2025年7月1日火曜日

コンメンタールの検索

法情報検索 各論 4 文献 8

法令の 条文解釈 を知りたい場合に
使用するツールとして
コンメンタール
( Kommentar:ドイツ語 )と呼ばれる
注釈書 があります。

実務においても
使用する機会の多い資料で
例えば
地方自治法 においては
いわゆる
「 松本コンメ 」(注)と呼ばれ
学陽書房 から出版されている
新版 逐条地方自治法があります。
ここでの 解釈
行政運用の指標 の一つになっている
といわれ
行政実務の定本 として
用いられています。

コンメンタール
各法令の規範を体系化して解説した
体系書(基本書,概説書)に対し
法令を
条文順に1条ずつ解説
したもので
その 条文の意義,要件,効果,
関連条文,判例,学説
などが
掲載されています。

一般的には
1条ずつ全ての条文について
解説が付されていますが
ロースクール生などに向けた
コンパクトに編集されたもの等
出版の方針に従い
解説に濃淡が付けられていて
重要度の低い条文には
解説が提供されていない
コンメンタールもあります。

コンメンタール
OPAC(蔵書検索機)で検索する場合
書名の欄
コンメンタール と入力して検索しても
かなりの検索漏れ が出ます。

OPAC による
件名検索 においても
憲法,民法 などといった
カテゴリーになっているので
コンメンタール という
件名(基本件名標目)がありません

※ もっとも
「 D1 - Law.com 」の
「 法律判例文献情報 」など
 有料データベースでは
 コンメンタールの検索機能が
 あるものもありますが
 ここでは
 一般的な検索方法について
 述べています。

ただ “ 一般的には ”
コンメンタール(注釈書) には
書名の一部
注釈書であることを指す語
付されていますので
検索漏れを減らすテクニック として
書名の欄に
コンメンタール という語の外にも
類語 である
注釈 または 註釈,
注解 または 註解,
条解,条文解説,
逐条,逐条解説,詳説 といった語を
入力して網をかける方法があります。

最近では 第一法規
論点体系シリーズ
が充実していて
使い勝手のよいコンメンタールです。
なので
論点体系 という語も
頭に入れておいてください。

ただし
この 論点体系シリーズ
各法分野の論点ごとに整理がされていて
シリーズ名や各書名に
コンメンタールを表す語を
付けていないため
編集の自由度も高く
法分野によっては
逐条形式をとらない
編集のものもあります。
例:「 論点体系 判例行政法 」
  「 論点体系 判例労働法 」

コンメンタールには
先述の『 松本コンメ 』をはじめ
実務家御用達の
例えば
民法なら『 注釈民法 』
会社法なら『 会社法コンメンタール 』
刑法なら『 大コンメンタール 』
風営法なら『 注釈風俗営業法 』
その他
実務家や学生と幅広く使用されている
『 条解シリーズ 』
『 新基本法コンメンタール 』
といったように “ 定番 ” があります。

そのため
出版社も固定のユーザーが多い
既存のマーケットに切り込むには
編集方法も
趣向を変えたもので挑む必要があり
今後は編集方法も多様化されて
書名に現れない
“ 隠れコンメ ” も増えていくと
思います。

一例を挙げると
『 憲法を読み解く 』
 渋谷秀樹/著 有斐閣 2021年

『 全訂 日本国憲法 』
 宮沢俊義/著,芦部信喜/補訂
 日本評論社 1978年
この本は息が長く
現在(2022年12月19日 時点)でも
出版されているコンメンタールです。

といったように
書名に『逐条』,『条解』などの
注釈書を表す冠が付かない
コンメンタールもあります。


さらに
先述の「 松本コンメ 」 のような
コンメンタールとは
対極 にあるといってよいもので
使用法や趣向が全く違います
自由国民社 から出版されていた
口語民法 をはじめとする
口語六法全書シリーズ
条文ガイド六法シリーズ
ほかにも
木俣由美 先生の
楽しく使う会社法
といったものもあります。

自分が法学部一年生のとき
刑法の初回の授業で
一番前の席に座っていた学生が
口語訳 基本六法全書 を出していたとき
“ これは六法ではない!” と
先生からダメ出しされていました。

高尚な学者の先生からすると
“ 邪道な六法 ” 的ですが
そうはいうものの
口語六法全書シリーズ
実例六法全書
( 過去に 実例民法実例刑法
実例借地借家法 が出版 )。
これらは
法学初級者一般の方 向けに
わかりやすく書かれていて
amazonレビューも高評価です。
もっとも
法律は官報により
一般国民に向けて公布されています。
したがって
一般向けに
法律が理解しやすいように書かれた
こういった本は重宝されていましたが
残念ながら
現在では改訂版や新版の出版は
ありません。

これは
主要な法律自体が
現代語化〈口語化〉されてきている
ということも
理由の一つかもしれません。
そうはいっても
鉄道好きな方はご存知と思いますが
鉄道営業法軌道法鉄道抵当法
他にも 船舶法水難救護法
手形法小切手法 など
カタカナ文語体の法令は
まだまだあります。

木俣由美 先生の
楽しく使う会社法 については
さらに砕いてギャグ要素があり
マンガ感覚で見たり
エロ語呂世界史年号
エロ語呂日本史年号
エロ語呂暗記法的に使用する本
といってもいいでしょう。
( その割には お値段が高め!)

ところで
本ができるまでには
ざっくり言うと
執筆 ⇒ 原稿編集 ⇒
造本設計,原稿指定 ⇒ 組版 ⇒ 校正
⇒ 印刷工程 ⇒ 製本 ⇒ 流通

といった過程を経ます。

最近の社会情勢は
激しく変動しているので
詳しい大コンメンタールを
出版しようとすれば
執筆中や
本ができるまでの過程の途中で
判例変更があったり
法改正が頻繁に行われるので
出版社泣かせなところがあります。
他にも
編著者が諸事情により
交代するなどして
中々進まなく
完結までに長い時間がかかるとか
刊行中止になってしまうのが
現状です。
( 例,有斐閣『新版 注釈民法』,
 青林書院
『 大コンメンタール 』の一部など )


なお冒頭の (注)書きで紹介した
新版 逐条地方自治法についての
補足ですが
松本英昭 先生 のコンメンタールは
新版 となった 2001年10月 からで
この年( 平成12年 )の 4月 には
地方分権一括法
(地方分権の推進を図るための
 関係法律の整備等に関する法律)が
 施行され
※ 公布は 1999年(平成11年)7月16日
 (法令番号:平成11年 法律第87号)
国と地方の役割分担の明確化,
機関委任事務制度の廃止,
国の関与のルール化
などが
図られました。
そして
地方分権改革 により
東京23区基礎自治体 として
東京都広域自治体 とした
平成12年改革 といわれる
都区制度改革 も行われました。

この大がかかりな改正を分岐点に
逐条地方自治法新版 として
リニューアルされています。
それ以前の
逐条地方自治法
 第12次改訂新版
( 1995年11月 )までは
長野士郎 先生の執筆で
「 長野コンメ 」 と呼ばれています。

なお
2025年7月1日 発売の
逐条地方自治法からは
松本英昭 先生から
元総務省事務次官の 佐藤文俊 先生へ
著者が交代しています。

著者名を交えて複合検索する場合には
その辺りを留意しておいてください。

先頭へ

以上
読んでいただき
ありがとうございました。



『伝わる書き方』を読んで思う平和主義


近代立憲主義と
日本国憲法の3原則の中の一つ
平和主義ついて考えてみます。

法律関係者には
「釈迦に説法」なので
法学初学者をターゲットにします。

先日
『伝わる書き方』(PHP研究所)
という本を
書棚から出して
再読したときがきっかけです。

著者の
三谷宏治 氏
K.I.T.虎ノ門大学院主任教授
アクセンチュア 等で
経営コンサルタントを
されていた方です。

三谷 氏の著書は
わかりやすく書かれ
僕も大いに参考にしています。

この本の内容は

文章の書き方について

① 理解しやすいように
  文章を短く切り

② その文章の内容を
  類型別に目次化させ

③ 読者が興味を引くように
  文章に波をもたせる


というように
3つ方法に分類して
レクチャーした手引書です。

その中で
気になった箇所があります。

70頁の
日本国憲法 前文 の
“ 余計な装飾を省く ” 説明のくだり


個人的見解と断ったうえで

 日本国民は,
 恒久の平和を念願し
 人間相互の関係を支配する
 崇高な理想を
 深く自覚するのであつて
 平和を愛する
 諸国民の公正と信義に信頼して,
 われらの安全と生存を
 保持しようと決意した。

