今回は
無料で配信されている講義を活用し
学習の効率アップを図ってもらえるよう
無料で受けられる講義を
いくつかご案内します。
◆ 弥生カレッジCMC
- 簿記・弥生のビジネススクール
ここまでやっていいの?
というぐらい
サービス満点の学校。
日商簿記3級,2級 など が 無料。
おまけにレジュメがあるので
テキスト代も無料という充実ぶり。
さすがは関西商人といった感じです。
◆ フリーラーニング
- Free–LearninG For Your Extention
公務員や不動産鑑定士などの
経済学 科目では
この先生に救われた方も
多いと思います。
そのぐらいわかりやすい講義で有名な
石川秀樹 先生。
ただし
テキスト代 は
書店で購入する必要があるため
有料 です。
◆ 高校倫理 - 白坂慎太郎
元・学習塾講師 の
白坂慎太郎 氏 の動画サイト
高校倫理 の他に
哲学入門,心理学,宗教入門,
経営学,経済学入門 人財育成 等
講義内容は多岐にわたります。
大学生や社会人になって
倫理や哲学の基礎的な考え方を
見直すことは重要です。
そこで
高校レベルの教科書で
ブラッシュアップすることは
非常に合理的です。
だから
山川出版社 の
「もういちど読むシリーズ」 が
注目されるということなんでしょう。
この動画は
高校倫理 等を
ブラッシュアップする際の
手助け になると思います。
◆ わくわくアカデミー IT共通分野
- 新着動画リスト
(株)わくわくスタディワールド が
運営する動画です。
情報処理試験全ての項目を
開設する動画ではありませんが
女性の声( たぶん社長! )で
わかりやすく解説しているので
挙げておきました。
最後に
会員登録が必要ですが
MIT や Yale大学,UCI など
海外トップレベル大学の講義動画を
配信している
Asuka Academy を紹介しましょう。
◆ Asuka Academy
- 世界最高の海外大学講義を
日本語で無料で学べるオンライン講座
こちらの講座は
日本語字幕つきで配信しているので
語学力に自信がなくても
取り組むことができます。
以上
これらの情報が
学習の一助となれば幸いです。
読んでいただき
ありがとうございました。
2023年10月24日火曜日
2023年10月17日火曜日
大審院の判例
法情報検索 各論 3 判例 9
前にもご紹介した
大審院判例簡易化ソフト - 韋駄天
(名古屋大学)
このソフトは
『大審院判例簡易化ソフト』と
副題にもあるとおり
元々は
大審院の判例を読みやすくするために
開発されたソフトのようです。
今回は
その 大審院の判例 について
書いてみます。
まず 大審院 とは
明治8年~昭和22年まで存続し
現在の最高裁判所が
設置されるまで続いた
最上級の司法裁判所です。
民法の講義の最初の方に出てくる
権利濫用事例の判決で
宇奈月温泉事件 の
大審院判例が紹介されたことを
覚えています。
大審院 判決 昭和10年10月5日
(民集14巻1965頁)
この判例は現在でも
権利濫用のリーディング・ケース
となっています。
民法の授業の一発目に
このカタカナ書きの
読みづらい判例が出てくるので
凹んでしまった記憶がありますが…。
このように
いまだに重要な判例がありますので
大審院の判例も
参照する必要性があります。
では
大審院の判例を調べる際
どの文献にあたればよいのかです。
大審院 では
民事と刑事の判例 があります。
民事 については
大審院民事判決録(略称:民録)
(明治8年~大正10年)から
途中で名称が変わって
大審院民事判例集
(略称:民集 または 大民集)
(大正11年~昭和21年)まで
刊行されています。
刑事 については
大審院刑事判決録(略称:刑録)
(明治8年~大正10年)から
民事と同じく名称が変わって
大審院刑事判例集
(略称:刑集 または 大刑集)
(大正11年 ~ 昭和22年)まで
刊行されています。
ただし
刑事 については
明治17年12月~18年12月までは
刊行されていません。
また 民事,刑事 とも
明治21年~23年までは
刊行されていません。
この他に
民録,刑録から重要な部分についての
抄録がなされた。
大審院民事判決抄録(略称:民抄録)
(明治31年~大正10年)
大審院刑事判決抄録(略称:刑抄録)
(明治24年~大正10年)もあります。
大審院の判例集 で
民録,刑録,大民集,大刑集 は
公的刊行物 ですが
詳しくいうと
途中で資料名が変わったり
民事と刑事の区別がなくなったり
復刻版が出版されたりと
発効形態に変遷があります。
全てを書くと紙面をとるので
資料の詳細については
こちらを参考にすると便利です。
● 日本-大審院・最高裁判所判例集
- 国立国会図書館リサーチ・ナビ
● リーガル・リサーチ / いしかわまりこ[他] 著
第5版 日本評論社 2016年3月
大審院判決録 として整理されたものが
刊行されるようになったのは
明治28年以降で
民録,刑録 ともに
明治28年(第1輯)~ 大正10年(第27輯)と
巻次が付けられて整理されています。
これに続く
大民集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和21年(第25巻)
大刑集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和22年(第26巻)
というように
巻次の表示も「輯」から「巻」に
なりました。
よくある質問で
「輯」って何て読むんですか?
と聞かれます。
この字は「シュウ」と読み
“ 集めてまとめる ”という意味です。
大審院の判例 では
「輯」は 大審院判決録の場合 で
「巻」は 大審院判例集の場合 に
使用します。
最後に
判例の引用で
「新聞×号×頁」とありますが
「新聞」って何新聞ですか?
