2022年11月29日火曜日

司法試験受験界の隠語

用語の話 2 司法試験受験界の隠語


「 法律文献・法令名の略称 」 の回で述べた
法律編集者懇話会 で検討された
法律文献等の出典の表示方法
基づいた略称は 公式に近い基準 です。

翻って
公式的ではない
司法試験受験界の隠語 があります。

隠語 とは
その集団の仲間内で通用する
専門用語です。

有名な例を挙げると
刑事 = デカ
これは明治時代の頃の刑事が
「 角袖 」を着ていたためで
「 カクゾデ 」を縮めて
逆さに読んで「 デカ 」となり
犯罪者連中から
そう呼ばれていたという 隠語 です。

他の業界用語でも
六本木 = ギロッポン とか
何かと逆さにしますよね!

それから各業界で
セールスマン が使う
てんぷらする ” という用語があります。
これは
架空の契約
取り消す目的の契約 のことで
“ でっちあげる ” ことから
“ てんぷら ” になったと言われます。

その他には
タクシー業界大日本帝国 といえば
大手の 大和,日本交通,帝都,国際
意味します。

大学入試に携わる
予備校や受験雑誌等の業界ならば
GMARCH ,成成明学獨國武,日東駒専 ,
大東亜帝国,関東上流江戸桜,
関関同立,産近甲龍,摂神追桃
など
といった
隠語 があることは
もうお馴染みですよね。

そこに入る大学名や
分類のしかたについては
多様な意見があり
議論に際限がないので
ここでは触れません。


では本題の
司法試験受験界の隠語 に入る前に
日常,法律に携わっている業界でも
異なる世界があるということを
簡単にお話ししましょう

法律に携わる者の世界には
三つの世界があると言われています。

一つ目
裁判官,検察官,弁護士や
役所,企業の法務部などの
法律をツールとして日常扱っている
実務 の世界

二つ目
法律を学問として研究している
アカデミックな 学術 の世界

三つ目
特に司法試験に合格するために
構築された方法論を探究する
司法試験受験 の世界です。

例えば
“A” という考え方が
判例も固まっていて
実務でも主流の考えである。

一方
学説では古典的な “A” 説よりも
“B” という考え方が論理性に優れ
現在は主流で
学術の世界では通説となっている。

しかし
司法試験受験界においては
“C” という考え方が
論文試験を通るために合理的であり
それをレクチャーした
予備校講座や参考書も豊富に揃っていて
現在のトレンドになっている。
いわゆる 受験通説 というものです。

ただ
法科大学院の発足後は
実務的な教育にシフトしているため
論文試験対策において
手形小切手法 での
二段階創造説
権利移転行為有因論

交付契約説 なのか。
あるいは
民事訴訟法 での
新訴訟物理論
旧訴訟物理論 なのか。
さらには
刑法 においても
団塚(団藤・大塚ラインの考え方)か
大谷説 なのか。
あるいは 前田説 なのか。
など
各々どの説を用いて答案構成するのか。
といった議論も
聞こえてこなくなり
そういった需要に応える
参考書もなくなりました。

話が少々脱線しますが

当時のその辺りの会話は
水道橋の『 丸沼書店 』に行くと
よく聞こえてきました。

『 丸沼書店 』には二つ入口があって
右側の入口には
法学系の本や法律系資格の参考書が並び
左側の入口には
経済学や税務,会計学系の本が
陳列されていて
右の法学書側はいつも混雑していて
左の経済学,商学書側は
いつもガラガラでした。

最近は行っていませんが
たぶん今でも
その光景は変わらないんでしょう。

その昔は
神保町の古書店街にあった
『 巌松堂書店 』なんかにも
法律系の古書や参考書,カセットなどの
掘り出し物がありました。

当時
『 法曹同人 』から出版されている
司法試験対策の参考書や
早稲田セミナー(早稲田経営出版)から
出版されていた
『 司法試験解法マニュアル 』
会社法 を除いた
セットで売られていたので
買った記憶があります。

この 司法試験解法マニュアル という本は
司法試験受験の参考書にすぎないのですが
本の装丁は
簡易なペーパーバックではなく
外箱付きのハードカバーで
新品で買うと
基本書 と呼ばれる
法律学の体系書並みの
結構お高い値段だったんですよね!

『 巌松堂書店 』
ビルは残っていますが
書店は廃業してしまったようで
現在は『 澤口書店 』になっています。

話を本題に戻して・・・

このように特に司法試験受験界は
かなり特殊で
コアでマニアックな世界であり
先程出した 団塚 のような
数々の “ 隠語 ” があります。

司法試験に携わったり
法学系の学問を修めた方には
当然通じますが

これを図書館や書店で尋ねられると
専門外の司書や書店員は
戸惑ってしまうことがあります。


時々所蔵の問い合わせで受ける
司法試験受験生の隠語 について
一例を挙げてみましょう。

もちろん
目録からその単語で検索しても
出てきませんよ・・・。

まず
古くから使われている
隠語で
『 ダットサン民法 』 と呼ばれる
本があります。

これは
『 民法 』 のタイトルで
勁草書房 から出版されている
( 発刊当時は 一粒社 から出版 )
我妻榮,有泉亨,川井健 共著 の本で
全3巻 あります。

これは
小型でパワフル
そして小回りが利くところから
当時の車に例えられた通称です。

この本の通称は
法律系に携わる方なら
広く認知されている用語です。

これは
“ 我妻先生の民法 ” といっても
同じく 勁草書房 から出ている
『 民法案内 』
岩波書店『 民法講義 』 など
数々の著書がありますから
それらと区別するための
通称名であると考えられます。

ちなみに
現在出版されている『 民法案内 』
我妻先生の没後に
川井健 先生 などによって
補訂・補筆されているので
川井テイスト
『 民法案内 』になっています。

我妻テイスト に浸りたければ
補訂されていない『 民法案内 』
( 特に 第1巻「私法の道しるべ」)を
お読みください。

ところで
我妻先生の『 民法案内 』
元々は 日本評論新社 から
出版されたものですが
同社からは
『 憲法案内 』 も出版されていました。
( 中村哲 著 1957年 )
中村哲(ナカムラ アキラ)先生は
美濃部達吉 門下生で
法政大学総長や参議院議員も
歴任された方です。
『 民法案内 』
藤木英雄 先生の『 刑法案内 』と同じく
勁草書房から
復刊されて欲しいものですが
『 民法案内 』『 刑法案内 』に比べて
認知度が低いようで
古書サイト や amazon でも
中々出ないレアな本です。
勁草書房から
『 民法案内 』,『 刑法案内 』が出ていて
『 憲法案内 』がないのは
少し解せぬ感じがするのは
僕だけでしょうか?

閑話休題。
次に
周知されている隠語ですが
各業界で違う認識をされている本
一例を挙げます。

『 赤本 』,『 青本 』
聞いたことがあると思います。

『 赤本 』 について
大学受験生や受験予備校
教育関係者などは
世界思想社教学社 から出版されている
大学・学部別の大学入試過去問題集
思い付くと思います。

他方
弁護士等の法律実務に携わっている方は
日弁連交通事故相談センター 出版の
民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準
と捉えるでしょう。
( 通常は 「 赤い本 」 と呼ばれます )

『 青本 』 については
赤本と同様に
大学受験生などは
駿台文庫 出版の
大学入試問題の過去問題集
と捉えるでしょう。

法律実務に携わっている方は
日弁連交通事故相談センター 出版の
交通事故損害額算定基準
のことと捉えるでしょう。

司法試験受験生の間では
山口青本 とくれば
刑法 山口厚 著 / 有斐閣

和之青本 ならば
立憲主義と日本国憲法
高橋和之 著 / 有斐閣

でしょう。

でもこれが
弁理士試験受験界 を含む
弁理士知的財産権を扱う業界
青本 というと
工業所有権法( 産業財産権法 )
逐条解説
特許庁 編 / 発明推進協会

を指します。

これらは
ロースクールの図書室では
尋ねられても見当が付きますが
総合図書館や公共図書館で
質問を受ける際には確認が必要です。

同じく
総合図書館や公共図書館の場合で
確認が必要なお尋ねとして
「 イトウマコト 」 先生 の本ありますか
との質問です。

法学系 では
周知のとおり
司法試験等の受験指導校である
伊藤塾“ スーパー講師 ”
伊藤真 先生 なのか
あるいは
東大名誉教授 で 民事訴訟法学者 の
伊藤眞 先生
なのかを尋ねる場合で
“ 学者 の ”とか
“ 東大教授 の ” で通じますが

これが
総合図書館や公共図書館の場合で
問い合わせを受ける場合は
もう一人の重鎮 である
“ イトウマコト 先生 ”

東大名誉教授 で
マルクス・宇野経済学者 の
伊藤誠 先生
のことも
頭に入れておかなければなりません。

マル経を勉強している経済学部生や
マル経・宇野経の研究者からは
こちらの問い合わせが多く
そういった認識で尋ねてきます。

特に左派系の大学では
こちらの系列の授業や研究者が多く
関連資料も多く収集しています。

それから他にも

筑波大学名誉教授 で
ドイツ語 言語学者 の
伊藤眞 先生
もいらっしゃいます。
( 独和辞典などの
 執筆・監修がありますので
 法学部で独語を選択している学生には
 知られていると思います。)

ですので
“ 学者 の ”とか
“ 東大教授 の ” というのは愚問で

“ 伊藤塾 の ” とか
“ 民訴法学者 の ” とか
“ マルクス経済学者 の ”
といった確認が無難です。

民訴の 伊藤眞 先生 に習った方ならば
“ 蝶ネクタイの・・・ ”
といえばわかりますが!

