2022年8月27日土曜日

ゴミの帰属についての考察


“ ガーボロジー ” について
その行為が
犯罪とならないかについて
詰めて考えていったとき
そもそも
ゴミ(廃棄物)を持ち去る行為は
窃盗罪などにあたるのか

という問題に当たります。

ゴミとは
それ自体に財産的価値があったとしても
通常不要になったので
捨てたものであるから
所有権,占有権を放棄したものなので
無主物であり
窃盗(刑法235条)には当たらない。
また
無主物であれば
遺失物や漂流物
その他
占有を離れた他人の物でもないので
遺失物等横領(刑法254条)にも当たらない。
とも考えられます。

一方で
集積所に出されたゴミは
自治体が排出者から
譲り受けたものと考えられるので
ゴミの所有権は
自治体に帰属するという
解釈もあります。

この件について
裁判例は分かれています。
まず
ゴミを集積所に置いた時点で
無主物になるものではない。

とする 裁判例

東京高判 平成19年12月10日
平成19年(う)第1087号


東京高判 平成19年12月13日
平成19年(う)第1025号


東京高判 平成20年1月10日
平成19年(う)第1068号


東京高判 平成19年12月26日
平成19年(う)第993号
平成19年(う)第1018号
平成19年(う)第1031号


がありますが

東京高判 平成19年12月13日
平成19年(う)第1025号


においては
集積所の資源廃棄物は
一般的には無主物ではないと
しながらも


「 区民の中には
 古紙等を集積所に排出した時点で
 所有の意思を放棄したとみるのが
 相当な場合も考えられない訳ではない。
 その場合には
 その資源廃棄物は
 民法上の無主物と
 いわざるを得ないであろう 」


というように
私法上の帰属については
明言を避けています。


次に
権利の移転時期 については

東京高判 平成19年12月10日
平成19年(う)第1087号


では
明言をしていません。

それ以外では
自治体によって回収されるまでは
排出者によって所有・占有されていると
見るべきであり
自治体が回収することによって
その所有権や占有権が
自治体に移転,承継されるものと
考えるのが相当
とする 裁判例

東京高判 平成19年12月13日
平成19年(う)第1025号


東京高判 平成20年1月10日
平成19年(う)第1068号


であり

集積所に置かれた時点から
自治体の所有に属する

とするのが

東京高判 平成19年12月26日
平成19年(う)第993号
平成19年(う)第1018号
平成19年(う)第1031号


の裁判例です。

これらの裁判例
資源ゴミの持ち去り問題の
対策として
自治体が持ち去り禁止条例を制定し
その条例違反行為で告発がなされて
裁判で争われたケース
です。

資源ゴミの持ち去り問題 とは
古紙等の再生資源価格の下落によって
資源となっていた古紙等が
大量のゴミとなり
行政が資源を回収し出したところ
再び資源ゴミに価値が付いたため
持ち去る者が出てきました。

彼らが
全ての資源ゴミを回収すれば
問題はないのですが
価値の高いものしか持っていかず
それにより
集積所が荒らされるなど
回収コストが増え
経済的損失も大きく
行政の信用にかかわる問題でもあるので
対策として条例を制定し
持ち去り行為を抑止するという
ことが目的です。

それらの事情を鑑みれば
裁判所でも
有罪の方向へ持っていくような
法理論を立てるのは当然でしょう。

ですから
これらが 対象 としているのは
古紙,ガラス瓶、缶などの
再利用の対象となる 資源ゴミ であって
一般ゴミが対象ではありません。

ただし
自治体により
適正にごみステーションに排出された
家庭系一般廃棄物の持ち去り行為を
一般的に禁止している条例
もあります。

下関市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例

( 収集又は運搬の禁止等 )
第10条

市又は市から収集又は運搬の委託を受けた者以外の者は
前条第2項 の規定により
適正にごみステーションに排出された
家庭系一般廃棄物を収集し
又は運搬してはならない。
2項
市長は
市又は市から収集又は運搬の委託を受けた者以外の者が
前項の規定に違反して
ごみステーションに排出された
家庭系一般廃棄物を収集又は運搬したときは
その者に対し
これらの行為を行わないよう
命ずることができる。

( ごみステーションの管理 )
第9条 2項

ごみステーションの利用者は
家庭系一般廃棄物の排出に当たっては
当該家庭系一般廃棄物を分別し
飛散又は流出しないように
市長の指示する方法により収納し
かつ
指定された日時に排出する等
適正にこれを行わなければならない。


本条例の 第10条 については
循環型社会形成推進基本法 第7条
違反するものとはいえない。

との 裁判例 があります。

広島高判 平成20年5月13日
平成19年(う)第241号
下関市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例違反事件



翻って
排出されたゴミを無主物とした
裁判例
もあります。

最二小決 平成20年4月15日
平成19年(あ)第839号
窃盗,窃盗未遂,住居侵入,強盗殺人被告事件


「 ダウンベスト等の領置手続についてみると
 被告人及びその妻は
 これらを入れたごみ袋を不要物として
 公道上のごみ集積所に排出し
 その占有を放棄していたものであって
 排出されたごみについては
 通常そのまま収集されて
 他人にその内容が見られることはないという
 期待があるとしても
 捜査の必要がある場合には
 刑訴法221条により
 これを遺留物として
 領置することができるというべきである。
 また
 市区町村がその処理のために
 これを収集することが
 予定されているからといっても
 それは廃棄物の適正な処理のためのものであるから
 これを遺留物として領置することが
 妨げられるものではない 」


この裁判例
先出の
「 資源ゴミ 」 のケースとは真逆
捜査の正当化のために
ゴミ刑訴法221条の「 遺留物 」
としなければならないという
前提で法理論を立てているので
このケースでは
集積所に排出されたゴミは
自治体による回収如何にかかわらず
無主物
としています。


これらを踏まえて
ゴミの帰属 を考えると
今のところ
ケースバイケースで
判断
されているようです。

よって
国家機関や捜査機関ではない
私人によるガーボロジー は
目的や他の行為,情状と絡めて
有罪と判断される
おそれがある
と考えます。


ちなみに
ワイドショーなどで
特集されている
“ ゴミ屋敷 ” と呼ばれている
ゴミに埋もれている家がありますが

あの
家を埋めつくしているモノ
ゴミ集積所へ排出されたものでなく
所有者の管理下にあり
所有・占有を放棄している
とはいえないので
所有者の許可なく持ち去れば
窃盗です。


所有者本人も
ゴミと言ってませんよね。

だから行政も困っているわけです。

近隣の住民は
悪臭や火災等の心配で
たまったものではありませんが・・・。


~ 参考文献 ~

垣見隆禎『 判例研究34 世田谷区清掃・リサイクル条例事件 』
自治総研 通巻411号 2013年1月号 58頁

http://jichisoken.jp/publication/monthly/monthly2013.html
(アクセス日 2022年6月7日)

埼玉県清掃行政研究協議会
『 平成21年度調査研究事業 一般廃棄物行政諸問題検討部会報告書 』


資源ごみ持ち去りを禁止する条例 - 地方自治研究機構
http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/089.removing_recyclable_waste.htm
(アクセス日 2022年6月7日)

世田谷区例規類集(条例・規則集)・要綱集
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/107/157/722/729/d00120036.html
(アクセス日 2022年6月7日)

杉並区例規集・要綱集
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kusei/jorei/1012987.html
(アクセス日 2022年6月7日)

大田区例規集
https://www1.g-reiki.net/cityota.reiki/reiki_menu.html
(アクセス日 2022年6月7日)

下関市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例
http://www.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/reiki/reiki_honbun/r147RG00000479.html
(アクセス日 2022年6月7日)


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月26日金曜日

情報の分類とガーボロジー


社会にあふれる情報には
多くの種類の情報が
入り混じっています。

調査に必要な情報を分類 すると
次のように
分類することができます。

まず
登記簿や住民票など
官公庁等で入手できる情報。
官報や住宅地図,
紳士録や人名録等の名簿類,
有価証券報告書,企業情報など
図書館や書店等で
入手できる情報といった
公然としている情報(オープン情報)

一方
当事者しか知ることができない
非公然の情報(クローズド情報)とに
大きく分けることができます。

さらに
非公然の情報(クローズド情報)には
聞き込み等で得ることは可能ですが
聞き込み相手の勘違いや
噂の域を出ない伝聞等の
未確認の情報

その中でも
デマなどをわざと流して
混乱させたり騒がせたりする
ガセネタといわれる
偽の情報

自分の五感で
確認した情報
分類されます。

尾行調査の情報などは
この確認情報に
近い情報になります。

捜査機関や諜報機関
探偵および記者などの
情報屋は
オープン情報 のほか
未確認情報
収集,確認して分析
さらに
裏付けを取り
間違いがなければ
報告書や記事にする
といった
プロセス をたどります。