との問い合わせがあります。
これは
『法律新聞』の略称 です。
法律新聞 は
明治33年9月~昭和19年8月 まで
法律新聞社 より刊行された
法律専門の新聞です。
この新聞には
法律関係の記事のほか
大審院の判例集に登載されていない
重要な判例も
この新聞のみに
全文が登載されている
ケースもありますので
知っておくべき資料です。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
前にもご紹介した
大審院判例簡易化ソフト - 韋駄天
(名古屋大学)
このソフトは
『大審院判例簡易化ソフト』と
副題にもあるとおり
元々は
大審院の判例を読みやすくするために
開発されたソフトのようです。
今回は
その 大審院の判例 について
書いてみます。
まず 大審院 とは
明治8年~昭和22年まで存続し
現在の最高裁判所が
設置されるまで続いた
最上級の司法裁判所です。
民法の講義の最初の方に出てくる
権利濫用事例の判決で
宇奈月温泉事件 の
大審院判例が紹介されたことを
覚えています。
大審院 判決 昭和10年10月5日
(民集14巻1965頁)
この判例は現在でも
権利濫用のリーディング・ケース
となっています。
民法の授業の一発目に
このカタカナ書きの
読みづらい判例が出てくるので
凹んでしまった記憶がありますが…。
このように
いまだに重要な判例がありますので
大審院の判例も
参照する必要性があります。
では
大審院の判例を調べる際
どの文献にあたればよいのかです。
大審院 では
民事と刑事の判例 があります。
民事 については
大審院民事判決録(略称:民録)
(明治8年~大正10年)から
途中で名称が変わって
大審院民事判例集
(略称:民集 または 大民集)
(大正11年~昭和21年)まで
刊行されています。
刑事 については
大審院刑事判決録(略称:刑録)
(明治8年~大正10年)から
民事と同じく名称が変わって
大審院刑事判例集
(略称:刑集 または 大刑集)
(大正11年 ~ 昭和22年)まで
刊行されています。
ただし
刑事 については
明治17年12月~18年12月までは
刊行されていません。
また 民事,刑事 とも
明治21年~23年までは
刊行されていません。
この他に
民録,刑録から重要な部分についての
抄録がなされた。
大審院民事判決抄録(略称:民抄録)
(明治31年~大正10年)
大審院刑事判決抄録(略称:刑抄録)
(明治24年~大正10年)もあります。
大審院の判例集 で
民録,刑録,大民集,大刑集 は
公的刊行物 ですが
詳しくいうと
途中で資料名が変わったり
民事と刑事の区別がなくなったり
復刻版が出版されたりと
発効形態に変遷があります。
全てを書くと紙面をとるので
資料の詳細については
こちらを参考にすると便利です。
● 日本-大審院・最高裁判所判例集
- 国立国会図書館リサーチ・ナビ
● リーガル・リサーチ / いしかわまりこ[他] 著
第5版 日本評論社 2016年3月
大審院判決録 として整理されたものが
刊行されるようになったのは
明治28年以降で
民録,刑録 ともに
明治28年(第1輯)~ 大正10年(第27輯)と
巻次が付けられて整理されています。
これに続く
大民集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和21年(第25巻)
大刑集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和22年(第26巻)
というように
巻次の表示も「輯」から「巻」に
なりました。
よくある質問で
「輯」って何て読むんですか?
と聞かれます。
この字は「シュウ」と読み
“ 集めてまとめる ”という意味です。
大審院の判例 では
「輯」は 大審院判決録の場合 で
「巻」は 大審院判例集の場合 に
使用します。
最後に
判例の引用で
「新聞×号×頁」とありますが
「新聞」って何新聞ですか?
との問い合わせがあります。
これは
『法律新聞』の略称 です。
法律新聞 は
明治33年9月~昭和19年8月 まで
法律新聞社 より刊行された
法律専門の新聞です。
この新聞には
法律関係の記事のほか
大審院の判例集に登載されていない
重要な判例も
この新聞のみに
全文が登載されている
ケースもありますので
知っておくべき資料です。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
2023年10月16日月曜日
カタカナ文語体と韋駄天
法情報検索 各論 3 判例 8
明治時代の法文は
カタカナ・文語体なので
読み慣れないとつらいですよね…。
もっとも六法のうち
憲法,刑事訴訟法,民法(家族法)は
戦後まもなく。
刑法,民事訴訟法は
21世紀を迎える少し前に。
それぞれ
平仮名・口語体(現代語)表記へと
改められましたが
民法(財産法)や商法は
近年までカタカナ・文語体でした。
◆ 憲法の現代語化
日本国憲法
(昭和21年11月3日公布
昭和22年5月3日施行)
◆ 民法の現代語化
民法の一部を改正する法律(家族法)
(昭和22年12月22日法律第222号)
民法の改正に伴う
関係法律の整理に関する法律(家族法)
(昭和22年12月22日法律第223号)
民法の一部を改正する法律(財産法)
(平成16年12月1日法律第147号)
◆ 刑法の現代語化
刑法の一部を改正する法律
(平成7年5月12日法律第91号)
◆ 商法・会社法・保険法の現代語化
会社法
(平成17年7月26日法律第86号)
会社法の施行に伴う
関係法律の整備等に関する法律
(平成17年7月26日法律第87号)
保険法
(平成20年6月6日法律第56号)
保険法の施行に伴う
関係法律の整備に関する法律
(平成20年6月6日法律第57号)
商法及び国際海上物品運送法の
一部を改正する法律
(平成30年5月25日法律第29号)
◆ 民事訴訟法の現代語化
民事訴訟法
(平成8年6月26日法律第109号)
民事訴訟法の施行に伴う
関係法律の整備に関する法律
(平成8年6月26日法律第110号)
◆ 刑事訴訟法の現代語化
刑事訴訟法
(昭和23年7月10日法律第131号)
研究等で
明治時代の法令や大審院の判例など
カタカナ・文語体の文献を
読むことに慣れている方々は
カタカナ・文語体のほうが
味があってよいと
言われる方もいると思いますが
そもそも法律は
その適用を受ける
国民のためにあるのであり
そのためには
できるだけ一般の国民に
わかりやすいものであるべきで
このような
片仮名・文語体の法律の存在は
問題があると
いわざるを得ないでしょう。
川崎政司
『法律の現代語化
- 求められる法文の民主化の努力』
「立法と調査」NO.189・1995年9月
『法制執務コラム-参議院法制局』より
とあるように
立法者側も
現代語化を進めているようです。
ちなみに
