2017年2月5日日曜日
最高裁判所判例の構成
法情報検索 各論 3 判例検索 12
物事は
それぞれの
パーツによって成り立っています。
日常生活や
仕事での事務処理
その他
研究などを行う際に
どのような仕組みで
構成されているのかを
理解しておくと
同様のものに
出会った時の処理を
迅速に行うことができます。
官報の構成 については
以前のブログ
「 官報の発行形態と構成 」 で
述べました。
今回は
最高裁判例の構成 について
述べたいと思います。
まず
最高裁判所の判例 について
判例集に掲載されている事項 を
前から順に
見ていきます。
① 事件名
民事 の場合は
原告の請求内容を
簡単に記載されたもの
刑事 の場合は
起訴状に記載される罪名が
事件名となります。
なお
報道記事の事件名とは
異なります。
② 事件番号
事件番号については
以前のブログに書きました ので
「 裁判所 事件記録符号の読み方 」 を
参照ください。
③ 裁判年月日
判決または決定が下された年月日
および
審理および裁判を行った法廷名
( [ 第1~3 ] 小法廷 または 大法廷 ) と
裁判の種類 ( 判決または決定 )
が掲載されています。
④ 結論
最高裁判所が下す結論には
・(上告)却下
・(上告)棄却
・破棄差戻し
・破棄自判
などがあります。
民事訴訟 の場合
上告が不適法である場合 には
決定 で
上告を 却下 することができます。
( 民事訴訟法317条1項 )
明らかに上告理由に該当しない場合 は
決定 で
上告を 棄却 することができます。
( 同条2項 )。
これら以外の場合は
口頭弁論を経た上 で
上告された内容に
理由がない場合 には
判決 で
上告を 棄却 することができます。
( 同法319条 )
一方
適法な上告 がなされ
かつ
上告された内容に
理由が認められる
( 認容する ) 場合
または
訴訟要件などの
職権調査事項に関して
原判決を維持できないことが
判明した場合 は
原判決は 破棄 されます。
( 民事訴訟法322条 )
原判決を破棄 した上で
原裁判所
( 控訴審,高裁 )に戻し
もう一度審理 されることが
破棄差戻し ( 民事訴訟法325条 )
最高裁判所が自ら裁判 することが
破棄自判 ( 同法326条 ) です。
刑事訴訟 の場合
上告が不適法である場合 には
決定 で
上告を 棄却 することができます。
( 刑事訴訟法414条,385条,395条 )
訴訟手続上
例えば
・移送申立て( 刑事訴訟法19条 )
・保釈請求( 同法92条 )
・証拠調べ請求( 同法316条の5 )
・忌避申立( 同法429条 )
などの請求・申立を退ける場合 には
却下 することができます。
一方
民事同様
上告に理由がない場合 には
判決 により
上告を 棄却 ( 刑事訴訟法408条 )。
上告された内容に
理由がある場合
または
刑事訴訟法411条 に掲げる
職権破棄事由 がある場合 には
原判決は 破棄 され
破棄差戻し ( 刑事訴訟法413条 ) や
破棄自判 ( 同法413条但書 ) などの
判決 がなされます。
⑤ 当事者
上告審の当事者の呼び名 は
民事 の場合は
上告した側を
上告人
された側を
被上告人
と呼びます。
刑事 の場合は
常に
検察官 と 被告人 です。
⑥ 下級審の情報
第一審と控訴審を担当した裁判所
および
裁判年月日 が掲載されます。
以下の ⑦,⑧ の2項目については
判例の要点を確認するための項目 です。
これらは
判決の一部ではなく
最高裁判所判例委員会により
判例集を編纂する際に
付される項目 です。
⑦ 判示事項
裁判において
そもそも何について
判断したのか
争点を簡潔に要約 したものです。
⑧ 判決要旨( または 決定趣旨 )
事案の概要や
争点とその判断を
要約 したものです。
また
少数意見の有無 の
掲載もあります。
注意点 として
裁判所が判断するに至った
プロセスや事情
および
事案関係の特殊性について
判決要旨から判断することは
困難です。
以下の ⑨,⑩ の2項目は
判例の “ body ” といえる項目 です。
⑨ 主文
裁判の結論を
簡潔に述べたものです。
上告審では
原則,上告人が
原判決を不服として
上告した点について
判断されます。
( 民事訴訟法320条 )
( 刑事訴訟法392条,414条 )
これにより
主文はその請求に応答
する形で掲載されます。
⑩ 理由
主文と同様
上告理由( 民事 )
上告趣意( 刑事 )に応答
する形で述べられます。
理由の部分で
主文の結論に至った
思考プロセスが
詳しく論じられます。
理由の中身の構造 は
以下の通りです。
◇ 確定した事実
上告審は法律審なので
原則は
原判決において適法に確定した事実を
前提 とします。
( 民事訴訟法321条1項 )
原審の
事案の概要 について
法的な視点で整理 されて
掲載されます。
◇ 訴訟の経緯
第一審や控訴審 が
どのようなものであったのか。
それらの 経緯 が掲載されます。
◇ 法的判断
判例を見る際のキモの部分 です。
具体的な事実を前提 として
その案件について
あてはめ と 法的評価 が行われ
それに基づき
法の適用について判断 がなされ
結論に導いた
裁判所の見解 が述べられています。
◇ 裁判官の意見
最高裁判所 の裁判の場合のみ
個別の裁判官の意見 を
表示しなければなりません。
( 裁判所法11条 )
これは
最高裁判所裁判官の国民審査
( 憲法79条2項,4項 )
のためです。
意見が分かれた場合 は
その 裁判の結論となった意見 を
法廷意見( 多数意見 )。
その他に
多数意見に賛成 した裁判官が
更に何か 付け加えた意見 を
補足意見。
結論には賛成 だが
理由づけが異なる意見 を
意見。
多数意見に
理由,結論ともに反対の意見 を
反対意見
といいいます。
これ以下の ⑪,⑫ の2項目は
判例データベースの
テキストページ では
通常 カット されています。
⑪ 上告理由,上告趣意
上告人が
原判決を不服として
上告した理由 です
上告理由( 民事 )
上告趣意( 刑事 )
が掲載されています。
上告理由,上告趣意 については
以前に書いたブログ を
参照ください。
「 上告趣意 上告理由の検索 」
⑫ 参照
第一審,控訴審の
主文と事実および理由 を
掲載しています。
~ 参考文献 ~
判例学習のAtoZ 池田眞朗 編著 / 有斐閣 2010.10
法律文献学入門 - 法令・判例・文献の調べ方 西野喜一 著 / 成文堂 2002.7
判例とその読み方 中野次雄 編著 / 有斐閣 2009.4
以上
読んでいただき
ありがとうございました。