から

日本国民は,
 諸国民の公正と信義に信頼して,
 自らの安全と生存を
 保持しようと決意した。


と文章を簡潔にしています。

省いた箇所の

恒久の平和を念願し
 人間相互の関係を支配する
 崇高な理想を
 深く自覚するのであつて
 平和を愛する


の部分を
“ 余計な装飾 ” として
省いています。

この本は憲法論について
書かれたものでなく
確かに
この箇所の表現は
『くどい言い回し』
と感じます。


ここで
近代立憲主義について考えると

近代立憲主義 とは
憲法に基づいて政治を行う考え方です。

その 3原則
① 国民主権
② 人権保障
③ 権力分立

です。

権力分立 とは
立法,司法,行政の
三権分立も含みますが
より広く捉えます。

日本の場合は
地方分権,行政委員会,二院制
三審制 等も含みます。

この仕組みは
権力が一つに集中しないように
権力機構を分散させ
抑制と均衡を図るものです。

一方
日本国憲法の3原則
① 国民主権
② 基本的人権の尊重
③ 平和主義

です。

これらの相互関係について

国民主権 および 権力分立
人権保障 との関係では

国民主権 および 権力分立
人権保障を実現するための手段です。

平和主義人権保障 との関係は
平和であることは
人権保障の前提となる関係です。


では
平和が人権保障の前提
となるものならば
なぜ
平和主義が
日本国憲法の3原則には
挙げられているのに
近代立憲主義の原則には
ないのでしょう。


これは
近代立憲主義 においても
平和主義は当然のことであり
規定されなかっただけで
無視されたのではありません。

一方
日本の場合
二度の世界大戦を経験し
侵略によって
他国に被害
を与えました。

それと同時に
空襲や原爆投下などもあり
戦争で多くの国民に
被害
が出ました

これらを教訓として
平和主義を明文化 して
その 意義を強調 した
ものと考えられます。


だから
くどいほど繰り返して
平和を強調
していると考えます。


このように
全く関係ないところから
あらためて考え直してみたり
発想が湧いたりすることって
ありますよね。


~ 参考文献 ~

伝わる書き方 三谷宏治 著 / PHP研究所 2013

比較憲法 第3版 樋口陽一 著 / 青林書院 1992

憲法 第3版 佐藤幸治 著 / 青林書院 1995



以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2025年6月9日月曜日

特別区および東京都の職員ハンドブックはここで買える


◆ 目次

・ 特別区職員ハンドブック 2025


・ 特別区と区政/23区のすがた(PDF)


・ 東京都職員ハンドブック 2025


・ 必携自治体職員ハンドブック
  第7次改訂版


・ 東京都の基本計画



職員ハンドブック
公務員の採用試験
公務員の昇任昇格試験 などの
参考文献 として
よく使われています。

その他には
地方自治行政の基礎的資料
集約 されて
上手くまとまっているので
まずこの資料に当たってから
さらに詳細な行政資料や文献へと
広げることができるので
地方自治の政策研究等 について
調査参考 などにする場合の
足掛かりとなる資料ですので
非常に重宝します。

そもそも職員ハンドブックは
特別区東京都職員用として
発行されているので。
一般の方が購入するには
ルートが限定されています。

そこで
これらはどこで入手できるか
ご案内いたします。


特別区職員ハンドブック 2025
( 調査日:2025年3月3日 )



特別区人事・厚生事務組合
特別区職員研修所 編
ぎょうせい 発行
2025年(令和7年)3月 発行
A5判,742ページ


『 特別区職員ハンドブック 』
 - 特別区職員研修所


2025年の特別区公務員の試験日(春)が
4月20日に
前倒しになったこともあるのか
『特別区職員ハンドブック』の販売も
2025年は3月3日から行われています。

特別区自治情報・交流センター
 公式ツイッター


『特別区職員ハンドブック 2025』の
  販売開始(2025年3月3日 午御9:41)


職員ハンドブックの発行目的
特別区職員として
職務上必要な基礎的・実務的知識の
習得や自己啓発を目的
としています。

発行の間隔は
通常,隔年で発行 されています。

内容
目次( 編と章の部分 )


第Ⅰ編 特別区と区政
第1章 23区のすがた
第2章 東京23区の現況
第3章 区民のくらしと区政
第4章 人権

第Ⅱ編 自治制度と特別区
第1章 地方自治制度
第2章 地方税財政制度
第3章 地方分権
第4章 特別区制度の沿革

第Ⅲ編 組織と仕事
第1章 組織と職員
第2章 区政運営
第3章 人事
第4章 財務
第5章 文書


前版(2023年)から
目次の章立てで変わった箇所は

2023年版まで
巻頭論文を執筆していた
大森彌・東京大学名誉教授
2023年9月18日に
ご逝去されたために
巻頭論文がなくなりました。

この巻頭論文で大森先生が
特別区の課題として掲げたものが
特別区Ⅰ類の採用試験での
論文問題のテーマとして
出題されることがありました。

2025版では
吉住健一・新宿区長が
はしがきの
『特別区職員ハンドブック 2025 の
 発行にあたって』
にて
地球温暖化,格差,少子高齢化,
地震,物価高騰,行政のデジタル化,
児童相談体制
といった課題を
例示として挙げています。

『特別区職員ハンドブック』の
目次を見ると
児童相談所の移管に向けた取組みへの
関心。
( 昨今の特別区政では
児童相談関連の課題
連携・協力といった言葉が
 よく登場します )

また
特別区での課題・取組みを掲載した
第I編 第3章『区民のくらしと区政』
第5節の見出し
『環境・清掃』において
後で紹介する
『必携自治体職員ハンドブック
 第7次改訂版』
では
第4章で “ 環境行政 ” としているのに対し
『特別区職員ハンドブック』では
“ 清掃 ” という文言を入れていることから
特別区
清掃( ゴミ問題 と リサイクル )
それから
フードロスの問題なんかもそうですが
これらに対する関心が高い
ということがわかります。

この辺りは
論文で問われずとも
面接で関心度を測る目的で
聞かれる場合があります。


特別区職員ハンドブック 2025
販売価格 については

昨今の物価高の影響や
一般人(特に受験生)からの
需要が多くなったためか?

販売価格も
2021年:550円(税込)→
2023年:880円(税込)と
発行毎に値上げされ

2025年からは
1冊 1,100円(税込)
さらに値上げされました。

また
出版社も『ぎょうせい』から
『都政新報社』へと変わっています。

販売場所 については
2023年3月31日をもって
八重洲ブックセンター
営業を終了したので
土曜の夜や日曜・祝日に
冊子のハンドブックが
すぐに手に入らなくなるといった
不便さがでることは否めません。

現在入手可能な販売場所

① くまざわ書店 都庁店
( 東京都庁第一本庁舎2階 )


営業日および時間
都庁開庁日
通常は
月 ~ 金( 祝日を除く )
※ 土・日・祝日は休み。


9:00 ~ 18:30

℡ 03 - 5320 - 7537

支払方法は
現金,キャッシュレス決済,図書カード が
利用できます。


売店のご案内
 一般財団法人 東京都人材支援事業団


不明な点があれば
電話にて直接書店にお尋ねください。


② 特別区自治情報・交流センター
( 東京区政会館 4階 )


月 ~ 金:9:30 ~ 20:30
土:9:30 ~ 17:00
※ 日・祝日・図書整理期間
  年末年始は休み。
℡ 03 - 5210 - 9051


※ 現金決済のみ。
 また
 なるべく釣銭のないように
 お願いいたします。

とのことです。

公益財団法人 特別区協議会
 - 特別区職員ハンドブック


③ 株式会社 都政新報社( 送本 )

都政新報社

こちらは送料かかります。
冊数にもよりますが
1冊ならば 800円 の送料加算で
価格が 1,900円(税込) になります。

詳細は
都政新報社 Webサイト にて
ご確認ください。

他にも 1,700円(税込)
電子書籍もあります。

コンテン堂
( 都政新報 電子書店 )


交通費が新宿か飯田橋のどちらかまで
往復 800円 よりかかる場合は
オンラインショップの方が
良いかもしれません。

なお
特別区職員ハンドブック 2025
第I編 特別区と区政
第1章 23区のすがた に限り
公益財団法人 特別区協議会
WebサイトからPDFで閲覧ができます。

特別区(東京23区)- 特別区協議会
 (各区の概要)


ところで近年
この 特別区職員ハンドブック の購入と
メルカリ について
“ 謎 ” の現象 が起こっているようです。
その現象については
『クイズ王の勉強法からの〜
 特別区職員ハンドブックのはなし』

