2023年10月17日火曜日

大審院の判例

法情報検索 各論 3 判例 9

前にもご紹介した
大審院判例簡易化ソフト - 韋駄天
(名古屋大学)


このソフトは
『大審院判例簡易化ソフト』
副題にもあるとおり
元々は
大審院の判例を読みやすくするために
開発されたソフトのようです。

今回は
その 大審院の判例 について
書いてみます。

まず 大審院 とは
明治8年~昭和22年まで存続し
現在の最高裁判所が
設置されるまで続いた
最上級の司法裁判所です。

民法の講義の最初の方に出てくる
権利濫用事例の判決で
宇奈月温泉事件
大審院判例が紹介されたことを
覚えています。
大審院 判決 昭和10年10月5日
(民集14巻1965頁)
 

この判例は現在でも
権利濫用のリーディング・ケース
となっています。

民法の授業の一発目に
このカタカナ書きの
読みづらい判例が出てくるので
凹んでしまった記憶がありますが…。

このように
いまだに重要な判例がありますので
大審院の判例も
参照の必要性があります。

では
大審院の判例を調べる際
どの文献にあたればよいのかです。

大審院 では
民事と刑事の判例 があります。

民事 については
大審院民事判決録(略称:民録
(明治8年~大正10年)から
途中で名称が変わって
大審院民事判例集
(略称:民集 または 大民集
(大正11年~昭和21年)まで
刊行されています。

刑事 については
大審院刑事判決録(略称:刑録
(明治8年~大正10年)から
民事と同じく名称が変わって
大審院刑事判例集
(略称:刑集 または 大刑集
(大正11年 ~ 昭和22年)まで
刊行されています。

ただし
刑事 については
明治17年12月~18年12月までは
刊行されていません。

また 民事,刑事 とも
明治21年~23年までは
刊行されていません。

この他に
民録,刑録から重要な部分についての
抄録がなされた。
大審院民事判決抄録(略称:民抄録
(明治31年~大正10年)
大審院刑事判決抄録(略称:刑抄録
(明治24年~大正10年)もあります。

大審院の判例集
民録,刑録,大民集,大刑集
公的刊行物 ですが
詳しくいうと
途中で資料名が変わったり
民事と刑事の区別がなくなったり
復刻版が出版されたりと
発効形態に変遷があります。

全てを書くと紙面をとるので
資料の詳細については
こちらを参考にすると便利です。

● 日本-大審院・最高裁判所判例集
 - 国立国会図書館リサーチ・ナビ


● リーガル・リサーチ / いしかわまりこ[他] 著
第5版 日本評論社 2016年3月


大審院判決録 として整理されたものが
刊行されるようになったのは
明治28年以降で
民録,刑録 ともに
明治28年(第1輯)~ 大正10年(第27輯)
巻次が付けられて整理されています。

これに続く
大民集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和21年(第25巻)
大刑集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和22年(第26巻)
というように
巻次の表示も「輯」から「巻」
なりました。

よくある質問で
「輯」って何て読むんですか?
と聞かれます。
この字は「シュウ」と読み
“ 集めてまとめる ”という意味です。

大審院の判例 では
「輯」大審院判決録の場合
「巻」大審院判例集の場合
使用します。

最後に
判例の引用で
「新聞×号×頁」とありますが
「新聞」って何新聞ですか?
との問い合わせがあります。

これは
『法律新聞』の略称 です。
法律新聞
明治33年9月~昭和19年8月 まで
法律新聞社 より刊行された
法律専門の新聞です。

この新聞には
法律関係の記事のほか
大審院の判例集に登載されていない
重要な判例

この新聞のみ
全文が登載されている
ケースもありますので
知っておくべき資料です。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。