『法制執務コラム-参議院法制局』は
参議院法制局職員が執筆した記事
(記事内容は執筆当時のもの)を
『立法と調査』
(参議院事務局企画調整室/編)から
転載したもので
法令等に関するエピソードなどが
記載されていています。
また
原典の『立法と調査』 は
主要な政策課題や予算・税制の解説
国会に提出された法律案の紹介
国会ならではの情報や資料を駆使した
調査・研究の報告・論文を
掲載しています。
●『立法と調査』- 参議院 調査室作成資料
参議院トップ
> 調査室作成資料
> 立法と調査
カタカナ書きの文が読みづらい
という方は
韋駄天-大審院判例簡易化ソフト
(名古屋大学)というソフトに
カタカナをひらがなにする。
濁点をつける。
句点・読点をつける。
旧字体を新字体にする。
『難読字に読み仮名を付ける』の欄に
チェックを付けて実行すると
難読字に読み仮名を付けることができる。
読み仮名の付いた語に
マウス・カーソルを当てると
意味が表示される。
という機能があります。
「国立公文書館デジタルアーカイブ」や
「国立国会図書館デジタルコレクション」は
写真なので変換ができませんが
HTML等で書かれていれば
コピペして実行すれば変換ができます。
ただし
文語体が口語体の現代語に
翻訳されるわけではありませんので
ご注意ください。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
明治時代の法文は
カタカナ・文語体なので
読み慣れないとつらいですよね…。
もっとも六法のうち
憲法,刑事訴訟法,民法(家族法)は
戦後まもなく。
刑法,民事訴訟法は
21世紀を迎える少し前に。
それぞれ
平仮名・口語体(現代語)表記へと
改められましたが
民法(財産法)や商法は
近年までカタカナ・文語体でした。
◆ 憲法の現代語化
日本国憲法
(昭和21年11月3日公布
昭和22年5月3日施行)
◆ 民法の現代語化
民法の一部を改正する法律(家族法)
(昭和22年12月22日法律第222号)
民法の改正に伴う
関係法律の整理に関する法律(家族法)
(昭和22年12月22日法律第223号)
民法の一部を改正する法律(財産法)
(平成16年12月1日法律第147号)
◆ 刑法の現代語化
刑法の一部を改正する法律
(平成7年5月12日法律第91号)
◆ 商法・会社法・保険法の現代語化
会社法
(平成17年7月26日法律第86号)
会社法の施行に伴う
関係法律の整備等に関する法律
(平成17年7月26日法律第87号)
保険法
(平成20年6月6日法律第56号)
保険法の施行に伴う
関係法律の整備に関する法律
(平成20年6月6日法律第57号)
商法及び国際海上物品運送法の
一部を改正する法律
(平成30年5月25日法律第29号)
◆ 民事訴訟法の現代語化
民事訴訟法
(平成8年6月26日法律第109号)
民事訴訟法の施行に伴う
関係法律の整備に関する法律
(平成8年6月26日法律第110号)
◆ 刑事訴訟法の現代語化
刑事訴訟法
(昭和23年7月10日法律第131号)
研究等で
明治時代の法令や大審院の判例など
カタカナ・文語体の文献を
読むことに慣れている方々は
カタカナ・文語体のほうが
味があってよいと
言われる方もいると思いますが
そもそも法律は
その適用を受ける
国民のためにあるのであり
そのためには
できるだけ一般の国民に
わかりやすいものであるべきで
このような
片仮名・文語体の法律の存在は
問題があると
いわざるを得ないでしょう。
川崎政司
『法律の現代語化
- 求められる法文の民主化の努力』
「立法と調査」NO.189・1995年9月
『法制執務コラム-参議院法制局』より
とあるように
立法者側も
現代語化を進めているようです。
ちなみに
『法制執務コラム-参議院法制局』は
参議院法制局職員が執筆した記事
(記事内容は執筆当時のもの)を
『立法と調査』
(参議院事務局企画調整室/編)から
転載したもので
法令等に関するエピソードなどが
記載されていています。
また
原典の『立法と調査』 は
主要な政策課題や予算・税制の解説
国会に提出された法律案の紹介
国会ならではの情報や資料を駆使した
調査・研究の報告・論文を
掲載しています。
●『立法と調査』- 参議院 調査室作成資料
参議院トップ
> 調査室作成資料
> 立法と調査
カタカナ書きの文が読みづらい
という方は
韋駄天-大審院判例簡易化ソフト
(名古屋大学)というソフトに
カタカナをひらがなにする。
濁点をつける。
句点・読点をつける。
旧字体を新字体にする。
『難読字に読み仮名を付ける』の欄に
チェックを付けて実行すると
難読字に読み仮名を付けることができる。
読み仮名の付いた語に
マウス・カーソルを当てると
意味が表示される。
という機能があります。
「国立公文書館デジタルアーカイブ」や
「国立国会図書館デジタルコレクション」は
写真なので変換ができませんが
HTML等で書かれていれば
コピペして実行すれば変換ができます。
ただし
文語体が口語体の現代語に
翻訳されるわけではありませんので
ご注意ください。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
2023年10月15日日曜日
判例公刊
法情報検索 各論 3 判例 3
判例を調べる際
判例集に載っていない
判例があります。
憲法第82条〈裁判の公開〉では
1項…
裁判の対審及び判決は
公開法廷でこれを行ふ。
2項…
裁判所が
裁判官の全員一致で
公の秩序又は善良の風俗を
害する虞があると決した場合には
対審は
公開しないで
これを行うことができる。
但し
政治犯罪
出版に関する犯罪
又は
この憲法第三章で保障する
国民の権利が問題となっている
事件の対審は
常にこれを公開しなければならない。
とあります。
一方
判例には
判決後に判例集等に登載される
『公刊判例』と
公刊物に公開されることのない
『未公刊判例』があります。
憲法で裁判の公開を規定しながら
判例においては一部のみが公刊され
あとの大多数は
公刊物に登載されていません。
また
判例登載の基準についても
ほとんど明らかにされていないのが
現状です。
この点について
判例を積極的に公刊するか否かには
双方の立場からの意見があります。
まず
積極的に公刊すべきという立場
( 促進説 ) からは
次のような主張があります。
★ 裁判の平等性の強調
★ 法的安定性の重視
★ 情報公開の尊重
( 公刊されている
私的判例集においては
匿名化が一般的になっています。)
一方
全ての判例公刊には消極的な立場
( 限定説 ) からは
次のように主張されます。
★ 判例公刊にはコストがかかり
効率性や合理性からみても
全判例の公刊に意味がない。
★ プライバシーの公開になるという
問題点がある。
これらの立場を踏まえて
現状の判例公刊になっているので
論文等に引用されていても