以前に地下鉄内で
民訴の 伊藤眞 先生 を
お見かけした事がありますが
先生のことを知らない人が見ても
靴やオーダーメイドと思われるスーツが
高級仕立てと一目でわかり
その着こなしからも
明らかに他の乗客とは別格の
オーラを感じました。

それから
伊藤塾の 伊藤真 先生 についても
僕は東京の者なので
旧司法試験の論文試験の会場は
早稲田大学で行われていましたが
当時,受験者だった自分が
論文試験当日に会場へ向かうと
マコト先生が
早大の門前に立っていました。
それを見たときに
背が高くカリスマ性を感じたことを
懐かしく覚えています。


伊藤塾 の 伊藤真 先生 が出たところで
『 シケタイ 』 についても
触れておきます。

法学系図書館でなくても
公務員受験者のために
『 シケタイ 』 を所蔵している
大学図書館もあります。

シケタイ とは
弘文堂 から出版されている
『 試験対策講座シリーズ 』のことで
憲法など 全15巻 が出版されています。


その他に
業界で認識の異なる本 としては
『 ヤマケイ 』 の本です。
一般的には
美しい写真集が売りの
山岳系雑誌を中心とした出版社
『 山と溪谷社 』 の本です。

僕はこの出版社の動植物を写した
山溪ハンディ図鑑
愛用しています。
写真の美しさとわかりやすさ
そして
簡にして要を得た解説で
非常に使い勝手の良い図鑑です。

翻って
司法試験業界の場合はというと
京都大学教授の民法学者
山本敬三 先生

民法講義I 総則
民法講義IV-1 契約
山本敬三 著 / 有斐閣
を指すことが多いです。


その他で主な隠語を挙げますと

『 サクハシ 』
行政法 櫻井敬子,橋本博之 共著
  / 弘文堂


『 宇賀レインボー 』
行政法 宇賀克也 著 / 有斐閣

『 潮見・黄色 』
ライブラリ法学基本講義シリーズ
基本講義債権各論Ⅰ
 契約法・事務管理・不当利得

基本講義債権各論Ⅱ
 不法行為法

潮見佳男 著 / 新世社

『 土田労働法・黄色 』
ライブラリ法学基本講義シリーズ
基本講義労働法
 土田道夫 著 / 新世社


これは
労働法概説 土田道夫 著 / 弘文堂
と区別するためです。

『 赤白本 』
会社法 高橋美加 [他] 著 / 弘文堂

『 憲法・四人組 』
憲法Ⅰ
憲法Ⅱ
野中俊彦,中村睦男,高橋和之,
 高見勝利 共著 / 有斐閣


『 リークエ 』
 有斐閣 から出版されている
LEGAL QUEST
( リーガルクエスト )シリーズ

【 注意 】
検索機 によっては
 カタカナで
 リーガルクエスト と
 入力してもヒットせず
LEGAL QUEST
 入力しなければ
 ヒットしないものもあります。


といったところで
際限がありませんが
書店員や司書の方などで
こんな問い合わせを受けたときは
思い出してください。


先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年11月26日土曜日

法律文献・法令名の略称

法情報検索 各論 4 文献 4


判タ とは 判例タイムズ
曹時 とは 法曹時報
の略称です。 

これらの略称は
法律関係に携わっている方ならば
周知のところですが

図書館や書店で尋ねるとき
重判 はどこにありますか
などというと
法律に疎いスタッフの場合
検索機でそのまま
重判 と入力して検索をかけ
“ ありません ” との
回答を受けることがあります。

まあこれは
一種の業界用語でして
それぞれの業界では
通っている用語ですが

他の業界では通じないし
また
同じ言葉でも
違った意味で捉えられかねません。

法律関係の場合
法令名においては
正式名称が長いものも多く
例えば
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
ならば
独禁法 と略して言います。
マイナンバー法
行政手続における特定の個人を識別するための
番号の利用等に関する法律

というように
いちいち正式名称で言っていたら
「 寿限無 」 のような
落語の世界になってしまいますので
通常は略称で通じます。

論文等の出典の記載においても
法令名や
判例集,雑誌名などの表記には
正式名称ではなく
略称で記されています。

この場合には
最初に 凡例
掲載されています。

しかしどうしても
表示にばらつきが出ますので
ある程度の統一が
法律編集者懇話会 にて
検討されてきました。

法律編集者懇話会 とは
法令名の略語
判例集・判例評釈書誌の略称
定期刊行物の略称などを含め
「 法律文献等の出典の表示方法 」 について
形式の統一化を図ることを
検討することを目的として
法律関係の雑誌および書籍に携わる
編集者で組織された懇話会です。


◆ NPO法人 法教育支援センター
http://www.houkyouikushien.or.jp/katsudo/

⇒ 法律文献等の出典の表示方法(2014年版)PDF
  - 法律編集者懇話会


このような検討がなされていますが
多少の 表記のゆれ はあります。

ちなみに
重判 ( 重要判例解説 ) については
法律文献等の出典の表示方法 では
重判解 となっています。


文献に当たっている際に
略称名がわからない場合。
図書雑誌 ならば
凡例 を見れば解決します。

レジュメ等で
凡例が付いていない場合の
略称名の検索方法は

先ほど紹介した
法律文献等の出典の表示方法 の他に
次のようなツールを使うと便利です。

Webサイトの場合の一例として

日本の判例集・法律文献略語一覧
- 福島大学附属図書館

https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/hanrei/hanrei.html

紙媒体の文献で検索する場合は

法律時報の12月号の巻末
文献略語表 が付いています。

以前は
1月号 に掲載 されていたのですが
( 2015年1月号 通巻1081号 まで )

2015年12月号( 通巻1093号 ) からは
12月号 に掲載 されています。

◆ 法律時報 - 日本評論社
https://www.nippyo.co.jp/shop/magazines/latest/1.html

⇒ 文献略語表 2015年12月号(87巻13号)PDF

他にも
リーガル・リサーチ 第5版
いしかわまりこ 他著 / 日本評論社 2016.3

の巻末にも
法律文献等の出典の表示方法
および
文献略語表
の掲載があります。


これらの資料で
ほとんど対応できるのですが

以前に
レジュメを見せられて
判工 という資料がわからないとの
お尋ねがありました。

上記の検索ツールでも掲載がないので

国立国会図書館リサーチ・ナビ
当たったところ
判工
判例工業所有権法 の略称
ということが判明しました。

国立国会図書館リサーチ・ナビ は
知っておくと大変便利です。


判工 の掲載のあるページを
例として紹介します.

日本 - 分野別裁判例集
- 国立国会図書館リサーチ・ナビ

http://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/Japan-hanrei-admin.php


以上
読んでいただき,
ありがとうございました。



2022年11月25日金曜日

法律用語の略字

用語の話 1 法律用語の略字


刑法などの講義を受けていると
板書で Tb ,R ,S といった
記号を使う講師がいます。

要件事実のテキストにも
ブロック・ダイアグラム
Kg ,Stg ,E といった
略字が使われています。

これは
漢字の画数が多いので
メモや板書をする際に
速く簡単に書くために
略字や記号を用います。

他にも
簿記の仕訳
下書き用紙にメモ
を取る際に
これは人それぞれですが
例えば
現金 ならば C
当座預金 は 当ヨ
売掛金 は 売×
備品 は
などとメモします。


ちなみに 図書館 のことを
( くにがまえ )に ト
書きますが
この字は という漢字の略字です。
これ一文字で
“ としょかん ” と読む
国字( 和製漢字 )です。


StgKg
個人のメモならば
簿記の仕訳メモと同じく
どう略して書いてもよいのですが
テキストに載っていたり
板書で書かれると
共通性があるので
記号として
覚えておかなければなりません。

この様なものは
記号として繰り返し書いていれば
自然と身に付くのですが
何の略字なのか
その意味がわかると
頭に定着すると思いますので
備忘録として記しました。


◆ 訴訟物
= Stg  Streitgegenstand
( シュトライト・ゲーゲンシュタント )

◆ 請求の趣旨
= Ant  Antrag
( アン・トラーク )

◆ 請求原因
= Kg  Klagegrund
( クラーゲ・グルント )

◆ 抗弁
= E  Einrede
( アインレーデ )

◆ 再抗弁
= R  Replik
( レプリーク )

◆ 再々抗弁
= D  Duplik
( ドゥプリーク )

◆ 再々々抗弁
= T  Triplik
( トリプリーク )

