2016年11月1日火曜日
上告趣意 上告理由の検索
法情報検索 各論 3 判例検索 7
上告する際
刑事事件 の場合には
上告の理由を記載した 上告趣意書 を
民事事件 では 上告理由書 を
提出しなければなりません。
刑事訴訟法 第376条
(控訴趣意書)
刑事訴訟法 第414条
(控訴に関する規定の準用)
民事訴訟法 第314条
(上告提起の方式等)
上告審判決は
上告人が原判決
(一つ前の審理をした裁判所の判決)に
不服として
上告趣意( 刑事 )あるいは
上告理由( 民事 )にて提出した
理由についてのみ判断され
裁判の争点も
この 趣意書,理由書 に
みられます。
刑事訴訟法 第392条
(調査の範囲)
刑事訴訟法 第414条
(控訴に関する規定の準用)
民事訴訟法 第320条
(調査の範囲)
従って
裁判所の判断プロセスも
まず
上告趣意( 上告理由 )があり
それを受けての判断である
判決理由
そして結論たる
主文 となります。
ただし
判決書の記載の順番は
主文
→ 判決理由
→ 上告趣意( 上告理由 )
となります。
なお
最高裁は法律審ですので
主文の後に
事実部分の記載はありません。
最高裁判所判例集では
上告趣意,上告理由が
省略されることなく掲載されます。
これに対してその他の資料では
これらが
省略されていることが多く
「裁判所ウェブサイト」 の
裁判例情報にも
「裁判所時報」 にも
上告趣意,上告理由は掲載されません。
さらに
上告審判決に至るまでは
一審および原判決の
問題点の経緯がわからないので
最高裁判所判例集には
第一審,第二審の主文および理由 が
併載されます。
この点について
「裁判所ウェブサイト」 の
裁判例情報では
第一審,第二審の主文
および理由の併載は省略され
審級相互のリンクもありません。
他方
有料データベース
LEX/DB,LLI 等においては
審級のリンクや
PDF形式で全文収録された
判例集へのリンクにより
上告趣意および上告理由や
第一審,控訴審の主文および理由を
見ることができるものもあります。
有料データベースで
検索するにあたり
各社で一長一短があります。
そこで今回は
LEX/DB(TKC) と
LLI について
昭和59年2月29日
最高裁第二小法廷・決定
事件番号 昭和57年(あ)301号
(高輪グリーンマンション事件)を
素材に比較してみます。
※ 検索日は 2016年11月1日です。
● 昭和57年(あ)301号 事件 - 裁判所Webサイト
LEX/DB(TKC) と LLI では
著名事件名の
高輪グリーンマンション事件 で
検索できます。
フリーキーワードに
“ 高輪グリーンマンション ”と
入力すればヒットします。
同時に
裁判所選択で最高裁を選択すると
判例が絞り込めます。
これに対し
裁判所Webサイトの場合は
著名事件名での検索はできませんが
GoogleやYAHOO!の検索サイトから
“ 高輪グリーンマンション事件 ”と
入力すると
裁判所ウェブサイトの
当該事件の判例が上位に出てきます。
次に
テキストページでは
LLI は
上告趣意がカットされています。
ほとんどはそうなのですが
LEX/DB(TKC)では
この事件の場合
上告趣意も掲載されています。
当該事件のように
全文の長いものは
( 冊子体の頁数は 808頁あります。)
上告趣意の頭出しをするのに
苦労しますが
テキストページの場合は
検索窓を出して
“ 上告趣意 " と入力し
検索をかけるとよいでしょう。
LLI のテキストページでは
上告趣意はカットされていますが
PDFページ では
上告趣意が掲載されています。
PDFページ へは
画面の上にある「原典」ボタンを
クリックします。
しかし
これは LLI の短所ですが
PDFページ では
上告趣意の頭出しができません。
長所 としては
テキストページから
「最高裁判所判例解説」が
直接リンク(オプション)
されているので
判例から解説を見るのに便利です。
また
第一審,第二審の判決も
リンクされています。
※ テキストページ画面の上にある
「審級」等のボタン。
一方
LEX/DB(TKC)でも
PDFページ があります。
書誌のページから
第一審,控訴審の判決
および
最高裁判所判例集への相互リンクが
あります。
LEX/DB(TKC)の長所は
PDFページからでも
上告趣意の頭出しができます。
※ PDF画面の右上の
「ブックマークボタン」
当該事件の場合
弁護人の上告趣意
( 上告趣意等1 ) と
被告人の上告趣意
( 上告趣意等2 ) の
両方とも,頭出しができます。
また
LEX/DB(TKC) で
判例から
判例評釈等の文献を見る場合 は
「検索結果一覧」画面で 書誌 を選択し
「書誌」 画面の上部に
「判例評釈へ」のボタンがありますので
クリックすると
「判例評釈等一覧」の画面にとびます。
このように
データベースには一長一短があります
また
図書館ごとで契約が異なり
オプションで登載されている
データベースも異なりますので
それらの特性を知っておくと
効率よく調べられます。
ということで
上告趣意のデータベース検索について
書きましたが
上告趣意や上告理由のみを
プリントアウトするには
頭出しができる
LEX/DB(TKC)がよいと思います。
ただ
画像の映りが
各社まちまちであり
画像に汚れがあるものや
少し斜めになっているものも
ありますので
神経質な方は比較の上
プリントアウトして下さい。
でも図書館で
上告趣意や上告理由を読むだけならば
直接
冊子体にあたって読んだ方が
手っ取り早いと思います。
※ 出典
最高裁判所刑事判例集 38巻 3号 479頁
以上
読んでいただき
ありがとうございました。