実際に入手できない判例もあります。
なお
法律的判断が
過去の判断と同様であれば
判例集には掲載されません。
ですから
話題性のある判決でも
判例集に
掲載されているとは限りません。
しかし
自分の探している判例が
見つからなかったとしても
公刊されていないのではなく
検索方法が至らない場合も
ありますので
改めて検索してみましょう。
① データベース検索
各社有料データベース
裁判所Webサイトなどでは
判例の収録件数がそれぞれ違うので
目的の判例がない場合は
すべてのデータベースを
検索してみます。
よくある検索ミスとして
事件名で検索する場合は
データベースにより
事件名が異なっていたりします。
また
事件名や
その事件に登場する固有名詞では
検索ができなかったりするので
検索に工夫が必要です。
② 法律雑誌での調査
判例時報 や 判例タイムズなどの
判例雑誌は
出版社が独自に収集している判例もあり
公的判例集に登載されていない判例も
ありますので
データベースの法律雑誌横断検索や
法律判例文献情報などの冊子体へ
つぶさに当たってみましょう。
③ 新聞記事での調査
新聞記事に判決要旨が
掲載されることがあります。
また
判例集に掲載されていない判決が
掲載されている場合もあります。
これらの検索を試みても
見つからない場合は
そもそも
元の情報が間違えている場合も
あります。
そのあたりの検証も
行ってみるとよいでしょう。
~ 参考文献 ~
判例公刊 については
・指宿信『判例公刊について 上』
法律時報 73巻10号 67-73頁
・指宿信『判例公刊について 下』
法律時報 73巻11号 91-97頁
から要旨をまとめ
・町村泰貴
『裁判所の判決や決定が公開される割合』
Matimulog(2012/5/26)
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2012/05/justice-08f6.html#more
(アクセス日:2023年10月15日)
・椿寿夫『判例の入手をめぐって』
法律時報 62巻5号 38頁
を適宜参考にしました。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
判例を調べる際
判例集に載っていない
判例があります。
憲法第82条〈裁判の公開〉では
1項…
裁判の対審及び判決は
公開法廷でこれを行ふ。
2項…
裁判所が
裁判官の全員一致で
公の秩序又は善良の風俗を
害する虞があると決した場合には
対審は
公開しないで
これを行うことができる。
但し
政治犯罪
出版に関する犯罪
又は
この憲法第三章で保障する
国民の権利が問題となっている
事件の対審は
常にこれを公開しなければならない。
とあります。
一方
判例には
判決後に判例集等に登載される
『公刊判例』と
公刊物に公開されることのない
『未公刊判例』があります。
憲法で裁判の公開を規定しながら
判例においては一部のみが公刊され
あとの大多数は
公刊物に登載されていません。
また
判例登載の基準についても
ほとんど明らかにされていないのが
現状です。
この点について
判例を積極的に公刊するか否かには
双方の立場からの意見があります。
まず
積極的に公刊すべきという立場
( 促進説 ) からは
次のような主張があります。
★ 裁判の平等性の強調
★ 法的安定性の重視
★ 情報公開の尊重
( 公刊されている
私的判例集においては
匿名化が一般的になっています。)
一方
全ての判例公刊には消極的な立場
( 限定説 ) からは
次のように主張されます。
★ 判例公刊にはコストがかかり
効率性や合理性からみても
全判例の公刊に意味がない。
★ プライバシーの公開になるという
問題点がある。
これらの立場を踏まえて
現状の判例公刊になっているので
論文等に引用されていても
実際に入手できない判例もあります。
なお
法律的判断が
過去の判断と同様であれば
判例集には掲載されません。
ですから
話題性のある判決でも
判例集に
掲載されているとは限りません。
しかし
自分の探している判例が
見つからなかったとしても
公刊されていないのではなく
検索方法が至らない場合も
ありますので
改めて検索してみましょう。
① データベース検索
各社有料データベース
裁判所Webサイトなどでは
判例の収録件数がそれぞれ違うので
目的の判例がない場合は
すべてのデータベースを
検索してみます。
よくある検索ミスとして
事件名で検索する場合は
データベースにより
事件名が異なっていたりします。
また
事件名や
その事件に登場する固有名詞では
検索ができなかったりするので
検索に工夫が必要です。
② 法律雑誌での調査
判例時報 や 判例タイムズなどの
判例雑誌は
出版社が独自に収集している判例もあり
公的判例集に登載されていない判例も
ありますので
データベースの法律雑誌横断検索や
法律判例文献情報などの冊子体へ
つぶさに当たってみましょう。
③ 新聞記事での調査
新聞記事に判決要旨が
掲載されることがあります。
また
判例集に掲載されていない判決が
掲載されている場合もあります。
これらの検索を試みても
見つからない場合は
そもそも
元の情報が間違えている場合も
あります。
そのあたりの検証も
行ってみるとよいでしょう。
~ 参考文献 ~
判例公刊 については
・指宿信『判例公刊について 上』
法律時報 73巻10号 67-73頁
・指宿信『判例公刊について 下』
法律時報 73巻11号 91-97頁
から要旨をまとめ
・町村泰貴
『裁判所の判決や決定が公開される割合』
Matimulog(2012/5/26)
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2012/05/justice-08f6.html#more
(アクセス日:2023年10月15日)
・椿寿夫『判例の入手をめぐって』
法律時報 62巻5号 38頁
を適宜参考にしました。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
2023年10月14日土曜日
判例が収録されるまでの期間
法情報検索 各論 3 判例 1
かつての紙媒体の情報から
IT技術の発達により,
インターネットを介しての
Webの登場で
情報流通が高速化しました。
判例や法令等の法情報も同様で
より速く
情報を知ることができます。
今回は
判決が言い渡されてから
各媒体に
判例として収録されるまでの期間を
比較しました。
判例が収録されるまでの期間は
データベースや冊子体資料により
異なります。
図にすると,こんな感じです。
◆ 裁判所ウェブサイト - 裁判例検索
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
最高裁判所判例集 及び
下級裁判所判例集 については