少し触れていますので
“ ぼったくられないよう ”
きちんと調べてから購入してください。


先頭へ


職員ハンドブック 2025年(令和7年)版
( 調査日:2025年4月1日 )



東京都総務局人事部 編
一般財団法人
東京都人材支援事業団
人材育成センター 発行
2025年(令和7年)3月 発行
A5判,本文670ページ
東京都機構図 付

東京都職員ハンドブック です。

こちらも 東京都職員 として
職務上必要な基礎的・実務的知識の
習得や自己啓発を目的
としています。

発行の間隔は
昭和25年(1950年)以来
ほぼ,隔年で発行 されています。

内容 について
目次編と章の部分
次のとおりです。

第Ⅰ編 東京と都政
第1章 東京の現状
第2章 都政の基本方針

第Ⅱ編 地方自治制度と都の行財政
第1章 地方自治制度
第2章 地方分権の推進
第3章 都行政の仕組み
第4章 地方財政制度と都財政

第Ⅲ編 組織と仕事
第1章 人事
第2章 文書
第3章 財務
第4章 都民と都政
第5章 都庁のDXの推進
第6章 仕事の進め方
第7章 人権
第8章 接遇
第9章 統計

・仕事の進め方に関する都庁ルール
( 11ページ )
・自己啓発のための参考図書等
・東京都機構図
・表見返し:
 都の(紋章,シンボルマーク,
 花,木,鳥)
・裏見返し:東京都歌


前版(2023年)から
目次の章立てで
変わった箇所はありません。

政策の内容での注目は
第Ⅰ編 第2章 において
第1節
2025 東京戦略(案)
紹介され
第2節では
『 2025 東京戦略(案)』を
実現させるべく構造改革を
推進させる取組みとしての
シン・トセイ戦略
第3節では
気候変動や地震,感染症等の
多様な危機に対して
強靭で持続可能な都市を実現する
TOKYO強靭化プロジェクト
掲載され
都政の今後の進むべき方向性が
概観できます。

また
第Ⅲ編 第5章 では
都庁のDXの推進における
東京デジタルファースト推進計画
改訂した
東京デジタルファースト推進計画
第二期計画
の概要などが
掲載されています。

職員ハンドブック 2025
販売価格 については

1冊 831円(税込)

こちらも
前版から小刻みに21円の値上げです。

販売場所 は現在のところ
くまざわ書店 都庁店 でしか
取り扱っていないそうです。

くまざわ書店 都庁店 の詳細については
上記参照。


先頭へ


この他にも
一般販売用に流通している
地方公務員として
必要な基礎知識をまとめた
同様の趣旨の本で
必携自治体職員ハンドブック
があります。

必携自治体職員ハンドブック 第7次改訂版
( 調査日:2025年4月16日 )



公職研編集部 編
公職研 出版
2025年4月 発行
A5判,434ページ

『 必携自治体職員ハンドブック 』
 - 公職研


目次( 編と章の部分 )

第1編 地方行政の動向と課題
第1章 地方分権
第2章 地方行財政の最新動向
第3章 少子高齢化時代の福祉政策
第4章 環境行政
第5章 国際化社会
第6章 地域づくりと地域活性化・地域振興
第7章 防災
第8章 情報公開制度と個人情報の保護
第9章 行政手続
第10章 人権
第11章 政策形成過程

第2編 地方自治の諸制度
第1章 地方自治制度
第2章 地方財政制度
第3章 地方公務員制度
附章 『経営管理』のポイント



前版(第6次改訂版)から
目次の章立てで変わった箇所は
第3章少子高齢化時代の福祉政策
医療・福祉に変わっています。
これは
コロナ禍等により
地方自治体の課題も
『少子高齢化」のみに留まらず
「医療・福祉』分野の政策課題として
幅広く捉えたことによるものでしょう。

販売価格は 330円値上がりの
3,080円(税込)

『必携自治体職員ハンドブック』では
『特別区職員ハンドブック』のように
その地域に特化した課題や取組みの
記載ではなく
地方自治体全般の課題等について
書かれています。

一方
特別区職員ハンドブック でも
地方自治制度
地方財政制度
説明は第Ⅱ編でされています。
さらに
分野別の政策課題 についても
第Ⅰ編 第3章
掲載されているので
内容的に見ても
地方自治全体の内容や制度のほか
沿革,組織,取組など
基礎的なデータを知るための
資料としては十分
であり
都内にお住まいの方は
価格も手頃
金銭的負担もかなり軽く
コスパの良い
特別区職員ハンドブック の購入を
おススメ します。


先頭へ


他方
東京都職員ハンドブック については
地方自治制度や
地方財政制度の説明は
されていますが
都行政の政策課題については
都政の基本方針(第Ⅰ編 第2章)
都庁のDXの推進(第Ⅲ編 第5章)
主な人権課題(第Ⅲ編 第7章 第2節)に
留まるのみです。


東京都の基本計画 の詳細については

長期計画の『 2050 東京戦略 』
2025年3月 に策定してます。

そのほかにも

東京グリーンビズ
ポスト・コロナにおける東京の構造改革
シン・トセイ Ⅹ
 都政の構造改革QOSアップグレード戦略2.0

TOKYO強靭化プロジェクト upgrade Ⅰ
SDGs実現への取組
大学との定例懇談会
東京都と大学との共同事業
子供・長寿・居場所区市町村包括補助事業
( 3C区市町村包括補助事業 )


といった計画を掲げています。

『 2050 東京戦略 』の冊子販売については
都民情報ルーム
もしくは
紀伊國屋書店ウェブストア
購入できます。
( 調査日:2025年6月9日 )

なお
2050 東京戦略
シン・トセイ Ⅹ
 都政の構造改革QOSアップグレード戦略2.0

については
東京都が『 DXの推進 』
掲げていることもあり
デジタルブックで見ることができるなど
Webサイトが充実しています。


先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2025年4月1日火曜日

昭和のクイズ王の勉強法からの〜特別区職員ハンドブックのはなし

昭和のクイズ王の勉強法
特別区職員ハンドブックと
メルカリの現象
についての雑記

★ 特別区職員ハンドブックのはなし

  この辺りから !!


昔放送されていたクイズ番組を
今改めて観ていると
色々と参考になるものがあります。

その一つに
クイズ王(昭和のレジェンド)と
呼ばれた方々が
どういった勉強をしていたのか
ということです。

まずは
第1回 アメリカ横断ウルトラクイズ
優勝者 である
松尾清三 氏 の 勉強方法です。

クイズ番組のオールドファンならば
松尾さんの名はほとんどの方が
知っているのではないでしょうか。

この方法は
『 ギミア・ぶれいく 』
第1回 史上最強のクイズ王決定戦

( 1989年11月14日 )で
放送されていたものです。

松尾 氏は
クイズ番組の出場が決まると
新聞などから
クイズに出そうな記事をチェックし
問題形式にして
カセットに吹き込んで聞く。

という勉強方法が紹介されていました。

資格試験,大学受験等で
自主ゼミを組んで勉強する場合や
研修などにおいても
互いに問題を作り合って解く作業は
頭によく定着する方法
だと思います。

番組では他に
森田敬和 氏の
クイズ番組を録音した
カセットテープを
仕事の合間にひたすら聞く
方法。

大木一美 氏の
多くのクイズ番組を録画して観たり
クイズの本をとにかく読む
方法。

これらは
資格試験や大学受験勉強的には
“ 過去問を何度も回す。”
といったところでしょうか。

その他には

水津康夫 氏の
あらゆるジャンルの本を
ひたすら読む
こと。


これは 司法試験勉強的に言えば
“ 基本書を回す ” ということに
近いのかな !?