ところで
“ ガーボロジー ” という調査方法を
ご存じでしょうか?
初めて聞く方もいると思いますが
いわゆる「 ゴミ漁り 」 のことで
ゴミから得られる情報から
事実の解明をする調査法です。

元々は
考古学で遺跡の出土品から
当時の生活や文化等を探っていく
技術だったそうです。

この調査方法は
聞き込み調査などよりも
正確かつ多くの
確認情報が得られる
ため
捜査機関や諜報機関,探偵等が
情報収集のために使われる
調査方法の一つに
使われるようになりました。

ゴミから何がわかるのかというと
試しに自分のゴミを分析して
自己の日常生活の情報を
逆算してみてください。


例えば
給与明細,カードの引き落としの
明細書や
レシート,水道・電気等の
明細書があれば
収入と支出のおよその見当がつきます。

他には
薬の殻からも
対象者がどんな病気を患っているか
推測できますし
メモなどからでも
その人の交友関係や性格等が
判断できる場合があります。

捜査機関や探偵などは
こういった情報を頼りに
犯罪捜査等の証拠収集
居所調査や素行調査などの
手掛かりにするわけです。

相当に金になる産業機密を探る
手練れの調査員や産業スパイ。
はたまた
国家組織の諜報員や
捜査機関のプロにかかれば
シュレッダーをしようが
生ゴミに混ぜようが
素人が振り切るのは困難でしょう。

◇ シュレッダーは
  セキュアな書類破棄方法か?
  - ITmedia エンタープライズ



しかし通常ならば
空き巣対策と同様に
犯人に
「 面倒だ 」とか
「 時間がかかりそうだ 」と
思わせることが重要なので
複雑に仕組むこと
防犯対策 の一つでしょう。

特に女性の場合は
ゴミ出しにも気を配りましょう。
まず
ゴミは夜に出さない。
できれば収集直前に出す。
生ゴミと混ぜて出す。
個人情報などがわかるものは
シュレッダーする。

といったように
まずはできることから
行うのがよいと思います。

“ ガーボロジー ” の行為自体は
犯罪になるのかというと

例えば
マンションの場合
夜に外部の者である
不審者が
ゴミを漁りに
マンションのゴミ集積場に
頻繁に侵入していれば
侵入に正当な理由はなく
入ってよしとする
推定的同意もありませんので
住居侵入等の罪(刑法130条前段)に
なるでしょう。

他には
公道のゴミ集積所で
頻繁にゴミを持って行く
不審な自動車がある場合であれば
集積所に排出したゴミは
無主物か?
などの判断が難しく
持ち出したからといって
犯罪の構成要件に該当するとは
言いきれません。

しかし
不審者対策として
最低限
自動車のナンバーは
控えておいたほうがよいでしょう。

警察に相談しても
不審者らしい人がいるという
具体性のない漠然とした情報では
警察も動きようがありません。

それが
対策の初動を遅らせる
要因にもなります。

ですので
具体的な場所や時間など記録したり
一応確からしいと
わかる資料があれば
警察も動きますので
それらを集めて
警察の生活安全課
相談すると効果的です。

警察でも
警視庁総合相談センター
様々な困りごとに関する
相談を受け付けているので
ご案内します。

◇ 相談ホットラインのご案内
  - 警視庁


◇ 警視庁 - 相談・お悩み

攻撃側の方法を知ることで
それに対する
防衛策も立てやすくなる
ということです。


その他には
法テラス( 日本司法支援センター )
相談するのもよいでしょう。

法テラス とは
総合法律支援法に基づき
平成18年4月10日に設立された
法務省所管の公的な法人です。

弁護士や司法書士による
法的な立場からのアドバイスを
受けることができます。


◇ 法テラス(日本司法支援センター)
  - トップページ


ここで一つネックになるのは
民事の場合
費用の支払の問題です。

法律専門家に依頼する
費用が厳しいという方は
民事法律扶助 という制度があります。

◇ 民事法律扶助業務 - 法テラス


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以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月25日木曜日

訟務月報 等 官公庁公刊の判例集

法情報検索 各論 3 判例 a

判例集,裁判例集
司法機関である 裁判所
編集,公刊している公的判例集以外に
行政機関である官公庁
編集,公刊している 裁判例集
あります。

代表的なものを4つ例を挙げ
その他のサイトも検索できるよう
合わせて総合リンクを紹介します。

法学資料データ(リンク集)-TKC

訟務重要判例集データベースシステム

税務訴訟資料

労働委員会関係 命令・裁判例データベース

高等裁判所刑事裁判速報


訟務重要判例集データベースシステム

★ 訟務月報(法務省訟務局 編)
  略称:訟月
巻次:創刊号 昭和30年(1955)~

訟務月報
国や行政庁が一方当事者となって
法務省が関与した
民事事件,行政事件,租税事件の判例
収録しています。

このうち
国に対する主な請求内容
賠償 を求めるものを 民事事件
処分の取消し等について求めるものを
行政事件
租税の賦課徴収に関するものを
租税事件 としています。

各法科大学院で異なると思いますが
59巻 1号 から
冊子が寄贈されていたと思います。

訟務月報
36巻 1号 ~ 68巻 3号 までは
法務省Wbeサイトにて
データベース化されています。
(2022年8月29日 時点)

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税務訴訟資料

★ 税務訴訟資料(国税庁 編)
  略称:税資
巻次:第249号(2004年)では冊子体
第250号(2005年)~
258号(2011年)までは CD-ROM
258号~国税庁Webサイト
掲載されています。
(アクセス日: 2022年8月29日)

税務訴訟資料
租税関係行政・民事事件裁判例のうち
国税に関する裁判例 を収録したもので
課税関係判決徴収関係判決
分かれています。

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労働委員会関係 命令・裁判例データベース

★ 労働委員会関係 命令・裁判例データベース
 (中央労働委員会)

収録範囲(概要情報)
命令
 昭和34年(1959)~ 令和2(2020)年5月
裁判例
 昭和41年(1966)~ 令和2(2020)3月

労働委員会関係 命令・裁判例データベース
不当労働行為事件 について
都道府県労働委員会
および
中央労働委員会から発せられた命令
労働委員会関係の判決・決定
事件概要,判決・決定の要旨などの
概要情報を掲載しています。
また
昭和61年(1986)以降命令
および
平成17年(2005)以降判決等については
画面の最後から
全文情報(PDF)がリンクされています。
(2022年8月29日 時点)

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★ 高等裁判所刑事裁判速報
 (法務省大臣官房司法法制部 編)

  略称:高刑速
巻次:昭和56年(1981)年 ~

高等裁判所刑事裁判速報
もともとは
各高等検察庁の内部資料 でしたが
現在は 法曹会 から出版されています。
また
TKC,LLIなどの有料データベースでも
PDFで閲覧できるものもあります。


これらの紹介したサイトや資料は
一部分なので
最後にこれらを網羅する
法学系の 総合リンク集 も紹介します。

法学資料データ(リンク集)-TKC


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以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月24日水曜日

登記関係の先例等の検索方法

法情報検索 各論 1 法令 7

~ 主要リンク ~
登記通達/先例/回答 - TOUKI 2030

不動産登記関係の主な通達等
 - 法務省民事局


商業・法人登記関係の主な通達等
 - 法務省民事局


日本-登記関係先例の調べ方
 - リサーチ・ナビ - 国立国会図書館



前出の 通達・告示・指針等の検索方法

法務省において
民事局第二課民事局長 から
全国の 法務局長及び地方法務局長 宛てに発せられた
不動産登記に関する手続について定めた 通達
「 不動産登記事務取扱手続準則 」 と呼ばれ

さらに
法務省民事局長通達に合わせて
法務省民事局第二課長 及び 商事課長通知 するものを
「 依命通知 」 と呼ばれていることを述べました。


登記申請の取り扱いについて示達された
通達・回答・依命通知などの 『 先例 』 を調べるには
『 登記六法 』『 登記先例判例要旨集 』 などに当たりますが
新しいものに関しては登載されていないことがあります。

新しい先例は
『 登記研究 』『 民事月報 』 などで紹介されていますので
司法書士ならばこれらを購読している方もいると思います。

登記関係・先例の調べ方についてのガイドは
国立国会図書館のリサーチ・ナビがあります。

日本-登記関係先例の調べ方
 - リサーチ・ナビ - 国立国会図書館



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「 国税庁 」「 厚労省 」通達
データベース化して検索がしやすくなっているが
「 登記関係の通達などのデータベースはないのか? 」
といった問い合わせが度々あります。

これにつきましては
法務省のWebサイトでも
不動産登記,商業・法人登記に関連する
主要な通達等を掲載しています。

不動産登記関係の主な通達等
 - 法務省民事局


商業・法人登記関係の主な通達等
 - 法務省民事局



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この他にも個人で運営している
このようなサイトもあります。

