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2016年10月16日日曜日
判例と裁判例
法情報検索 各論 3 判例検索 2
図書館のレファレンスサービスでの
問合わせや
司書対象の
リーガル・リサーチの研修で
よくある質問の中に
判例って,法律なんですか?
という質問がよくあります。
ちなみに,法科大学院生から,
このような質問を
受けたことはありません。
当然ですよね。
もちろん,法律ではありません。
ここでは,
判例とはどういう意味で使われるのか
そして,
判例と裁判例なるものはどう違うのかを
説明します。
まず,
憲法第76条3項 を見ると
「 すべて裁判官は
その良心に従ひ
独立してその職権を行ひ
この憲法及び法律にのみ
拘束される 」
このように
憲法上
裁判官は憲法と法律には
拘束されますが,
判例には拘束されないのです。
しかし
同様の事案について
裁判官の個人的思想によって
判断が異なれば
当事者とすれば
予測不能であり,不安定ですよね。
自分の経験上でも
簡易裁判所では
かなり自由な裁判が
なされているように見えます。
だから
慎重・公正な判断をするために
三審制の制度があり
法的安定性を保つために
裁判所法などで判断を拘束し
判断基準の統一がなされています。
まず
判例変更を行う場合は
最高裁判所の大法廷で審理されます。
( 裁判所法10条3号 )
また
最高裁判所の判例と相反する
判断がなされた場合には
民事訴訟では上告受理の申立理由
刑事訴訟では上告の申立理由
になります。
( 民事訴訟法318条1項 )
( 刑事訴訟法405条2号 )
さらに
裁判所法4条の規定において
「 上級審の裁判所の
裁判における判断は
その事件について
下級審の裁判所を拘束する 」
とされています。
つぎに
判例 という言葉には
三つの意味があります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
①…
個々の判決
(例)昭和49年9月26日 の判例
②…
ある特定の裁判の理由の中で
示された判断
( 判決のなかで示された
法理論・準則 )
③…
ある問題についての
多くの判決から導き出される
裁判所の法律的な考え方
( 複数の判例をすべて説明できる
共通の法理論 )
~~~~~~~~~~~~~~~~~
※ 良永和隆 「 判例の意義と読み方 」 - 開講にあたって
http://1st.geocities.jp/philosophicaljurist/tanbutu/hanreiyomikata
から引用しました。
( アクセス日:2016年10月16日 )
① の個々の判決の中でも
重要な 「 判例 」 として
価値があると判断し
最高裁判所判例委員会 が
選択したものが
「 最高裁判所判例集 」 に
登載されます。
なお,この
「最高裁判所判例集(民集・刑集)」
に,登載された判例は,
「 法曹時報 」 に
「 最高裁判所判例解説 」 として
登載されます。
したがって,判例を引用する場合
最高裁判所判例委員会の
お墨付きもあることから
「 最高裁判所判例集 」登載のものを
引用することがよいとされます。
この 最高裁判所判例集 は
毎月1回発行されます。
この時点での装丁は
白の表紙で
民亊と刑事が分裂していなく
民亊のページの後に
刑事のページがきます。
多数の図書館では
その後に
民事 と 刑事 が別々に製本され
「 最高裁判所民事判例集 」
( 民集 )と
「最高裁判所刑事判例集」
( 刑集 ) とに
分裂します。
つまり
白表紙のうちは
「 最高裁判所判例集 」
( 最高裁判例集 ) で
製本されると
「 最高裁判所民事判例集 」
( 民集 )
「 最高裁判所刑事判例集 」
( 刑集 )
に名前が変わります。
後に説明する
「 高等裁判所判例集 」
↓
「 高等裁判所民事判例集 」
( 高民集 )
「 高等裁判所刑事判例集 」
( 高刑集 ) も
同様の構造になっています。
ページについては
その巻の通しのページと
その号の個別のページの両方が
付されています。
この他に
「 最高裁判所裁判集民事 」
( 裁判集民 )
「 最高裁判所裁判集刑事 」
( 裁判集刑 ) が
「 最高裁判所判例集 」 以外に
最高裁判例を搭載した
資料としてあります。
これらは
「 最高裁判所判例集 」 へ
登載するまでではないが
参考になる判例を
上告理由・上告趣意を含めて
登載しています。
また,名前の通り
判例委員会が選択 した
「 判例 」 との区別のために
こちらの資料名は
「 裁判集 」 となっています。
それ以外で
「 高等裁判所判例集 」 に
ついては
なぜ,最高裁判例でないのに
「 裁判例集 」 でなく
「 判例集 」 と呼ばれるのかです
最高裁の判例がないものは
高裁の判断も
判例として扱われるからです。
( 民事訴訟法318条1項 )
( 刑事訴訟法405条3号 )
手続きも
各高等裁判所の判例委員会 が
高等裁判所の判例として
選択したものを
「 高等裁判所判例集 」 に
登載するので,
「 判例集 」 とされています。
その他については
裁判所判例委員会の
協議を経て選択された,
「 判例集 」 と区別するため
実務に与える影響が少ない先例を
「 裁判例集 」
としているようです。
検索の際には
その辺を押さえておいてください。
参考文献
① 判例とその読み方 中野次雄 編著 / 有斐閣 2009.4
② 判例学習のAtoZ 池田眞朗 編著 / 有斐閣 2010.10
③ 法律文献学入門 - 法令・判例・文献の調べ方 西野喜一 著 / 成文堂 2002.7
④ リーガル・リサーチ 第5版 いしかわまりこ 他著 / 日本評論社 2016.3
さらに,判例学習において
法学部以外の方で
上記① は少し難しいですが
②でも難しいと思う方は
⑤ 読み方・使いこなし方のコツがわかる 日本一やさしい条文・判例の教科書
品川皓亮 著 / 日本実業出版社 2015.1
が,易しくてわかりやすい
と思います。
以上
読んでいただき,
ありがとうございました。
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