このように
昭和の名だたるクイズ王の勉強方法が
紹介されていました。

クイズといっても
試験と全く関係ないものではありません。

公務員行政書士試験 などの
一般知識問題
時事や歴史,政治経済の問題

出題の的が絞りにくく
雲を掴むようで
得点の確実性に
欠けるところがありますが
クイズ好きは
こういったところを得意としています。

それから
マスコミ関係の就職を
希望している方たちにも有効ですね。

これらを見ると
クイズの勉強 といっても
資格試験や大学受験の勉強法に
有効であるということがわかります。


だから
公務員やマスコミ志望の学生
大学で『 クイズ研究会 』に入ると
有利と言われる所以です。

それから要は
勉強しなければならないのではなく
勉強( クイズ )が
好きでしょうがないレベルになると
どんどん頭に入る
ということです。

そして
“ 繰り返す ” ということでしょう

クイズといえば以前に
『 クイズダービー 』という
テレビ番組がありました。
この番組で
漫画家の はらたいら 氏が
驚異的な正解率を叩き出していましたが
その理由について
はらたいら 氏自身が
自分と問題作成者の情報ソースが
同じだったから
ではないか !?
と語っていた記憶があります。

当時のクイズ番組での強者といえば
作家や時事の四コマ漫画などの
風刺を描いていた漫画家でした。

日々情報を仕込んでいる者同士の
問題作成者の構成作家とで
情報ソースが被るというのは
頷ける気がします。

例えば
図書館等にある膨大な資料から
クイズ問題を作ろうと思えば
際限なく問題が作成できそうですし
創作においても
それに資する材料は困らないほど
多種多様ですが
それらの作成に使っている資料は
その中の一部に過ぎなく
且つ使い勝手の良い
定番の御用達ツールに集中することが
実際のところです。


先頭へ


こういった理由から
種本(情報ソース)を知ることも
試験対策には重要
です。
色々な本を読んでいると
あっ!これは!
と思う本に巡り合います。

資格試験の参考書
予備校テキスト にも
種本 があります。

例えば
司法試験で言うならば
旧司法試験の頃は
試験委員の学者が執筆した
体系書があり
そこからの出題が多かったので
それを「基本書」として
勉強することが王道でした。
しかし
これらの本が難解だったこともあり
予備校などが
「基本書」を種本として
それを噛み砕いて解説した
「 解析講座 」
わかりやすくまとめた
「予備校本」と呼ばれる
参考書の需要が多くありました。

今となっては
「基本書」自体が
平易に書かれているため
昔,法曹同人から出ていた
佐藤憲法解読入門
新堂民訴法解明講座
といった類の本は見なくなりました。


特別区公務員試験においても
予備校の 特別区公務員対策講座
配られる
テキストレジュメ
特別区の政策の部分
『 特別区職員ハンドブック 』
第1編 第3章(区民のくらしと区政)
中心にまとめたものが見られます。

特別区公務員対策講座 での
テキスト,レジュメ作成
参考書の執筆 において
『 特別区職員ハンドブック 』
「 あんちょこ 」みたいなものです。

試験勉強において
種本といわれる基本書を購入して
自分でまとめて整理するのか。


あるいは
他人がまとめた資料や収集した情報を
高い対価を払って入手するのか。


前者は『 独学 』, 後者は『 予備校 』
ということでしょう。

また
『 独学 』での
時事問題対策 においても
先述の『 松尾式勉強法 』のように
新聞を読んで
問題となりそうな箇所を
自分で抽出する
のか。

あるいは
ニュースや新聞の重要点をまとめた
『 ニュース検定 』
(ニュース時事能力検定)の
1・2・準2級対応の問題集
『 新聞ダイジェスト 』を購入して
読み解きするのか。

これも
『 自力 』でやるか
『 他力 』を使ってやるかの選択です。

ところで
『 特別区職員ハンドブック 』
特別区職員採用試験の
1,2週間前に駆け込みで
購入する方が多く見られます。

予備校で勧められたから
とか
“ 使える ” からという情報で
他の受験生も購入しているから
との理由のようですが

ヤマを張る には
量が多すぎるし
そこから出題されそうなところを
抽出して答案構成するのにも
時間がかかります。

けれどもあえて購入するのは
“ お守り ” として
とりあえず持っておく
という 安心感 なんでしょう。

定価は値上げしたとはいえ
1,100円(税込)
ボリュームからすればリーズナブル。

都政新報社 から購入の場合は
送料の 800円 が加算されて
1,900円(税込) になります。
また
電子書籍版なら
コンテン堂(都政新報 電子書店)から
1,700円(税込)で購入できます。

ということなので
とりあえず買っておけばよい
という考えだと思っていたのですが…

何と! これがビックリ !!

試験直前頃には
メルカリ
3,000円 近い
いや
それ以上の『 ダフ屋価格 』
売買されているんですよ!
別に
品切れでも
限定本でもないんですがね … !?

売り手としても
そんな “ ぼろい価格 ” でも
買い手があるので
当然売りますよね!

ただしこれは
試験直前期といえども
ヤフオク,PayPayフリマ,ラクマでは
そんな “ ダフ屋価格 ” では売れず
メルカリだけに起こる現象のようです。

『 溺れる者は藁をも掴む 』
とはよく言ったもので
普段はメルカリせこく値引きしてくる
金欠の学生が多い中
そういうところには
よく調べもせずに
お金を出してしまうんですねぇ…。

『 情報弱者 』
様々な場面で不利または劣後しますので
注意なり何らかの対策をしてください。

このはなしを始めると量が多くなるので
ヤマの張り方を含めて
別の回で述べましょう。

といったところで

今回は
なつかしのクイズ番組から
昭和のクイズ王たちの勉強法を
紹介しつつ
『 特別区職員ハンドブック 』と
メルカリの現象についても
書き綴ってみました。


先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2024年10月17日木曜日

ランガナタン五原則と図書館の社会的効用


情報需要者(利用者)と
情報提供者 の情報を
マッチングさせるために
利用者に正確かつ有益な情報を
いかにして合理的に
アクセス
してもらうか。

これが
図書館
専門職である司書の役割
一つです。

図書館学をきちんと修め
司書として日々研鑽している方は
ランガナタン
“ 図書館学五原則 ”
そらんじることができると思います。

1.Books are for use.
図書は利用するためのものである。


2.Every reader his or her book.
すべての読者に,その人の本を。


3.Every book its reader.
すべての本に,その読者を。


4.Save the time of the reader.
読者の時間を節約せよ。


5.A library is a growing organism.
図書館は成長する有機体である。


この五原則は1931年に示されたもので
当時は本が貴重であったことから
本の「利用」よりも「保存」
主眼に置かれていた時代に掲げられた
理念です。

この五原則が今日まで
「 図書館奉仕の神髄 」 といわれ
図書館サービスの理念となって
きました。

五原則の内容
憲法や一般法と同じく
抽象的に表現 されていますので
実際の「図書館サービス」に
どう 具現化 していくかの研究と実践

竹林熊彦 氏をはじめ
多くの研究者や実務者たちが
著わしてきました。

◇ 図書館の対外活動
( 日本近代図書館学叢書第2巻 )
 - 竹林熊彦 著 慧文社 2017


なお,竹林熊彦 氏の
自筆稿や蔵書など研究資料については
同志社大学図書館の
竹林文庫に保存されています。

◇ 竹林文庫 - 同志社大学図書館

それから
この 第五原則
A library is a growing organism.
( 図書館は成長する有機体である。)

と謳っているように
竹林 氏の時代から現在に至るまで
時代が変わり
社会の変化に伴って
図書館もそれに合った
サービスを展開する必要から
ランガナタンの
図書館学五原則自体に
手を加えようとする考えが
出てきました。

OCLC Research の研究員 である
L.S.ConnawayI.M.Faniel
公開した
“ Reordering Ranganathan
: Shifting User Behaviors, Shifting Priorities ”

があります。

このレポートは
ランガナタンの「図書館学の五原則」
を基軸としつつ
その優先順位を並べ替え
現代社会の状況に合わせて
一から四の原則に
新たな解釈 がなされたもので
特に第四原則の
Save the time of the reader.
( 読者の時間を節約せよ。)

最優先 として置かれました。

これらは
当時の「保存」よりも
「利用」を重視 しています。

「利用」についても
情報が溢れている昨今
その中から
情報需要者が
いかに効率的かつ正確に
情報を取得できるのか
需要者の情報行動を把握し
容易にアクセスできるよう
サポートすること。


そして
情報需要者が何を求めているか
ニーズを知ること。

それにはまず
所属する図書館に何ができるのか
自らの所属するコミュニティを
知る必要があること。


その二点を理解した上で
情報アクセスに必要な
具体的なインフラを整備

それらを利用しやすくし
容易にアクセスできるように
整えておくこと。


これらの趣旨のもとで
打ち立てられた原則は
以下のとおりです。

1.Save the time of the reader.
( 読者の時間を節約せよ。)(旧 第四原則)
新解釈:
Embed library systems and services into users' existing workflows.
( 図書館システムとサービスを
 利用者の実際の情報行動に組み込め。)


2.Every reader his or her book.
( すべての読者に,その人の本を。)(旧 第二原則)
新解釈:
Know your community and its needs.
( 所属するコミュニティとそのニーズを知れ。)


3.Books are for use.
( 本は利用するためのものである。)(旧 第一原則)
新解釈:
Develop the physical and technical infrastructure needed to deliver physical and digital materials.
( 紙媒体や電子資料を提供する物理的
 技術的なインフラを発展させよ。)


