雅英 両先生 共著
『 刑事訴訟法講義 』 の初版が
出版されました。

その後にも
『 ケースブック刑事訴訟法 』
( 弘文堂ケースブックシリーズ )
笠井治,前田雅英 編
弘文堂 2007

『 刑事訴訟法判例ノート 』
前田雅英,星周一郎 著
弘文堂 2012

『 刑事訴訟実務の基礎 』
前田雅英 編;青木英憲 [ ほか ] 著
弘文堂 2010

といったように
刑事訴訟の本が出版されています。

前田 先生というと
司法試験などで
刑法の基本書となる
体系書や演習書などを著し
前田説と呼ばれる
刑法の論理体系を築かれた先生です。

ですので
前田先生が
「 刑事訴訟法 」を書いたの?

といった印象を最初に持ちましたが

団藤重光 先生が
『 刑法綱要 』 創文社
総論 1957,各論 1964 や
『 刑事訴訟法綱要 』
弘文堂書房 1943 などを著し

平野龍一 先生が
『 刑法総論 』 有斐閣 1983 や
『 刑事訴訟法 』 弘文堂, 1954 を
それぞれ著していることを見れば
特に何も違和感はありません。


著者等の記載 について説明すると
単独執筆 の場合は ○○著 という記載なので
誰の執筆かは明確です。

他方
前田雅英 編 という記載の場合

というのは
パートごとに
他の数人の学者や実務家の先生が
内容を分担して執筆し
それを前田先生が全体の構成を編集し
責任者として 内容をとりまとめた
ということです。

他の記載方法については
編著 となっていれば
内容のとりまとめ に加えて
自らも執筆 しているということです。

その他には
監修 という記載方法もあります。
監修は用語や学説,理論などの
内容に誤りがないかを確認すること
著者ではありません。

というのが一般的な意味です。
しかし実際は
となっていても
内容は自らも執筆している
編著 であることはありますし
監修 についても
箔をつけるだけの形式的
ものもあります。

さて
前田先生の刑事訴訟法 についてですが
東京大学出版会の『 刑事訴訟法講義 』
弘文堂の『 刑事訴訟法判例ノート 』
共著 という形になっています。

どこまで執筆分担しているのかは
わかりません。

これは想像の域を出ないのですが

まず
東京大学出版会の
『 刑事訴訟法講義 』については
初版の出版年月が2004年6月となっています。

法科大学院が
2004年4月に創設されたことを考えると
東京大学出版会としては
学術的な深い内容ではない
実務的な手続法の
ロースクール生向け
基本書的なものを出版したい。

そうなると
実務家の先生 に執筆をお願いしたいが
司法試験受験生をターゲットにして
販売する場合には
内容が十分であっても
ネームバリューとして地味 であり
売れる見込みが未知数です。

司法試験受験生の購買行動
内容評価以前に ネームバリュー
先導される傾向 にあるので
前田説を浸透させ
司法試験委員等も歴任し
刑法の本も相当売れた実績のある
前田先生の名前を使いたい。

というように
通常の出版社なら考えて
話しを持ちかけるのが普通でしょう。

後の2007年には
同じ手続法の
民事訴訟について著された
『 講義 民事訴訟 』
初版が出版されました。
こちらは
元判事の藤田広美 先生の
単著 ですが
司法協会 出版の
『 民事訴訟法講義案 』 の著者
といわれる方なので
ロースクール生向け教科書としての
内容は十分であり
学生は飛びつくと判断して
単著で行けるといった
ところだと思います。

弘文堂の
『 刑事訴訟法判例ノート 』においても
司法試験受験生の購買行動を
考えて売れるようにするためには
前田先生のネームバリュー
必要です。

弘文堂の場合も推察ですが

出版社側とすれば
例えば
過去に出版社から本を出して
売れた実績があり
その後もよく執筆を頼まれる
先生がいるとします。

その先生が別の方を紹介しましたが
確実に売れるといった
実績が足らない場合に
その先生に 監修 として
名前を入れることを条件に
執筆させることがあります。
要するに
担保としての
名義貸しみたいなものです。

『 刑事訴訟法判例ノート 』の場合でも。
弟子に実績をつけてあげたいので
弟子の 星周一郎 先生を勧めたが
ネームバリューの問題で
前田先生の名前も出してもらう
ということだろうと思います。