登記通達/先例/回答 - TOUKI 2030

上記は
司法書士の長谷川清先生が運営しているサイトです。

法務省のサイトのものは主要な通達等のみですが
こちらのサイトは
細かく掲載がなされていて
類型別にも分けてあるので検索しやすく
便利で使い勝手のよいサイトです。

SHIHOSHOSHI.COM
 - 司法書士 長谷川事務所



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以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月23日火曜日

通達,告示,指針 等の検索方法

法情報検索 各論 1 法令 6

~ 主要リンク ~
法学資料データベース - LEX/DB

所管の法令・告示・通達等 - e-Gov

法令等データベースサービス - 厚生労働省

法令解釈通達 - 国税庁

省略用語例 - 国税庁

日本-訓令・通達・通知の調べ方
  - リサーチ・ナビ - 国立国会図書館


◆ 通達◆ 訓令◆ 通知◆ 告示
◆ 要綱,ガイドライン


法令ではない通達等
( 行政規則 )の種類について
説明するとこの様になります。

◆ 通達
( 国家行政組織法 第14条2項 )
上級行政機関が下級行政機関に出す
行政内部の命令又は示達で
官報には掲載されません。
法令の解釈及び運用や行政執行の方針に
関するものが多いです。

◆ 訓令
( 国家行政組織法 第14条2項 )
上級機関が下級機関に対して
所掌事務について指揮するために発する
命令又は示達で
公共性が強い場合など
一部は官報に掲載されるものもあります。

官報に掲載される訓令
法令番号と同様の 訓令番号 が付されます。
例えば
「 平成○○年 内閣府訓令 第○○号 」などです。
通達との違いについては諸説ありますが
区別は明確ではありません。

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◆ 通知
行政庁がある行為を
特定又は不特定多数の人に
特定の事項を知らせる
準法律行為的行政行為 です。
命令できない相手に対して
技術的な助言 」などを伝えるものです。

通達・通知 には
「 文書記号・番号 」 が付されます。
文書記号は
所管する機関の部局課名を表し
その記載方法は
各機関により異なります。

例えば
厚生労働省 ならば
「 基発 第○○号 」など
法務省 ならば
「 民二 第○○号 」などです。

社労士などを勉強している方で
「 基発 」などの意味を
教えてほしいとの問い合わせが
まれにあります。

通達等の種別は多数ありますから
『 労働法全書 』分野別の法令集
凡例 の記載がありますので
そちらを当たるのが良いでしょう。

ちなみに
「 基発 」 とは
労働基準局長 から
各都道府県の労働局長 宛てに発せられた
「 通達 」 です。

厚生労働省
法令,告示,主な訓令,通知 等
こちらで検索することができます。

法令等データベースサービス - 厚生労働省

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国税庁 においても 通達 を公開しています。

法令解釈通達 - 国税庁

また
国税庁が回答文で使用している
法令,通達の略称 を調べるには
こちらが良いでしょう。

省略用語例 - 国税庁


法務省においては
民事局第二課民事局長 から
全国の 法務局長及び地方法務局長 宛てに
発せられた
不動産登記に関する手続について定めた
「 通達 」
「 不動産登記事務取扱手続準則 」
という形になります。

さらに
法務省民事局長通達に合わせて
法務省民事局第二課長 及び 商事課長
「 通知 」 するものを
「 依命通知 」と呼ばれています。

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◆ 告示
( 国家行政組織法第14条1項)
行政機関がその意思や事実を
広く一般に公示することです。
一般への公示ですから
国の機関の場合は 官報
地方公共団体の機関の場合は
公報 へ掲載されますので
そこから調べることができます。

◆ 要綱,ガイドライン
公務員が事務処理を行う際に
取り扱いを統一化する基準です。
要綱,ガイドラインという
発令形式はないため
一般に公示する必要がある場合には
「 告示 」「 訓令 」として制定します。

各府省所管の法令・告示・通達等は
こちらで調べることができます。

◆ 所管の法令・告示・通達等 - e-Gov

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通達のほか,法令,判例,文献等を
網羅的に検索する場合は
総合リンク集が便利です。
というかこれだけで十分ですので
いくつかご案内します。

 法学資料データベース - LEX/DB
   このリンク集のみでほぼ間に合います。

◆ TKCローライブラリー - 法令リンク

◆ TKCローライブラリー - 判例リンク

◆ TKCローライブラリー - 審決/裁決リンク

◆ D1-Law.COM
  第一法規法情報総合データベース - リンク集


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インターネットでの検索が
普及する前までは
通達・通知などの検索については
冊子体の
『 基本行政通知・処理基準 』で調べて
そこにない場合は
主題別の通知・通達集
例えば
『 化粧品・医薬部外品関係通知集 』などや
所管省庁の公報類
『 税務法令通達月報 』,『 薬務公報 』,
『 裁判所時報 』
などに当たるといった
専門図書館や
都立・県立図書館レベルでの調査でした。

今は各省庁のデータベースが
充実しているので
わざわざ図書館へ出向かなくても
在宅検索ができるので便利です。

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最後に
告示・訓令・通達・通知等の調べ方が
わからなくなった場合の
「お助けサイト」をご案内します。

◆ 日本-訓令・通達・通知の調べ方
  - リサーチ・ナビ - 国立国会図書館



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以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年8月22日月曜日

法の階層

法情報検索 各論 1 法令 1

◆ 条約◆ 会計検査院規則,人事院規則
◆ 外局規則◆ 庁令
◆ 議院規則,最高裁判所規則◆ 条例
◆ 通達◆ 要綱◆ 要領
◆ 指針,ガイドライン◆ 訓令
◆ 通知◆ 告示

税大講本 - 国税庁


今回は
法令等の階層についてお話します。

法令の階層について図で表すと
【 図1 】のようになります。

【 図1 】

 ※【 図1 】中の茶色の二重線より
   右側〈 矢印 〉の規則・条例
については
  e-Gov法令検索には掲載されません。

先頭へ

例えば
『 所得税法 』でいうと
まず 憲法 30条で 納税の義務
同84条で 租税法律主義 を定めています。

その『 租税法律主義 』を受けて
法律を定めます。
法律 の中でも階層があり
税法の階層を図で表すと
【 図2 】のようになります。

【 図2 】
(行政法との関係で,課税に関するの場合の階層です。)



先頭へ

税法の場合
所得税法,法人税法,
消費税法… といった
実体法が規定した課税要件を満たすと
納税義務が発生し
課税されることになります。
そして
各税法での課税を実現するための
共通する手続を規定しているのが
『 国税通則法 』です。
また
税法違反に対する処罰を定める
国税犯則取締法
2018年(平成30年)4月1日に
廃止され
国税通則法に編入されました。

国税通則法の上位には
『 行政手続法 』,
『 行政不服審査法 』
といった
行政法関連の規定があり

それらの行政法関連一般法
国税通則法特別法とする
関係になっています。

先頭へ

さらに分かれて
所得税法などの
税目ごとに課税要件を定めた
実体法が規定されています。

国税の所得税法法人税法などと
国税通則法との関係では
国税通則法一般法となります。

図の右側の
『 租税特別措置法 』とは
税法の場合,本法とは異なり
その時の経済状況などから
政策判断し,時限的に制定された
課税を修正した特別法の集まりです。

税法は
すぐに変わるので難しい
との声を聞いたことがありますが
改正の多くは
この 『 租税特別措置法 』です。

その他にも
図には記載していませんが
課税要件を定めた
所得税法などの実体法の他に
徴収手続 について定めた
国税徴収法 があります。

先頭へ

法律の下には
さらに詳細な規定や計算の詳細を定めた
政令 である
所得税法施行令
政令の下には
必要な手続きなどを定めた
省令
所得税法施行規則 があります。

法律から省令までが 「 法令 」 です。

先頭へ

通達
上級機関が下級機関に対して
その機関の所掌事務について
指揮するために発する命令です。
法令の運用に関し
解釈を統一化するためなどで
発せられます。 ( 法令解釈通達 )

こちらは
一般的に公表されています。
実務での判断では
通達が基準となる場合が多いですが
法令ではないので
一般国民の権利義務について
直接は拘束しません

法令解釈通達 - 国税庁

先頭へ

条約 については
国家間の合意規範です。
憲法との優位性については
学説により見解が分かれます。

法律との関係においては
国内法よりも優先されます。

ただし
税に例にした場合
租税条約 においての優先とは
国内法の効力の一部を減殺する
という意味です。

また
国内法で課税されないものを
租税条約で
課税することはできません。

先頭へ

会計検査院規則,人事院規則 については
役割の性質上,内閣からある程度
独立性を保障されているので
直接,政令は及びません。

外局規則
内閣府および各省は
その外局として
公正取引委員会
国家公安委員会 など 委員会
海上保安庁 などの
置くことができます。

原則として外局は
独自に命令を発することはできませんが
例外的に
各委員会庁の長官
別に法律の定めるところにより
政令及び省令以外の規則
その他の特別の命令を
自ら発することができます。

(内閣府設置法 第58条4項,
 国家行政組織法 第13条1項)