これらには
ドイツ語由来の略字
使われています。

またこれらの略字は
要件事実のテキスト でもある

★ 司法研修所 編『 問題研究 要件事実 』
  法曹会 改訂版 2006

までは使用されていたのですが

★ 司法研修所 編『 新問題研究 要件事実 』
  法曹会 2011

からは使用されなくなりました。

その他の ドイツ語由来の略字
よく出て来るものですと
刑法では

◆ 構成要件
= Tb  Tatbestand
( タート・ベシュタント )

◆ 違法性
= R または Rw
 Rechtswidrigkeit
( レヒツ・ヴィードリヒカイト )

◆ 有責性
= S  Schuld
( シュルト )

があります。

他方
英語由来の略字 ですと

◆ 裁判官
= J  Judge
( ジャッジ )

◆ 検察官
= P  Prosecutor
( プロセキューター )

◆ 弁護士
= B  Barrister
( バリスタ ) ・・・ の
“ B ” と思われます。

なぜ アメリカ式
Attorney( アトーニー )の
“ A ” ではなく
イギリス式
Barrister( バリスタ )を
使うのかは不明です。

単純に
「 Bengoshi 」“ B ” なのか
それとも “ A ”被告人
(英語の Accused( アキューズド )
もしくは
(ドイツ語の
Angeklagte( アンゲクラークテ ))を
表してもいるので
それと区別するためなのか
わかりません。

とりあえず単なる記号なので
深く考える必要もなく
“ B ” の方が
すわりがいいから
なのかもしれません。

その他の英語由来の略字 には

◆ 証人
= W  Witness
( ウィトネス )

◆ 被告人( 加害者 )
= A  Accused
( アキューズド )

◆ 被害者
= V  Victim
( ヴィクティム )

などがあります。

ところで,
よく登場する記号に

◆ 原告  = X

◆ 被告  = Y

◆ 参加人 = Z

こういったものがあります。

これらは
外国語の略字ではないと思いますが

記号代数学 では

既知の定数
a,b,c,d,・・・ など
アルファベットの初めの方

未知数
x,y,z,・・・ など
アルファベットの後の方
表します。

それから
関数 y = f ( x ) において
x独立変数
y従属変数
呼びます。

現実の裁判 では
訴訟ごとに 各当事者 がいるので
原告,被告等 にはそれぞれ
名前 があります。
つまりこれは
既知のもの であるので
a,b,c,・・・ です。

ところがそれを
判例共通の法理論 として
一般化 すれば
当事者としての個性はなくなるので
未知あるいは不定のもの である
x,y,z,・・・ を用いる
ということなのでしょう。

そして
独立変数 である
原告 にあて,
従属する y被告 にあてる。

三次元的 になれば
も登場しますから
参加人
とするのだと思います。


これもあくまで記号なので
深入りしてもね・・・。

諸外国のものを取り入れて
混ぜて,パンゲア大陸のように
してしまうことは
日本の法体系も一緒ですが・・・。

ドイツだろうが
アメリカだろうが
フランスだろうが
使い勝手がよければ
それらを取り入れて
それでよしとする
日本人の考え方にマッチした
方法なのかもしれません。


以上
読んでいただき,
ありがとうございました。



2022年11月19日土曜日

邪道で横着な語学勉強法

初歩の語学勉強法


物事を調査・研究するときに
外国の文献
あたらなければ
ならない場合が出てきます。

これは
諸外国で構築された技術や知識を知り
参考にするといった
空間的な知識の幅を広げるのに
必要不可欠です。

一方
時間的な知識の幅
つまり過去を知るには
古語や古文書の知識が必要です。

つまり
語学ならば
空間軸としては外国語。
時間軸としては古典,古語。
そして
社会科学ならば
空間軸としては地理学。
時間軸としては歴史学。

こういったものが
教養として知っておかなければならない
基本的な知識ということです。

高校,大学の入試や公務員試験で
これらの分野の素養がなぜ問われるのか
合点がいきますよね!

前置きはさておき

専門分野を調査・研究する場合で
外国語の単語を意味を知る場合に
例えば
法律や会計用語などでは
一般の英和や独和などの辞典は
使えませんから
専門の辞典が必要です。

通常
語学に不慣れな最初の頃は
発音にルビがある辞典を使うと
単語の覚えが早かった経験があります。
しかも自分は
携帯性が高くてすぐに引ける
コンパクトなものを探して
使っていました。

学者の先生や
優秀な学生からすれば
邪道で横着な勉強法
と言われそうですが・・・。

ちなみに
子供の頃に
漢字にルビのついた本を読んでいると
早いうちに漢字が読めるようになる

といわれています。

話を専門分野の語学辞書に戻して

例えば
ドイツ語の法律用語 なら
ちょっと古いですが,
同学社基本用語辞典シリーズ

★ 法律基本用語辞典 - 独・日・英
(同学社基本用語辞典シリーズ)/ 同学社


本書には
ドイツ語発音のカナ書きがあること。

英語や日本語の索引から
ドイツ語が引けること。

他にも
少量ですがラテン語から
ドイツ語,日本語,英語が引けて
ラテン語の発音のカナ書き
付いています。

このように多くを盛り込んでいるため
ドイツ語の収録語句数は
基本重要単語が 約5,300語,
使用頻度の高い成句が
約355例と少ないこと。
それから
古い(1985年 刊)ことが難です。

辞書は新しいものを使いましょう。
という教えを受けたと思いますが
ここでは
使い勝手が良くて初歩的な
語学辞書のはなしです
ので…。

大きさは新書サイズで
厚さは新書2冊分ほどの
コンパクトサイズです。

この
独・日・英対照のシリーズ には
他に
薬学基本用語辞典
医学ラテン語基本用語辞典
化学基本用語辞典 などがあり
自分はこちらも重宝しています。
欲を言えば
歯学 も出して欲しかった…。

★ 同学社基本用語辞典シリーズ
http://www.dogakusha.co.jp/1kihonyougojiten.html


法律辞典以外では
会計辞典 を一つ紹介すると。

★ 会計英和辞典(1997)/ シャングリラプレス

この辞典は
米国公認会計士受験用につくられた
会計用語の英和辞典です。

英語発音にカタカナ書き があり
同義語や関連語,反対語などの
記載があります。

さらに
日本語訳にその用語の解説が
付されているものもあります。

また
日本語の索引から
英語を引くことができます。

形は初期の“ ゴマブックス ”のような縦長で
厚さは
“ 有斐閣アルマ ”の標準的な厚さのものと
同じくらいです。

この辞典も
コンパクトにできているため
収録語数が約1,300語と少ないのが短所です。

ここまで
辞典を2冊紹介しましたが,

最近は専ら
「 グーグル翻訳 」
頼っています。

● Google 翻訳
https://translate.google.com/?hl=ja

英語やドイツ語に限らず
フランス語やロシア語
さらにはラテン語など
他の外国語も
単語や文章を入力すれば
翻訳してくれるし
外国語の読み
“ スピーカーボタン ” を押せば
発音してくれるので
カタカナ書きも必要ありません。

また
“ 読み上げ機能 ” を使えば
WebサイトやWordの文章を
読み上げてくれますので
非常に重宝しています。

ただし

◇ Tatbestand
( タート・ベシュタント )

事実
◇ Streitgegenstand
( シュトライト・ゲーゲンシュタント )

主題
◇ Burden
( バーデン )

負担

といった訳が出ます。

法律用語で
◇ Tatbestand
( タート・ベシュタント )

構成要件
◇ Streitgegenstand
( シュトライト・ゲーゲンシュタント )

訴訟物
会計用語で
◇ Burden
( バーデン )

製造間接費 の意味です。

このように
専門用語の翻訳には
対応していません
ので
専門分野の辞典を使いながら
補助的 に使うと効果的です。


他には
専門分野の簡易的な辞典の代用に

法律用語対訳集 / 商事法務研究会

こちらをよく使っています。

★ 法律用語対訳集〈英語編〉改訂版(1995)/ 商事法務研究会

★ 法律用語対訳集〈韓国語編〉(1991)/ 商事法務研究会

★ 法律用語対訳集〈ドイツ語編〉/ 商事法務研究会

他・・・


この本は
刑事事件で使用される
法律用語を中心として
翻訳された用語集で
英語以外に
ドイツ語,フランス語はもちろん
ペルシャ語,ベンガル語,タイ語などもあり
中国語も
広東語と北京語とがありましたが
現在「法律用語対訳集」の出版は
されていないようです。
( 2022年11月19日 現在 )

それ以外には

● 日本法令外国語訳DBシステム
 - Japanese Law Translation( 法務省 )

https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja

こちらのデータベースは
日本法令の翻訳DBです。
法務省の運営で
利便性,信頼性も高いです。

ただし
“ 外国語訳DB ”と称していますが
“ 英訳“ のみ
その他の言語には対応していません。
( 2022年11月19日 現在 )

なお
法令の翻訳(英訳)にあたって
政府が平成17年に内閣に設置した
「法令外国語訳推進のための
 基盤整備に関する関係省庁連絡会議」

により
関係府省が法令の英語訳を行う場合は
「法令用語日英標準対訳辞書」
に準拠するものとされ
民間団体等が
法令の翻訳を行う際においても
本書に準拠して行われることを
強く期待するとしています。