過去3か月以内
知的財産裁判例集 については
過去1か月以内 の
各判決等の一覧を表示。
早いものでは
判決の翌日に掲載され
速報性に富む一方
審級・裁判所によって
掲載時期にばらつき
があります。
掲載までの期間は
翌日~約2週間から1ヵ月後。
◆ 裁判所時報
※『裁判所時報』は
1780号(2021年12月15日)をもって
終刊となりました。
最高裁判所事務総局が
月2回(1日,15日)発行 する
裁判所組織内の広報新聞。
裁判例,最高裁判所判例要旨,
最高裁判所裁判例要旨(民事のみ)の
速報が掲載されています。
また
裁判所に関係ある法律や
最高裁判所規則・規程の改廃,
裁判官の人事異動情報,
司法修習生の修習開始・終了,
裁判所関係のニュース等を収録。
1月1日号には
長官所長会同における
長官挨拶が掲載されます。
判決言渡日から
約2週間から1ヶ月後に
判決全文を速報。
インターネットでの判決速報が
なかった当時は
相当早く判例を見ることが出来る
情報媒体として活用されていました。
民集・刑集の要旨を見たり
速報として利用するのに役立ちます。
◆ 判例雑誌
『判例タイムズ』月1回
『判例時報』月3回
分野別判例雑誌などがあります。
掲載は判決言渡日から
早くて約1ヵ月~6ヵ月
「判タ」,「判時」については
約1ヵ月 ~ 3ヶ月後。
◆ 有料判例データベース(Web版)
◇ LEX/DBインターネット - ご利用案内
https://lex.lawlibrary.jp/guide.html
新判例公表にあわせ
毎週金曜日に判例を追録更新。
毎週アップデートされる
新着判例を一覧で確認できます。
◇ D1-law.com 判例体系
https://dtp-cm.d1-law.com/
更新頻度は日次更新。
加除式書籍で提供されている
『判例体系』のインターネット版。
◇ Westlaw Japan
http://www.westlawjapan.com/products/westlaw-japan/contents/
更新頻度は日次更新。
◇ LexisNexis ASONE - 収録コンテンツ
https://resource.lexis-asone.jp/asone/info/docs/contentslist.pdf
更新頻度は
毎日更新の裁判判例は随時更新。
月次更新の裁判判例は
月次で集計して更新。
◇ LLI判例秘書アカデミック版
https://www.hanreihisho.net/
更新頻度は月2回以上。
◆ 公式判例集
掲載までの期間は
およそ半年~1年以上で
収録までに時間がかかります。
公式判例集では
厳選された判例情報が
省略されず掲載されます。
また
重要性の高い資料ですので
著作や報告書等で引用する際には
先して引用することが
望ましいとされています。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
かつての紙媒体の情報から
IT技術の発達により,
インターネットを介しての
Webの登場で
情報流通が高速化しました。
判例や法令等の法情報も同様で
より速く
情報を知ることができます。
今回は
判決が言い渡されてから
各媒体に
判例として収録されるまでの期間を
比較しました。
判例が収録されるまでの期間は
データベースや冊子体資料により
異なります。
図にすると,こんな感じです。
◆ 裁判所ウェブサイト - 裁判例検索
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
最高裁判所判例集 及び
下級裁判所判例集 については
過去3か月以内
知的財産裁判例集 については
過去1か月以内 の
各判決等の一覧を表示。
早いものでは
判決の翌日に掲載され
速報性に富む一方
審級・裁判所によって
掲載時期にばらつき
があります。
掲載までの期間は
翌日~約2週間から1ヵ月後。
◆ 裁判所時報
※『裁判所時報』は
1780号(2021年12月15日)をもって
終刊となりました。
最高裁判所事務総局が
月2回(1日,15日)発行 する
裁判所組織内の広報新聞。
裁判例,最高裁判所判例要旨,
最高裁判所裁判例要旨(民事のみ)の
速報が掲載されています。
また
裁判所に関係ある法律や
最高裁判所規則・規程の改廃,
裁判官の人事異動情報,
司法修習生の修習開始・終了,
裁判所関係のニュース等を収録。
1月1日号には
長官所長会同における
長官挨拶が掲載されます。
判決言渡日から
約2週間から1ヶ月後に
判決全文を速報。
インターネットでの判決速報が
なかった当時は
相当早く判例を見ることが出来る
情報媒体として活用されていました。
民集・刑集の要旨を見たり
速報として利用するのに役立ちます。
◆ 判例雑誌
『判例タイムズ』月1回
『判例時報』月3回
分野別判例雑誌などがあります。
掲載は判決言渡日から
早くて約1ヵ月~6ヵ月
「判タ」,「判時」については
約1ヵ月 ~ 3ヶ月後。
◆ 有料判例データベース(Web版)
◇ LEX/DBインターネット - ご利用案内
https://lex.lawlibrary.jp/guide.html
新判例公表にあわせ
毎週金曜日に判例を追録更新。
毎週アップデートされる
新着判例を一覧で確認できます。
◇ D1-law.com 判例体系
https://dtp-cm.d1-law.com/
更新頻度は日次更新。
加除式書籍で提供されている
『判例体系』のインターネット版。
◇ Westlaw Japan
http://www.westlawjapan.com/products/westlaw-japan/contents/
更新頻度は日次更新。
◇ LexisNexis ASONE - 収録コンテンツ
https://resource.lexis-asone.jp/asone/info/docs/contentslist.pdf
更新頻度は
毎日更新の裁判判例は随時更新。
月次更新の裁判判例は
月次で集計して更新。
◇ LLI判例秘書アカデミック版
https://www.hanreihisho.net/
更新頻度は月2回以上。
◆ 公式判例集
掲載までの期間は
およそ半年~1年以上で
収録までに時間がかかります。
公式判例集では
厳選された判例情報が
省略されず掲載されます。
また
重要性の高い資料ですので
著作や報告書等で引用する際には
先して引用することが
望ましいとされています。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
2023年10月13日金曜日
判例と裁判例
法情報検索 各論 3 判例 2
司書対象のリーガル・リサーチ研修や
公務員(事務職)希望の
文学部出身などの法律学初心者から
法令について説明をしている際に
よくある質問の中に
判例は法律なんですか?
法令のように
国民を拘束するものなんですか?