例えば
公正取引委員会
(私的独占の禁止及び公正取引の
 確保に関する法律 第76条)や
国家公安委員会
(警察法 第12条)の他には
中央労働委員会
(労働組合法 第26条)
公害等調整委員会
(公害等調整委員会設置法 第13条)
などがそれに当ります。

なお
庁の長官が定めた庁令
自ら発することができるのは
海上保安庁 のみです。
(海上保安庁法 第33条)

先頭へ

議院規則,最高裁判所規則,条例
権力分立により
憲法が
議院や最高裁判所
および
地方公共団体に認めた制定権です。
衆議院参議院
会議の手続きや内部規律に関して
『 議院規則 』
最高裁判所
訴訟手続きや内部規律に関して
『 最高裁判所規則 』
それぞれ
自ら制定することができます

先頭へ

地方公共団体 が定める
条例規則
条例施行規則 の関係においては
規則下位法令 に当たります。

しかし
条例規則 には
各機関に専権事項 があります。
住民の権利義務に関する場合は
条例で定め
財務に関する場合は
規則で定められます。
そして
議会 による条例も
首長 が定める規則も
民主的に選挙された機関により
作られるものですので
その点では 対等な関係 といえます。

また
議院規則,最高裁判所規則,条例 と
(地方公共団体が定める)規則

【図1】法令の階層図で茶色線右側〈矢印〉
については
e-Gov法令検索には掲載されません。

先頭へ

【図1】通達 以外の
法令ではない規定 について

まず
要綱要領 については
要綱 とは
事務手続きの取り扱いを
統一化する規定です。

例えば
助成金,補助金などを出すために
公平に事務処理を行うために
要綱などを定めます。

要綱 は
「基準」,「方針」,「細目」など
名称を用いられることがあります。

要領
さらに細かい事務手続きを定める
場合に用いられます。
要領 は
「事務手続」など の名称が
用いられることがあります。

また
「要綱」,「要領」といった
発令形式はないため
一般的には
要綱 は「告示」「訓令」として
制定します。

指針 ,ガイドライン についても
要綱,要領 と同様に
公務員が事務処理を行う際の基準です。

先頭へ

訓令 は通達と同じく
上級機関が下級機関に対して
その機関の所掌事務について
指揮するために発する命令です。

通知と通達の違い については

通知 は命令できない相手に対して
「 技術的な助言 」などを伝えるものです。
つまり
「 従ってほしい内容 」です。

国が通知を出す相手としては
地方公共団体や
事業者団体などがあります。
地方分権改革後は
国と地方公共団体とは
対等の関係になりましたので
「通達」から「通知」へと
改められました。

先頭へ

告示
国や地方公共団体の行政機関が
その意思を国民や住民に対して
官報 や 公報 により
事実を広く 公示
することです。

要綱や指針 など について
それを国民(住民)に
知らせる必要がある場合には
告示化 します。
例えば
「常用漢字表」「生活保護基準」
など
があります。

法律に告示の根拠 があるときには
政省令のように
国民の権利義務に関係する
場合があります。
例えば
土地収用法に基づく事業の認定の告示
(土地収用法 第26条1項) などです。

要綱指針 などは
誰に対して向けられたものか
公務員内部に対しての
通達的なものなのか
国民へのお知らせの
告示的なものなのかを
見極める必要があります。

先頭へ


最後に今日ご案内した
税法を勉強するに当たり
お役立ちサイトをご案内します。

◇ 税大講本 - 国税庁


税務大学校講本は
司法協会の講義案のように
無駄な記述がなく
淡々と書かれています。
そのため
読んでいて面白味はありませんが
各税法の基本的事項が書かれていて
入門書としては
必要かつ十分でしょう。


先頭へ


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2022年7月31日日曜日

出題趣旨,採点実感,ヒアリング 等の掲載箇所


出題趣旨,採点実感,ヒアリング
試験問題 等 の 掲載箇所
※ 平成18~23年
( ヒアリング掲載年まで )

~ 目次 ~
◆ ヒアリング,採点実感,
- 平成18~23年の司法試験実施分まで
- 司法試験委員会会議


◆ 平成18年◆ 平成19年
◆ 平成20年◆ 平成21年
◆ 平成22年◆ 平成23年

◆ 出題趣旨,採点実感,
 口述試験における問題のテーマ
- 司法試験,司法試験予備試験


◆ 試験問題
- 司法試験,司法試験予備試験



司法試験および司法試験予備試験 の
出題趣旨
司法試験 の
採点実感等に関する意見
司法試験予備試験 の
口述試験における問題のテーマ
掲載場所 について
ご案内します。


司法試験
論文式試験出題の趣旨
( 平成18年以降 )
採点実感
( 平成20年以降 )
については
司法試験の結果について から
年ごとのページ内に掲載されています。

司法試験予備試験
論文式試験出題の趣旨
口述試験における問題のテーマ
( 平成23年以降 )
については
司法試験予備試験の結果について から
年ごとのページ内に掲載されています。

先頭へ

ヒアリング,採点実感等に関する意見
司法試験委員会の会議録 のページに
各回ごとに
個別に掲載 されています。
法務省トップページ
> 審議会等
> 委員会
> 司法試験委員会-司法試験委員会会議

平成24年実施以降
ヒアリングがなくなり
出題趣旨,
採点実感等に関する意見のみの
掲載になりました。

平成20年以降
「 採点実感 」
については
「 司法試験の結果について 」のページ
にも掲載されています。

先頭へ

【 古いもの順 】

平成18年
第29回 : 平成18年9月20日
公法系ヒアリング

刑事系ヒアリング

第30回 : 平成18年10月5日
民事系ヒアリング

第31回 : 平成18年11月8日
選択科目(6科目)ヒアリング

第32回 : 平成18年12月15日
租税法採点実感等

環境法採点実感等

先頭へ

平成19年
第40回 : 平成19年9月12日
民事系ヒアリング

第41回 : 平成19年10月3日
公法系ヒアリング

刑事系ヒアリング

第42回 : 平成20年11月7日
選択科目( 全科目 ) 採点実感等

先頭へ

平成20年
第51回 : 平成20年12月8日
全科目採点実感等

⇒ 試験結果ページ にも記載

公法系ヒアリング

民事系( 商・民訴 )ヒアリング

第52回 : 平成21年1月21日
民事系( 民法 )ヒアリング

刑事系ヒアリング

先頭へ

平成21年
第61回 : 平成21年12月16日
全科目採点実感等

⇒ 試験結果ページ にも記載

第62回 : 平成22年1月20日
刑事系ヒアリング

公法系ヒアリング

民事系ヒアリング

先頭へ

平成22年
第66回 : 平成22年6月2日
選択科目( 国際関係法 公法系 )
ヒアリング


第71回 : 平成23年1月28日
全科目採点実感等

⇒ 試験結果ページ にも記載

先頭へ

平成23年
第65回 : 平成22年4月28日
民事系( 民法・民事訴訟法 )ヒアリング

民事系科目( 商法 )ヒアリング

公法系・刑事系ヒアリング

第80回 : 平成23年12月16日
全科目採点実感等

⇒ 試験結果ページ に記載-修正版
※ 民事系科目第3問20頁に
 誤記があったため修正されたもの。


※ 公法系科目第1問( 補足 )
⇒ 試験結果ページ に記載


先頭へ

掲載時期 については
出題趣旨,
採点実感等に関する意見
とで異なります。

採点実感等に関する意見
については
概ね12月中旬あたりに公表
されています。

出題趣旨
については
概ね9月下旬~10月 に公表
されています。

出題の趣旨の公表については
次のような委員会決定があります。

平成17年11月8日
司法試験委員会決定
- 改正平成23年11月9日

「 司法試験論文式試験における
 出題の趣旨の公表については
 合格発表後,速やかに
 法務省ホームページ等に掲載する 」

司法試験委員会 - 第79回会議
( 平成23年11月9日 )
資料4:司法試験論文式試験における
出題の趣旨の公表について


先頭へ

試験問題の掲載箇所はこちらです。

◆ 司法試験問題の掲載箇所
 ( 平成18年~ )

司法試験の実施について から
年ごとのページ内に掲載されています。

◆ 司法試験予備試験問題の掲載箇所
 ( 平成23年~ )

司法試験予備試験の実施について から
年ごとのページ内に掲載されています。

先頭へ

以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2017年2月27日月曜日

羽鳥書店,前田説などついての雑記

本の新版・増刷の話

前回
『 前田雅英先生と刑事訴訟法 』
著者,編者などの表示について
色々と推察してみました。

この刑事訴訟法を刊行している
東京大学出版会で38年間在職した後
2009年4月に新たに立ち上げた
羽鳥和芳 氏が代表を務める
羽鳥書店 があります。

特に法律関係者には
木村草太 先生 の著書
『 憲法の急所 - 権利論を組み立てる 』
出版している書店といえばご存知でしょう。

書店の法律書のコーナーで
本書を初めて手に取って見たとき
「 聞いたことのない出版社だ 」と
思いました。

自分で 本を選ぶ際 には
まず
タイトル帯情報
目次など内容から判断
することはもちろんですが
ほかには
装丁,文字の大きさ,行間,
余白の広さ,紙の厚みなど
形式的な構成や外観,手触り感
といったものも気にします。
それと
出版社著者気にする 場合も
あります。