4.Every book its reader.
( すべての本に,その読者を。)(旧 第三原則)
新解釈:
Increase the discoverability, access and use of resources within users' existing workflows.
( 情報行動の中で資料を発見しやすく
 入手しやすく,使いやすくせよ。)


5.A library is a growing organism.
( 図書館は成長する有機体である。)


何かを調べるという行動は
そのこと自体が最終目的ではありません。
調べることによって
裁判の証拠資料としたり
論文や記事等を
作成するにあたって参考にしたり
裏付けを取ったりします。
その他にも
就職や結婚,健康など私的なことから
選挙における投票を決める材料とする
国政に対する意思決定の役割を担うなど
あらゆることを選択する際の
資料にすることが最終目的です。

その最終目的を早く達成するために
調べる時間はできるだけ短縮しつつ
目的に適合した資料・情報を入手して
合理的に行ないたいという
情報需要者のニーズがあります。

それをアシストするための
図書館サービスの理念として
ランガナタンの
「図書館学の五原則」の新解釈を
紹介しました。

他方
「 図書館の名目的効用 」という
指標があります。
これは
図書館サービスを実施することによって
どれだけの経済効果が出たのかを
表す指標
です。

図書館の名目的効用

購入図書の平均単価(P)
×
貸出冊数(L)

図書館経費(E)


という式になります。

この指標は
仮に図書館がなければ
利用者の求める資料を
書店などから購入する必要がある。
これにより
購入に要した費用(P×L)
から
図書館の管理・運営に
必要な経費(E)を
マイナスすることで
図書館があることによって
節約できた金額となるので
図書館の社会的効用とする
ものです。

この指標は単純でわかりやすいため
自治体でいうならば
図書館側が首長や議員に対して
説明するときに用いられる指標です。

この数値を上げるための策として
一人に対する一回の貸出冊数を
多くしている(例えば 30冊)
自治体の公共図書館もあります。

しかし
今の図書館サービス
以前のように
「貸出」サービスよりも
「利用」を重視する方向へ
サービス展開を変化
させています。
そのため
やみくもに一回の貸出冊数を
多くしない自治体の図書館もあります。

こういった考えの図書館は
利用者にゆっくり見ていただけるよう
席の独占にわたらない限度で
合理的時間を設けるなど
工夫をしながら
閲覧席や椅子を増やすなどして
サービスを展開しています。

この場合
図書館の社会的効用
「貸出」のみではなく
「図書館の利用」としてとらえ
図書館に来館・利用してもらい
利用者の目的達成のための
資料・情報へのアクセスや
マッチングを合理化させる
ことで
その結果
時間を節約させることにより
効用を上げています。

そこには
配架場所や請求記号の改善。
案内表示(サイン)の工夫。
パスファインダーの作成などの
物理的・技術的なインフラの構築は
もちろんのこと
利用者ニーズに合った選書
レファレンスサービス
児童サービス
専門スタッフを置くことや
保育所,学童,学校等との連携
といった
マンパワー的サービスにも
重点が置かれています。

もっとも
「貸出」も「利用」の一つであり
あからさまには言えないけれども
色々と能書きは言うものの
所詮は
“ 無料貸本屋 ” と “ 勉強部屋 ” で
それに加えて
図書館が社会教育施設という建前上
情操教育として「おはなし会」等の
児童サービスも提供すればよい。
とする考えもあり
図書館サービスの内容について
重点を置く箇所と
サービスの深度については
市区町村(中小都市)の
公共図書館の場合
各自治体で考え方が当然異なります。

それ以外にも
図書館には
利用者に新たな発想を創出させ
新たなモノやサービス,
アイデアなどを
創造することに資する効用

もあります。

この辺を述べはじめると
キリがないので
また別の機会に・・・。

なお
発想法に関する記事は
過去に
『思考・発想法としての抽象のハシゴ』
でも
色々と書き綴っていますので
関心のある方は是非 !!


~ 参考資料 ~

◇ E1611-
時代は変わり順序も変わる:
『 図書館学の五法則 』再解釈の試み
- 宮城教育大学附属図書館・吉植庄栄
- カレントアウェアネス-E
No.267 2014.09.25
- 国立国会図書館
http://current.ndl.go.jp/e1611

◇ 図書館情報学入門(有斐閣アルマ)
- 藤野幸雄,荒岡興太郎,山本順一 [著]
- 有斐閣 1997

以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2024年10月13日日曜日

区政情報コーナーの利用

区政情報コーナーで多い問い合わせ

特別区公務員試験問題コピーの注意点
環境, 土壌汚染, 医薬, 衛生, 建築関連の
届出事業者の閲覧


区役所には
名称はまちまちですが
区政情報室,区政資料コーナーという
情報コーナー(資料室)
設けています。

この情報コーナーでは
その区の 総合計画 や 予算・決算書,
事業概要,マスタープラン
といった
施策行政運営 に関する資料。

区史史跡,まち歩きなどを中心に
区に関係する資料の閲覧ができ
その他には
有償刊行物の販売も行っています。

足立区 のように
区によっては
区立図書館の分館的な機能も備えていて
図書館と同様に OPAC もあり
貸出しや取寄せ等も可能な
資料室もありますが

一般的な区政情報コーナーは
時期によって
特別区公務員志望者が
職員募集案内等をもらいに来るなど
人がパラパラと来る時期もありますが
全体として利用客は多くはなく
職員も暇そうに窺えるコーナーです。

職員の質についても “ 窓際族 ” のような
年配職員が担当していることが多く
メインの部署の職員に比べて
対応も格段に悪いです。
また
“ 区政情報 ” という
体裁はとっていますが
「暖簾に腕押し」とはこのことで
区政について尋ねても
満足な回答が返ってくることはまずなく
(皮肉を込めて)ベテラン職員らしく
のらりくらりで浅薄な方が散見され
まともな職員に当たることは
“ 稀 ” です。

したがって
詳しいことを尋ねたいときや
求める情報が明確な場合は
役所のインフォメーション
(総合案内)から
担当部署を案内
してもらうと
ストレスなく進むと思います。

このコーナーの利用者には
特別区職員採用試験
特別区立幼稚園教員採用候補者選考
過去問のコピーを取りに
志望者が訪れることが間々あります。
しかし
区政情報コーナーのコピー機
自動原稿送り装置(ADF機能)
無い ため
1枚1枚スキャンする必要があり
複数年分のコピーとなると
とてつもなく時間がかかります。
また
ストック過去問の充実度についても
それほど過去には遡れませんので
過去問のコピー については
平成14年度 乃至 15年度まで遡って
過去問の閲覧・コピーができて
かつ
自動原稿送り機能のある
コピー機が設置されていて
効率よく作業を進めることができる
特別区自治情報・交流センターでの
閲覧・コピーを「強く」お勧めします。

その中にあって
区政情報コーナーを訪れる利用者からは
ほぼ一定の同じような
問い合わせがあります。

その多い問い合わせを挙げてみましょう。
これについては
事業者によるものがほとんどです。

水害ハザードマップ の閲覧または入手。

これについては
宅地建物取引業法施行規則の
一部を改正する命令
(令和2年内閣府令・国土交通省令2号)に
よるものが多いと思われます。

なお
水害ハザードマップ
土砂災害ハザードマップ
各区のWebサイトからPDFで閲覧ができ
詳しい案内もされています。

洪水ハザードマップ公表状況

土砂災害ハザードマップ公表状況

環境,土壌汚染関連資料 の閲覧として

環境確保条例に基づく

「工場名簿」,「指定作業場名簿」
「工場・指定作業場廃止名簿」


環境確保条例に基づく

「土壌汚染情報公開台帳」

環境確保条例第116条第1項に基づく

「汚染状況調査に係る未調査地一覧」

土壌汚染対策法に基づく

「要措置区域」
「形質変更時要届出区域」の指定状況名簿


水質汚濁防止法,
下水道法および東京都下水道条例に基づく

「届出事業場名簿」

建設リサイクル法に基づく

「届出台帳」

医薬,衛生関連資料 の閲覧として

「理容所,美容所,クリーニング所,
公衆浴場,旅館業施設,興行場,
プールの営業施設リスト」

「食品営業許可施設リスト」
「診療所・歯科診療所・助産所リスト」
「薬局・店舗販売業リスト」

「施術所リスト」

建設・建築関連資料 の閲覧として

解体工事の事前周知につき
中高層建築物等の建築に係る
紛争の予防と調整に関する条例 による

「標識設置届」

建築物の解体工事の事前周知に関する
指導要綱
に基づく

「解体工事指導要綱報告書等受理簿」

全ての区は把握していませんが
おそらく利用者(事業者)の
ニーズとしては
各区同様と考えられ
これらのうちのどれかの情報を求めに
来庁される方が多いと思われます。