という質問がよくあります。
ちなみに法科大学院生から
このような質問を
受けたことはありません。
当然ですよね。
もちろん
判例 は 法律ではありません。
また 法令ではありません ので
国民を
直接拘束するものではありません。
ここでは
判例 とはどういう意味で使われるのか
そして
判例 と 裁判例 はどう違うのかを
説明します。
まず
憲法第76条3項を見ると
「すべて裁判官は
その良心に従ひ
独立してその職権を行ひ
この憲法及び法律にのみ
拘束される」
このように
憲法上
裁判官は憲法と法律には
拘束されますが
判例には拘束されないのです。
しかし
同じ様な事案の争いであったとき
裁判官の自由な心証によって
判断が異なれば
当事者とすれば
予測不能であり不安定です。
自分の経験上でも
簡易裁判所では
地裁以上の裁判所よりも
かなり自由な裁判が
なされているように感じます。
だから
慎重・公正な判断をするために
三審制の制度があり
法的安定性を保つために
裁判所法などで判断を拘束し
判断基準の統一がなされています。
まず
判例変更を行う場合は
最高裁判所の大法廷で審理されます。
(裁判所法10条3号)
また
最高裁判所の判例と相反する
判断がなされた場合には
民事訴訟では上告受理の申立理由
刑事訴訟では上告の申立理由
になります。
(民事訴訟法318条1項)
(刑事訴訟法405条2号)
さらに
裁判所法4条の規定において
「上級審の裁判所の裁判における判断は
その事件について
下級審の裁判所を拘束する」
とされています。
つぎに
判例 という言葉には
三つの意味があります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
①…
個々の判決
(例)昭和49年9月26日 の判例
②…
ある特定の裁判の理由の中で
示された判断
(判決のなかで示された法理論・準則)
③…
ある問題についての
多くの判決から導き出される
裁判所の法律的な考え方
(複数の判例をすべて説明できる
共通の法理論)
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「判例の意義と民事判例の読み方」
良永和隆
『専修ロージャーナル』 8巻
2013.1.25,1-29頁
「判例の意義と民事判例の読み方」
- 専修大学学術機関リポジトリ
から引用しました。
( アクセス日:2023年10月13日 )
① の個々の判決の中でも
共通の法理論として
同種の事件を裁判する際の
先例となる「判例」として
価値があると判断し
最高裁判所判例委員会が
選択したものが
「最高裁判所判例集」 に
登載されます。
そしてこの
最高裁判所判例集(民集・刑集)に
登載された判例に 調査官解説 が付くと
「法曹時報」 に
「最高裁判所判例解説」 として
登載されます。
したがって
判例を引用する場合
最高裁判所判例委員会の
お墨付きもあることから
「最高裁判所判例集」登載のものを
引用することがよいとされます。
この 最高裁判所判例集 は
毎月1回発行されます。
この時点での装丁は白の表紙で
民事と刑事が分裂していなく
民事のページの後に
刑事のページがきます。
多数の図書館では
その後に
民事 と 刑事 が 別々に製本 され
最高裁判所民事判例集(民集)と
最高裁判所刑事判例集(刑集)とに
分冊します。
つまり
白表紙のうちは
最高裁判所判例集(最高裁判例集)で
製本されると
最高裁判所民事判例集(民集)
最高裁判所刑事判例集(刑集)
に名前が変わります。
後に説明する
「高等裁判所判例集」
↓
高等裁判所民事判例集(高民集)
高等裁判所刑事判例集(高刑集)も
同様の構造になっています。
ページについては
その巻の通しのページと
その号の個別のページの両方が
付されています。
この他に
最高裁判所裁判集民事(裁判集民)
最高裁判所裁判集刑事(裁判集刑)が
「最高裁判所判例集」以外に
最高裁の裁判例を搭載した
資料としてあります。
これらは
「最高裁判所判例集」に
登載するまでではないが
参考になる判例 を
上告理由・上告趣意を含めて
登載しています。
また
名前の通り
最高裁判所判例委員会が選択した
「判例」との区別のために
こちらの資料名は
「裁判集」となっています。
ところで
「高等裁判所判例集」については
なぜ最高裁判例でないのに
「裁判例集」でなく
「判例集」と呼ばれるのかです。
最高裁の判例がないものは
高裁の判断も
判例として扱われるからです。
(民事訴訟法318条1項)
(刑事訴訟法405条3号)
手続きも
各高等裁判所の判例委員会が
高等裁判所の判例として
選択したものを
「高等裁判所判例集」に
登載するので
「判例集」とされています。
その他の裁判例ついては
裁判所判例委員会の
協議を経て選択された
「判例集」と区別するため
実務に与える影響が少ない先例を
「裁判例集」
としているようです。
検索の際には
その辺を押さえておいてください。
◆ 参考文献
・「判例の意義と民事判例の読み方」
良永和隆
『専修ロージャーナル』 8巻
2013.1.25,1-29頁
・ 判例とその読み方 中野次雄 編著 / 有斐閣 2009.4
・ 判例学習のAtoZ 池田眞朗 編著 / 有斐閣 2010.10
・ 法律文献学入門 - 法令・判例・文献の調べ方
西野喜一 著 / 成文堂 2002.7
・ リーガル・リサーチ 第5版
いしかわまりこ 他著 / 日本評論社 2016.3
判例学習において
法学部以外の方で
上記の文献では難しいと思う方は
・ 日本一やさしい条文・判例の教科書
品川皓亮 著 / 日本実業出版社 2015.1
こちらは
易しくてわかりやすいと思います。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
司書対象のリーガル・リサーチ研修や
公務員(事務職)希望の
文学部出身などの法律学初心者から
法令について説明をしている際に
よくある質問の中に
判例は法律なんですか?
法令のように
国民を拘束するものなんですか?