● 法令用語日英標準対訳辞書 - PDF https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/dicts/download
( 2022年11月19日 現在 )


これらでも足らない場合は
専門分野の辞典を使います。

その他に
時々受ける質問では
日本の法律が英訳されている資料
についての問合せです。

日本法の英訳の調べ方 については
先ほど紹介した
● 日本法令外国語訳DBシステム
 - Japanese Law Transla
tion( 法務省 )

https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja

日本法の英訳の調べ方 について
わからなくなった場合は
国立国会図書館
リサーチ・ナビ
が役立ちます。

● 日本法の英訳の調べ方
 - リサーチ・ナビ 国立国会図書館

https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-557.php

現在は
データベースやWebサイトが普及し
容易に調べることができますが
こういったDB等が普及する前は
紙媒体の資料で調べることが主でした。

参考までに
日本の法律の英訳 を調べる場合の
紙媒体の資料 といえば

英文法令社
『 E.H.S. Law Bulletin Series 』
挙げられます。

★ EHS LAW BULLETIN SERIES(商品一覧)


ところで
以前は グーグル翻訳 の制度が悪く
例えば
スリランカの経済を調べていた時に
スリランカ政府のホームページ を開け
自動翻訳をかけると
「 刑事コロンボ 」 という
単語がたくさん出てきました。

これは
スリランカの元の首都であり
経済の中心地である
“ Colombo ”
「 刑事コロンボ 」
翻訳したためでしょう。

でも
「 刑事コロンボ 」 のスペルは
“ Columbo ” ですので
間違えようがないと思いますがねぇ~。
謎でした・・・。

今は以前に比べて
だいぶ改善されたようで
変な誤訳も減ってきて
発展途上ですが
性能もだいぶ向上しています。

それから
法律学とは関係ありませんが

仏典経典 の意味を知り
研究をする場合は
サンスクリットパーリ語
知識が必要になりますが
グーグル翻訳 では
まだ
パーリ語 対応はありませんが
サンスクリット には
対応しています。
※ ただし文字のみで発音機能はありません
( 2022年11月19日 現在 )

他にも
文字のみの翻訳機能ですが
ザメンホフ博士考案の人工言語
エスペラント語にも対応しています。
( 2022年11月19日 現在 )


参考までですが

私は サンスクリットの初歩段階では

★ 耳から覚えるサンスクリット
  - 発音編・暗記編・会話編・文字編 (2016)
 と

★ 初心者のためのサンスクリット辞典 (2015)

を使ってました。


以上
私の邪道で横着な初歩の語学勉強法でした。
参考になれば幸いです。


読んでいただき
ありがとうございました。



2022年9月11日日曜日

条約の検索と条約データベースの活用方法

法情報検索 各論 2 条約検索 1

条約データベースの活用方法

今回は
条約資料データのサイト
ご案内します。

条約の検索は先出の

条約データ検索 - 外務省

条約 - 国会提出条約・法律案 - 外務省

他に
内閣法制局最近の法律・条約 からも
「 公布条約一覧 」( 条約名のみ )及び
「 提出条約一覧 」( 条約案と提出理由 )を
見ることができます。

最近の法律・条約 - 内閣法制局


日本が未批准の国際条約 についての
検索については
検索サイトではありませんが
2013年3月に
国立国会図書館調査及び立法考査局 が
作成した
2013年1月現在の
日本が未批准の国際条約 について
条約発効日,締約国数,
英文/邦訳テキストの出典,
未批准の理由等
が記載されている
資料があります。

わが国が未批准の国際条約一覧 - PDF


条約データベースの使用にあたり
知っておかなければならない知識として
次のような質問がよくあります。

「 ワシントン条約 」
「 ラムサール条約 」
入力しても
該当なしとなるのはなぜか?

条約名を入力するボックスには
条約名
入力したキーワードを名称
または略称に含む条約を検索します。

とあります。

これは
「 ワシントン条約 」
「 ラムサール条約 」
正式名称でも略称でもなく
通称 ですのでヒットしません。

Googleなどで
ワシントン条約 を検索すれば
正式名称が出ます。

それをコピーして
条約データ検索で条約名を入力すると
該当の条約が出るので
条約名のリンクから全文を
見ることができます。

先頭へ


こうした方法もありますが

この外務省のホームページをはじめ
各行政機関のホームページの右上に
検索窓
があります。

行政機関のホームページは
入り組んでいるので
この
検索窓に目的の語句を入力 すれば
その入力語句に関連する事項が
重み順
リストアップされますので便利です。

外務省の場合は
先ほどのように通称名を入力すると
大抵トップに
その条約の締結経緯や
目的のページが出ます。

そのページから
全文リンクがあるものもありますが
リンクのないものは
正式名称をコピーして
条約データベース
検索ボックスに貼付けて
本文を確認しなければなりません。

先頭へ


簡易な検索方法としては
Google
ワシントン条約 全文 go.jp
入力すると
ワシントン条約 全文 に関連する
日本の政府機関のサイトが出ます。

go.jp
日本国の政府機関,独立行政法人,
特殊法人のドメイン
なので
そこのサイトに絞ることができます。

ただしこの場合も
うまくヒットしなければ
条約データベース からの
検索法が無難でしょう。


条約データベースの収録範囲
官報および外務省が
暦年発行している条約集をもとに
現行の国会承認条約等
掲載したものなので
『 行政取極 』 については
カバーしていません。


そこで先程紹介した
検索窓を使うと
『 行政取極 』 についての
概要と本文
検索することができます。

例えば
『 日印防衛装備品・技術移転協定 』
および
『 日印秘密軍事情報保護協定 』の
本文
について調べたい場合
条約データベース で検索しても
ヒットしません。

そこで
右上の検索窓にそれらの語句
入力すると
平成27年12月12日の報道発表として
それらの
概要 と協定の 本文
PDFで見ることができます。

また先程の
Google から
go.jp で絞っての
検索方法もあります。

先頭へ


これらを官報で検索してみると

平成28年3月28日月曜日に
『 日印防衛装備品・技術移転協定 』
本紙 第6743号 外務省告示 第81号

『 日印秘密軍事情報保護協定 』
については
号外 第292号 外務省告示 第447号
それぞれ告示されています。

これらは
外務省告示 によるものですから,
『 行政取極 』 です。
従って
「 条約データベース 」 に
収録はありません。


このように外務省に限らず
各省庁のデータベースにおいても
所管法令・通達などが見当たらない

といった場合には
『 検索窓 』 による検索方法や
Google から
go.jp で絞る方法で
効率よく検索しましょう。


先頭へ



以上
読んでいただき
ありがとうございました。




2022年9月10日土曜日

条約とは何か
国会承認条約と行政取極

条約の概要

~ 主要リンク ~
条約データ検索 - 外務省

国会提出条約・法律案 - 条約


条約 とは
国の間において
文書の形式により締結され
国際法によって規律される
国際的な合意
です。
( ウィーン条約法条約2条1項a号 )

「 条約 」 という名称に限らず
憲章,協約,協定,議定書,規約,
規程,取極 などの名称のものを
含みますが
名称が異なるだけで
法的効力に差はありません。

条約は 広い意味
国家間における法的な合意文書
言います。

条約が形成されるため条件は
4つあります。


1 国家 または 国際機構 といった
  当事者に条約締結能力があること。

2 国家元首,政府の長,大臣,
  外交使節団など,国内法上
  条約締結者に正式な資格があること。

3 条約締結国間に合意があること。
  錯誤や脅迫などといった
  状況下でないこと。

4 条約の目的と内容が
  正当であること。
  国際法に準拠していること。

先頭へ


条約の締結プロセス
次の通りです。

交渉 > 採択 > 確定
> 同意の表明 > 同意の承認
> 文書の交換・寄託 > 発行


◆ 採択
条約の形式と内容を
定めるための手続きです。
全会一致または多数決によります。

◆ 確定
条約が規定する内容を
最終的なものとして
決定することです。
これ以降の条約文の修正は
認められません。

◆ 同意の表明
条約内容に対する
同意の意思表明を表します。
同意の表明は署名が一般的です。
署名の場合
条約に拘束されることを
示すものではありません。
ただし
条約に「 略式条約 」
関する規定がある場合は
この時点で成立 します。
( ウィーン条約法条約12条 )

◆ 同意の承認
( 国会承認条約の場合は国会提出 )

〈 憲法 第73条3項 〉
同意の承認は
国家が条約に拘束されることを
国内で同意することの確認です。

同意の承認には
批准,受諾,加入の方法が
あります。

このうち 批准
署名された条約に拘束されることを
国家が最終的に決定するものです。


批准の手続き
議会の承認
( 憲法 第73条3項 )

天皇による認証
( 憲法 第7条8号 )
を経る
というように厳格に行われます。
そのため
人権や核に関するものなど
重要な条約は
批准によらなければならない
としているものが多くあります。

◆ 文書( 批准書など )
交換
( 二国間条約 )
寄託
( 多国間条約 )

国際的に同意することへの
最終的な意思表示です。
( ウィーン条約法条約16条 )

◆ 発効
当事国間において
条約内容に法的拘束力が生じます。

一般的な条約の発効時点は
次の通りです。


 二国間条約においては
  文書の交換等
  多国間条約においては
  文書の寄託の時。
( ウィーン条約法条約16条 )