渋谷区などでは
これらの問い合わせや
複数の訪問利用者に対応すべく
区政資料コーナーに
予め ファイルを複数分作成
閲覧に供している区もあります。

また
練馬区などでも検索しやすいように
区のWebサイト
リスト化してまとめて提供しています。

各種台帳等(標識設置届など)の閲覧
-【練馬わがまち資料館】


さらに
オープンデータ として
区のWebサイトから
閲覧できるものもあります。

練馬区オープンデータサイト

まれに 図書館
特別区自治情報・交流センター
これらについての問い合わせをしている
利用者を見かけますが
これは 区役所マター なので
問い合わせ先が違います。

これらについて
区の公共図書館や
情報・交流センター等の
窓口スタッフに尋ねても
司書スタッフ個々の
能力にもよりますが
自分の経験上
きっちり案内してくれるかは微妙です。

こういった司書の能力を踏まえた上で
余計な時間を費やすことがないよう
これらの問い合わせ区役所
認識をしておいた方がよいでしょう。

もっとも
ハザードマップ医療機関リスト
図書館や自治情報・交流センターでも
閲覧対応できるかもしれませんが …。

洪水ハザードマップ【東京都建設局】

洪水浸水予想区域図【東京都建設局】

土砂災害にそなえて【東京都建設局】

東京都の医療機関・薬局の情報
については
全国の医療機関・薬局が検索できる
「医療情報ネット」があります。

東京都医療機関名簿 については
都庁内の 都民情報ルーム にて
購入することもできます。

医療機関名簿 - 東京都保健医療局

都民情報ルーム

なお
ここに挙げた資料については
閲覧申請が必要な資料もあり
担当部署が直接受け持っている
場合もあるので
詳細については
各区役所に問い合わせください。

そして前述したように
区役所のインフォメーション
(総合案内)から担当部署を案内

という流れがスムーズです。

この情報が参考になれば幸いです。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。


2024年9月27日金曜日

特別区の事業内容を調べる!


特別区公務員の区面接に臨む準備として
「各部署の仕事内容」について
少し掘り下げて知りたいという質問を
受験生から受けることがあります。

こういった場合は『 事業概要 』
当たるとよいでしょう。

ただ
『 事業概要 』の公表については
各区で統一化されていません。

冊子体のものは存在するが
Webサイトでは公開していなく
区役所にて
販売,閲覧のみ行っている。

あるいはそもそも
『 事業概要 』自体を
作成もしくは公表していない。
これについては
事業概要に掲載されている内容が
他の資料に分散されている場合が
あります。

さらには
『 事業概要 』
Webサイトにて公開はしているが
どこに掲載されているのか
探すことが困難であることや
他の資料に分散されているケースでは
検索に手間がかかるといった
デメリットがあります。

受験する職種の事業内容について
より詳しく知りたいという方の中では
特に
衛生監視,心理,福祉,保健師 の分野で
熱心に勉強している技術職の受験生に
多いように感じます。

これらの職種は採用人数が少ないため
浪人するケースが多く
同様の職種での区の非常勤などで
働きながら
正職員の採用をめざすといった方が
間々あります。

そういった方々のために参考として
まず
『 事業概要 』内容構成
紹介します。

はじめに
基軸となる
構想,計画の体系,施策と取組
掲載しています。
そして
当該事業部門における
沿革,組織体系,
所管事業(各課が担当する事業内容),
事業実績,統計,職員構成,
関連施設,付属機関

といった内容構成で
その他にも
予算・決算
掲載しているものもあり
その事業について
一つの資料で
上記の内容が集約されているので
利便性が高いです。

ただし
区がインターネット公開している
事業概要
については
内容がまとまっていて
レイアウトもしっかりしているものが
多いのですが
ネット公開していない
内部資料的な事業概要
組織体系,所管事業の取組と実績
職員構成 及び 統計 といった
中核部分のみの掲載であったりと
各区によって
内容にばらつきがあります。

ちなみに
他の資料に分散されているケースでは
分野別の事業計画 を見ると
計画 及び 施策と取組 は当然のこと
所管事業(各課が担当する事業内容)
統計
通常は掲載されています。

したがって
目的にもよりますが
分野別の事業計画 でも
ほぼ賄うことができます。

ただ
“ 計画 ” ゆえに
前期の 事業実績,決算 といった
結果に関する資料や
事業経費の概算
計上されている区もありますが
これから付いてくる
具体的予算 については
掲載されていないということです。

一例として
荒川区,新宿区,品川区
子ども・子育て支援計画
介護保険事業計画
挙げておきます。

【 子ども・子育て支援計画 】

荒川区子ども・子育て支援計画

品川区子ども・子育て支援事業計画

新宿区子ども・子育て支援事業計

【 介護保険事業計画 】

第9期 荒川区高齢者プラン

第9期 品川区介護保険事業計画

新宿区 高齢者保健福祉計画
・第8期介護保険事業計画


では次に
Webサイトに公開されている
『 事業概要 』の一例を
挙げましょう。

まず
港区 の場合は
各分野の 事業概要の一覧
掲載しています。

こういった一覧があると
検索が容易なんですがね・・・。

港区トップページ > 区政情報
> 統計データ >
令和5年度(2023年度)版 事業概要

中野区 においても
区政情報​のページに
事業概要 をまとめています。

中野区ホーム 区政情報
区政資料・刊行物

練馬区,世田谷区,豊島区
保健衛生事業概要 の場合

練馬区 では
統計・調査 > 健康関係 のページ。
ねりまの保健衛生(事業概要)

世田谷区 では
その他計画、指針等
> 保健福祉領域 のページ。
保健福祉総合事業概要 - 世田谷区

豊島区 では
白書・報告書
> 地域保健課(報告書)のページ。
豊島区の保健衛生(事業概要)

といったように
同じ 保健衛生事業概要 でも
各区で異なるカテゴリの中に
掲載されている場合があります。

中野区の事業概要 の場合
例えば
保健衛生事業 及び 健康推進,
高齢者,障害者等
福祉事業
健康福祉部 です。

中野区ホーム > 区政情報
> 区政資料・刊行物 >
令和6年(2024年)版
中野区健康福祉部事業概要


一方
子育て支援,教育分野
事業のあらましや施策については
教育委員会事務局及び子ども教育部
刊行する
『教育要覧』に掲載されています。

中野区ホーム > 区政情報
> 区政資料・刊行物 >
令和6(2024)年度版 教育要覧

このように
各区で事業概要を刊行する部署が
異なりますので
頭に入れておいてください。

『 事業概要 』
その区の事業についての内容が
集約されているので

議員が事業内容を把握する場合
職員が議員へ説明する場合にも
使われています。

大田区 ならば
おおた区議会 のページから
各委員会 に分かれていますので
そこに掲載されています。

大田区議会 - 委員会資料

例えば
健康福祉委員会 ならば
『福祉部事業概要』,
『健康政策部・保健所事業概要』

健康福祉委員会
> 令和5年 > 7月14日
福祉部 資料26
令和5年度 福祉部事業概要


健康政策部 資料30
令和5年度 健康政策部・保健所事業概要


こども文教委員会 ならば
『こども家庭部事業概要』があります。

こども文教委員会
> 令和5年 > 7月14日
こども家庭部 資料1
令和5年度 こども家庭部事業概要


というように
区議会のホームページ
議会資料として公開されている
区もあります。

墨田区 でも区議会事務局で
区の事業内容をまとめた
ポケットサイズの
区政ミニデータ集
発行していましたが
行財政改革・行政情報化の取組として
区議会ペーパーレス化による
紙資料の削減と
他の行政資料での代用が可能なため
令和6年度から廃止されました。

令和6年度 予算概要 - 墨田区

そのほかに有償刊行物として
荒川区 では
事業概要をコンパクトにしたような
区政ポケットブック
販売しています。

ということで
各区『 事業概要 』の一部を挙げました。
特に
区議会のページに掲載があるものは
委員会資料として
各委員会に付されているので
委員会の行われた日付から
検索しなければならず
とても時間がかかります。

そこで
目的の情報を引き出す手段として
サイト内の『 検索窓 』を使う
方法があります。
さらに
もっと手っ取り早い方法は
Google 等の検索エンジン から
〇〇区 事業概要 ” と入力して
検索する方法が近道でしょう。