余談ですが
ある元司法試験委員の先生が
本を出したとき
あまり聞かない出版社から
出版されていて。
中身を読んでみると,誤植が多く
専門外の自分がいうのも
おこがましいのですが・・・。
内容も,ただ判例紹介で盛ってるだけ
といった印象がありました。

それがまた当時は
司法試験委員ということもあってか
解析講座なるものを各予備校で
開いていたので
受験生に
解析するような内容なの???
と聞いたところ
僕も同じ疑問をもっています
と言われました・・・。

閑話休題。
出版社の 羽鳥書店 というのは
どんな出版社だろうと
最初は気になりましたが
色々と見ていると
立ち上げ初期のころの著者が
内田貴,大村敦志,長谷部恭男,
藤田広美 各先生方 といった
錚々たる顔ぶれが上梓 されています。

で,何冊かを読んだのですが
「 少し誤植が目立つ 」 印象 があり。
これは,大きな出版社のように
厳しい校閲を経ていないようなので
校閲まで回っていない
おそらく,かなり少人数で回していて
社長や編集者の人脈,しかも東大系が
すごい といった感じを受けました。

後に
日経ビジネス ONLINE
記事を見たときに
だいたい予想した通りだった
ということを覚えています。

宮嶋康彦「 “つぶやき”効果で1万冊!
10坪の出版社,羽鳥書店の挑戦 」
- 奥深き日本 『 日経ビジネス ONLINE 』
- 2010年3月5日(金)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100303/213123/
( アクセス日・2017年2月26日 )

それから
僕は特撮大好き! ですから
成田亨 氏の 本の出版・復刊
非常にありがたく
羽鳥書店 さま
大いに期待をしております。


☆ 成田亨作品集 成田 亨 著 / 羽鳥書店 2014.7

☆ 成田亨の特撮美術 成田 亨 著 / 羽鳥書店 2015.1


ところで
刊行後に見つかった
本の誤植 に対しての
訂正 ですが。

Webサイト のある出版社は
そこに 誤植訂正のページ
設けられていることが多いです。

木村先生 の
『 憲法の急所 については

木村先生の ブログ
『 木村草太の力戦憲法 』
http://blog.goo.ne.jp/kimkimlr
誤植訂正があります。
( アクセス日・2017年2月26日 )

まあ
この本は売れているので
その後も増刷され
第2版 がいよいよ
2017年3月下旬に刊行予定
されています。

近刊・新刊案内 - 羽鳥書店
http://www.hatorishoten-articles.com/newbook

ですから,今までの誤植も
その都度訂正されているでしょう。

本の「 版 」 と 「 刷 」
違いについ説明すると
これらの表示は
奥付 と呼ばれる,本の最終ページの
箇所に記載があります。

例えば
2013年12月20日 初版第1刷発行
2014年10月10日 初版第3刷発行
といった記載ならば

本の出版に際し
予定した発行部数より多く
新たに増刷して
その刷が3回目という意味です。

超ロングセラーの本は
この表示が100刷以上
刷られています。

増刷 に関しては
誤植の訂正などは行われます
内容の変更はありません

版表示の変更 については
本の内容の一部や複数個所に
重要な変更が加えられ
改訂版であることの記載
または書名を変更した場合。

例を挙げると
2013年12月20日 初版第1刷発行
2015年11月15日 第2版第1刷発行

といった記載ならば
2015年に
内容に重要な変更 を加えたという意味です。

この 版が変更された表記 があれば
国際標準図書番号( ISBN )と呼ばれる
図書の識別番号も変わります。

本文中の誤植や誤字・脱字の訂正などに
とどまる増刷・重版をする場合は
ISBNコードは変わりません。

「 書名記号 」 に関するルール
- ISBNと日本図書コードのルール
- 日本図書コード管理センター

http://www.isbn-center.jp/guide/02.html


法律書 の場合
会社法などの企業関連や
金融,年金,保険関連の
法令については
政策上,法改正が多いので
それに伴い
関連した本も内容を変えますので
版表示が頻繁に変更されます。

ところが
憲法や刑法など
法文が頻繁に変わることのない
法律書が
なぜ 頻繁に新版を出すのか というと
率直に言うと売りたいため ですよ。

解釈内容が変わったのでなく
ただ 新しい判例が盛られているだけ
といったものもあります。

判例 については
別に『 判例百選 』等 
勉強すると思うので
わざわざ新版を購入する必要はない。

といった本と

解釈自体が変わる ものも
あります。

特に旧司法試験の頃の刑法などは
学説の対立が激しかったので
前田説大谷説 等々がありました。
特にこの両先生が
ちょこちょこと 改説 するんです。

まあこれは
判例・実務を重視しつつ
解釈を展開しているから


特に 前田先生の場合
処罰に値する行為を
構成要件段階で処理する考え方で
処罰に値する行為は
現代社会における犯罪現象を踏まえて
妥当性を図っていくという理論
です。
そして
客観的に現代社会の犯罪現象を
知るための統計資料
として
『 犯罪白書 』 があります。

だから
前田先生の刑法の体系書には
犯罪データが載っています。
犯罪統計は毎年変わるため
新たなデータに変更するので
新版を出す理由づけになります。


なので
解釈がぶれているのではなく
社会の犯罪現象に合わせて
処罰も変化する という
現実的な考え方です。

でも
実務家養成のロースクールでは
事例中心の勉強なので
旧試の受験生のような
学説オタクはいないような気がします。

僕も刑法学説や
民訴の争点効や新訴訟物理論
などの新堂説,
手形・小切手法の創造説など
ひと通り勉強しましたが
社会に出て役に立ったという
記憶がありません・・・。

仕事にもよりますが
書式集,法令集,コンメンタール,
判例・先例集といったところで
十分な気がします。

最後は
出版の話から
前田説の話に
なってしまいましたが

読んでいただき
ありがとうございました。

以上


2017年2月25日土曜日

前田雅英先生と刑事訴訟法


出版社の共著についての推察

2004年6月に「東京大学出版会」より
池田修・前田雅英 両先生 共著
『 刑事訴訟法講義 』 の初版が
出版されました。

その後にも
『 ケースブック刑事訴訟法 』
( 弘文堂ケースブックシリーズ )
笠井治,前田雅英 編
弘文堂 2007

『 刑事訴訟法判例ノート 』
前田雅英,星周一郎 著
弘文堂 2012

『 刑事訴訟実務の基礎 』
前田雅英 編;青木英憲 [ ほか ] 著
弘文堂 2010

といったように
刑事訴訟の本が出版されています。

前田 先生というと
司法試験などで
刑法の基本書となる
体系書や演習書などを著し
前田説と呼ばれる
刑法の論理体系を築かれた先生です。

ですので
前田先生が
「 刑事訴訟法 」を書いたの?

といった印象を最初に持ちましたが

団藤重光 先生が
『 刑法綱要 』 創文社
総論 1957,各論 1964 や
『 刑事訴訟法綱要 』
弘文堂書房 1943 などを著し

平野龍一 先生が
『 刑法総論 』 有斐閣 1983 や
『 刑事訴訟法 』 弘文堂, 1954 を
それぞれ著していることを見れば
特に何も違和感はありません。


著者等の記載 について説明すると
単独執筆 の場合は ○○著 という記載なので
誰の執筆かは明確です。

他方
前田雅英 編 という記載の場合

というのは
パートごとに
他の数人の学者や実務家の先生が
内容を分担して執筆し
それを前田先生が全体の構成を編集し
責任者として 内容をとりまとめた
ということです。

他の記載方法については
編著 となっていれば
内容のとりまとめ に加えて
自らも執筆 しているということです。

その他には
監修 という記載方法もあります。
監修は用語や学説,理論などの
内容に誤りがないかを確認すること
著者ではありません。

というのが一般的な意味です。
しかし実際は
となっていても
内容は自らも執筆している
編著 であることはありますし
監修 についても
箔をつけるだけの形式的
ものもあります。

さて
前田先生の刑事訴訟法 についてですが
東京大学出版会の『 刑事訴訟法講義 』
弘文堂の『 刑事訴訟法判例ノート 』
共著 という形になっています。

どこまで執筆分担しているのかは
わかりません。

これは想像の域を出ないのですが

まず
東京大学出版会の
『 刑事訴訟法講義 』については
初版の出版年月が2004年6月となっています。

法科大学院が
2004年4月に創設されたことを考えると
東京大学出版会としては
学術的な深い内容ではない
実務的な手続法の
ロースクール生向け
基本書的なものを出版したい。