 別段定めや合意がない時は
  国家の合意が
  確定的に付与された時。
( ウィーン条約法条約24条 )

先頭へ


広義の意味での 条約
国際約束 といわれ
「 憲法 第73条3項 」 により
国会の承認 を必要とする
『 国会承認条約 』

「 憲法 第73条2項 」により
外交関係処理として
内閣の権限内として締結
する
『 行政取極 』
大別されます。

『 国会承認条約 』
『 行政取極 』
区別の基準として
大平正芳 外務大臣の答弁
(昭和49年当時)があります。
この答弁は
『 大平三原則 』
称されています。

この原則によると
国会承認を得なければならない条約 とは
次の 3つのカテゴリーを含むものです。

1 法律事項を含む条約

2 財政事項を含む条約

3 批准を発効要件とする
  政治的に重要な条約


『 行政取極 』 は総称であり
「 取極 」,「 協定 」,
「 交換公文 」などといった
文書名なっています。

国会承認条約ではない
『 行政取極 』
公布されませんが
『 外務省告示 』 として
官報に掲載
されます。
ただし
外国語文は併載されません。

条約の附属書 については
官報には公布されません

外務省Webサイト
『 条約データ検索 』 から
検索すると
条約文が PDFデータで
入っているので
附属書を含めた全文を
見ることができます。


条約データ検索 - 外務省

条約 - 国会提出条約・法律案


先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。




2022年8月27日土曜日

ゴミの帰属についての考察


“ ガーボロジー ” について
その行為が
犯罪とならないかについて
詰めて考えていったとき
そもそも
ゴミ(廃棄物)を持ち去る行為は
窃盗罪などにあたるのか

という問題に当たります。

ゴミとは
それ自体に財産的価値があったとしても
通常不要になったので
捨てたものであるから
所有権,占有権を放棄したものなので
無主物であり
窃盗(刑法235条)には当たらない。
また
無主物であれば
遺失物や漂流物
その他
占有を離れた他人の物でもないので
遺失物等横領(刑法254条)にも当たらない。
とも考えられます。

一方で
集積所に出されたゴミは
自治体が排出者から
譲り受けたものと考えられるので
ゴミの所有権は
自治体に帰属するという
解釈もあります。

この件について
裁判例は分かれています。
まず
ゴミを集積所に置いた時点で
無主物になるものではない。

とする 裁判例

東京高判 平成19年12月10日
平成19年(う)第1087号


東京高判 平成19年12月13日
平成19年(う)第1025号


東京高判 平成20年1月10日
平成19年(う)第1068号


東京高判 平成19年12月26日
平成19年(う)第993号
平成19年(う)第1018号
平成19年(う)第1031号


がありますが

東京高判 平成19年12月13日
平成19年(う)第1025号


においては
集積所の資源廃棄物は
一般的には無主物ではないと
しながらも


「 区民の中には
 古紙等を集積所に排出した時点で
 所有の意思を放棄したとみるのが
 相当な場合も考えられない訳ではない。
 その場合には
 その資源廃棄物は
 民法上の無主物と
 いわざるを得ないであろう 」


というように
私法上の帰属については
明言を避けています。


次に
権利の移転時期 については

東京高判 平成19年12月10日
平成19年(う)第1087号


では
明言をしていません。

それ以外では
自治体によって回収されるまでは
排出者によって所有・占有されていると
見るべきであり
自治体が回収することによって
その所有権や占有権が
自治体に移転,承継されるものと
考えるのが相当
とする 裁判例

東京高判 平成19年12月13日
平成19年(う)第1025号


東京高判 平成20年1月10日
平成19年(う)第1068号


であり

集積所に置かれた時点から
自治体の所有に属する

とするのが

東京高判 平成19年12月26日
平成19年(う)第993号
平成19年(う)第1018号
平成19年(う)第1031号


の裁判例です。

これらの裁判例
資源ゴミの持ち去り問題の
対策として
自治体が持ち去り禁止条例を制定し
その条例違反行為で告発がなされて
裁判で争われたケース
です。

資源ゴミの持ち去り問題 とは
古紙等の再生資源価格の下落によって
資源となっていた古紙等が
大量のゴミとなり
行政が資源を回収し出したところ
再び資源ゴミに価値が付いたため
持ち去る者が出てきました。

彼らが
全ての資源ゴミを回収すれば
問題はないのですが
価値の高いものしか持っていかず
それにより
集積所が荒らされるなど
回収コストが増え
経済的損失も大きく
行政の信用にかかわる問題でもあるので
対策として条例を制定し
持ち去り行為を抑止するという
ことが目的です。

それらの事情を鑑みれば
裁判所でも
有罪の方向へ持っていくような
法理論を立てるのは当然でしょう。

ですから
これらが 対象 としているのは
古紙,ガラス瓶、缶などの
再利用の対象となる 資源ゴミ であって
一般ゴミが対象ではありません。

ただし
自治体により
適正にごみステーションに排出された
家庭系一般廃棄物の持ち去り行為を
一般的に禁止している条例
もあります。

下関市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例

( 収集又は運搬の禁止等 )
第10条

市又は市から収集又は運搬の委託を受けた者以外の者は
前条第2項 の規定により
適正にごみステーションに排出された
家庭系一般廃棄物を収集し
又は運搬してはならない。
2項
市長は
市又は市から収集又は運搬の委託を受けた者以外の者が
前項の規定に違反して
ごみステーションに排出された
家庭系一般廃棄物を収集又は運搬したときは
その者に対し
これらの行為を行わないよう
命ずることができる。

( ごみステーションの管理 )
第9条 2項

ごみステーションの利用者は
家庭系一般廃棄物の排出に当たっては
当該家庭系一般廃棄物を分別し
飛散又は流出しないように
市長の指示する方法により収納し
かつ
指定された日時に排出する等
適正にこれを行わなければならない。


本条例の 第10条 については
循環型社会形成推進基本法 第7条
違反するものとはいえない。

との 裁判例 があります。

広島高判 平成20年5月13日
平成19年(う)第241号
下関市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例違反事件



翻って
排出されたゴミを無主物とした
裁判例
もあります。

最二小決 平成20年4月15日
平成19年(あ)第839号
窃盗,窃盗未遂,住居侵入,強盗殺人被告事件


「 ダウンベスト等の領置手続についてみると
 被告人及びその妻は
 これらを入れたごみ袋を不要物として
 公道上のごみ集積所に排出し
 その占有を放棄していたものであって
 排出されたごみについては
 通常そのまま収集されて
 他人にその内容が見られることはないという
 期待があるとしても
 捜査の必要がある場合には
 刑訴法221条により
 これを遺留物として
 領置することができるというべきである。
 また
 市区町村がその処理のために
 これを収集することが
 予定されているからといっても
 それは廃棄物の適正な処理のためのものであるから
 これを遺留物として領置することが
 妨げられるものではない 」


この裁判例
先出の
「 資源ゴミ 」 のケースとは真逆
捜査の正当化のために
ゴミ刑訴法221条の「 遺留物 」
としなければならないという
前提で法理論を立てているので
このケースでは
集積所に排出されたゴミは
自治体による回収如何にかかわらず
無主物
としています。


これらを踏まえて
ゴミの帰属 を考えると
今のところ
ケースバイケースで
判断
されているようです。

よって
国家機関や捜査機関ではない
私人によるガーボロジー は
目的や他の行為,情状と絡めて
有罪と判断される
おそれがある
と考えます。


ちなみに
ワイドショーなどで
特集されている
“ ゴミ屋敷 ” と呼ばれている
ゴミに埋もれている家がありますが

あの
家を埋めつくしているモノ
ゴミ集積所へ排出されたものでなく
所有者の管理下にあり
所有・占有を放棄している
とはいえないので
所有者の許可なく持ち去れば
窃盗です。


所有者本人も
ゴミと言ってませんよね。

だから行政も困っているわけです。

近隣の住民は
悪臭や火災等の心配で
たまったものではありませんが・・・。


~ 参考文献 ~

垣見隆禎『 判例研究34 世田谷区清掃・リサイクル条例事件 』
自治総研 通巻411号 2013年1月号 58頁

http://jichisoken.jp/publication/monthly/monthly2013.html
(アクセス日 2022年6月7日)

埼玉県清掃行政研究協議会
『 平成21年度調査研究事業 一般廃棄物行政諸問題検討部会報告書 』


資源ごみ持ち去りを禁止する条例 - 地方自治研究機構
http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/089.removing_recyclable_waste.htm
(アクセス日 2022年6月7日)

世田谷区例規類集(条例・規則集)・要綱集
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/107/157/722/729/d00120036.html
(アクセス日 2022年6月7日)

杉並区例規集・要綱集
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kusei/jorei/1012987.html
(アクセス日 2022年6月7日)

大田区例規集
https://www1.g-reiki.net/cityota.reiki/reiki_menu.html
(アクセス日 2022年6月7日)

下関市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例
http://www.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/reiki/reiki_honbun/r147RG00000479.html
(アクセス日 2022年6月7日)