これらの方法は
『特別区の総合計画を調べる』でも
述べたところです。

行政による事業は
総合計画及び各事業ごとの
分野別計画に沿っています。

『 事業概要 』内容構成のところで
ご案内しましたが
『 事業概要 』には
通常冒頭に
その事業の支柱となる計画の概要
掲載されているので
そこから該当する 分野別計画
当たることができます。
当然ながら
その区の 総合計画
ざっくりと
確認しておきたいところです。

以前に書いた
『特別区の総合計画を調べる』の他に

基本計画個別の計画 についても
容易に情報を引き出せるように作成した
リンク集もご利用ください。

Link 特別区 / 公務員

この情報が
採用の一助となれば幸いです。

以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月24日火曜日

無料講義動画で学習

今回は
無料で配信されている講義を活用し
学習の効率アップを図ってもらえるよう
無料で受けられる講義を
いくつかご案内します。

◆ 弥生カレッジCMC
 - 簿記・弥生のビジネススクール


ここまでやっていいの?
というぐらい
サービス満点の学校。
日商簿記3級,2級 など無料

おまけにレジュメがあるので
テキスト代も無料という充実ぶり。
さすがは関西商人といった感じです。

◆ フリーラーニング
 - Free–LearninG For Your Extention


公務員や不動産鑑定士などの
経済学 科目では
この先生に救われた方も
多いと思います。
そのぐらいわかりやすい講義で有名な
石川秀樹 先生

ただし
テキスト代
書店で購入する必要があるため
有料 です。

◆ 高校倫理  - 白坂慎太郎

元・学習塾講師 の
白坂慎太郎 氏 の動画サイト
高校倫理 の他に
哲学入門,心理学,宗教入門,
経営学,経済学入門 人財育成 等

講義内容は多岐にわたります。

大学生や社会人になって
倫理や哲学の基礎的な考え方を
見直すことは重要です。
そこで
高校レベルの教科書で
ブラッシュアップすることは
非常に合理的です。

だから
山川出版社
「もういちど読むシリーズ」
注目されるということなんでしょう。

この動画は
高校倫理 等を
ブラッシュアップする際の
手助け
になると思います。

◆ わくわくアカデミー IT共通分野
 - 新着動画リスト


(株)わくわくスタディワールド
運営する動画です。
情報処理試験全ての項目を
開設する動画ではありませんが
女性の声( たぶん社長! )で
わかりやすく解説しているので
挙げておきました。

最後に
会員登録が必要ですが

MITYale大学UCI など
海外トップレベル大学の講義動画を
配信している
Asuka Academy を紹介しましょう。

◆ Asuka Academy
 - 世界最高の海外大学講義を
  日本語で無料で学べるオンライン講座


こちらの講座は
日本語字幕つきで配信しているので
語学力に自信がなくても
取り組むことができます。


以上
これらの情報が
学習の一助となれば幸いです。


読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月17日火曜日

大審院の判例

法情報検索 各論 3 判例 9

前にもご紹介した
大審院判例簡易化ソフト - 韋駄天
(名古屋大学)


このソフトは
『大審院判例簡易化ソフト』
副題にもあるとおり
元々は
大審院の判例を読みやすくするために
開発されたソフトのようです。

今回は
その 大審院の判例 について
書いてみます。

まず 大審院 とは
明治8年~昭和22年まで存続し
現在の最高裁判所が
設置されるまで続いた
最上級の司法裁判所です。

民法の講義の最初の方に出てくる
権利濫用事例の判決で
宇奈月温泉事件
大審院判例が紹介されたことを
覚えています。
大審院 判決 昭和10年10月5日
(民集14巻1965頁)
 

この判例は現在でも
権利濫用のリーディング・ケース
となっています。

民法の授業の一発目に
このカタカナ書きの
読みづらい判例が出てくるので
凹んでしまった記憶がありますが…。

このように
いまだに重要な判例がありますので
大審院の判例も
参照する必要性があります。

では
大審院の判例を調べる際
どの文献にあたればよいのかです。

大審院 では
民事と刑事の判例 があります。

民事 については
大審院民事判決録(略称:民録
(明治8年~大正10年)から
途中で名称が変わって
大審院民事判例集
(略称:民集 または 大民集
(大正11年~昭和21年)まで
刊行されています。

刑事 については
大審院刑事判決録(略称:刑録
(明治8年~大正10年)から
民事と同じく名称が変わって
大審院刑事判例集
(略称:刑集 または 大刑集
(大正11年 ~ 昭和22年)まで
刊行されています。

ただし
刑事 については
明治17年12月~18年12月までは
刊行されていません。

また 民事,刑事 とも
明治21年~23年までは
刊行されていません。

この他に
民録,刑録から重要な部分についての
抄録がなされた。
大審院民事判決抄録(略称:民抄録
(明治31年~大正10年)
大審院刑事判決抄録(略称:刑抄録
(明治24年~大正10年)もあります。

大審院の判例集
民録,刑録,大民集,大刑集
公的刊行物 ですが
詳しくいうと
途中で資料名が変わったり
民事と刑事の区別がなくなったり
復刻版が出版されたりと
発効形態に変遷があります。

全てを書くと紙面をとるので
資料の詳細については
こちらを参考にすると便利です。

● 日本-大審院・最高裁判所判例集
 - 国立国会図書館リサーチ・ナビ


● リーガル・リサーチ / いしかわまりこ[他] 著
第5版 日本評論社 2016年3月


大審院判決録 として整理されたものが
刊行されるようになったのは
明治28年以降で
民録,刑録 ともに
明治28年(第1輯)~ 大正10年(第27輯)
巻次が付けられて整理されています。

これに続く
大民集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和21年(第25巻)
大刑集 では
大正11年(第1巻)~ 昭和22年(第26巻)
というように
巻次の表示も「輯」から「巻」
なりました。

よくある質問で
「輯」って何て読むんですか?
と聞かれます。
この字は「シュウ」と読み
“ 集めてまとめる ”という意味です。

大審院の判例 では
「輯」大審院判決録の場合
「巻」大審院判例集の場合
使用します。

最後に
判例の引用で
「新聞×号×頁」とありますが
「新聞」って何新聞ですか?
との問い合わせがあります。

これは
『法律新聞』の略称 です。
法律新聞
明治33年9月~昭和19年8月 まで
法律新聞社 より刊行された
法律専門の新聞です。

この新聞には
法律関係の記事のほか
大審院の判例集に登載されていない
重要な判例

この新聞のみ
全文が登載されている
ケースもありますので
知っておくべき資料です。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月16日月曜日

カタカナ文語体と韋駄天

法情報検索 各論 3 判例 8

明治時代の法文は
カタカナ・文語体なので
読み慣れないとつらいですよね…。

もっとも六法のうち
憲法,刑事訴訟法,民法(家族法)は
戦後まもなく。
刑法,民事訴訟法は
21世紀を迎える少し前に。
それぞれ
平仮名・口語体(現代語)表記へと
改められましたが
民法(財産法)や商法は
近年までカタカナ・文語体でした。

◆ 憲法の現代語化

日本国憲法
(昭和21年11月3日公布
 昭和22年5月3日施行)


◆ 民法の現代語化

民法の一部を改正する法律(家族法)
(昭和22年12月22日法律第222号)

民法の改正に伴う
関係法律の整理に関する法律
(家族法)
(昭和22年12月22日法律第223号)

民法の一部を改正する法律(財産法)
(平成16年12月1日法律第147号)

◆ 刑法の現代語化

刑法の一部を改正する法律
(平成7年5月12日法律第91号)

◆ 商法・会社法・保険法の現代語化

会社法
(平成17年7月26日法律第86号)

会社法の施行に伴う
関係法律の整備等に関する法律

(平成17年7月26日法律第87号)

保険法
(平成20年6月6日法律第56号)

保険法の施行に伴う
関係法律の整備に関する法律

(平成20年6月6日法律第57号)

商法及び国際海上物品運送法の
一部を改正する法律

(平成30年5月25日法律第29号)

◆ 民事訴訟法の現代語化

民事訴訟法
(平成8年6月26日法律第109号)

民事訴訟法の施行に伴う
関係法律の整備に関する法律

(平成8年6月26日法律第110号)

◆ 刑事訴訟法の現代語化

刑事訴訟法
(昭和23年7月10日法律第131号)


研究等で
明治時代の法令や大審院の判例など
カタカナ・文語体の文献を
読むことに慣れている方々は
カタカナ・文語体のほうが
味があってよいと
言われる方もいると思いますが