そうなると
実務家の先生 に執筆をお願いしたいが
司法試験受験生をターゲットにして
販売する場合には
内容が十分であっても
ネームバリューとして地味 であり
売れる見込みが未知数です。

司法試験受験生の購買行動
内容評価以前に ネームバリュー
先導される傾向 にあるので
前田説を浸透させ
司法試験委員等も歴任し
刑法の本も相当売れた実績のある
前田先生の名前を使いたい。

というように
通常の出版社なら考えて
話しを持ちかけるのが普通でしょう。

後の2007年には
同じ手続法の
民事訴訟について著された
『 講義 民事訴訟 』
初版が出版されました。
こちらは
元判事の藤田広美 先生の
単著 ですが
司法協会 出版の
『 民事訴訟法講義案 』 の著者
といわれる方なので
ロースクール生向け教科書としての
内容は十分であり
学生は飛びつくと判断して
単著で行けるといった
ところだと思います。

弘文堂の
『 刑事訴訟法判例ノート 』においても
司法試験受験生の購買行動を
考えて売れるようにするためには
前田先生のネームバリュー
必要です。

弘文堂の場合も推察ですが

出版社側とすれば
例えば
過去に出版社から本を出して
売れた実績があり
その後もよく執筆を頼まれる
先生がいるとします。

その先生が別の方を紹介しましたが
確実に売れるといった
実績が足らない場合に
その先生に 監修 として
名前を入れることを条件に
執筆させることがあります。
要するに
担保としての
名義貸しみたいなものです。

『 刑事訴訟法判例ノート 』の場合でも。
弟子に実績をつけてあげたいので
弟子の 星周一郎 先生を勧めたが
ネームバリューの問題で
前田先生の名前も出してもらう
ということだろうと思います。

ただ
『 刑事訴訟法講義 』 の場合も
『 刑事訴訟法判例ノート 』
同じですが。
監修 前田雅英 とすると
共著の先生に対し失礼になります。

駆け出しの研究者や実務家
または専門外の者が執筆する場合に
監修に入ってもらうのが通常で

池田修 先生や 星周一郎 先生の場合は
実務家や学者として
十分な実績があるので
共著 という形になっているのだと
思います。

もちろん
前田先生も執筆していれば
当然共著ですが・・・。

また
著者名の記載順 については
おそらく
池田先生は前田先生の大学の先輩
あたるので
『 刑事訴訟法講義 』 については
池田修,前田雅英 の順。
『 刑事訴訟法判例ノート 』 では
星先生は前田先生の弟子 ですので
前田雅英,星周一郎 の順
ということでしょう。

また
木村光江 先生も 前田 先生の
お弟子様です。

著書の
『 刑事法入門 』 1995年
『 刑法 』 1997年
『 演習刑法 』 2003年 は
東京大学出版会 からですが

東大出身でない 木村光江 先生が
東京大学出版会 から
出版しているということは
おそらく 前田先生のご推薦
あったのだろうと推察します。

このように
前田先生の刑事訴訟法は
“ なぜ共著なのか ” との考えを契機に
色々と推察すると

前田説の普及とネームバリュー,
弟子の育成,行政関係の委員,
首都大でのロースクール生の育成など
数々の功績を残した事実と
人望の厚さが見えてきます。

と,まあ出版の経緯は
ご本人様に確認したわけではないので
想像の域をでませんが・・・。

出版社的にはこんな感じなのかな
といったところです。


以上
読んでいただき
ありがとうございました。

2017年2月20日月曜日

近代立憲主義と平和主義


近代立憲主義と
日本国憲法の3原則の中の一つ
平和主義ついて考えてみます。

法律関係者には
「釈迦に説法」なので
主に高校生をターゲットにします。

先日
『伝わる書き方』(PHP研究所)
という本を
書棚から出して
再読したときがきっかけです。

著者の
三谷宏治 氏
K.I.T.虎ノ門大学院主任教授
アクセンチュア 等で
経営コンサルタントを
されていた方です。

三谷 氏の著書は
わかりやすく書かれ
私も大いに参考にしています。

この本の内容は
文章の書き方について
① 理解しやすいように
  文章を短く切り
② その文章の内容を
  類型別に目次化させ
③ 読者が興味を引くように
  文章に波をもたせる
というように
3つ方法に分類して
レクチャーした手引書
です。

その中で
気になった箇所があります。
70頁の
日本国憲法 前文
“ 余計な装飾を省く ” 説明のくだりで

個人的見解と断ったうえで

日本国民は,
恒久の平和を念願し
人間相互の関係を支配する崇高な理想を
深く自覚するのであつて
平和を愛する

諸国民の公正と信義に信頼して,
われらの安全と生存を保持しようと
決意した。

から

日本国民は,
諸国民の公正と信義に信頼して,
自らの安全と生存を保持しようと
決意した。

と文章を簡潔にしています。

省いた箇所の

恒久の平和を念願し
人間相互の関係を支配する崇高な理想を
深く自覚するのであつて
平和を愛する


の部分を
“ 余計な装飾 ” として省いています。

この本は憲法論について
書かれたものでなく
確かに
この箇所の表現は
『くどい言い回し』
と感じます。


ここで
近代立憲主義について考えると

近代立憲主義 とは
憲法に基づいて政治を行う考え方です。

その 3原則
① 国民主権
② 人権保障
③ 権力分立

です。

権力分立 とは
立法,司法,行政の
三権分立も含みますが
より広く捉えます。
日本の場合は
地方分権,行政委員会,二院制
三審制 等も含みます。
この仕組みは
権力が一つに集中しないように
権力機構を分散させ
抑制と均衡を図るものです。

一方
日本国憲法の3原則
① 国民主権
② 基本的人権の尊重
③ 平和主義

です。

国民主権 について

日本国憲法の国民主権 と
近代立憲主義の国民主権 とは
異なります。

日本国憲法の国民主権 には

国の政治の在り方を
最終的に決定する権力を
国民自身が行使する
権力的契機 ― ①

国家の権力行使を
正当づける究極的な権威が
国民にあるとする
正当性の契機 ― ②

の二つを合わせた
意味を持っています。

しかし
近代立憲主義の国民主権 には
②の 正当性の契機 の意味しか
ありません。

次に
国民主権 および 権力分立 と
人権保障 との関係については

国民主権 および 権力分立
人権保障を実現するための手段です。

平和主義人権保障 との関係は
平和であることは
人権保障の前提となる関係です。


では
平和が人権保障の前提となるものならば
なぜ
平和主義が
日本国憲法の3原則には
挙げられているのに
近代立憲主義の原則には
ないのでしょう。


近代立憲主義 においても
平和主義が当然 のことであり
規定されなかっただけで
無視されたのではありません。

これに対し
日本の場合
二度の世界大戦を経験し
侵略によって
他国に被害
を与えました。

それと同時に
空襲や原爆投下などもあり
戦争で多くの国民に
被害
が出ました

これらを教訓として
平和主義を明文化 して
その 意義を強調 した
ものと考えられます。


だから
余計なほど,繰り返して
平和を強調
していると考えます。

このように
全く関係ないところから
あらためて考え直してみたり
発想が湧いたりすることって
ありますよね。


~ 参考文献 ~

伝わる書き方 三谷宏治 著 / PHP研究所 2013

日本国憲法 朗読CD 佐藤慶 / フォンテック 2006

比較憲法 第3版 樋口陽一 著 / 青林書院 1992

憲法 第3版 佐藤幸治 著 / 青林書院 1995



以上
読んでいただき
ありがとうございました



2017年2月15日水曜日

雑誌の号数が抜けてる? 話


法情報検索 各論 4 文献 5

ジュリスト と 週刊東洋経済 の例

以前に
判例時報 と 判例評論 の回で
書きましたが
各出版社独自のルールで
雑誌に巻号が付されているので
非常にわかりづらいものもあります。


雑誌書架や書庫で
雑誌の号数が抜けている
場合があります。

除籍や紛失で
欠号の場合は納得がいくのですが

所蔵があるのに
見つけることができないと
フラストレーションが溜まるし
何より時間が無駄になります。

「 ○○号が抜けている 」 との指摘が
たびたびあるのが
法学系雑誌では
ジュリスト です。

例えば
ジュリスト
1471号 ~ 1480号 まで
書庫からの出納依頼を受けたが
1479号 が抜けていて見当たらない!
といったケースです。

結論からいうと
1479号
ジュリスト臨時増刊号 の
【 平成26年度 】重要判例解説

いわゆる 重判 です。

重判巻次
ジュリストの通号表示 なっています。

一方
ジュリスト増刊
固有のタイトルで刊行され
論究ジュリスト
法律学の争点シリーズ など
別の巻号表示 になっています。
また
判例百選 の場合も
ジュリスト臨時増刊 1964年10月号
「 刑法判例百選 」より後の刊行は
別冊ジュリスト として
刊行されており
月刊のジュリストとは
別の巻号表示 になっています