ただ
『 刑事訴訟法講義 』 の場合も
『 刑事訴訟法判例ノート 』
同じですが。
監修 前田雅英 とすると
共著の先生に対し失礼になります。

駆け出しの研究者や実務家
または専門外の者が執筆する場合に
監修に入ってもらうのが通常で

池田修 先生や 星周一郎 先生の場合は
実務家や学者として
十分な実績があるので
共著 という形になっているのだと
思います。

もちろん
前田先生も執筆していれば
当然共著ですが・・・。

また
著者名の記載順 については
おそらく
池田先生は前田先生の大学の先輩
あたるので
『 刑事訴訟法講義 』 については
池田修,前田雅英 の順。
『 刑事訴訟法判例ノート 』 では
星先生は前田先生の弟子 ですので
前田雅英,星周一郎 の順
ということでしょう。

また
木村光江 先生も 前田 先生の
お弟子様です。

著書の
『 刑事法入門 』 1995年
『 刑法 』 1997年
『 演習刑法 』 2003年 は
東京大学出版会 からですが

東大出身でない 木村光江 先生が
東京大学出版会 から
出版しているということは
おそらく 前田先生のご推薦
あったのだろうと推察します。

このように
前田先生の刑事訴訟法は
“ なぜ共著なのか ” との考えを契機に
色々と推察すると

前田説の普及とネームバリュー,
弟子の育成,行政関係の委員,
首都大でのロースクール生の育成など
数々の功績を残した事実と
人望の厚さが見えてきます。

と,まあ出版の経緯は
ご本人様に確認したわけではないので
想像の域をでませんが・・・。

出版社的にはこんな感じなのかな
といったところです。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。

2017年2月20日月曜日

近代立憲主義と平和主義


近代立憲主義と
日本国憲法の3原則の中の一つ
平和主義ついて考えてみます。

法律関係者には
「釈迦に説法」なので
主に高校生をターゲットにします。

先日
『伝わる書き方』(PHP研究所)
という本を
書棚から出して
再読したときがきっかけです。

著者の
三谷宏治 氏
K.I.T.虎ノ門大学院主任教授
アクセンチュア 等で
経営コンサルタントを
されていた方です。

三谷 氏の著書は
わかりやすく書かれ
私も大いに参考にしています。

この本の内容は
文章の書き方について
① 理解しやすいように
  文章を短く切り
② その文章の内容を
  類型別に目次化させ
③ 読者が興味を引くように
  文章に波をもたせる
というように
3つ方法に分類して
レクチャーした手引書
です。

その中で
気になった箇所があります。
70頁の
日本国憲法 前文
“ 余計な装飾を省く ” 説明のくだりで

個人的見解と断ったうえで

日本国民は,
恒久の平和を念願し
人間相互の関係を支配する崇高な理想を
深く自覚するのであつて
平和を愛する

諸国民の公正と信義に信頼して,
われらの安全と生存を保持しようと
決意した。

から

日本国民は,
諸国民の公正と信義に信頼して,
自らの安全と生存を保持しようと
決意した。

と文章を簡潔にしています。

省いた箇所の

恒久の平和を念願し
人間相互の関係を支配する崇高な理想を
深く自覚するのであつて
平和を愛する


の部分を
“ 余計な装飾 ” として省いています。

この本は憲法論について
書かれたものでなく
確かに
この箇所の表現は
『くどい言い回し』
と感じます。


ここで
近代立憲主義について考えると

近代立憲主義 とは
憲法に基づいて政治を行う考え方です。

その 3原則
① 国民主権
② 人権保障
③ 権力分立

です。

権力分立 とは
立法,司法,行政の
三権分立も含みますが
より広く捉えます。
日本の場合は
地方分権,行政委員会,二院制
三審制 等も含みます。
この仕組みは
権力が一つに集中しないように
権力機構を分散させ
抑制と均衡を図るものです。