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月26日金曜日

情報の分類とガーボロジー


社会にあふれる情報には
多くの種類の情報が
入り混じっています。

調査に必要な情報を分類 すると
次のように
分類することができます。

まず
登記簿や住民票など
官公庁等で入手できる情報。
官報や住宅地図,
紳士録や人名録等の名簿類,
有価証券報告書,企業情報など
図書館や書店等で
入手できる情報といった
公然としている情報(オープン情報)

一方
当事者しか知ることができない
非公然の情報(クローズド情報)とに
大きく分けることができます。

さらに
非公然の情報(クローズド情報)には
聞き込み等で得ることは可能ですが
聞き込み相手の勘違いや
噂の域を出ない伝聞等の
未確認の情報

その中でも
デマなどをわざと流して
混乱させたり騒がせたりする
ガセネタといわれる
偽の情報

自分の五感で
確認した情報
分類されます。

尾行調査の情報などは
この確認情報に
近い情報になります。

捜査機関や諜報機関
探偵および記者などの
情報屋は
オープン情報 のほか
未確認情報
収集,確認して分析
さらに
裏付けを取り
間違いがなければ
報告書や記事にする
といった
プロセス をたどります。

ところで
“ ガーボロジー ” という調査方法を
ご存じでしょうか?
初めて聞く方もいると思いますが
いわゆる「 ゴミ漁り 」 のことで
ゴミから得られる情報から
事実の解明をする調査法です。

元々は
考古学で遺跡の出土品から
当時の生活や文化等を探っていく
技術だったそうです。

この調査方法は
聞き込み調査などよりも
正確かつ多くの
確認情報が得られる
ため
捜査機関や諜報機関,探偵等が
情報収集のために使われる
調査方法の一つに
使われるようになりました。

ゴミから何がわかるのかというと
試しに自分のゴミを分析して
自己の日常生活の情報を
逆算してみてください。


例えば
給与明細,カードの引き落としの
明細書や
レシート,水道・電気等の
明細書があれば
収入と支出のおよその見当がつきます。

他には
薬の殻からも
対象者がどんな病気を患っているか
推測できますし
メモなどからでも
その人の交友関係や性格等が
判断できる場合があります。

捜査機関や探偵などは
こういった情報を頼りに
犯罪捜査等の証拠収集
居所調査や素行調査などの
手掛かりにするわけです。

相当に金になる産業機密を探る
手練れの調査員や産業スパイ。
はたまた
国家組織の諜報員や
捜査機関のプロにかかれば
シュレッダーをしようが
生ゴミに混ぜようが
素人が振り切るのは困難でしょう。

◇ シュレッダーは
  セキュアな書類破棄方法か?
  - ITmedia エンタープライズ



しかし通常ならば
空き巣対策と同様に
犯人に
「 面倒だ 」とか
「 時間がかかりそうだ 」と
思わせることが重要なので
複雑に仕組むこと
防犯対策 の一つでしょう。

特に女性の場合は
ゴミ出しにも気を配りましょう。
まず
ゴミは夜に出さない。
できれば収集直前に出す。
生ゴミと混ぜて出す。
個人情報などがわかるものは
シュレッダーする。

といったように
まずはできることから
行うのがよいと思います。

“ ガーボロジー ” の行為自体は
犯罪になるのかというと

例えば
マンションの場合
夜に外部の者である
不審者が
ゴミを漁りに
マンションのゴミ集積場に
頻繁に侵入していれば
侵入に正当な理由はなく
入ってよしとする
推定的同意もありませんので
住居侵入等の罪(刑法130条前段)に
なるでしょう。

他には
公道のゴミ集積所で
頻繁にゴミを持って行く
不審な自動車がある場合であれば
集積所に排出したゴミは
無主物か?
などの判断が難しく
持ち出したからといって
犯罪の構成要件に該当するとは
言いきれません。

しかし
不審者対策として
最低限
自動車のナンバーは
控えておいたほうがよいでしょう。

警察に相談しても
不審者らしい人がいるという
具体性のない漠然とした情報では
警察も動きようがありません。

それが
対策の初動を遅らせる
要因にもなります。

ですので
具体的な場所や時間など記録したり
一応確からしいと
わかる資料があれば
警察も動きますので
それらを集めて
警察の生活安全課
相談すると効果的です。

警察でも
警視庁総合相談センター
様々な困りごとに関する
相談を受け付けているので
ご案内します。

◇ 相談ホットラインのご案内
  - 警視庁


◇ 警視庁 - 相談・お悩み

攻撃側の方法を知ることで
それに対する
防衛策も立てやすくなる
ということです。


その他には
法テラス( 日本司法支援センター )
相談するのもよいでしょう。

法テラス とは
総合法律支援法に基づき
平成18年4月10日に設立された
法務省所管の公的な法人です。

弁護士や司法書士による
法的な立場からのアドバイスを
受けることができます。


◇ 法テラス(日本司法支援センター)
  - トップページ


ここで一つネックになるのは
民事の場合
費用の支払の問題です。

法律専門家に依頼する
費用が厳しいという方は
民事法律扶助 という制度があります。

◇ 民事法律扶助業務 - 法テラス


先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月25日木曜日

訟務月報 等 官公庁公刊の判例集

法情報検索 各論 3 判例 a

判例集,裁判例集
司法機関である 裁判所
編集,公刊している公的判例集以外に
行政機関である官公庁
編集,公刊している 裁判例集
あります。

代表的なものを4つ例を挙げ
その他のサイトも検索できるよう
合わせて総合リンクを紹介します。

法学資料データ(リンク集)-TKC

訟務重要判例集データベースシステム

税務訴訟資料

労働委員会関係 命令・裁判例データベース

高等裁判所刑事裁判速報


訟務重要判例集データベースシステム

★ 訟務月報(法務省訟務局 編)
  略称:訟月
巻次:創刊号 昭和30年(1955)~

訟務月報
国や行政庁が一方当事者となって
法務省が関与した
民事事件,行政事件,租税事件の判例
収録しています。

このうち
国に対する主な請求内容
賠償 を求めるものを 民事事件
処分の取消し等について求めるものを
行政事件
租税の賦課徴収に関するものを
租税事件 としています。

各法科大学院で異なると思いますが
59巻 1号 から
冊子が寄贈されていたと思います。

訟務月報
36巻 1号 ~ 68巻 3号 までは
法務省Wbeサイトにて
データベース化されています。
(2022年8月29日 時点)

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税務訴訟資料

★ 税務訴訟資料(国税庁 編)
  略称:税資
巻次:第249号(2004年)では冊子体
第250号(2005年)~
258号(2011年)までは CD-ROM
258号~国税庁Webサイト
掲載されています。
(アクセス日: 2022年8月29日)

税務訴訟資料
租税関係行政・民事事件裁判例のうち
国税に関する裁判例 を収録したもので
課税関係判決徴収関係判決
分かれています。

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労働委員会関係 命令・裁判例データベース

★ 労働委員会関係 命令・裁判例データベース
 (中央労働委員会)

収録範囲(概要情報)
命令
 昭和34年(1959)~ 令和2(2020)年5月
裁判例
 昭和41年(1966)~ 令和2(2020)3月

労働委員会関係 命令・裁判例データベース
不当労働行為事件 について
都道府県労働委員会
および
中央労働委員会から発せられた命令
労働委員会関係の判決・決定
事件概要,判決・決定の要旨などの
概要情報を掲載しています。
また
昭和61年(1986)以降命令
および
平成17年(2005)以降判決等については
画面の最後から
全文情報(PDF)がリンクされています。
(2022年8月29日 時点)

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★ 高等裁判所刑事裁判速報
 (法務省大臣官房司法法制部 編)

  略称:高刑速
巻次:昭和56年(1981)年 ~

高等裁判所刑事裁判速報
もともとは
各高等検察庁の内部資料 でしたが
現在は 法曹会 から出版されています。
また
TKC,LLIなどの有料データベースでも
PDFで閲覧できるものもあります。


これらの紹介したサイトや資料は
一部分なので
最後にこれらを網羅する
法学系の 総合リンク集 も紹介します。

法学資料データ(リンク集)-TKC


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以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月24日水曜日

登記関係の先例等の検索方法

法情報検索 各論 1 法令 7

~ 主要リンク ~
登記通達/先例/回答 - TOUKI 2030

不動産登記関係の主な通達等
 - 法務省民事局


商業・法人登記関係の主な通達等
 - 法務省民事局


日本-登記関係先例の調べ方
 - リサーチ・ナビ - 国立国会図書館



前出の 通達・告示・指針等の検索方法

法務省において
民事局第二課民事局長 から
全国の 法務局長及び地方法務局長 宛てに発せられた
不動産登記に関する手続について定めた 通達
「 不動産登記事務取扱手続準則 」 と呼ばれ

さらに
法務省民事局長通達に合わせて
法務省民事局第二課長 及び 商事課長通知 するものを
「 依命通知 」 と呼ばれていることを述べました。


登記申請の取り扱いについて示達された
通達・回答・依命通知などの 『 先例 』 を調べるには
『 登記六法 』『 登記先例判例要旨集 』 などに当たりますが
新しいものに関しては登載されていないことがあります。