といったように
非常に混乱しますが…。


探しづらくなる要因の一つ には
各図書館でローカルルールがあり
受入や排架の方法,
OPAC( 利用者用検索機 )表示
などが異なるため
です。

一般的に大学図書館での
排架
ジュリストとは別に
重判,判例百選,論究ジュリスト など
シリーズごと にまとめられています。
一方で
OPAC表示
雑誌では通号表示のみ
なっていることが多いです。

また
これは公共図書館にありがちですが
ジュリスト は年間契約で
雑誌 として受入れているが
臨時増刊号は契約の対象外で
雑誌受入れしていない。
しかし
利用者からのリクエスト等で
重判 のみを 図書 として
受入れしている場合です。

この場合は
OPACで探しづらいことはもちろん
司書に尋ねても
「臨時増刊号は受入れていないので
 所蔵していません。」
との回答をされたことがあります。

確かに
この区の図書館で
所蔵しているはずだと思って
自分で調べると
同区内の他館で図書として
所蔵していました。

ということで
早速に取寄せの手続をしたところ
貸出もされていないのに
あまりにも来るのが遅いので
所蔵状態を調べたところ
ステイタスが所蔵のままだったので
手続きをした図書館へ
問い合わせてみたら
何と! 他区に取寄依頼中です
との回答を受けました。

オイオイと思いつつ・・・
まぁこんなもんだろうとも感じました。

教訓として
目的の資料がある場合は
所蔵館へ直接行くことにしています。
それから
調べものについては
調べる対象の分野の関連資料が多い
都立,県立図書館や国立国会図書館,
専門図書館を利用しています。

それが一番確実で無難でしょう!


ジュリスト 以外 でも
同様の問い合わせがあり
巻号の付け方が紛らわしい
雑誌はあります。

一例をあげると
週刊 東洋経済臨時増刊 です。
この臨時増刊は
DETA BOOKシリーズ と呼ばれ
株価総覧,日本の企業グループ,CSR企業総覧
など
といった
統計・総覧
形態もレギュラーの 週刊 東洋経済 とは異なり
事典のように分厚いものです。

図書館でも
週刊 東洋経済 と混配になっていることは
まずありません。
しかし
巻次週刊 東洋経済
通号 になっていますので
OPAC表示が巻号のみになっていると
まずわかりません。

公共図書館においても
ジュリスト のように
受入形態が異なることが多いので
同様の回答を受けたことがあります。

これらの問題は
利用者には全く非がありません。

そして
これらが問題となるよくあるケース
授業で配布された レジュメ
論文等参考文献
シリーズ名等の記載がなく
通号表示のみの記載
なっている場合です。


排架法や分類法,目録法
資料組織法
本来 資料へのアクセスを
容易にするための方法
ですが
そのルールに則ったら
かえって
わかりづらくなるというのであれば
本末転倒です。

図書館側
例えば
サインやガイドで導いたり
リストやパスファインダーなどを
作成する
といったように
プロの司書としての知恵を出し
サービス向上に努めるべきであると
思います。

では
そのようなサービスの
行き届かない図書館で
利用者が検索する方法 として
“ サービスの充実している ”
他の図書館の蔵書目録
出版社のWebサイト など から
複合的に検索 してみてください。


~ 参考資料 ~

東京都立図書館 - 蔵書検索
https://catalog.library.metro.tokyo.jp/winj/opac/search-detail.do?lang=ja

東京大学 - OPAC
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_search/?lang=0

慶應義塾図書館 - 調べる・探す
http://www.mita.lib.keio.ac.jp/search/index.html

有斐閣 - 雑誌
http://www.yuhikaku.co.jp/magazines

東洋経済 - 統計・総覧
https://store.toyokeizai.net/databook/


以上
読んでいただき
ありがとうございました。



2017年2月5日日曜日

最高裁判所判例の構造


法情報検索 各論 3 判例検索 12

物事には
それぞれの
構造や仕組みがあります。
日常生活や
仕事での事務処理
その他
研究などを行う際に
それらの構造や仕組みを
理解しておくと
同様のものに
出会った時の処理を
迅速に行うことができます。

官報の構造 については
以前のブログ
「 官報の構成と検索 」
述べました。

今回は
最高裁判例の構造 について
述べたいと思います。

まず
最高裁判所の判例 について
判例集に掲載されている事項
前から順に
見ていきます。

① 事件名
民事 の場合は
原告の請求内容を
簡単に記載されたもの
刑事 の場合は
起訴状に記載される罪名が
事件名となります。
なお
報道記事の事件名とは
異なります


② 事件番号
事件番号については
以前のブログに書きました
ので
「 裁判所 事件記録符号の読み方 」
参照ください。

③ 裁判年月日 
判決または決定が下された年月日
および
審理および裁判を行った法廷名
( [ 第1~3 ] 小法廷 または 大法廷 )

裁判の種類 ( 判決または決定 )
が掲載されています。

④ 結論
最高裁判所が下す結論には
・(上告)却下
・(上告)棄却
・破棄差戻し
・破棄自判

などがあります。

民事訴訟 の場合
上告が不適法である場合 には
決定
上告を 却下 することができます。
( 民事訴訟法317条1項 )
明らかに上告理由に該当しない場合
決定
上告を 棄却 することができます。
( 同条2項 )

これら以外の場合は
口頭弁論を経た上
上告された内容に
理由がない場合 には
判決
上告を 棄却 することができます。
( 同法319条 )

一方
適法な上告 がなされ
かつ
上告された内容に
理由が認められる
( 認容する )
場合
または
訴訟要件などの
職権調査事項に関して
原判決を維持できないことが
判明した場合

原判決は 破棄 されます。
( 民事訴訟法322条 )

原判決を破棄 した上で
原裁判所
( 控訴審,高裁 )に戻し
もう一度審理
されることが
破棄差戻し ( 民事訴訟法325条 )
最高裁判所が自ら裁判 することが
破棄自判 ( 同法326条 ) です。

刑事訴訟 の場合
上告が不適法である場合 には
決定
上告を 棄却 することができます。
( 刑事訴訟法414条,385条,395条 )
訴訟手続上
例えば
・移送申立て( 刑事訴訟法19条 )
・保釈請求( 同法92条 )
・証拠調べ請求( 同法316条の5 )
・忌避申立( 同法429条 )
などの請求・申立を退ける場合
には
却下 することができます。

一方
民事同様

上告に理由がない場合 には
判決 により
上告を 棄却 ( 刑事訴訟法408条 )

上告された内容に
理由がある場合

または
刑事訴訟法411条 に掲げる
職権破棄事由 がある場合
には
原判決は 破棄 され
破棄差戻し ( 刑事訴訟法413条 )
破棄自判 ( 同法413条但書 ) などの
判決 がなされます。

⑤ 当事者
上告審の当事者の呼び名
民事 の場合は
上告した側を
上告人
された側を
被上告人
と呼びます。

刑事 の場合は
常に
検察官被告人 です。

⑥ 下級審の情報
第一審と控訴審を担当した裁判所
および
裁判年月日 が掲載されます。


以下の ⑦,⑧ の2項目については
判例の要点を確認するための項目 です。
これらは
判決の一部ではなく
最高裁判所判例委員会により
判例集を編纂する際に
付される項目
です。

⑦ 判示事項
裁判において
そもそも何について
判断したのか
争点を簡潔に要約 したものです。

⑧ 判決要旨( または 決定趣旨 )
事案の概要や
争点とその判断を
要約
したものです。
また
少数意見の有無
掲載もあります。

注意点 として
裁判所が判断するに至った
プロセスや事情
および
事案関係の特殊性について
判決要旨から判断することは
困難です。


以下の ⑨,⑩ の2項目は
判例の “ body ” といえる項目 です。

⑨ 主文
裁判の結論を
簡潔に述べたものです。

上告審では
原則,上告人が
原判決を不服として
上告した点について
判断されます。
( 民事訴訟法320条 )
( 刑事訴訟法392条,414条 )

これにより
主文はその請求に応答
する形で掲載されます。

⑩ 理由
主文と同様
上告理由( 民事 )
上告趣意( 刑事 )に応答

する形で述べられます。

理由の部分で
主文の結論に至った
思考プロセスが
詳しく論じられます。


理由の中身の構造
以下の通りです。

◇ 確定した事実
上告審は法律審なので
原則は
原判決において適法に確定した事実を
前提
とします。
( 民事訴訟法321条1項 )
原審の
事案の概要
について
法的な視点で整理 されて
掲載されます。

◇ 訴訟の経緯
第一審や控訴審
どのようなものであったのか。
それらの 経緯 が掲載されます。

◇ 法的判断
判例を見る際のキモの部分 です。
具体的な事実を前提 として
その案件について
あてはめ法的評価 が行われ
それに基づき
法の適用について判断 がなされ
結論に導いた
裁判所の見解
が述べられています。

◇ 裁判官の意見
最高裁判所 の裁判の場合のみ
個別の裁判官の意見
表示しなければなりません。
( 裁判所法11条 )
これは
最高裁判所裁判官の国民審査
( 憲法79条2項,4項 )
のためです。