一方
日本国憲法の3原則
① 国民主権
② 基本的人権の尊重
③ 平和主義

です。

国民主権 について

日本国憲法の国民主権 と
近代立憲主義の国民主権 とは
異なります。

日本国憲法の国民主権 には

国の政治の在り方を
最終的に決定する権力を
国民自身が行使する
権力的契機 ― ①

国家の権力行使を
正当づける究極的な権威が
国民にあるとする
正当性の契機 ― ②

の二つを合わせた
意味を持っています。

しかし
近代立憲主義の国民主権 には
②の 正当性の契機 の意味しか
ありません。

次に
国民主権 および 権力分立 と
人権保障 との関係については

国民主権 および 権力分立
人権保障を実現するための手段です。

平和主義人権保障 との関係は
平和であることは
人権保障の前提となる関係です。


では
平和が人権保障の前提となるものならば
なぜ
平和主義が
日本国憲法の3原則には
挙げられているのに
近代立憲主義の原則には
ないのでしょう。


近代立憲主義 においても
平和主義が当然 のことであり
規定されなかっただけで
無視されたのではありません。

これに対し
日本の場合
二度の世界大戦を経験し
侵略によって
他国に被害
を与えました。

それと同時に
空襲や原爆投下などもあり
戦争で多くの国民に
被害
が出ました

これらを教訓として
平和主義を明文化 して
その 意義を強調 した
ものと考えられます。


だから
余計なほど,繰り返して
平和を強調
していると考えます。

このように
全く関係ないところから
あらためて考え直してみたり
発想が湧いたりすることって
ありますよね。


~ 参考文献 ~

伝わる書き方 三谷宏治 著 / PHP研究所 2013

日本国憲法 朗読CD 佐藤慶 / フォンテック 2006

比較憲法 第3版 樋口陽一 著 / 青林書院 1992

憲法 第3版 佐藤幸治 著 / 青林書院 1995



以上
読んでいただき
ありがとうございました



2017年2月15日水曜日

雑誌の号数が抜けてる? 話


法情報検索 各論 4 文献 5

ジュリスト と 週刊東洋経済 の例

以前に
判例時報 と 判例評論 の回で
書きましたが
各出版社独自のルールで
雑誌に巻号が付されているので
非常にわかりづらいものもあります。


雑誌書架や書庫で
雑誌の号数が抜けている
場合があります。

除籍や紛失で
欠号の場合は納得がいくのですが

所蔵があるのに
見つけることができないと
フラストレーションが溜まるし
何より時間が無駄になります。

「 ○○号が抜けている 」 との指摘が
たびたびあるのが
法学系雑誌では
ジュリスト です。

例えば
ジュリスト
1471号 ~ 1480号 まで
書庫からの出納依頼を受けたが
1479号 が抜けていて見当たらない!
といったケースです。

結論からいうと
1479号
ジュリスト臨時増刊号 の
【 平成26年度 】重要判例解説

いわゆる 重判 です。

重判巻次
ジュリストの通号表示 なっています。

一方
ジュリスト増刊
固有のタイトルで刊行され
論究ジュリスト
法律学の争点シリーズ など
別の巻号表示 になっています。
また
判例百選 の場合も
ジュリスト臨時増刊 1964年10月号
「 刑法判例百選 」より後の刊行は
別冊ジュリスト として
刊行されており
月刊のジュリストとは
別の巻号表示 になっています

といったように
非常に混乱しますが…。


探しづらくなる要因の一つ には
各図書館でローカルルールがあり
受入や排架の方法,
OPAC( 利用者用検索機 )表示
などが異なるため
です。

一般的に大学図書館での
排架
ジュリストとは別に
重判,判例百選,論究ジュリスト など
シリーズごと にまとめられています。
一方で
OPAC表示
雑誌では通号表示のみ
なっていることが多いです。

また
これは公共図書館にありがちですが
ジュリスト は年間契約で
雑誌 として受入れているが
臨時増刊号は契約の対象外で
雑誌受入れしていない。
しかし
利用者からのリクエスト等で
重判 のみを 図書 として
受入れしている場合です。

この場合は
OPACで探しづらいことはもちろん
司書に尋ねても
「臨時増刊号は受入れていないので
 所蔵していません。」
との回答をされたことがあります。

確かに
この区の図書館で
所蔵しているはずだと思って
自分で調べると
同区内の他館で図書として
所蔵していました。

ということで
早速に取寄せの手続をしたところ
貸出もされていないのに
あまりにも来るのが遅いので
所蔵状態を調べたところ
ステイタスが所蔵のままだったので
手続きをした図書館へ
問い合わせてみたら
何と! 他区に取寄依頼中です
との回答を受けました。

オイオイと思いつつ・・・
まぁこんなもんだろうとも感じました。

教訓として
目的の資料がある場合は
所蔵館へ直接行くことにしています。
それから
調べものについては
調べる対象の分野の関連資料が多い
都立,県立図書館や国立国会図書館,
専門図書館を利用しています。

それが一番確実で無難でしょう!