新しい先例は
『 登記研究 』『 民事月報 』 などで紹介されていますので
司法書士ならばこれらを購読している方もいると思います。

登記関係・先例の調べ方についてのガイドは
国立国会図書館のリサーチ・ナビがあります。

日本-登記関係先例の調べ方
 - リサーチ・ナビ - 国立国会図書館



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「 国税庁 」「 厚労省 」通達
データベース化して検索がしやすくなっているが
「 登記関係の通達などのデータベースはないのか? 」
といった問い合わせが度々あります。

これにつきましては
法務省のWebサイトでも
不動産登記,商業・法人登記に関連する
主要な通達等を掲載しています。

不動産登記関係の主な通達等
 - 法務省民事局


商業・法人登記関係の主な通達等
 - 法務省民事局



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この他にも個人で運営している
このようなサイトもあります。

登記通達/先例/回答 - TOUKI 2030

上記は
司法書士の長谷川清先生が運営しているサイトです。

法務省のサイトのものは主要な通達等のみですが
こちらのサイトは
細かく掲載がなされていて
類型別にも分けてあるので検索しやすく
便利で使い勝手のよいサイトです。

SHIHOSHOSHI.COM
 - 司法書士 長谷川事務所



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以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月23日火曜日

通達,告示,指針 等の検索方法

法情報検索 各論 1 法令 6

~ 主要リンク ~
法学資料データベース - LEX/DB

所管の法令・告示・通達等 - e-Gov

法令等データベースサービス - 厚生労働省

法令解釈通達 - 国税庁

省略用語例 - 国税庁

日本-訓令・通達・通知の調べ方
  - リサーチ・ナビ - 国立国会図書館


◆ 通達◆ 訓令◆ 通知◆ 告示
◆ 要綱,ガイドライン


法令ではない通達等
( 行政規則 )の種類について
説明するとこの様になります。

◆ 通達
( 国家行政組織法 第14条2項 )
上級行政機関が下級行政機関に出す
行政内部の命令又は示達で
官報には掲載されません。
法令の解釈及び運用や行政執行の方針に
関するものが多いです。

◆ 訓令
( 国家行政組織法 第14条2項 )
上級機関が下級機関に対して
所掌事務について指揮するために発する
命令又は示達で
公共性が強い場合など
一部は官報に掲載されるものもあります。

官報に掲載される訓令
法令番号と同様の 訓令番号 が付されます。
例えば
「 平成○○年 内閣府訓令 第○○号 」などです。
通達との違いについては諸説ありますが
区別は明確ではありません。

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◆ 通知
行政庁がある行為を
特定又は不特定多数の人に
特定の事項を知らせる
準法律行為的行政行為 です。
命令できない相手に対して
技術的な助言 」などを伝えるものです。

通達・通知 には
「 文書記号・番号 」 が付されます。
文書記号は
所管する機関の部局課名を表し
その記載方法は
各機関により異なります。

例えば
厚生労働省 ならば
「 基発 第○○号 」など
法務省 ならば
「 民二 第○○号 」などです。

社労士などを勉強している方で
「 基発 」などの意味を
教えてほしいとの問い合わせが
まれにあります。

通達等の種別は多数ありますから
『 労働法全書 』分野別の法令集
凡例 の記載がありますので
そちらを当たるのが良いでしょう。

ちなみに
「 基発 」 とは
労働基準局長 から
各都道府県の労働局長 宛てに発せられた
「 通達 」 です。

厚生労働省
法令,告示,主な訓令,通知 等
こちらで検索することができます。

法令等データベースサービス - 厚生労働省

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国税庁 においても 通達 を公開しています。

法令解釈通達 - 国税庁

また
国税庁が回答文で使用している
法令,通達の略称 を調べるには
こちらが良いでしょう。

省略用語例 - 国税庁


法務省においては
民事局第二課民事局長 から
全国の 法務局長及び地方法務局長 宛てに
発せられた
不動産登記に関する手続について定めた
「 通達 」
「 不動産登記事務取扱手続準則 」
という形になります。

さらに
法務省民事局長通達に合わせて
法務省民事局第二課長 及び 商事課長
「 通知 」 するものを
「 依命通知 」と呼ばれています。

先頭へ


◆ 告示
( 国家行政組織法第14条1項)
行政機関がその意思や事実を
広く一般に公示することです。
一般への公示ですから
国の機関の場合は 官報
地方公共団体の機関の場合は
公報 へ掲載されますので
そこから調べることができます。

◆ 要綱,ガイドライン
公務員が事務処理を行う際に
取り扱いを統一化する基準です。
要綱,ガイドラインという
発令形式はないため
一般に公示する必要がある場合には
「 告示 」「 訓令 」として制定します。

各府省所管の法令・告示・通達等は
こちらで調べることができます。

◆ 所管の法令・告示・通達等 - e-Gov

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通達のほか,法令,判例,文献等を
網羅的に検索する場合は
総合リンク集が便利です。
というかこれだけで十分ですので
いくつかご案内します。

 法学資料データベース - LEX/DB
   このリンク集のみでほぼ間に合います。

◆ TKCローライブラリー - 法令リンク

◆ TKCローライブラリー - 判例リンク

◆ TKCローライブラリー - 審決/裁決リンク

◆ D1-Law.COM
  第一法規法情報総合データベース - リンク集


先頭へ


インターネットでの検索が
普及する前までは
通達・通知などの検索については
冊子体の
『 基本行政通知・処理基準 』で調べて
そこにない場合は
主題別の通知・通達集
例えば
『 化粧品・医薬部外品関係通知集 』などや
所管省庁の公報類
『 税務法令通達月報 』,『 薬務公報 』,
『 裁判所時報 』
などに当たるといった
専門図書館や
都立・県立図書館レベルでの調査でした。

今は各省庁のデータベースが
充実しているので
わざわざ図書館へ出向かなくても
在宅検索ができるので便利です。

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最後に
告示・訓令・通達・通知等の調べ方が
わからなくなった場合の
「お助けサイト」をご案内します。

◆ 日本-訓令・通達・通知の調べ方
  - リサーチ・ナビ - 国立国会図書館



先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月22日月曜日

法の階層

法情報検索 各論 1 法令 1

◆ 条約◆ 会計検査院規則,人事院規則
◆ 外局規則◆ 庁令
◆ 議院規則,最高裁判所規則◆ 条例
◆ 通達◆ 要綱◆ 要領
◆ 指針,ガイドライン◆ 訓令
◆ 通知◆ 告示

税大講本 - 国税庁


今回は
法令等の階層についてお話します。

法令の階層について図で表すと
【 図1 】のようになります。

【 図1 】

 ※【 図1 】中の茶色の二重線より
   右側〈 矢印 〉の規則・条例
については
  e-Gov法令検索には掲載されません。

先頭へ

例えば
『 所得税法 』でいうと
まず 憲法 30条で 納税の義務
同84条で 租税法律主義 を定めています。

その『 租税法律主義 』を受けて
法律を定めます。
法律 の中でも階層があり
税法の階層を図で表すと
【 図2 】のようになります。

【 図2 】
(行政法との関係で,課税に関するの場合の階層です。)



先頭へ

税法の場合
所得税法,法人税法,
消費税法… といった
実体法が規定した課税要件を満たすと
納税義務が発生し
課税されることになります。
そして
各税法での課税を実現するための
共通する手続を規定しているのが
『 国税通則法 』です。
また
税法違反に対する処罰を定める
国税犯則取締法
2018年(平成30年)4月1日に
廃止され
国税通則法に編入されました。

国税通則法の上位には
『 行政手続法 』,
『 行政不服審査法 』
といった
行政法関連の規定があり

それらの行政法関連一般法
国税通則法特別法とする
関係になっています。

先頭へ

さらに分かれて
所得税法などの
税目ごとに課税要件を定めた
実体法が規定されています。

国税の所得税法法人税法などと
国税通則法との関係では
国税通則法一般法となります。

図の右側の
『 租税特別措置法 』とは
税法の場合,本法とは異なり
その時の経済状況などから
政策判断し,時限的に制定された
課税を修正した特別法の集まりです。

税法は
すぐに変わるので難しい
との声を聞いたことがありますが
改正の多くは
この 『 租税特別措置法 』です。

その他にも
図には記載していませんが
課税要件を定めた
所得税法などの実体法の他に
徴収手続 について定めた
国税徴収法 があります。

先頭へ

法律の下には
さらに詳細な規定や計算の詳細を定めた
政令 である
所得税法施行令
政令の下には
必要な手続きなどを定めた
省令
所得税法施行規則 があります。

法律から省令までが 「 法令 」 です。

先頭へ

通達
上級機関が下級機関に対して
その機関の所掌事務について
指揮するために発する命令です。
法令の運用に関し
解釈を統一化するためなどで
発せられます。 ( 法令解釈通達 )