意見が分かれた場合
その 裁判の結論となった意見
法廷意見( 多数意見 )
その他に
多数意見に賛成 した裁判官が
更に何か 付け加えた意見
補足意見
結論には賛成 だが
理由づけが異なる意見
意見
多数意見に
理由,結論ともに反対の意見

反対意見
といいいます。


これ以下の ⑪,⑫ の2項目は
判例データベースの
テキストページ
では
通常 カット されています。

⑪ 上告理由,上告趣意
上告人が
原判決を不服として
上告した理由
です
上告理由( 民事 )
上告趣意( 刑事 )

が掲載されています。

上告理由,上告趣意 については
以前に書いたブログ

参照ください。
「 上告趣意 上告理由の検索 」

⑫ 参照
第一審,控訴審の
主文と事実および理由

掲載しています。


~ 参考文献 ~

判例学習のAtoZ 池田眞朗 編著 / 有斐閣 2010.10

法律文献学入門 - 法令・判例・文献の調べ方 西野喜一 著 / 成文堂 2002.7

判例とその読み方 中野次雄 編著 / 有斐閣 2009.4



以上

読んでいただき
ありがとうございました。




2017年1月10日火曜日

公正取引委員会の旧指針・ガイドラインの検索


法情報検索 各論 1 法令検索 12

前回は
経済法の審決等の検索について
述べましたが

ときたまある質問で
「 独禁法などの指針やガイドラインで
改正前のものは検索できますか 」

とのお尋ねがあります。

まず
現在の
所管法令・ガイドライン

については

公正取引委員会のWebサイト
トップページ を開くと

左下辺りに
「 所管法令・ガイドライン 」
アイコン がありますので

そこから
所管法令・ガイドラインのページ
行くことができます。
( アクセス日:平成29年1月10日 )

直接リンクはこちらです

● 所管法令・ガイドライン - 公正取引委員会
http://www.jftc.go.jp/hourei.html
トップページ > 所管法令・ガイドライン

では
改正前の
指針・ガイドライン

検索 についてご案内します。

条約の回でも述べましたが
官公庁のWebサイトは
ボリュームがあり
入り組んでいます
ので

トップページから
「 サイトマップ 」「 検索窓 」
使うと効果的です。

例えば
「 企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針 」
( 企業結合ガイドライン )

最終改定 平成23年6月14日
( 平成29年1月10日 現在 )

http://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/guideline/guideline/shishin01.html

から
一つ前に改定された
( 平成22年1月1日 改定 )

企業結合ガイドライン
を検索する場合

色々な検索ルート がありますが
まず
サイトマップ から
独占禁止法 カテゴリの
企業結合 を選択します。

次に
企業結合 のページの下の方に
法令・ガイドライン等( 企業結合 )
ありますので
選択します。

法令・ガイドライン等( 企業結合 ) から
ガイドライン を選択

一つ前の改正の
平成22年1月1日施行の
ガイドラインの改正
を選択。

選択したページの
ガイドライン の箇所を
選択すると
平成22年1月1日改正の
企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針

閲覧できます。

http://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/guideline/guideline/oshirase/2211kaisei.html

「 検索窓 」 を使う場合は
トップページ右上の 検索窓 から
ガイドライン名を入力 して検索すると
サイト内の該当するものが出ますので
その中から
目的のものを選択するとよいでしょう。

正確なガイドライン名が
わからなく
新旧のガイドラインを探したい場合

「 検索窓 」 から
“ ガイドライン 新旧 ” など と入力し
検索結果一覧 から目的のガイドラインを
探す方法もありますので
色々な方向から検索してみて下さい。


前回も申し上げたとおり
公正取引委員会のWebサイトは
かなり充実していますが

その他の
独禁法の参考になるWebサイト
ご紹介します。

● 白石忠志ウェブサイト
http://shiraishitadashi.jp/
東京大学教授 白石忠志 先生のWebサイト

● 舟田ルーム
http://www.pluto.dti.ne.jp/~funada/
立教大学名誉教授 舟田正之 先生の Webサイト

● みんなの独禁法 - 弁護士 植村幸也 公式ブログ
http://kyu-go-go.cocolog-nifty.com/
経済法をはじめ企業法を得意とする
気鋭の弁護士のブログ


以上

読んでいただき
ありがとうございました。




2017年1月9日月曜日

審決 等 経済法関係の検索


法情報検索 各論 3 判例検索 11

「 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する
法律の一部を改正する法律 」

( 平成25年 法律 第100号 )
平成25年12月13日公布
そして
平成27年4月1日 から 施行 されました。

この改正により
公正取引委員会が行う審判制度が
廃止
されました。

この 改正前まで
公正取引委員会がなした
排除措置命令や
課徴金納付命令などの
行政処分に不服がある者( 被審人 )
まず
公正取引委員会が行う審判 にて
事実の存否について争います。

この手続きは
「 準司法手続き 」
裁判所による審判に類似した
行政機関による審判 です。

なお
行政審判 については
“ 終審として裁判を行う ”
ことは 憲法上できません

行政審判 については
憲法上否定されていません
( 憲法 第76条2項 )

そして
公正取引委員会による審決に
不服のある場合は
専属管轄である東京高等裁判所に
審決取消訴訟を提起するといった
手続きになっていました。

改正後 においては
排除措置命令や
課徴金納付命令などの
行政処分に不服がある者( 被審人 )
第一審 として
東京地方裁判所 を専属管轄として
審判されることになりました。

これは
判断の合一性を確保するとともに
裁判所における専門的知見の蓄積を
図ることを理由とするものです。

そして 上訴 された場合は
東京高等裁判所 → 最高裁判所
へと審級します。

詳しくは
公正取引委員会のWebサイト
にあります。

● 「 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案 」 の閣議決定について ( 平成25年5月24日 )
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/may/130524.html
トップページ
> 報道発表・広報活動
> 報道発表資料
> 平成25年
> 5月

● 審判制度の廃止に伴う処分前手続・不服審査手続の見直し( PDF )
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/may/130524.files/03gaiyou2.pdf

● 改正独占禁止法(平成25年)Q&A
http://www.jftc.go.jp/dk/kaisei/h25kaisei/qa.html
トップページ
> 独占禁止法
> 独占禁止法の改正について
> 改正独占禁止法(平成25年)
> 改正独占禁止法(平成25年)Q&A

● 独占禁止法違反事件の処理手続図( PDF )
http://www.jftc.go.jp/dk/seido/shorizu.html


審決制度が廃止になったとはいえ
現在係属中の審判事件は
法改正後においても
公取委による審判手続において
審決されます。

審決について検索 する場合は
公正取引委員会のWebサイトの
審決データベースシステム
検索ができます。

● 審決データベース
- 公正取引委員会

http://www.jftc.go.jp/shinketsu/index.html

さらに
審決一覧 では
年度ごとに見ることができるので
そちらからの検索が
早い場合もあります。
また
過去およそ2年分の事件は
報道発表 にリンクされています。

● 報道発表資料
- 公正取引委員会

http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/index.html
トップページ
> 報道発表・広報活動
> 報道発表資料

その他には

● 所管法令・ガイドライン - 公正取引委員会
http://www.jftc.go.jp/hourei.html
トップページ
> 所管法令・ガイドライン

● 相談事例集( 独占禁止法 )
- 公正取引委員会

http://www.jftc.go.jp/dk/soudanjirei/index.html
トップページ
> 独占禁止法
> 相談事例集

● 公正取引委員会年次報告
- 公正取引委員会

http://www.jftc.go.jp/soshiki/nenpou/index.html
トップページ
> 公正取引委員会について
> 年次報告

● 世界の競争法
- 公正取引委員会

http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/index.html
トップページ
> 国際的な取組
> 世界の競争法

などの閲覧が可能で
公正取引委員会のWebサイトは
かなり充実していて
経済法関係の情報を
集めるには非常に重宝します。

また
独禁法とは何かを
わかりやすく解説している
コーナーも充実していますので
独禁法や下請法のことが
わからない場合は
まず
このWebサイトに
当たるとよいでしょう。



公正取引委員会のWebサイトの他に
「 景品 」 と 「 表示 」 に関する
公正競争規約
については
社団法人 全国公正取引協議会連合会
の Webサイトから
規約条文 を見ることができます。

● 公正競争規約とは
- 社団法人 全国公正取引協議会連合会

http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/index.html
ホーム > 公正競争規約とは

▼ 公正競争規約条文( 景品 )
- 社団法人 全国公正取引協議会連合会

http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/kiyaku_keihin.html
ホーム
> 公正競争規約とは
> 条文一覧( 景品 )

▼ 公正競争規約条文( 表示 )
- 社団法人 全国公正取引協議会連合会

http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/kiyaku_hyoji.html
ホーム
> 公正競争規約とは
> 条文一覧( 表示 )


以上

読んでいただき
ありがとうございました。