ジュリスト 以外 でも
同様の問い合わせがあり
巻号の付け方が紛らわしい
雑誌はあります。

一例をあげると
週刊 東洋経済臨時増刊 です。
この臨時増刊は
DETA BOOKシリーズ と呼ばれ
株価総覧,日本の企業グループ,CSR企業総覧
など
といった
統計・総覧
形態もレギュラーの 週刊 東洋経済 とは異なり
事典のように分厚いものです。

図書館でも
週刊 東洋経済 と混配になっていることは
まずありません。
しかし
巻次週刊 東洋経済
通号 になっていますので
OPAC表示が巻号のみになっていると
まずわかりません。

公共図書館においても
ジュリスト のように
受入形態が異なることが多いので
同様の回答を受けたことがあります。

これらの問題は
利用者には全く非がありません。

そして
これらが問題となるよくあるケース
授業で配布された レジュメ
論文等参考文献
シリーズ名等の記載がなく
通号表示のみの記載
なっている場合です。


排架法や分類法,目録法
資料組織法
本来 資料へのアクセスを
容易にするための方法
ですが
そのルールに則ったら
かえって
わかりづらくなるというのであれば
本末転倒です。

図書館側
例えば
サインやガイドで導いたり
リストやパスファインダーなどを
作成する
といったように
プロの司書としての知恵を出し
サービス向上に努めるべきであると
思います。

では
そのようなサービスの
行き届かない図書館で
利用者が検索する方法 として
“ サービスの充実している ”
他の図書館の蔵書目録
出版社のWebサイト など から
複合的に検索 してみてください。


~ 参考資料 ~

東京都立図書館 - 蔵書検索
https://catalog.library.metro.tokyo.jp/winj/opac/search-detail.do?lang=ja

東京大学 - OPAC
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_search/?lang=0

慶應義塾図書館 - 調べる・探す
http://www.mita.lib.keio.ac.jp/search/index.html

有斐閣 - 雑誌
http://www.yuhikaku.co.jp/magazines

東洋経済 - 統計・総覧
https://store.toyokeizai.net/databook/


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2017年2月5日日曜日

最高裁判所判例の構成


法情報検索 各論 3 判例検索 12

物事は
それぞれの
パーツによって成り立っています。
日常生活や
仕事での事務処理
その他
研究などを行う際に
どのような仕組みで
構成されているのかを
理解しておくと
同様のものに
出会った時の処理を
迅速に行うことができます。

官報の構成 については
以前のブログ
「 官報の発行形態と構成 」
述べました。

今回は
最高裁判例の構成 について
述べたいと思います。

まず
最高裁判所の判例 について
判例集に掲載されている事項
前から順に
見ていきます。

① 事件名
民事 の場合は
原告の請求内容を
簡単に記載されたもの
刑事 の場合は
起訴状に記載される罪名が
事件名となります。
なお
報道記事の事件名とは
異なります


② 事件番号
事件番号については
以前のブログに書きました
ので
「 裁判所 事件記録符号の読み方 」
参照ください。

③ 裁判年月日 
判決または決定が下された年月日
および
審理および裁判を行った法廷名
( [ 第1~3 ] 小法廷 または 大法廷 )

裁判の種類 ( 判決または決定 )
が掲載されています。

④ 結論
最高裁判所が下す結論には
・(上告)却下
・(上告)棄却
・破棄差戻し
・破棄自判

などがあります。

民事訴訟 の場合
上告が不適法である場合 には
決定
上告を 却下 することができます。
( 民事訴訟法317条1項 )
明らかに上告理由に該当しない場合
決定
上告を 棄却 することができます。
( 同条2項 )

これら以外の場合は
口頭弁論を経た上
上告された内容に
理由がない場合 には
判決
上告を 棄却 することができます。
( 同法319条 )

一方
適法な上告 がなされ
かつ
上告された内容に
理由が認められる
( 認容する )
場合
または
訴訟要件などの
職権調査事項に関して
原判決を維持できないことが
判明した場合

原判決は 破棄 されます。
( 民事訴訟法322条 )

原判決を破棄 した上で
原裁判所
( 控訴審,高裁 )に戻し
もう一度審理
されることが
破棄差戻し ( 民事訴訟法325条 )
最高裁判所が自ら裁判 することが
破棄自判 ( 同法326条 ) です。