こちらは
一般的に公表されています。
実務での判断では
通達が基準となる場合が多いですが
法令ではないので
一般国民の権利義務について
直接は拘束しません

法令解釈通達 - 国税庁

先頭へ

条約 については
国家間の合意規範です。
憲法との優位性については
学説により見解が分かれます。

法律との関係においては
国内法よりも優先されます。

ただし
税に例にした場合
租税条約 においての優先とは
国内法の効力の一部を減殺する
という意味です。

また
国内法で課税されないものを
租税条約で
課税することはできません。

先頭へ

会計検査院規則,人事院規則 については
役割の性質上,内閣からある程度
独立性を保障されているので
直接,政令は及びません。

外局規則
内閣府および各省は
その外局として
公正取引委員会
国家公安委員会 など 委員会
海上保安庁 などの
置くことができます。

原則として外局は
独自に命令を発することはできませんが
例外的に
各委員会庁の長官
別に法律の定めるところにより
政令及び省令以外の規則
その他の特別の命令を
自ら発することができます。

(内閣府設置法 第58条4項,
 国家行政組織法 第13条1項)

例えば
公正取引委員会
(私的独占の禁止及び公正取引の
 確保に関する法律 第76条)や
国家公安委員会
(警察法 第12条)の他には
中央労働委員会
(労働組合法 第26条)
公害等調整委員会
(公害等調整委員会設置法 第13条)
などがそれに当ります。

なお
庁の長官が定めた庁令
自ら発することができるのは
海上保安庁 のみです。
(海上保安庁法 第33条)

先頭へ

議院規則,最高裁判所規則,条例
権力分立により
憲法が
議院や最高裁判所
および
地方公共団体に認めた制定権です。
衆議院参議院
会議の手続きや内部規律に関して
『 議院規則 』
最高裁判所
訴訟手続きや内部規律に関して
『 最高裁判所規則 』
それぞれ
自ら制定することができます

先頭へ

地方公共団体 が定める
条例規則
条例施行規則 の関係においては
規則下位法令 に当たります。

しかし
条例規則 には
各機関に専権事項 があります。
住民の権利義務に関する場合は
条例で定め
財務に関する場合は
規則で定められます。
そして
議会 による条例も
首長 が定める規則も
民主的に選挙された機関により
作られるものですので
その点では 対等な関係 といえます。

また
議院規則,最高裁判所規則,条例 と
(地方公共団体が定める)規則

【図1】法令の階層図で茶色線右側〈矢印〉
については
e-Gov法令検索には掲載されません。

先頭へ

【図1】通達 以外の
法令ではない規定 について

まず
要綱要領 については
要綱 とは
事務手続きの取り扱いを
統一化する規定です。

例えば
助成金,補助金などを出すために
公平に事務処理を行うために
要綱などを定めます。

要綱 は
「基準」,「方針」,「細目」など
名称を用いられることがあります。

要領
さらに細かい事務手続きを定める
場合に用いられます。
要領 は
「事務手続」など の名称が
用いられることがあります。

また
「要綱」,「要領」といった
発令形式はないため
一般的には
要綱 は「告示」「訓令」として
制定します。

指針 ,ガイドライン についても
要綱,要領 と同様に
公務員が事務処理を行う際の基準です。

先頭へ

訓令 は通達と同じく
上級機関が下級機関に対して
その機関の所掌事務について
指揮するために発する命令です。

通知と通達の違い については

通知 は命令できない相手に対して
「 技術的な助言 」などを伝えるものです。
つまり
「 従ってほしい内容 」です。

国が通知を出す相手としては
地方公共団体や
事業者団体などがあります。
地方分権改革後は
国と地方公共団体とは
対等の関係になりましたので
「通達」から「通知」へと
改められました。

先頭へ

告示
国や地方公共団体の行政機関が
その意思を国民や住民に対して
官報 や 公報 により
事実を広く 公示
することです。

要綱や指針 など について
それを国民(住民)に
知らせる必要がある場合には
告示化 します。
例えば
「常用漢字表」「生活保護基準」
など
があります。

法律に告示の根拠 があるときには
政省令のように
国民の権利義務に関係する
場合があります。
例えば
土地収用法に基づく事業の認定の告示
(土地収用法 第26条1項) などです。

要綱指針 などは
誰に対して向けられたものか
公務員内部に対しての
通達的なものなのか
国民へのお知らせの
告示的なものなのかを
見極める必要があります。

先頭へ


最後に今日ご案内した
税法を勉強するに当たり
お役立ちサイトをご案内します。

◇ 税大講本 - 国税庁


税務大学校講本は
司法協会の講義案のように
無駄な記述がなく
淡々と書かれています。
そのため
読んでいて面白味はありませんが
各税法の基本的事項が書かれていて
入門書としては
必要かつ十分でしょう。


先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年7月31日日曜日

出題趣旨,採点実感,ヒアリング 等の掲載箇所


出題趣旨,採点実感,ヒアリング
試験問題 等 の 掲載箇所
※ 平成18~23年
( ヒアリング掲載年まで )

~ 目次 ~
◆ ヒアリング,採点実感,
- 平成18~23年の司法試験実施分まで
- 司法試験委員会会議


◆ 平成18年◆ 平成19年
◆ 平成20年◆ 平成21年
◆ 平成22年◆ 平成23年

◆ 出題趣旨,採点実感,
 口述試験における問題のテーマ
- 司法試験,司法試験予備試験


◆ 試験問題
- 司法試験,司法試験予備試験



司法試験および司法試験予備試験 の
出題趣旨
司法試験 の
採点実感等に関する意見
司法試験予備試験 の
口述試験における問題のテーマ
掲載場所 について
ご案内します。


司法試験
論文式試験出題の趣旨
( 平成18年以降 )
採点実感
( 平成20年以降 )
については
司法試験の結果について から
年ごとのページ内に掲載されています。

司法試験予備試験
論文式試験出題の趣旨
口述試験における問題のテーマ
( 平成23年以降 )
については
司法試験予備試験の結果について から
年ごとのページ内に掲載されています。

先頭へ

ヒアリング,採点実感等に関する意見
司法試験委員会の会議録 のページに
各回ごとに
個別に掲載 されています。
法務省トップページ
> 審議会等
> 委員会
> 司法試験委員会-司法試験委員会会議

平成24年実施以降
ヒアリングがなくなり
出題趣旨,
採点実感等に関する意見のみの
掲載になりました。

平成20年以降
「 採点実感 」
については
「 司法試験の結果について 」のページ
にも掲載されています。

先頭へ

【 古いもの順 】

平成18年
第29回 : 平成18年9月20日
公法系ヒアリング

刑事系ヒアリング

第30回 : 平成18年10月5日
民事系ヒアリング

第31回 : 平成18年11月8日
選択科目(6科目)ヒアリング

第32回 : 平成18年12月15日
租税法採点実感等

環境法採点実感等

先頭へ

平成19年
第40回 : 平成19年9月12日
民事系ヒアリング

第41回 : 平成19年10月3日
公法系ヒアリング

刑事系ヒアリング

第42回 : 平成20年11月7日
選択科目( 全科目 ) 採点実感等

先頭へ

平成20年
第51回 : 平成20年12月8日
全科目採点実感等

⇒ 試験結果ページ にも記載

公法系ヒアリング

民事系( 商・民訴 )ヒアリング

第52回 : 平成21年1月21日
民事系( 民法 )ヒアリング

刑事系ヒアリング

先頭へ

平成21年
第61回 : 平成21年12月16日
全科目採点実感等

⇒ 試験結果ページ にも記載

第62回 : 平成22年1月20日
刑事系ヒアリング

公法系ヒアリング

民事系ヒアリング

先頭へ

平成22年
第66回 : 平成22年6月2日
選択科目( 国際関係法 公法系 )
ヒアリング


第71回 : 平成23年1月28日
全科目採点実感等

⇒ 試験結果ページ にも記載

先頭へ

平成23年
第65回 : 平成22年4月28日
民事系( 民法・民事訴訟法 )ヒアリング

民事系科目( 商法 )ヒアリング

公法系・刑事系ヒアリング

第80回 : 平成23年12月16日
全科目採点実感等

⇒ 試験結果ページ に記載-修正版
※ 民事系科目第3問20頁に
 誤記があったため修正されたもの。


※ 公法系科目第1問( 補足 )
⇒ 試験結果ページ に記載


先頭へ

掲載時期 については
出題趣旨,
採点実感等に関する意見
とで異なります。

採点実感等に関する意見
については
概ね12月中旬あたりに公表
されています。

出題趣旨
については
概ね9月下旬~10月 に公表
されています。

出題の趣旨の公表については
次のような委員会決定があります。

平成17年11月8日
司法試験委員会決定
- 改正平成23年11月9日

「 司法試験論文式試験における
 出題の趣旨の公表については
 合格発表後,速やかに
 法務省ホームページ等に掲載する 」

司法試験委員会 - 第79回会議
( 平成23年11月9日 )
資料4:司法試験論文式試験における
出題の趣旨の公表について


先頭へ

試験問題の掲載箇所はこちらです。

◆ 司法試験問題の掲載箇所
 ( 平成18年~ )

司法試験の実施について から
年ごとのページ内に掲載されています。

◆ 司法試験予備試験問題の掲載箇所
 ( 平成23年~ )

司法試験予備試験の実施について から
年ごとのページ内に掲載されています。

先頭へ

以上
読んでいただき
ありがとうございました。