そもそも法律は
その適用を受ける
国民のためにあるのであり
そのためには
できるだけ一般の国民に
わかりやすいものであるべきで
このような
片仮名・文語体の法律の存在は
問題があると
いわざるを得ないでしょう。


川崎政司
『法律の現代語化
 - 求められる法文の民主化の努力』
「立法と調査」NO.189・1995年9月


『法制執務コラム-参議院法制局』より

とあるように
立法者側も
現代語化を進めているようです。

ちなみに
『法制執務コラム-参議院法制局』
参議院法制局職員が執筆した記事
(記事内容は執筆当時のもの)を
『立法と調査』
(参議院事務局企画調整室/編)から
転載したもので
法令等に関するエピソードなどが
記載されていています。

また
原典の『立法と調査』
主要な政策課題や予算・税制の解説
国会に提出された法律案の紹介
国会ならではの情報や資料を駆使した
調査・研究の報告・論文を
掲載しています。

●『立法と調査』- 参議院 調査室作成資料
参議院トップ
> 調査室作成資料
> 立法と調査


カタカナ書きの文が読みづらい
という方は

韋駄天-大審院判例簡易化ソフト
(名古屋大学)
というソフトに

カタカナをひらがなにする。
濁点をつける。
句点・読点をつける。
旧字体を新字体にする。

『難読字に読み仮名を付ける』の欄に
チェックを付けて実行すると
難読字に読み仮名を付けることができる。

読み仮名の付いた語に
マウス・カーソルを当てると
意味が表示される。

という機能があります。

「国立公文書館デジタルアーカイブ」
「国立国会図書館デジタルコレクション」
写真なので変換ができませんが
HTML等で書かれていれば
コピペして実行すれば変換ができます。

ただし
文語体が口語体の現代語に
翻訳されるわけではありませんので
ご注意ください。



以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月15日日曜日

判例公刊

法情報検索 各論 3 判例 3

判例を調べる際
判例集に載っていない
判例があります。

憲法第82条〈裁判の公開〉では

1項…
裁判の対審及び判決は
公開法廷でこれを行ふ。


2項…
裁判所が
裁判官の全員一致で
公の秩序又は善良の風俗を
害する虞があると決した場合には
対審は
公開しないで
これを行うことができる。
但し
政治犯罪
出版に関する犯罪
又は
この憲法第三章で保障する
国民の権利が問題となっている
事件の対審は
常にこれを公開しなければならない。


とあります。

一方
判例には
判決後に判例集等に登載される
『公刊判例』
公刊物に公開されることのない
『未公刊判例』があります。

憲法で裁判の公開を規定しながら
判例においては一部のみが公刊され
あとの大多数は
公刊物に登載されていません。

また
判例登載の基準についても
ほとんど明らかにされていないのが
現状です。

この点について
判例を積極的に公刊するか否かには
双方の立場からの意見があります。

まず
積極的に公刊すべきという立場
( 促進説 )
からは
次のような主張があります。

★ 裁判の平等性の強調
★ 法的安定性の重視
★ 情報公開の尊重
( 公刊されている
 私的判例集においては
 匿名化が一般的になっています。)

一方
全ての判例公刊には消極的な立場
( 限定説 )
からは
次のように主張されます。

★ 判例公刊にはコストがかかり
 効率性や合理性からみても
 全判例の公刊に意味がない。
★ プライバシーの公開になるという
 問題点がある。

これらの立場を踏まえて
現状の判例公刊になっているので
論文等に引用されていても
実際に入手できない判例もあります。

なお
法律的判断が
過去の判断と同様であれば
判例集には掲載されません。
ですから
話題性のある判決でも
判例集に
掲載されているとは限りません。

しかし
自分の探している判例が
見つからなかったとしても
公刊されていないのではなく
検索方法が至らない場合も
ありますので
改めて検索してみましょう。

① データベース検索

各社有料データベース
裁判所Webサイトなどでは
判例の収録件数がそれぞれ違うので
目的の判例がない場合は
すべてのデータベースを
検索してみます。

よくある検索ミスとして
事件名で検索する場合は
データベースにより
事件名が異なっていたりします。
また
事件名や
その事件に登場する固有名詞では
検索ができなかったりするので
検索に工夫が必要です。

② 法律雑誌での調査

判例時報判例タイムズなどの
判例雑誌は
出版社が独自に収集している判例もあり
公的判例集に登載されていない判例も
ありますので
データベースの法律雑誌横断検索
法律判例文献情報などの冊子体へ
つぶさに当たってみましょう。

③ 新聞記事での調査

新聞記事に判決要旨が
掲載されることがあります。
また
判例集に掲載されていない判決が
掲載されている場合もあります。

これらの検索を試みても
見つからない場合は
そもそも
元の情報が間違えている場合も
あります。
そのあたりの検証も
行ってみるとよいでしょう。


~ 参考文献 ~

判例公刊 については

・指宿信『判例公刊について 上』
 法律時報 73巻10号 67-73頁


・指宿信『判例公刊について 下』
 法律時報 73巻11号 91-97頁


から要旨をまとめ

・町村泰貴
『裁判所の判決や決定が公開される割合』
  Matimulog(2012/5/26)

http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2012/05/justice-08f6.html#more
(アクセス日:2023年10月15日)

・椿寿夫『判例の入手をめぐって』
 法律時報 62巻5号 38頁


を適宜参考にしました。

以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2023年10月14日土曜日

判例が収録されるまでの期間

法情報検索 各論 3 判例 1

かつての紙媒体の情報から
IT技術の発達により,
インターネットを介しての
Webの登場で
情報流通が高速化しました。

判例や法令等の法情報も同様で
より速く
情報を知ることができます。

今回は
判決が言い渡されてから
各媒体に
判例として収録されるまでの期間を
比較しました。

判例が収録されるまでの期間は
データベースや冊子体資料により
異なります。

図にすると,こんな感じです。



◆ 裁判所ウェブサイト - 裁判例検索
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1

最高裁判所判例集 及び
下級裁判所判例集 については
過去3か月以内
知的財産裁判例集 については
過去1か月以内
各判決等の一覧を表示。

早いものでは
判決の翌日に掲載され
速報性に富む一方
審級・裁判所によって
掲載時期にばらつき

があります。
掲載までの期間は
翌日~約2週間から1ヵ月後。


◆ 裁判所時報
※『裁判所時報』は
 1780号(2021年12月15日)をもって
 終刊となりました。


最高裁判所事務総局が
月2回(1日,15日)発行
する
裁判所組織内の広報新聞。

裁判例,最高裁判所判例要旨,
最高裁判所裁判例要旨(民事のみ)の
速報が掲載されています。

また
裁判所に関係ある法律や
最高裁判所規則・規程の改廃,
裁判官の人事異動情報,
司法修習生の修習開始・終了,
裁判所関係のニュース等を収録。

1月1日号には
長官所長会同における
長官挨拶が掲載されます。

判決言渡日から
約2週間から1ヶ月後に
判決全文を速報。

インターネットでの判決速報が
なかった当時は
相当早く判例を見ることが出来る
情報媒体として活用されていました。

民集・刑集の要旨を見たり
速報として利用するのに役立ちます。

◆ 判例雑誌

『判例タイムズ』月1回
『判例時報』月3回
 分野別判例雑誌など
があります。

掲載は判決言渡日から
早くて約1ヵ月~6ヵ月
「判タ」,「判時」については
約1ヵ月 ~ 3ヶ月後。


◆ 有料判例データベース(Web版)

◇ LEX/DBインターネット - ご利用案内
https://lex.lawlibrary.jp/guide.html

新判例公表にあわせ
毎週金曜日に判例を追録更新。

毎週アップデートされる
新着判例を一覧で確認できます。

◇ D1-law.com 判例体系
https://dtp-cm.d1-law.com/

更新頻度は日次更新。
加除式書籍で提供されている
『判例体系』のインターネット版。

◇ Westlaw Japan
http://www.westlawjapan.com/products/westlaw-japan/contents/

更新頻度は日次更新。

◇ LexisNexis ASONE - 収録コンテンツ
https://resource.lexis-asone.jp/asone/info/docs/contentslist.pdf

更新頻度は
毎日更新の裁判判例は随時更新。
月次更新の裁判判例は
月次で集計して更新。


◇ LLI判例秘書アカデミック版
https://www.hanreihisho.net/

更新頻度は月2回以上。

◆ 公式判例集

掲載までの期間は
およそ半年~1年以上で
収録までに時間がかかります。


公式判例集では
厳選された判例情報が
省略されず掲載されます。

また
重要性の高い資料ですので
著作や報告書等で引用する際には
先して引用することが
望ましいとされています。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。