という質問がよくあります。
ちなみに法科大学院生から
このような質問を
受けたことはありません。
当然ですよね。
もちろん
判例 は 法律ではありません。
また 法令ではありません ので
国民を
直接拘束するものではありません。
ここでは
判例 とはどういう意味で使われるのか
そして
判例 と 裁判例 はどう違うのかを
説明します。
まず
憲法第76条3項を見ると
「すべて裁判官は
その良心に従ひ
独立してその職権を行ひ
この憲法及び法律にのみ
拘束される」
このように
憲法上
裁判官は憲法と法律には
拘束されますが
判例には拘束されないのです。
しかし
同じ様な事案の争いであったとき
裁判官の自由な心証によって
判断が異なれば
当事者とすれば
予測不能であり不安定です。
自分の経験上でも
簡易裁判所では
地裁以上の裁判所よりも
かなり自由な裁判が
なされているように感じます。
だから
慎重・公正な判断をするために
三審制の制度があり
法的安定性を保つために
裁判所法などで判断を拘束し
判断基準の統一がなされています。
まず
判例変更を行う場合は
最高裁判所の大法廷で審理されます。
(裁判所法10条3号)
また
最高裁判所の判例と相反する
判断がなされた場合には
民事訴訟では上告受理の申立理由
刑事訴訟では上告の申立理由
になります。
(民事訴訟法318条1項)
(刑事訴訟法405条2号)
さらに
裁判所法4条の規定において
「上級審の裁判所の裁判における判断は
その事件について
下級審の裁判所を拘束する」
とされています。
つぎに
判例 という言葉には
三つの意味があります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
①…
個々の判決
(例)昭和49年9月26日 の判例
②…
ある特定の裁判の理由の中で
示された判断
(判決のなかで示された法理論・準則)
③…
ある問題についての
多くの判決から導き出される
裁判所の法律的な考え方
(複数の判例をすべて説明できる
共通の法理論)
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「判例の意義と民事判例の読み方」
良永和隆
『専修ロージャーナル』 8巻
2013.1.25,1-29頁
「判例の意義と民事判例の読み方」
- 専修大学学術機関リポジトリ
から引用しました。
( アクセス日:2023年10月13日 )
① の個々の判決の中でも
共通の法理論として
同種の事件を裁判する際の
先例となる「判例」として
価値があると判断し
最高裁判所判例委員会が
選択したものが
「最高裁判所判例集」 に
登載されます。
そしてこの
最高裁判所判例集(民集・刑集)に
登載された判例に 調査官解説 が付くと
「法曹時報」 に
「最高裁判所判例解説」 として
登載されます。
したがって
判例を引用する場合
最高裁判所判例委員会の
お墨付きもあることから
「最高裁判所判例集」登載のものを
引用することがよいとされます。
この 最高裁判所判例集 は
毎月1回発行されます。
この時点での装丁は白の表紙で
民事と刑事が分裂していなく
民事のページの後に
刑事のページがきます。
多数の図書館では
その後に
民事 と 刑事 が 別々に製本 され
最高裁判所民事判例集(民集)と
最高裁判所刑事判例集(刑集)とに
分冊します。
つまり
白表紙のうちは
最高裁判所判例集(最高裁判例集)で
製本されると
最高裁判所民事判例集(民集)
最高裁判所刑事判例集(刑集)
に名前が変わります。
後に説明する
「高等裁判所判例集」
↓
高等裁判所民事判例集(高民集)
高等裁判所刑事判例集(高刑集)も
同様の構造になっています。
ページについては
その巻の通しのページと
その号の個別のページの両方が
付されています。
この他に
最高裁判所裁判集民事(裁判集民)
最高裁判所裁判集刑事(裁判集刑)が
「最高裁判所判例集」以外に
最高裁の裁判例を搭載した
資料としてあります。
これらは
「最高裁判所判例集」に
登載するまでではないが
参考になる判例 を
上告理由・上告趣意を含めて
登載しています。
また
名前の通り
最高裁判所判例委員会が選択した
「判例」との区別のために
こちらの資料名は
「裁判集」となっています。
ところで
「高等裁判所判例集」については
なぜ最高裁判例でないのに
「裁判例集」でなく
「判例集」と呼ばれるのかです。
最高裁の判例がないものは
高裁の判断も
判例として扱われるからです。
(民事訴訟法318条1項)
(刑事訴訟法405条3号)
手続きも
各高等裁判所の判例委員会が
高等裁判所の判例として
選択したものを
「高等裁判所判例集」に
登載するので
「判例集」とされています。
その他の裁判例ついては
裁判所判例委員会の
協議を経て選択された
「判例集」と区別するため
実務に与える影響が少ない先例を
「裁判例集」
としているようです。
検索の際には
その辺を押さえておいてください。
◆ 参考文献
・「判例の意義と民事判例の読み方」
良永和隆
『専修ロージャーナル』 8巻
2013.1.25,1-29頁
・ 判例とその読み方 中野次雄 編著 / 有斐閣 2009.4
・ 判例学習のAtoZ 池田眞朗 編著 / 有斐閣 2010.10
・ 法律文献学入門 - 法令・判例・文献の調べ方
西野喜一 著 / 成文堂 2002.7
・ リーガル・リサーチ 第5版
いしかわまりこ 他著 / 日本評論社 2016.3
判例学習において
法学部以外の方で
上記の文献では難しいと思う方は
・ 日本一やさしい条文・判例の教科書
品川皓亮 著 / 日本実業出版社 2015.1
こちらは
易しくてわかりやすいと思います。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
2023年10月8日日曜日
最高裁判所調査官解説
法情報検索 各論 4 文献 1
調査官解説 >= 最高裁判所判例解説
法科大学院の
未修1年生からの問い合わせが
特に多いのですが
調査官解説って何ですか?
検索機で調べても出てきません。
どこにありますか?
と聞かれることがあります。
調査官解説 とは
最高裁判所調査官による判例解説です。
一般的には
「最高裁判所判例解説」のことを指し
「最高裁判所判例解説」は
「民事篇」と「刑事篇」に分かれ
さらに
「索引」のみの巻が別にあります。
この他にも
最高裁判所調査官による
判例解説があります。
調査官解説について
渡辺達徳『民法 渡辺道場』19頁
〔日本評論社 2005〕に
わかりやすい解説がありますので
その要旨を引用します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
調査官解説とは
当該事件を担当した調査官が
事案の概要,訴訟の経過,
最高裁判所の判旨を整理した上
これに関する
過去の裁判例や学説の状況,
同判決に関する判例評釈等を
紹介するものです。
調査官解説 は
「法曹時報」に掲載された後
年ごと編成されて
「最高裁判所判例解説」 になります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
流れとしては次のようになります。
判決 → 法曹時報に掲載
→ 最高裁判所判例解説に編成
~~~~~~~~~~~~~~~~~
法曹時報の調査官解説が
公にされるまでには
少し日数がかかることが多いです。
他方
「判例時報」「判例タイムズ」
「金融・商事判例」「金融法務事情」
などの雑誌には
最高裁判所の判決・決定が
紹介されるにあたって
カコミで匿名の解説が付されています。
これは
「匿名コメント」と呼ばれ
執筆者の記名はありませんが
調査官の手によるものと考えられています。
ただし
各判例掲載雑誌の編集部の責任で
付されたコメントもあります。
なぜなら
こうした雑誌の刊行と前後して
「ジュリスト」の
「時の判例」というコーナーに
ほとんど同文の解説が
掲載されているのが常で
こちらには
執筆担当調査官の氏名が
明記されているからです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
なお
平成元年~26年までの
「時の判例」は 全8巻 にまとめられて
有斐閣から
「ジュリスト増刊 最高裁 時の判例
(Ⅰ~Ⅷ)」として刊行されています。
また
前掲の各雑誌以外にも
「法律時報」の「最高裁新判例紹介」にも
コメント(説明)が掲載されています。
調査官解説のデータベースについての
よくある質問。
Q.