刑事訴訟 の場合
上告が不適法である場合 には
決定
上告を 棄却 することができます。
( 刑事訴訟法414条,385条,395条 )
訴訟手続上
例えば
・移送申立て( 刑事訴訟法19条 )
・保釈請求( 同法92条 )
・証拠調べ請求( 同法316条の5 )
・忌避申立( 同法429条 )
などの請求・申立を退ける場合
には
却下 することができます。

一方
民事同様

上告に理由がない場合 には
判決 により
上告を 棄却 ( 刑事訴訟法408条 )

上告された内容に
理由がある場合

または
刑事訴訟法411条 に掲げる
職権破棄事由 がある場合
には
原判決は 破棄 され
破棄差戻し ( 刑事訴訟法413条 )
破棄自判 ( 同法413条但書 ) などの
判決 がなされます。

⑤ 当事者
上告審の当事者の呼び名
民事 の場合は
上告した側を
上告人
された側を
被上告人
と呼びます。

刑事 の場合は
常に
検察官被告人 です。

⑥ 下級審の情報
第一審と控訴審を担当した裁判所
および
裁判年月日 が掲載されます。


以下の ⑦,⑧ の2項目については
判例の要点を確認するための項目 です。
これらは
判決の一部ではなく
最高裁判所判例委員会により
判例集を編纂する際に
付される項目
です。

⑦ 判示事項
裁判において
そもそも何について
判断したのか
争点を簡潔に要約 したものです。

⑧ 判決要旨( または 決定趣旨 )
事案の概要や
争点とその判断を
要約
したものです。
また
少数意見の有無
掲載もあります。

注意点 として
裁判所が判断するに至った
プロセスや事情
および
事案関係の特殊性について
判決要旨から判断することは
困難です。


以下の ⑨,⑩ の2項目は
判例の “ body ” といえる項目 です。

⑨ 主文
裁判の結論を
簡潔に述べたものです。

上告審では
原則,上告人が
原判決を不服として
上告した点について
判断されます。
( 民事訴訟法320条 )
( 刑事訴訟法392条,414条 )

これにより
主文はその請求に応答
する形で掲載されます。

⑩ 理由
主文と同様
上告理由( 民事 )
上告趣意( 刑事 )に応答

する形で述べられます。

理由の部分で
主文の結論に至った
思考プロセスが
詳しく論じられます。


理由の中身の構造
以下の通りです。

◇ 確定した事実
上告審は法律審なので
原則は
原判決において適法に確定した事実を
前提
とします。
( 民事訴訟法321条1項 )
原審の
事案の概要
について
法的な視点で整理 されて
掲載されます。

◇ 訴訟の経緯
第一審や控訴審
どのようなものであったのか。
それらの 経緯 が掲載されます。

◇ 法的判断
判例を見る際のキモの部分 です。
具体的な事実を前提 として
その案件について
あてはめ法的評価 が行われ
それに基づき
法の適用について判断 がなされ
結論に導いた
裁判所の見解
が述べられています。

◇ 裁判官の意見
最高裁判所 の裁判の場合のみ
個別の裁判官の意見
表示しなければなりません。
( 裁判所法11条 )
これは
最高裁判所裁判官の国民審査
( 憲法79条2項,4項 )
のためです。

意見が分かれた場合
その 裁判の結論となった意見
法廷意見( 多数意見 )
その他に
多数意見に賛成 した裁判官が
更に何か 付け加えた意見
補足意見
結論には賛成 だが
理由づけが異なる意見
意見
多数意見に
理由,結論ともに反対の意見

反対意見
といいいます。


これ以下の ⑪,⑫ の2項目は
判例データベースの
テキストページ
では
通常 カット されています。

⑪ 上告理由,上告趣意
上告人が
原判決を不服として
上告した理由
です
上告理由( 民事 )
上告趣意( 刑事 )

が掲載されています。

上告理由,上告趣意 については
以前に書いたブログ

参照ください。
「 上告趣意 上告理由の検索 」

⑫ 参照
第一審,控訴審の
主文と事実および理由

掲載しています。


~ 参考文献 ~

判例学習のAtoZ 池田眞朗 編著 / 有斐閣 2010.10

法律文献学入門 - 法令・判例・文献の調べ方 西野喜一 著 / 成文堂 2002.7

判例とその読み方 中野次雄 編著 / 有斐閣 2009.4



以上

読んでいただき
ありがとうございました。