「最高裁判所判例解説」
「法曹時報(判例解説部分)」の全文は
データベースで見ることができますか?
A.
「最高裁判所判例解説」
「法曹時報(判例解説部分)」は
データベース化されています。
LLI/DB,WESTLAW JAPAN
D1-Law.com判例体系,TKC に
収録されています。
ただし
これらのデータベースは
オプション契約ですので
法科大学院ごとで契約が異なります。
補足説明として
冊子体の「法曹時報」で
目的の判例解説を探す場合。
法曹時報 の 最高裁判所判例解説 は
掲載が 判決年月日順になっていません。
索引 も 毎年 6月号 と 12月号 にのみ
掲載されるので検索が面倒です。
~ 参考文献・Webサイト ~
・ 渡辺達徳『民法 渡辺道場』19頁
〔日本評論社 2005〕
から要旨を引用。
その他に
・ 池田真朗 編『判例学習のAtoZ』
〔有斐閣 2010〕
・ いしかわまりこ 他 『リーガルリサーチ』
〔日本評論社 第4版 2012〕
・ 塩崎勤
「PERSON・法律家 - 異色裁判官のOJT (1)」
ロースクール研究 №7 174頁
〔民事法研究会 2007〕
・LLI統合型法律情報システム・収録範囲
https://www.lli-hanrei.com/indexjp.html
〈パスワード入力必須〉
・WESTLAW JAPAN 収録コンテンツ - 最高裁判所判例解説/法曹時報
http://www.westlawjapan.com/products/westlaw-japan/contents/hanrei-housou/
・D1-Law.com判例体系 オプションコンテンツ -「最高裁判所判例解説」「法曹時報」
http://www.daiichihoki.co.jp/hoso/saikosaihanreikaisetsu/index.html
・TKCローライブラリー
https://www.tkc.jp/law/lawlibrary/contents/law/#db44
(ウェブサイトの閲覧日:2023年10月8日)
を適宜参考にしました。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。
調査官解説 >= 最高裁判所判例解説
法科大学院の
未修1年生からの問い合わせが
特に多いのですが
調査官解説って何ですか?
検索機で調べても出てきません。
どこにありますか?
と聞かれることがあります。
調査官解説 とは
最高裁判所調査官による判例解説です。
一般的には
「最高裁判所判例解説」のことを指し
「最高裁判所判例解説」は
「民事篇」と「刑事篇」に分かれ
さらに
「索引」のみの巻が別にあります。
この他にも
最高裁判所調査官による
判例解説があります。
調査官解説について
渡辺達徳『民法 渡辺道場』19頁
〔日本評論社 2005〕に
わかりやすい解説がありますので
その要旨を引用します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
調査官解説とは
当該事件を担当した調査官が
事案の概要,訴訟の経過,
最高裁判所の判旨を整理した上
これに関する
過去の裁判例や学説の状況,
同判決に関する判例評釈等を
紹介するものです。
調査官解説 は
「法曹時報」に掲載された後
年ごと編成されて
「最高裁判所判例解説」 になります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
流れとしては次のようになります。
判決 → 法曹時報に掲載
→ 最高裁判所判例解説に編成
~~~~~~~~~~~~~~~~~
法曹時報の調査官解説が
公にされるまでには
少し日数がかかることが多いです。
他方
「判例時報」「判例タイムズ」
「金融・商事判例」「金融法務事情」
などの雑誌には
最高裁判所の判決・決定が
紹介されるにあたって
カコミで匿名の解説が付されています。
これは
「匿名コメント」と呼ばれ
執筆者の記名はありませんが
調査官の手によるものと考えられています。
ただし
各判例掲載雑誌の編集部の責任で
付されたコメントもあります。
なぜなら
こうした雑誌の刊行と前後して
「ジュリスト」の
「時の判例」というコーナーに
ほとんど同文の解説が
掲載されているのが常で
こちらには
執筆担当調査官の氏名が
明記されているからです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
なお
平成元年~26年までの
「時の判例」は 全8巻 にまとめられて
有斐閣から
「ジュリスト増刊 最高裁 時の判例
(Ⅰ~Ⅷ)」として刊行されています。
また
前掲の各雑誌以外にも
「法律時報」の「最高裁新判例紹介」にも
コメント(説明)が掲載されています。
調査官解説のデータベースについての
よくある質問。
Q.
「最高裁判所判例解説」
「法曹時報(判例解説部分)」の全文は
データベースで見ることができますか?
A.
「最高裁判所判例解説」
「法曹時報(判例解説部分)」は
データベース化されています。
LLI/DB,WESTLAW JAPAN
D1-Law.com判例体系,TKC に
収録されています。
ただし
これらのデータベースは
オプション契約ですので
法科大学院ごとで契約が異なります。
補足説明として
冊子体の「法曹時報」で
目的の判例解説を探す場合。
法曹時報 の 最高裁判所判例解説 は
掲載が 判決年月日順になっていません。
索引 も 毎年 6月号 と 12月号 にのみ
掲載されるので検索が面倒です。
~ 参考文献・Webサイト ~
・ 渡辺達徳『民法 渡辺道場』19頁
〔日本評論社 2005〕
から要旨を引用。
その他に
・ 池田真朗 編『判例学習のAtoZ』
〔有斐閣 2010〕
・ いしかわまりこ 他 『リーガルリサーチ』
〔日本評論社 第4版 2012〕
・ 塩崎勤
「PERSON・法律家 - 異色裁判官のOJT (1)」
ロースクール研究 №7 174頁
〔民事法研究会 2007〕
・LLI統合型法律情報システム・収録範囲
https://www.lli-hanrei.com/indexjp.html
〈パスワード入力必須〉
・WESTLAW JAPAN 収録コンテンツ - 最高裁判所判例解説/法曹時報
http://www.westlawjapan.com/products/westlaw-japan/contents/hanrei-housou/
・D1-Law.com判例体系 オプションコンテンツ -「最高裁判所判例解説」「法曹時報」
http://www.daiichihoki.co.jp/hoso/saikosaihanreikaisetsu/index.html
・TKCローライブラリー
https://www.tkc.jp/law/lawlibrary/contents/law/#db44
(ウェブサイトの閲覧日:2023年10月8日)
を適宜参考にしました。
以上
読んでいただき
ありがとうございました。